ここ数日、当ウェブサイトで精力的に追いかけているテーマのひとつが日韓通貨スワップです。3月19日に米韓為替スワップを復活してもらったにも関わらず、韓国側ではいまだに「日韓通貨スワップ待望論」が根強いのですが(『韓国、米韓為替スワップに続き日韓通貨スワップに期待』等参照)、これについて麻生太郎総理は昨日、参院・財政金融委員会で日本維新の会の音喜多議員の質問に対し、日韓通貨スワップが失効する前に韓国側が「『そっちが借りてくれと言えば借りてやらないこともない』とぬかした」と述べた、と明らかにしました。こんな無礼な態度を取られれば、交渉の席を立つのも、当然でしょう。
2020/04/01 08:49付 追記
記事のURLがおかしかったので、修正しております。
目次
麻生総理の答弁
3月31日に参議院・財政金融委員会で、「日本維新の会」所属の音喜多駿議員が日韓通貨スワップについて質問を行い、これに対する麻生太郎総理(※副総理・財相ですが、本稿では「麻生総理」と呼称します)の答弁が、なかなかおもしろいです。
(※動画の視聴方法は、参議院のウェブサイト『インターネット審議中継』にアクセスして『2020年3月31日・財政金融委員会』を選び、さらにポップアップが表示されたら「音喜多駿(日本維新の会)」を選択していただくのが早いと思います。)
麻生総理の発言については少し長いのですが、独特の歯切れの良さもあるので、そのまま紹介したいと思います。
なが~い話ですので…、え~(場内に笑いが起こる)。
そうですねぇ、外務大臣の頃からですから、もう十数年、何百億ドルもありましたかね、通貨スワップは。だんだん減ってきて、随分減って来たんだと思っておりましたが、民主党政権の時代にさらにガタっと減っていますわな。そして、安倍内閣が再スタートしたときに、確か音喜多先生、150ぐらい残っていたと思うんですね。日銀で50、財務省で100ぐらい残っていたと記憶しておりますけれども。
ま、日銀の50がなくなって、最後の財務省の100になったときに、向こうの財務大臣に「大丈夫か」と、「カネ廻んなくなるだろうが」って言ったら、「いや、大丈夫だ」。「あぁそう?」とほっといたら困ったような顔になって来たんですけど、もう1回だけ「大丈夫か」と言ったら、「そっちが借りてくれと言えば借りてやらないこともない」とぬかしたもんですから、「ふざけるな」と思ってそのまま席立って「はいさようなら」。それが最後。
それから今日まで、韓国の場合はウォンと元のスワップをしておられると思いますが、元とウォンとの間のスワップはもう1回やってからドルに替わりますんで、コストは上がるということで、ずいぶんと割を食っておられるんだと思いますが、その後再開というお話がありましたんで、あの、「元はといえばそっちが断ってきた話だろうが。こっちが言ったのにそっちが断ってきた話なのに、なにをいまさら頼みに来るんだよ。ちゃんとそれ、然るべき仁義は踏んでもらおう」という話ですよね。日本的に言えば。
ちゃんとやってもらおうと言ったらいきなり例の銅像ができちゃうって話ですよね。全然話になりません。いまのところ向こうが言っておられるという話は噂には聞いておりますけれども、私ども財務省としてこの話を直接聞いたことはありません。
日韓通貨スワップ史
事実関係を確認する
麻生総理の発言は、いつ聞いても興味深いですね。
とくに日韓通貨スワップに関する6年前の発言については先日の『【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録』でも紹介したところですが、今回の発言は、さらに踏み込んでなされていることがわかります。
もっとも、この「麻生発言」には多少の事実誤認もあるので、まずは「日韓通貨スワップ史」を時系列で振り返っておきましょう(図表1。なお、CMIとは「チェンマイ・イニシアティブ」のことを意味します。また、「内訳」欄で円建てとドル建ての内訳を示しています)。
図表1 日韓通貨スワップの上限の変遷
時点 | 上限額 | 内訳 |
---|---|---|
2001/07/04:CMIに基づきドル建ての日韓通貨スワップ開始 | 20億ドル | 20億ドルの全額がドル建て |
2005/05/27:円建て通貨スワップ開始 | 50億ドル | (円)30億+(ドル)20億 |
2006/02/24:CMIスワップの増額 | 130億ドル | (円)30億+(ドル)100億 |
2008/12/12:リーマン・ショック後のスワップ増額 | 300億ドル | (円)200億+(ドル)100億 |
