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ロシア、インド、韓国がすんなり拡大版G7に入るのか

昨日、複数の英米メディアの報道によれば、ドナルド・J・トランプ米大統領は大統領専用機内の会見で、ロシア、豪州、インド、韓国の4ヵ国などを加えた「拡大版G7会合」を秋口に開催したいとの意向を示したようです。地図で見れば明らかですが、この狙いは「対中包囲網脳形成」にあります。しかし、これがすんなりとうまく行くかどうかとなれば、話はまったく別でしょう。

トランプ氏「拡大版G7」構想

昨日、英米メディアにこんな記事が掲載されていました。

Trump Plans Expanded Fall G-7 Meeting With Russia, Others(2020年5月31日 10:18 JST付 Bloombergより)
G7 summit: Trump postpones meeting of world leaders after Merkel’s snub(2020/05/31付 Independentより)

(※なお、これらの記事は有料会員でなければ読めないこともあるらしく、かつ、読めたとしても英文であるという点についてはご了承ください。)

これは、ドナルド・J・トランプ米大統領が6月にキャンプ・デービッドで行われる予定のG7会合を延期し、

秋の大統領選後に「拡大版G7会合」を開催することを検討しているとする話題です。

大統領専用機「エアフォース・ワン」で記者会見に応じたトランプ氏は、この「拡大版G7」にロシア、オーストラリア、インド、韓国の各国を招待すると述べたのだとか。また、現行のG7という枠組みは「時代遅れ」だとし、拡大が必要だとの見解をあわせて示したのだそうです。

また、トランプ氏は今回の「拡大版G7」をコロナ問題などの協議の場にするだけでなく、「(世界第2位の経済大国である)中国の問題」についても協議する場にしたいという考えを示したのだそうです。

もっとも、英インディペンデントの記事によれば、トランプ氏が当初、6月にG7を開催しようとしていたものの、アンゲラ・メルケル独首相が「コロナウィルスのパンデミック状況が変わらない限りは参加しない」と述べたことを受け、G7を秋に延期する方針を示したというのが実情だ、などと述べています。

また、これらのメディアによれば、2014年のクリミア半島の併合を受けてG8(※当時)から追放されたロシアをあらためてG7に招くことは「議論を呼びそうだ」などと批判的に報じています。

ロシアを加えることの意味

さて、トランプ氏のこの唐突な発言、どう解釈すべきでしょうか。

自然に考えるならば、G7の議長国である以上、議長権限としてG7(日米英独仏伊加)+EU以外の各国を、オブザーバーとして招聘するということはあり得る話です。

実際、日本の伊勢志摩で2015年に開かれたG7会合では、チャド、インドネシア、スリランカ、バングラデシュ、パプアニューギニア、ベトナム、ラオスの各国や国際機関が「オブザーバー」として参加しています。

しかし、あくまでも報道をベースに考えるなら、トランプ氏は具体的に列挙した4ヵ国などを「正式なメンバーとして」迎え入れたいというニュアンスで発言したことは明らかです。しかし、果たして議長国としての単独の決定で、これらの国を新たに迎え入れるということができるものなのかは不明です。

それに、ロシアを含めた4ヵ国を指名したというのも異例です。

そもそもロシアが2014年、クリミア半島とセバストポリ市を、なかば武力によりウクライナから奪い取ったことで国際的に批判され、その年に開催が予定されていた「ソチG8会合」が事実上の中止に追い込まれ、ロシアがG8から追放されたという経緯があるからです。

G7首脳がソチG8不参加を決定、「対ロシア制裁強化の用意」

日米欧7カ国(G7)首脳は24日、オランダのハーグで開催されている核安全保障サミットの合間にウクライナ情勢をめぐり緊急会議を開催し、ウクライナ情勢が一段と不安定化した場合には対ロシア制裁を強化する用意があると表明した。<<…続きを読む>>
―――2014年3月25日 06:23付 ロイターより

(※もっとも、クリミア半島が歴史上、ロシアの領土だったという点、クリミア半島の人口の多くがロシア系住民であるなどの点については、欧米メディアはあまり正当に評価していないようですが…。)

G20との違いは?

