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「30万円給付」報道:経済対策と所得補償の違いとは

本日、東京都が独自に休業補償を打ち出したという報道とともに、安倍晋三総理大臣が自民党の岸田文雄政調会長に対し、「収入が一定程度減少した世帯に対する30万円の給付」とうい構想を示した、という報道が出ています。これについては、正直、条件付きの現金給付については、さまざまな意味で問題があると言わざるを得ません。

条件付きの現金給付をどう考えるべきか

日経電子版は先ほど、安倍晋三総理大臣は3日、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた経済対策で、「収入が一定程度減少した世帯」に対し、「1世帯あたり30万円を給付する」という意向を示した、と報じました。

1世帯あたり現金30万円給付へ 首相、政調会長に伝達(2020/4/3 15:10付 日本経済新聞電子版より)

もっとも、記事によれば、岸田文雄政調会長が安倍総理との会見後に記者会見に応じ、安倍総理に対して「1世帯30万円を支給すべきだと申し上げ、(安倍総理と)認識が一致し、了解をいただいた」と述べた、とも記載されています。

このことから、「所得が減少した世帯に対する30万円給付」構想は、岸田氏の側が言い出し、安倍総理がそれを承認した、とも読めます。いずれにせよ、給付金政策はやらないよりもやる方が良いに違いありませんが、「所得が減少した世帯」をどう判断するのでしょうか。

この点、日経新聞は、支給対象について、日本全体の約5300万世帯のうち、「約1000万世帯が対象になると想定している」と報じているのですが、「想定している」のは一体だれなのか、主語も情報源も明示されていません。

もちろん、収入が減ってしまった人たちへの生活保障という視点で現金給付を打ち出すのであれば、これはこれで、確かに一定の効果があることは事実でしょう。しかし、「収入減」を、いかなる基準に基づき、誰がどう認定するかという問題点が残りますし、結果的に現金給付までに時間が掛かってしまうでしょう。

仮に「政府の現金給付は所得減世帯への30万円ですべて」なのだとしたら、不十分かつ稚拙と言わざるを得ません(※もっとも、現段階で「この対策がすべて」と決めつけるのは尚早ですが…)。

小池さんもたまには良いことをする?

その一方で、日経新聞には今朝、こんな記事も掲載されていました。

東京都、営業縮小のバー・クラブなどに支援金給付(2020/4/3 3:30付 日本経済新聞電子版より)

日経によると、東京都は2日、感染拡大を受けて時短営業や休業している店舗に対し、独自に支援する制度を創設する「方針を固めた」そうです(※といっても、いつもどおり、この「方針を固めた」という記述に情報源などは明示されていませんが…)。

つまり、バーやクラブなどで集団感染が発生している疑いが強まっていることを受け、営業自粛に協力する店舗を経営面から支え、感染防止策の実効性を高める狙いもある、ということです。

この報道が事実なのだとすれば、東京都が打ち出したとされるこの政策については、非常に高く評価して良いでしょう。その最大の理由は、「一定の業種であること」、「休業していること」など、支給する基準がわかりやすいことですが、それだけではありません。

中小の事業者は営業を自粛すれば現金収入が得られなくなりますし、そうなれば運転資金が回らなくなり、最悪、倒産や廃業に至るケースもあるからです。倒産してしまえば元も子もありませんので、結局のところ、中小事業者としては営業を続けざるを得ないのです。

こうしたなか、ある程度の現金収入の目処が立っていれば、安心して営業自粛に踏み切ることができますし、そのことが結果的に感染拡大の抑止にも役立つでしょう。

この点、ツイッターなどでは「バーやクラブなどのいかがわしい商売を支援するのはいかがなものか」といった批判的意見を寄せる人もいるのですが、個人的には、職業に貴賤を設けるという見解には賛同することはできませんし、「感染拡大防止」「所得補償」という面で政策に合理性が認められるからです。

当ウェブサイトでは普段から小池百合子東京都知事に対して批判的な姿勢を取ることが多いのですが、この政策については素直に評価して良いと思います(※日経の報道が事実なら、という前提条件が付きますが…)。