2010/04/30:リーマン増額措置終了 | 130億ドル | (円)30億+(ドル)100億 |
2011/10/19:「野田佳彦スワップ」開始 | 700億ドル | (円)300億+(ドル)400億 |
2012/10/31:「野田佳彦スワップ」終了 | 130億ドル | (円)30億+(ドル)100億 |
2013/07/03:円建て通貨スワップ終了 | 100億ドル | 円建てスワップが失効したので、ドル建てのみが残る |
2015/02/16:CMIスワップが失効 | 0億ドル | ドル建てスワップについても失効 |
(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等を参考に著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)
ただし、この図表1については、やや不正確な部分があるかもしれません。日本銀行や財務省が過去の資料を削除しているほか、アーカイブのURLも各所に散乱しているためです(※もっとも、20年も経過すれば、一般に資料収集は困難になりますが…)。
スワップが開設されて失効するまで
さて、図表1をベースに、日韓通貨スワップを振り返っておくと、最も古いものがCMIに基づき締結された20億ドルの通貨スワップで、これは「一方向」、つまり、日本が一方的に韓国を救済・支援するためのスワップでした。
このCMIスワップは2006年に100億ドルに増額され、欧州債務危機の影響で2011年10月には当時の野田佳彦首相のイニシアティブにより400億ドルにまで増額されたものの、当時の李明博(り・めいはく)大統領らの不法行為の影響で、1年後には100億ドルに縮減。
2015年2月には失効してしまいました。
また、2005年に新設されたのが円建てスワップ(30億ドル相当)で、2008年のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発する金融危機時に200億ドルに、2011年の「野田スワップ」では300億ドルに、それぞれ一時増額されたものの、結局は2013年7月に失効しています。
たしかに「なが~い話」ですね(笑)
なお、細かい話ですが、麻生総理が冒頭で「安倍内閣が再スタートしたときに、たしか150(億ドル)くらい残っていた」と述べた部分については、正しくは「(第二次安倍政権が発足した2012年12月の時点で)130億ドル残っていた」、です(つまり「150」ではなく「130」です)。
このうち、「日銀の50」が「日銀が韓国銀行と締結した30億ドル相当の円建てのスワップ」であり、「財務省の100」が「日銀が財務省の代理人として韓国銀行と締結した100億ドル相当のドル建てスワップ」のことでしょう。そのうえで、麻生総理が述べた
「『日本が借りてくれと言えば韓国としては借りてやらないこともない』と(韓国側が)ぬかした」
というのは、CMIスワップを巡って、「日銀の50がなくなって、最後の財務省の100になったとき」、つまり、円建てスワップが消滅した2013年7月頃からCMIスワップが消滅する2015年2月頃までの期間に(おそらく水面下で)行われた日韓交渉の際の韓国側の発言ではないでしょうか。
こんな無礼なことを言い放つ相手に対し、日本側が交渉の席を立つのは至極当然のことであり、韓国に対して同情の余地はありません。
日本側にも増長させた責任がある
ただし、この「借りてくれと言えば借りてやらないこともない」などと韓国側が増長した責任の一端は、日本政府側にもあります。これについて参考になるのが、2011年に総額700億ドルに拡充するという「野田スワップ」に関する報道発表です。
少し長いのですが、国立国会図書館のウェブサイトにアーカイブされている、当時の財務省の報道発表を、そのまま紹介しておきましょう。
日韓通貨スワップの総額700億ドルへの拡充について
- 今般、欧州情勢等グローバル経済が不安定な中、日韓両国は、金融市場の安定のため、現行の日韓通貨スワップ拡充が必要であると認識した。
- 金融市場の安定は、日韓両国経済の安定的成長に大変重要であり、今般の日韓首脳会談での合意を踏まえ、財務省(外為特会)と韓国銀行間で、金融市場の安定を目的とした日本銀行と韓国銀行の間の円ウォン通貨スワップを補完し、金融市場の安定化を目的とする期間1年のドル・自国通貨の通貨スワップ(限度額300億ドル)を新たに締結することとした。
