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韓国が外貨準備高のうち1573億ドルを「積極投資」

韓国の外貨準備、果たしてどこまで「誤魔化せる」のか』を含め、当ウェブサイトでは以前から、韓国が「4000億ドルを超える外貨準備を保有している」と自称している点について、少なく見積もって1000~1500億ドルは「行方不明」だ、と申し上げて来ましたが、その答えの一部がわかりました。本日の韓国メディアの記事によると、韓国の外貨準備高の1573億ドルは「韓国投資公社」がオルタナティブ資産等に運用している、とする情報が出ています。これは初耳です。日本からの通貨スワップは期待できないのに、そんな投資をしていて大丈夫なのでしょうか。

「行方不明額」が大きすぎる、韓国の外貨準備高

以前の『韓国の外貨準備、果たしてどこまで「誤魔化せる」のか』で、韓国が保有しているとされているはずの4000億ドルを超えるとされる外貨準備を巡って、「統計データから確認する限り、韓国の通貨当局が『外貨準備』として確実に使える部分はせいぜい1000~2000億ドルだ」と申し上げました。

もちろん、一般に「外貨準備高」とされる項目には有価証券(米国債など)が含まれているため、外貨準備をすぐに全額使うことは難しいです。なぜなら、外貨準備を使うためには運用している債券などを売却しなければならないからです(こうした状況については日本でもまったく同じことが言えます)。

さらにいえば、一般に多くの国は外貨準備高の通貨別構成割合、具体的な投資対象銘柄などのデータを公表していませんが、多くの場合、米国財務省などが公表する統計を見れば、大雑把なところでは巨額の「行方不明額」は生じません。

しかし、韓国の場合、その「行方不明額」の比率が大きすぎるのです。

まず、韓国が自称する近年の外貨準備高は約4000億ドル前後(※2020年5月末時点に関しては4073.11億ドル)ですが、一般に韓国のような「加工貿易国家」の場合、外貨準備高の6~7割は米ドルで占められているはずです。

したがって、韓国は米ドル建ての資産を2400~2800億ドル保有しているはずであり、そのうち有価証券が9割を占めているならば、2200~2500億ドルほど、米国の債券(米国債、エージェンシー債など)に投資していなければならないはず。

米国内の統計とは猛烈に矛盾

ところが、米国財務省が公表する『TICレポート』によれば、韓国が「国を挙げて」保有している米国国内の有価証券は、昨年12月末時点で債券が約2000億ドル弱、株式が約1800億ドル弱、合計して3800億ドル弱です。

しかし、この「3800億ドル弱」には、韓国国内の機関投資家(民間の銀行や保険・年金基金など)が保有している部分も含まれているはずですし、実際に韓国銀行の資金循環統計によれば、昨年12月末でこれらの機関投資家が保有している外国有価証券は約5500億ドルです。

したがって、韓国の資金循環統計にいう「5500億ドルの外国有価証券」の半額が米ドル建て有価証券だったとすれば、韓国の民間部門が保有している米国内の有価証券は2750億ドルであり、先ほどのTICレポートでいう3800億ドルのうち、韓国銀行の保有部分は1000億ドルに過ぎません。

以上より、韓国の外貨準備高は、少なくとも1110~1470億ドル(試算によってはさらに多くの額)が「行方不明」なのです。これをまとめておきましょう。

韓国の外貨準備の行方不明額
  • ①韓国銀行が「保有する」と自称する外貨準備高…4000億ドル
  • ②上記①のうち米ドル建ての外貨準備高…2400~2800億ドル(=①×6~7割)
  • ③上記②のうち有価証券が9割を占めていた場合…2160~2520億ドル(=②×0.9)
  • ④米国の統計から判明する、韓国が米国内に保有する有価証券…3800億ドル
  • ⑤韓国銀行の統計から判明する、韓国の民間投資家が保有する外国有価証券…5500億ドル
  • ⑥上記⑤のうち米ドル建て資産が50%だった場合…2750億ドル(=⑤×0.5)
  • ⑦韓国銀行が外貨準備で保有している米国内の有価証券…1050億ドル(=④-⑥)
  • ⑧行方不明額…1110~1470億ドル(=④-⑦)