所得保障と経済対策

さて、非常に当たり前の話ですが、コロナショックの影響で、日本が事実上の「鎖国状態」になったことで、インバウンド観光需要が壊滅的な打撃を受けるとともに、国内的にも外出自粛ムードが広がるなか、飲食、旅館、運送業などに、経営上の甚大な打撃が生じていることは間違いありません。

このため、「生活補償」という意味で、まずは甚大な影響が生じている業種に絞って「粗利益補償」「所得補償」などの対策を講じ、その後、「経済対策」という意味で、順次、その対象を拡大する、という政策が考えられます。

しかし、そもそも論として「経済対策」「景気対策」という狙いがあるのであれば、そこに所得制限などを設けること自体、適切ではありませんし、国としてできること、たとえば一時的な資金繰り支援として社会保険料の徴収停止、中韓納税の猶予・停止などの措置を講じるべきでしょう。

そのうえで、多少時間を掛け、消費税の減税や消費税法の適用停止などの対策を打ち出すのが正しいのではないでしょうか。

つまり、その対策が「所得補償」なのであれば、対象範囲を絞るというのもある程度は合理性があるのですが、「経済対策」で行うのであれば、基本的に制限を設けるべきではありません(というよりも、ごちゃごちゃ制限を設けていると、給付までの時間が掛かりすぎてしまいます)。

たとえば、

  • まずは制限なしに、1人あたり一定額(たとえば100万円)の現金給付を行う。
  • 次に、コロナショックで所得が減ってしまった人たちへの救済措置(追加給付や所得税の減税など)を行う。
  • 並行して社会保険料や法人税・地方法人税・消費税の中間納付や徴収を停止する。
  • 消費税法の適用を停止する立法を講じる。

といった具合に、緊急度に応じて段階的に対策を講じる、といった流れを期待したいところです。

いや、もう少し正確にいえば、とりあえず1人あたり100万円を給付し、その100万円については「コロナショックで所得減に見舞われた人たち」については非課税、それ以外の人たちに対しては一時所得として所得税を課す、という形にすれば良いのではないでしょうか。

とりあえず100万円を支給しておいて、非課税要件については来年の確定申告の時期に間に合うように租税特別措置法改正案をゆっくり審議すれば良いと思う次第ですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (61)

  • なんか良い方法では無い気がしますね。
    1人10万一律の方が、良い気がします。

  • マスク2枚までは「メッセージの伝え方が下手だなあ。いずれにせよ送料とか余計な経費かかるからいらんけど」程度の感想でしたが、条件付け30万給付には心底がっかりしました。
    これまで、安倍政権の経済政策は0点だけど野党は経済もそれ以外もマイナスぶっちぎってるので仕方なしに自民党に投票してきましたが、個人的にはもう投票したくないですね。
    とはいえ、旧民主党や共産は論外なので、維新かネタ枠のN国くらいか残りませんが。
    維新も経済は0点で国家観もダメダメですが・・・。
    うーん、ワンイシューで潔いN国に投票するか(汗)

  • 新宿会計士様

    中韓納税の猶予は中間納税ととらえて宜しいのでしょうか。

    こんなときだからこそ個人的には消費税廃止を希望してます。

  • マスク2枚に続いてこれも擁護不能ですね。

    住民税非課税世帯という事は生活保護受給してる人間にはもれなく30万円プレゼントですか。
    流石に納得できないものがあります。

    「収入が一定程度減少した世帯」に関しては論外でしょう。
    役所に人が殺到するでしょうし審査にどれだけ時間が掛かるか解ったもんじゃありません。
    最悪、役所に詰めかけた人間からコロナの感染クラスターが形成されるかも…。

    • 生活保護世帯は収入が減っていないので対象外だと思いますが。

      とりあえず全世帯に給付して、年末調整で割引き、に賛成します。
      収入の減ってない世帯は全額回収でも良いので。自治体に申請なんて方式にしたら、役場がクラスター発生源になりますよ。

      • https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200403-00000542-san-pol

        産経新聞の記事には「住民税非課税世帯」及び「所得が50%減った世帯」という2条件が書かれています。
        生活保護受給世帯は問答無用で非課税なので間違いなく確実に貰えるでしょう。

        ・・・ひょっとしたら産経新聞の記事内容が間違ってるのかも?