- また、本日、日本銀行と韓国銀行の間で円ウォン通貨スワップの増額(限度額30億ドル相当から300億ドル相当、2012年10月末まで)が決定された。
- 以上の拡充と、現行のチェンマイ・イニシアティブの下での財務省(外為特会)と韓国銀行間の通貨スワップ100億ドルとを併せ、日韓間で、現行の総額130億ドルから、総額700億ドルの通貨スワップの締結となる。
- 今回の日韓通貨スワップ拡充は、日韓における金融協力の強化の観点から行うものであり、これにより、金融市場の安定が図られ、もって日韓両国経済が共に安定的に成長していくことが期待される。
- 【問い合わせ先】
- 国際局為替市場課 清水 西畠(電話:03-3581-4111(内線2892、5989))
- 国際局地域協力課 藤井 北村(電話:03-3581-4111(内線2917、5669))
―――2011/10/19付 財務省報道発表(※国立国会図書館アーカイブ)より
…。
いかがでしょうか。
日韓通貨スワップは日本から韓国に対するほぼ一方的な支援であり、金融協力なのですが、残念ながら、このリンク先記事を何度読み返しても、「通貨スワップは日本が韓国を救済するという性格のものである」という説明は見当たりません。
先ほどの麻生発言にも出てきた「借りてくれと言われれば借りてやる」発言も、韓国側で「韓日スワップは韓日お互いのために必要なものだ」、という誤った認識が一般化している証拠であり、また、そうした認識を植え付けた責任は、日本政府(とくに財務省と民主党政権)にもあると言えるのです。
韓国の懐事情
なぜ韓国はさっそく為替スワップを引き出したのか?
ところで、昨日の『【速報】韓国がさっそく為替スワップの流動性枠を使用』でも速報しましたが、韓国は米FRBと締結した為替スワップに基づく流動性供給ファシリティに、さっそく手を付けました。FRBからの借入額は120億ドル(うち7日物が20億ドル、84日物が100億ドル)です。
ここに違和感を抱いた人は、なかなか鋭いと思います。
なぜなら、韓国銀行が毎月発表する外貨準備高は、最近、恒常的に4000億ドルを超えているはずだからです(『外貨準備高に関する韓国銀行の説明は正しいのか?』等参照)。
また、国際通貨基金(IMF)の推計値によれば、全世界の外貨準備の約6割は米ドル建てであるため、単純計算で、米ドル建ての資産(現金や有価証券など)は、この4000億ドルのうち2400億ドルを占めているはずです。
もっとも、「超えている『はずだ』」と述べる理由は、さまざまな推計の結果、どうも韓国が保有していると自称している金額と、米国財務省の対内証券投資に関する統計(TICレポート)との間に、大きな不整合が生じているからです。
もし韓国銀行に、本当に外貨準備高が4000億ドル(うち米ドルが2400億ドル)以上もあるのならば、こんな米韓為替スワップなどを使わずとも、韓国銀行が外貨準備から自国の金融機関に対してカネを貸してやればよいのに、と思いませんか?
喉から手が出るほど欲しいのはドル建ての通貨スワップ
これについては確たるデータが存在しないため、あまり迂闊なことはいえないのですが、それでも韓国銀行が米FRBとの為替スワップに基づき、韓国国内の金融機関に対し、120億ドルという流動性供給ファシリティを提供したというのは、厳然たる「事実」でしょう。
そして、麻生発言でも「韓国は中国との人民元建てスワップを保有しているが、これだと人民元から米ドルに両替する際にコストが必要だ」、といった趣旨の指摘が出て来るのですが、もう1つ抑えておきたい事実は、韓国は米ドル建ての二国間通貨スワップを、ただの1本も保有していないという点です(図表2)。
図表2 韓国が保有するスワップ(※自称も含む)
相手国と失効日 | 金額とドル換算額 | 韓国ウォンとドル換算額 |
---|---|---|
中国(2020/10/13?) | 3600億元 ≒ 507.8億ドル | 64兆ウォン≒525.0億ドル |
スイス(2021/2/20) | 100億フラン ≒ 103.7億ドル | 11.2兆ウォン≒91.9億ドル |
UAE(2022/4/13) | 200億ディルハム ≒ 54.4億ドル | 6.1兆ウォン≒50.0億ドル |
マレーシア(2023/2/2) | 150億リンギット ≒ 34.7億ドル | 5兆ウォン≒41.0億ドル |
オーストラリア(2023/2/22) | 120億豪ドル ≒ 73.1億ドル | 9.6兆ウォン≒78.8億ドル |
インドネシア(2023/3/5) | 115兆ルピア ≒ 70.5億ドル | 10.7兆ウォン≒87.8億ドル |
