例の自称元徴用工判決問題を巡って、またぞろ、基金案が韓国側から出てきているようです。今回の案は「日韓だけでなく第三国も含めた自発的基金を募る」、「基金の原資は自称元徴用工だけでなく、自称元慰安婦への賠償に充てる」というものだそうですが、懲りない人たちだといわざるを得ません。いずれにせよ、ひとつだけ確かなことがあるとすれば、私たち日本の立場としては、まとにも相手をする必要はない、という点ではないでしょうか。

近況報告

ここ数日、例の「ワードプレス・アップデート騒動」もあり、当ウェブサイトとしては、どうしても「時間短縮営業モード」（笑）になってしまっています。こうしたなか、ＢＳフジ『プライムニュース』に鈴置高史氏と真田幸光氏が出演されたそうなのですが、残念ながら、現在に至るまで視聴できていません。

すでに読者コメント欄やツイッターでも、「今回もかなり参考になった」とする意見が多数出ているのですが、ぜひ、時間を見つけてどこかで視聴したいと考えている次第です。

自称元徴用工問題

なぜか３件しか出ていない大法院判決

さて、自称元徴用工問題を巡っては、当ウェブサイトでもこれまでずいぶんと議論してきました。

この問題は、いうまでもなく、「戦時中に強制徴用された被害者だ」と自称する者たちが日本企業を相手に韓国国内で訴訟を起こし、その結果、続々と日本企業に敗訴判決が下っている、とするものです。

ただ、最高裁にあたる「大法院」の確定判決が出ているのは、新日鐵住金（現・日本製鉄）に対する2018年10月30日の１件と、三菱重工業に対する同11月29日の２件の、合計３件だけであり、現在のところ、大法院判決はそれ以外には出ていません。

これは非常に不思議なことだと言わざるを得ません。

韓国メディアの報道を眺めていると、これらの判決については「日本の植民地支配の違法性を認めたものだ」、「この判決を受けて日本は真の反省と謝罪をすべきだ」、などと勇ましい主張が目立つわりには、最初の大法院判決から２年近くが経過するにも関わらず、後続の大法院判決が出てこないからです。

ちなみに韓国の地裁・高裁レベルでは、自称元徴用工側の勝訴判決については多数出ているようであり、また、日本製鉄と三菱重工とならんで資産の差押えを食らっている不二越のように、大法院で訴訟が続いているというケースもあります。

それなのに、なぜか日本製鉄と三菱重工以外の各社に対しては、待てど暮らせど、大法院判決が出てこないのです。

どうせ資産現金化をするつもりはないはず

さて、自称元徴用工問題といえば、今月４日に効力を生じた公示送達についても触れておく必要があるでしょう。

そもそも論として、日本製鉄と三菱重工、不二越の３社に対しては、現在、資産の差押え手続が進行中です。しかし、肝心の差押えの対象となっている資産は、日本製鉄と不二越が合弁会社株式、三菱重工が特許権や商標権であり、いずれも売却が極めて困難です。

この点、当ウェブサイトではかなり早い段階から、韓国側で差押え手続が進行しているこれらの資産については、その売却が著しく困難であると指摘してきました。８月４日になって、公示送達の効力が発生して以降、やっと韓国メディアにも「非上場会社株式の売却は困難だ」という報道が出てきたほどです。

ちなみに非上場株式の売却が難しい理由については、以前の『非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい』を含め、「財務デューデリジェンス（ＤＤ）が最低２回は要求される可能性が高い」といった事情を説明していますので、本稿では詳細については繰り返しません。

いずれにせよ、当ウェブサイトで一貫して「疑問だ」と述べ続けてきたのは、まさにこの「なぜか、わざわざ換金が著しく難しい資産ばかり狙って差し押さえている」、という点なのです。

被害者の救済より永遠の贖罪

ただ、もう答えを言ってしまえば、韓国側では「被害者の救済」よりも「永遠の贖罪」が重要視されているため、とにかくパフォーマンスとして「日本企業よ、資産が売却されたら困るだろう？だから謝罪と賠償に応じるなら今のうちだぞ？」と脅すのが目的なのであり、本気で資産売却をするつもりはないのだと思います。

というよりも、『「資産売却」騙る弁護士のインタビュー＝自称元徴用工』でも紹介しましたが、原告側の弁護士の本当の目的は、おそらく、「資産売却による被害者の救済」ではなく、「日本企業からの謝罪と賠償を引き出すこと」にあります。

［インタビュー］「日本企業の差押え資産の処分を急ぐ」

イム・ジェソン弁護士／日本政府・戦犯企業に協議を提案したがたびたび黙殺／2年待ったが「外交的妥協」は難しい／高齢の被害者たち、判決の履行の遅延に疲れ<<…続きを読む>>
―――2020-07-01 12:22付　ハンギョレ新聞日本語版より

韓国メディア『ハンギョレ新聞』（日本語版）に掲載された記事を読むと、この弁護士は、どうも非上場株式の売却査定・財務ＤＤに詳しい人物とは思えません。まともに財務ＤＤを知っている人物であれば、それがいかに時間とコストがかかるか、理解しているはずだからです。

したがって、現在の日本政府・日本企業のスタンスも、「やれるものならやってみな」、とだけ言い放ち、即時抗告などの必要な手続を講じつつも、基本的には積極的放置・戦略的無視を決め込んでいるのだと思う次第です。

基金構想

文喜相案はどこに行った！？

こうしたなか、自称元徴用工問題を巡っては、韓国側で「１＋１＋アルファ」基金なる構想が出てきたことがありました。ちなみにこれを提示したのは、天皇陛下（現在の上皇陛下）を口汚く侮辱したことでも知られる、当時の文喜相（ぶん・きそう）韓国国会議長です。