また、トランプ氏の唐突な発言は、ほかのG7諸国にとっては意外感を持って受け止められているのではないでしょうか。

なぜなら、「G20会合」というものが、別途存在しているからです。

G20とは、G7参加国と欧州連合(EU)に加え、今回トランプ氏が名前を挙げたロシア、インド、韓国、オーストラリアの4ヵ国、さらには中国、メキシコ、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジル、トルコ、インドネシア、サウジアラビアが含まれます。

G20とは:
  • G7諸国…日米英仏独伊加の7ヵ国+欧州連合(EU)
  • BRICS諸国…ブラジル、ロシアインド、中国、南アフリカ
  • それ以外…サウジアラビア、豪州、トルコ、アルゼンチン、韓国、インドネシア、メキシコ

(※下線で示したものがトランプ氏の発言に含まれた国)

このうちの「それ以外」に挙げた諸国のうち、サウジと豪州を除く5ヵ国については、当ウェブサイトでもこれまで『韓国など「脆弱ファイブ」に金融危機第2波は来るのか』などでも報告したとおり、「なぜG20に入っているのかよくわからない」と個人的に感じる国でもあります。

この点、べつにトランプ氏と個人的な親交があるわけではありませんが、あえてトランプ氏の気持ちに立つのならば、「形骸化著しいG20の影響力をさらに低くする」という点に加え、「中国を包囲する」という意志を明確にするという狙いがあるのかもしれません。

このことは、地図で見ていただければ明らかです。

図表 ロシア、インド、韓国、豪州の地政学的位置づけ

(【出所】『日本科学未来館』ウェブサイトに掲載の地図を著者が加工)

とくに、ロシアとインド、韓国の3ヵ国は、中国を北、南、東から包囲する形となっています。

豪州は米国にとって、「ファイブアイズ」の一員としての緊密な同盟国ですが、それ以外の3ヵ国については、「米国の側に立て」というトランプ氏からの強烈なメッセージと見るべきでしょう。

この3ヵ国で大丈夫か?

もっとも、あくまでも個人的な印象ですが、この4ヵ国のうち、豪州を除く3ヵ国については、すんなりと「拡大版G7」に参加できるとも思えませんし、彼らが素直に米国とともに「対中包囲網」に加わるとも思えないからです。

おそらくG7のメンバー拡大には、G7各国の同意に加え、新たにメンバーに加わる国も同意する必要があります。

とくに、インドは中国と対立している国だ、というイメージもありますし、日本では総額750億ドル規模の日印通貨スワップを締結するなど、新たな協力関係を結ぶべき国として強く意識されていることも事実でしょうが、物事は一筋縄でいくとも限らないからです。

また、自由・民主主義国の一員としてその恩恵を最大限に受けながら、米中二股外交で米国を欺き続けている韓国を下手に「G7拡大版」に参加させてしまうと、私たち西側陣営の情報が中国に筒抜けになってしまうかもしれませんし、中国を激怒させてG7に参加する根性が、韓国にあるとも思えません。

さらに、G8から追放されたロシアに至っては、もともとロシア自体が中国と懇意であるという事情に加え、同国を呼び戻すとなれば、ドイツをはじめとする欧州諸国が強く反発するであろうことは間違いありません。

以上より、今回のトランプ氏の「拡大版G7」案については、どうも実現が怪しいという気がしてなりません。今回、トランプ氏が列挙した国のなかで、すんなりと参加が決まるとしたら豪州、百歩譲ってインドくらいではないでしょうか。

いずれにせよ、これについては事態をもう少し見守りたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (46)

  • 韓国では、「狂喜乱舞」の模様!

    韓国は、強大国として世界に認められたニダー!
    さすが、ムン大統領!! 
    外交の天才ニダー!!
    日本に追いついたニダー!!
    うれしいニダー!
    ムン大統領、マンセー!!マンセー!!