そして、ここでいう「1110~1470億ドルの行方不明額」は「米ドル建ての資産」に限定している点にも注意してください。もしかすると、ユーロ建てのカバードボンドや周辺国国債、あるいは人民元建ての債券など、それなりに「中身がよくわからない資産」も含まれている可能性があるからです。

したがって、韓国の外貨準備高の過大計上は、「少なく見積もって」1000~1500億ドル、というのが当ウェブサイトとしてのこれまでの分析なのです。

ずばり、1573億ドルの行方がわかった!?

こうした当ウェブサイトとしての長年の疑問に、やっとひとつの答えが見つかりました。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された、次の記事です。

韓国投資公社社長「外貨準備高、新興国インフラに投資増やす」

15年で492億ドル稼いだ公企業がある。国の外貨準備高を海外株式と債券などに投資する韓国投資公社(KIC)だ。<<…続きを読む>>
―――2020.07.02 08:23付 中央日報日本語版より

中央日報によると、この「韓国投資公社(KIC)」は「外貨準備高を海外株式と債券などに投資する公社」としており、「資産規模1573億ドル」とあります。

要するに、当ウェブサイトでかなり以前から指摘して来た「1000~2000億ドルの外貨準備の行方不明額」は、おそらくこの「韓国投資公社」が管轄してきた、ということではないでしょうか。

もちろん、同国の資金循環統計などの基礎データを見ても、データとして隠されているため、この「韓国投資公社」という存在は確認できません(もっとも、「基礎的な統計でウソをつく」という点は、中国や韓国の統計を読むうえで注意すべき鉄則でもありますが…)。

しかも、中央日報の記事によると、こんな記述もあります。

2018年末に世界の証券市場が暴落した。その時マイナス3.66%の収益率を出したが、翌年にはプラスに転換し収益率15.39%を記録した。

マイナス3.66%、プラス15.39%、といった極端に変動が大きい点を見ると、おそらく同社は債券ではなく株式などボラティリティが非常に高い資産に投資している可能性があります。あるいは、債券でも証券化商品やカバードボンドなどに積極投資しているのでしょうか。

まだ1000~1500億ドルの余裕があるはずだが…!?

誤解を恐れずに申し上げるならば、べつに外貨準備で積極運用すること自体は悪いことではありません。

しかし、それと同時に、外貨準備において非常に大事なのは、「流動性」、つまり「使おうと思えばいつでも使えること」です。「4000億ドル超」と自称する外貨準備のうち、1573億ドルもの資金をオルタナティブ資産などに運用していて、流動性は大丈夫か、という気がしますね。

いずれにせよ、この中央日報の記事により、韓国の外貨準備のうち、1573億ドル分については少なくとも「すぐに換金が難しい資産である」という点がおぼろげながら見えて来ました。ということは、もし「外貨準備4000億ドル超」が事実だとしても、外貨準備と呼べる部分は、多くとも2500億ドルに過ぎません。

ただ、国際決済銀行(BIS)等の統計によれば、同国が外国から借り入れている外貨建短期債務残高は1000~1500億ドル程度ですので、それを差し引いても、韓国の外貨準備には純額で1000~1500億ドルの余裕があるはずです。つまり、韓国で通貨危機は発生しないはずだ、という理屈ですね。

それなのに、どうしてそれで韓国が外国との通貨スワップに一喜一憂するのか、あるいはどうして同国が日本との通貨スワップにこだわるのか、いまひとつ意味がわからない点でもあり、どうしてもモヤモヤが残ってしまいます。