報じられるところによると、この構想は、日韓両国の企業などの「自発的な」寄付金などを原資とした基金を設立し、その基金から金銭の支払いを受けた自称元徴用工は、日本企業に対する訴えを起こすことができなくなる、といった構想でした。

正直、ひと昔前の日韓両国にまだ「水面下のパイプ」が生きていた時代などであれば、まだ日本側の理解が得られていた可能性がないではありません。しかし、現在の日韓関係において、この手の不透明な基金案がまともに機能するとも思えません。

だいいち、似たような「韓国側が捏造した歴史問題」である「（従軍）慰安婦問題」を巡って、日本政府は韓国政府との間で2015年12月に日韓慰安婦合意を取り交わし、財団方式での解決を図ったものの、これが韓国政府の都合によって頓挫したばかりです。

日本政府側が「基金・財団方式で最終解決したことにする」などとする案を見て、韓国を信頼しないのは、当たり前すぎる話でしょう。

そして、この国会議長は今年４月に実施された国会議員総選挙に出馬せず、今期限りで引退してしまいましたし、この「文喜相案」も自然消滅してしまった模様です。

共同通信「徴用工問題解決へ新法案」

ところが、その同じ「基金案」が再び出てきたようです。ここでは８月12日付の共同通信の報道を紹介しておきましょう。

韓国、徴用工問題解決へ新法案／与党議員ら、国会に共同提出

―――2020/8/12 23:44付　共同通信より

それにしても変なタイトルですね。「徴用工問題解決へ」、とありますが、そもそも自称元徴用工問題自体、韓国が捏造した問題です。本来ならば、その真の「解決」とは、韓国が捏造を認めて日本に対し真摯に謝罪する以外に選択肢はないでしょう。

それはさておき、記事本文によると、韓国の与党出身の無所属議員である梁貞淑（りょう・ていしゅく）氏は12日、「韓国人元徴用工と元従軍慰安婦（※原文ママ）」の補償問題を解決するために、人権財団を新設するという法案を、与党議員９人と国会に共同提出したそうです。

しかも、おどろくことに、その財源は「日韓両国に加えてほかの国も含めた政府・企業・個人から拠出金を任意で募る」ことで充てるのだとか。なんとも斬新な（※誉め言葉ではありません）発想ですね。

ちなみに共同通信は自称元徴用工の問題について、「原告側が日本製鉄の韓国内資産を差し押さえて売却する手続が長引いている」などと述べているのですが、あれは最初から売却する気などない、というのが当ウェブサイトなりの見解です。

また、自称元慰安婦についても日本政府を相手取った損害賠償訴訟が進行中なのだそうですが、それこそ2015年12月の慰安婦合意で10億円を支払った日本政府としては、もう「放置」を決め込むのではないでしょうか。

自称元徴用故問題は日韓関係を破壊するまで続く

さて、共同通信の末尾には、こんな記述もあります。

「梁氏は法案を、日韓で対立が続く両問題の『新たな解決策』としている」。

新たな解決策に、なりませんし、そもそも次から次へと問題を捏造し、作り出す韓国側に、日韓間の対立を収めようとする考え方はありません。

正直、慰安婦問題や自称元徴用工問題が「基金＋首相の謝罪」などで無理やり妥結させたとしても、後から必ず、「首相の謝罪には誠意が足りない」だの、「基金は（自称）被害者の了解を取っていない」だのという文句が出てくるからです。

あるいは、慰安婦問題・自称元徴用工問題が解決したとしても、また新たな問題を捏造して日本に謝罪と賠償を要求してくるという展開が待っていることは、火を見るより明らかでしょう。

いずれにせよ、『日本製鉄の即時抗告、本当の狙いは「引き伸ばし」？』などを含め、当ウェブサイトでは以前から、報告してきたとおり、自称元徴用工問題を巡っては「４つの落としどころ」しかないと考えています。

自称元徴用工問題の「４つの落としどころ」

• ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
• ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
• ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する
• ④日韓双方譲らずに現在の膠着が続き、これとまったく違う次元で日韓関係が破綻する

このうち①はファンタジー、②は私たち日本国民が許してはならない選択肢であり、残る選択肢は③と④、というわけです。

韓国焦土化

ちなみにこのうち③は、具体的には自称元徴用工問題が原因となって日韓関係が破綻する、というものであり、④は自称元徴用工問題が解決しないうちに、まったく別次元の問題が降ってきて、結局、日韓関係が破綻する、というもので、現時点において当ウェブサイトが支持しているのは③ではなくて④です。

たしかに自称元徴用工問題自体、韓国による国際法破りであり、日本に対する深刻な権利侵害であって、日本はこの韓国による権利侵害を絶対に許してはなりませんし、韓国が態度を改めないなら、毅然として韓国に何らかの制裁を加えることを躊躇してはならないとすら考えています。

ただし、現実問題としてみるならば、③のシナリオは、なかなか発生し辛いものでもあります。というのも、韓国は「瀬戸際外交」が大好きな国ですが、瀬戸際外交においては「越えてはならない一線」を越えることは基本的にあり得ないからです。

したがって、当ウェブサイトとして支持するシナリオとは、自称元徴用工問題などを巡る日韓対立が長期化するなかで、まったく別次元の問題（たとえば米軍の北朝鮮空爆と、そのどさくさにまぎれた韓国に対する経済焦土化）が降ってきて、日韓関係は韓国という国ごと吹き飛ぶ、といった可能性です。

とくに今年はドナルド・Ｊ・トランプ米大統領が11月の大統領選で苦戦と伝えられていますが、「オクトーバー・サプライズ」があるとすれば、それは米中戦争の前哨戦としての北朝鮮攻撃である、という可能性には注意しておく必要があるのかもしれませんね。