    一方、日本では・・・
    踏み絵を迫られてる事に気付いてない朝鮮人どもwww

    • 匿名希望の平民様

      韓国については、「我がほうへ就け。」というのは、米中共通のスタンスでありますが、米中とも「相手のほうに行かれても困るが、こっちに来られても困る」存在じゃありませんかしら?

      韓国は困惑したポーズですが、米中を手玉にする気、マンマンです。身の丈を知らないというのは、恐ろしいですわね。昔、争う男の間で、魅力的とは言い難い(気を使いました。笑)女が、「お願いだから私の為に争わないで。」とか言っているコメディを思い出しました。

    • そんな余裕あるのか日本にw
      現実を見なさい。
      文書改ざん、議事録なし、閣議決定万能国家w
      安倍という知性のかけらもない人間が何故か
      憲政史上最長の政権を維持できる異常ば状況ですよ。
      彼が日本の民主主義を脆弱なものにしてしまった。
      遠い将来、もし中国が民主化したら、大日本帝国の戦争を
      侵略と認めない異様な政権が君臨する日本が孤立すると思うよ。

  •  ロシアは不参加で旗幟を鮮明にさせ、インドには(米印貿易交渉を絡めて)5G覇権争いでアメリカ陣営に参加するよう迫り、韓国には米中間の綱渡りは不可能だと理解させるために踏み絵を踏ませる、そんなところでしょう。

     習近平のポチ親中派メルケルがどうやってG7会合を妨害してくるのかも見物。

    https://news.yahoo.co.jp/articles/a573856d098f0c8b443b1cd9b5285a2213e3e7e6
    【ソウル聯合ニュース】トランプ米大統領が主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)に韓国とオーストラリア、インド、ロシアを加える意向を示したことは、韓国にとって歓迎すべきことだ。ただ、サミットの新たな枠組みが「反中国戦線」として使われれば、経済面や北朝鮮問題で中国の影響を大きく受ける韓国が難しい立場に陥りかねない。

  • 本文中に書いてありますが,G7+4の意味は「対中包囲網」です。そこに参加するかどうかの踏み絵でしょう。非参加国は中国側とみなしたいか。ただ,トランプ氏は欧州であまり信用されてませんんから,トランプ氏主導でうまくいくかどうか知りません。

  • ドイツがG7から抜けるような感じがしています。
    メルケル欠席の武漢肺炎という口実はうわべだけで、中共包囲には消極的なのではないのでしょうか。このテーマは一時的なものではありませんから。

  • こりゃあコリアとしては辛いわ。
    G11(?)に参加はホルホルでしょうが、宗主国様の折檻も覚悟しなければなりません。
    中たらんと欲すれば米ならず、米たらんと欲すれば中ならず、進退ここに極まったーーーー。知らんがな(笑)。

    露・印・豪は各々はっきりしてるでしょうけどね。

    • 門外漢様 笑ってしまいました。

      >中たらんと欲すれば米ならず、米たらんと欲すれば中ならず、進退ここに極まったーーーー。

      重盛ですか、センスですね。ただ、私が申し上げるのもなんですが、半島国家の苦悩?は、そんなピュアなものではないような…。

      さて、韓国のことは置いておいて、トランプ大統領、心配です。

      彼の行動力については一定の評価はさせていただきますが、その政策は国内、国外とも、他人(他国)事ながら、「大丈夫?」と言いたくなる程、稚拙です。が、彼の持っている運でしょうか、アメリカ国内では、以外と支持層は拡がっているようです。暴動も拡がっていますが…。

      ただ、G7のような国際会議には、おいそれと彼の神通力は及びません。思い付きはともかく、中国包囲網のために、これらの国々をG7に無理やり加えるより、G20から中国を外すほうが易いような気がいたします。