もしかすると、韓国の外貨準備の行方不明部分は、この「韓国投資公社の1573億ドル」以外の残り2500億ドル部分にもあるのかもしれませんが、このあたりは先ほどの①~⑧の分析の再実施も含め、今後もさまざまなデータを突合するなどして、研究を進めていくより方法はなさそうです。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 李明博政権時に、資源投資で失敗した話で、ちゃんと清算されているのか?という事を、頭によぎりました。
    何か関連性が無いものか?と思いました。

  • カタストロフィー債の一種であるパンデミック債も、ハイリスク・ハイリターンのトランシェBは武漢肺炎の保険支払いに使われて元本が全額毀損し、相対的にローリスク・ローリターンのトランシェAはコロナウイルス事由による支払いには制限があるので、8〜9割は償還されるだろうとの話を聞いたことがあります(たしか、この7月に償還を迎えるはず)。
    目先の利益に飛びつく韓国さんが仮にパンデミック債を購入していたなら、ほぼ間違いなくハイリターンのトランシェBだったでしょうね。

  • 韓国って、隠しとかなきゃいけないことを、つい自慢したくで暴露しちゃうこと多いですよね。潜水艦の建造中の写真載せたりとか。

  • 更新ありがとうございます。

    韓国の外貨準備高のうち、1573億ドルは「韓国投資公社」がオルタナティブ資産等に運用している。ふ〜ん。

    いつも詳細な裏の取れたデータ、ありがとうございます。これで行方不明部分の「1573億ドル」は判明しましたね。危っぶない橋、渡ってんなぁ〜。何か他にやましい事でも?

  • 米国との為替スワップにすぐに食いついた理由の一つがこれでしょうか。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、自分でも『まさか』と思うので)

     もしかしたらですが、韓国は確実に外貨準備高を増やす手段として、北
    朝鮮の『米ドル印刷事業』に投資していることは、ないですよね。

     蛇足ですが、日本の年金基金のことを考えれば、韓国を笑えないのかも
    しれません。

     駄文にて失礼しました。

    • 引きこもり中年さんへ
      >日本の年金基金のことを考えれば、韓国を笑えないのかも

       十二分に笑い転げて大丈夫ですよ、我が国は物凄く上手に運用して毎年何兆円とか十何兆円とか大儲けしてますから、何十年も徴収され蓄積してくれているで莫大な円(年金基金)を米国債(上限クウォーター)や米国株(上限クウォーター)に投資して。

      こから、厚生省の嘘捏造がバレますね
       年金は貯蓄ではない、←嘘ですね
       年寄りから徴収した年金は枯渇して蓄えはない、も 嘘
       現役から徴収したお金(=年金)を右から左に年寄りに配布してる これも嘘捏造

      全部 嘘捏造、厚生省の大嘘です。

  • >韓国の外貨準備の行方不明部分

    そんなに難しいことではなく、例の「ポッポないない」なんじゃありませんか?

    • あ~あ、言っちゃった!

       まぁ~ねぇ~、大損したと言えなきゃポッポないないできませんものね。

  • 何度も同じコメントしちゃってますが、外貨準備高に含まれる金(ゴールド)の評価替えが無いことからも韓国の外貨準備高は取得原価基準で記帳されてるのでは?・・と思ってます。

    毎月の外貨準備高公表時の表明をみてもドル換算に伴う評価替えの他には運用益が計上される事しかありません。例えば洗替評価のうえでの利益計上であれば問題は無いのかもなのですが、取得原価基準での記帳方法だと損切り確定させるまで運用上の損失は計上されないことになるのかと・・。

    例えば、韓国投資公社がトルコ国債に投資してたとすれば、利息の受取りは運用益として計上しつつも、債券価格自体の下落(半減)の事実が、損切りしないうちは「帳簿上”無かったこと”にされてる」ってことなのでは?

    簿価を取得原価に据え置いたままで儲かってる債券・株式等の売却(利益確定)のみを繰り返せば、必然的に残されるのは流動性のない(含み損になってる)塩漬運用部分ばかりになってしまってる可能性も否めないのでは?

    美味しいとこだけつまみ食いしてると、ハイリスク・ローリターン運用に陥ってしまうのかと・・。