        • 産経の記事の条件は間違っている可能性が高いのでは?
          さすがに生活保護受給世帯は対象外でしょう。

          朝日の報道では、
          ▽対象世帯の線引きでは、2月以降、月収が前年同月より減り、住民税非課税世帯の水準まで年収換算で落ち込むと見込まれる世帯などの案が検討されている。もともと所得水準が高かった世帯は、所得の半減といった減収幅を大きくする案もある。給付金は非課税にし、新型コロナの影響でも受給額が変わっていない生活保護受給者は対象外にする方向だ。

          となってますね。この内容を産経が読み間違えたのかな?

          https://www.google.co.jp/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASN4352XBN43UTFK011.html

    • マスク2枚についての批判は、朝日新聞的なものと同じですね。
      マスクが手に入らない現実と社会契約論的な理解ができませんかね。

    • マスク2枚の件で批判してるのは想像力が無い証拠なので政治批判とかやめた方が良い

  • 個人への無利子貸与にすれば良いのではないかと思いました。

    とりあえず生活がひっ迫していると主張する人には前年の確定申告書を提出させ、想定される2カ月分の収入相当金額を貸し出す。そして来年の確定申告時に収入が減少したことが確定した人に対しては、一定額の税金控除あるいは借金返済を免除とすれば、細かな基準云々を考える必要もないような。確定申告で収入を胡麻化して納税していない人もこれで弾かれます。それに実際には収入が減少しなかった人は、そのまま借金を返せばよいだけです。

  • 国民1人につき100万円でざっくり130兆円、コロナ国債でやってしまいますか!

  • 「所得が減少した世帯に対する30万円給付」
    「約1000万世帯が対象になると想定している」

    これだけだとしたら、
    短期的に自殺者が減少するだけで、経済はよくならず
    結果的に何も変わらない、もっと悪くなるだけ

    会計士様の提案を少し変えてみた

    順序として
    ①所得が減ってしまった人たちへの救済措置(所得税の減税など)を行う
    ②営業を自粛した飲食、エンタメ業への所得補償
    ③リストラをしなかった企業への法人税減税
    ④制限なしに1人あたり一定額の現金給付を行う
    ⑤消費税法の適用を停止する立法を講じる

    ①、②は所得補償で、生きるか死ぬかの目先の補償
    ③は雇用を守り、企業への救済、今年度末
    ④、⑤はセットで、本格的な景気対策で10月以降の下期スタート目途

    総額でいくらになるのか、財源はどうするのか
    ご批判は甘んじて受け流します

  • 所得制限付きの給付に対しての疑問。

    世帯に対しての支給であれば、独居世帯の方が割が良く、大家族には厳しいです。

    所得の減少額が支給基準だと、感染リスクの最前線での従事を余儀なくされるであろう、医療関係者、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニ、物流等に従事する者たちに対する救いがありません。

    ひとまずは、所得制限など設けずに、世帯基本額10万円かつ一人当たり10万円とかの単純な支給方法が解りやすく不公平感なく迅速に対処できるのではないかと思うんですけどね。

  • 景気対策ではなく弱者救済と取れば一見悪くない方法に・・・うん、やっぱ良くないですね。
    役所の窓口には給料明細を手にした人々が(そんな物は持ってない人々も)詰めかけて新たな感染源になる事間違いなしですし(オンライン申請でも出来れば良いのですが対象となりそうな人の内どれくらいが申請できるか・・)
    後々生保ビジネス同様に何割が893に吸い上げられてたという事になると思います。
    元々今回の給付金騒動には一切期待してませんでしたので何も言いませんでしたが(マスク配布は割と肯定)、これは悪手を打ったなぁ、と言うのが正直な感想です。
    それでも糊口をしのげる方は一定数はいるんでしょうが。
    個人向けは(現時点では)コレが限界としても企業向けに多くの支援策を打ってる事を官邸HPだけでなくあらゆる媒介を通じてアピールすべきと思いますが・・・

  • スピード最優先て観点で、

    1 所得制限等無しでマイナンバ保有者に一定額現金給付

    2 一定期間、全ての税金徴収停止又は税金免除

    3 一定期間、電気及び水道料金の徴収停止又は免除

    かな~。。。

    新宿会計士さまとほぼ同じいけんです。

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