    • 自己レスです。

      ムン君は大喜びでお請けしたそうですね。なんじゃそりゃあ!全然悩んでないじゃん!
      そこまで面の皮が厚いとは思い及びませんでした。不明を恥じお詫び申し上げます

      ホルホルと 鞭と飴とを くらぶれば はずかしながら ホルホルがさき (詠み人知らず)

  • 「どっちに付く」というのを試しているのは間違いないですが、何れの国も米国とは関係が宜しくないのでかなりハードル高そうです。
    呼ぶのだったら台湾(中華民国)を入れて欲しい所ですが、大陸(中華人民共和国)は瞬間湯沸かし器と化すでしょう。

  • 包囲網を妄想してみた。

    南西ではすでにインドとの国境でなんてニュースも出てきており。

    西側はカザフスタンと思ったのですが、ウイグルが今年になって問題をリークしているのおり包囲網の一環として考えているのかも。

    南東はタイやベトナムも入れたいですね。

    北のロシアは敵対すると厄介ですしね。味方というより離間策でしょうか?経済制裁を緩める代わりに中国の見方をしないでくれといったところで、具体的には油を日本やEUで受け入れる感じですかね。

    やっぱり韓国の扱いが一番厄介。敵にしても味方にしても悩ましい存在ですね。

    • G7の形骸化は以前から言われていました。中国に過大な幻想を抱いて来た先進国は今、中国の分断工作に遭って右往左往している状況です。いわば、価値観すら共有しない中国に過大な支援投資をして来たつけが、今の中国と言う妖怪を作り上げてしまったからです。その結果が、国家間の分断どころか支援した側をも分断の憂き目に合う状況に、慌てふためいているのが現実だと思います。日本は中国の狡猾さを昔から知っていればこそ、憲法下の国論統一を急がなければならなかったのに、憲法改正すら出来なかった過去の為政者は何をやっていたのでしょう。併せてメディアはNHKを筆頭に反日メディアとしてほぼ中国の軍門に下っています。これは本当に国難とも言える状況だと思います。そんな日本の事情とは別に、トランプは中国包囲網に邁進するでしょう。その時の日本は正に正念場です。その正念場に大きな大義が有るとしたら、国防・安全保障を前提に、価値観の共有と経済活動は決して分離出来ないと言う一点ではないでしょうか。その大きな大儀を憲法に明記する為に早急に憲法改正をすべきです。危機はコロナばかりじゃありませんから。
      ※余談ですが、韓国はコウモリとなって地下洞窟に隠れるでしょうが、日本は違います。

  • 参加国の状況は、新宿会計士さんの書いて有る通りですね。
    私は韓国が、「日本が居るから(邪魔するから)行けないニダ」と言い出すと思います。
    また今回は、参加しても招待という形になり、正式な加盟とはならないと思います。

    • だんな 様
      間違っても韓国が参加しようなどと言い出した日には、宗主国からの締め付けが厳しくなりそう。
      (金目の工場置いちゃっているから、やるのはイージー)

    • 韓国民は「先進国と証明された!」と大騒ぎしているので、
      政府が不参加の言い訳として「日本の妨害により断念」と言いそうですよね。
      なにしろ、国レベルで「嘘をつく」ことへのハードルが低い(ない?)ので。

  • G7に中国を入れようとしたオバマはバカ。
    Gプラス(つかり今回だけのオブザーバー)3にロシアと韓国を呼ぶトランプは賢い。

  • ロシアは、不可侵条約を結んでいても、相手が弱ったと見れば火事場泥棒のように攻め込んでくる国で、信用できません。EUもロシアには反対するでしょう。味方につけるには、先に中国を弱体化するしかありません。
    インドには、是非加わって欲しいですね。
    あのややこしい国は、インドが加われば参加できないでしょう。LGのガス漏れの件で責任回避しようと必死ですから。それに、秋まで参加資格があるかどうか。今回も踏み絵を踏まなければ「ひねり捨て〜るだけで わすれさられるくに♪」になるのではないでしょうか?

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