二国間通貨スワップ 小計 | 844.3億ドル | 106.6兆ウォン≒874.5億ドル |
多国間通貨スワップ(CMIM) | 384.0億ドル | ― |
通貨スワップ 合計 | 1,228.3億ドル | ― |
カナダ(期間無期限)※ | 金額無制限 | ― |
米国(2020/09/19)※ | 600億ドル | ― |
(【出所】各国中央銀行の報道発表等を参考に著者作成。為替換算は日本時間2020年3月31日夜10時ごろのWSJのマーケット欄を参照。なお、カナダ、米国とのスワップは通貨スワップではなく為替スワップ)
米韓為替スワップ以外の米ドル建てのスワップとしては、「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)」と呼ばれる多国間通貨スワップ協定があるのですが、引き出すとCMIM参加国すべてに負担が掛かるほか、30%を超えて引き出すとIMF介入条項が働く、という問題点があります。
結局、米ドル建ての通貨スワップを締結してくれる相手としては、
- 米ドルそのものを発行する権限を保有している米FRB
- 米ドルを発行する権限はないものの、豊富な外貨準備を保有する日本の財務省
- 米ドル紙幣を印刷する機械を持っていると噂される北朝鮮
のいずれかしかないのでしょう。
日韓通貨スワップが欲しいなら…
さて、冒頭に紹介した麻生総理の発言には、
「元はといえばそっちが断ってきた話だろうが。こっちが言ったのにそっちが断ってきた話なのに、なにをいまさら頼みに来るんだよ。ちゃんとそれ、然るべき仁義は踏んでもらおう」
というくだりが出てきました。
これは、2016年8月27日の『日韓財相対話』では、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権当時の柳一鎬(りゅう・いちこう)副首相兼企画財政部長官が安倍政権下の副総理兼財相である麻生総理に対し、日韓通貨スワップの再開協議を要請しことを指しているものと思われます。
「韓国政府は、二国間の経済協力を強化すること、及び、その証として双方同額の新しい通貨スワップ取極を締結することを提案した。本通貨スワップ取極は、地域金融市場の安定を高めるものである。両国政府は、本通貨スワップ取極の詳細について議論を開始することに合意した。」
そして、この報道発表以降、韓国メディアからは、「新しい韓日通貨スワップの規模は500億ドルになるだろう」、といった出所不詳の報道が相次ぐようになりました(『日韓スワップ「500億ドル」の怪』等参照)。あくまでも個人的な見解ですが、おそらくこの500億ドルには、
- 2008年のリーマン・ショック時に韓国が実際に調達できなくなった短期資金がだいたい500億ドルだった(『「日韓スワップ500億ドル」の本当の意味とは?』参照)
- 中国が締結してくれた(と韓国が勝手に自称している)中韓通貨スワップの規模が、ドル換算すると500億ドルを少し超える規模であり、中国との対抗上、日本も韓国と500億ドル規模の通貨スワップを締結するに違いないという観測が、韓国政府内で一方的に強まっていた
という、2つの意味があるのだと思います。
しかし、これについては麻生総理が
「ちゃんとやってもらおうと言ったらいきなり例の銅像ができちゃうって話ですよね。全然話になりません。」
と述べているとおり、2016年12月末、釜山の日本総領事館前の公道上に「例の慰安婦像」が設置され、韓国政府は日本政府の要請を無視し、撤去しませんでした(しかもこれは、文在寅(ぶん・ざいいん)政権下ではなく、「保守派」を騙る朴槿恵(ぼく・きんけい)政権当時の話です)。
もちろん、当時、朴槿恵大統領自身が職務権限を停止されていたため、大統領自身が政治責任で事態を収拾することは難しかったという事情もあるのでしょう(もっとも、もし職務権限停止状態でなかったとしても、朴槿恵氏に事態収拾ができたと思えませんが…)。
再開条件は満たされず
さて、日本政府が2017年1月に日韓通貨スワップ再開交渉を打ち切った最大の理由は、領事館前に日本を侮辱するヘンテコリンな銅像が設置されたからですが、では、領事館前の銅像が撤去されたら日韓通貨スワップ再開、となるのでしょうか。
文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の韓国では、2018年秋口以降に限定しても、さまざまな不法行為を日本に対して働いていますね。
文在寅政権下の韓国が日本に対して働いた不法行為の例
- ①旭日旗騒動(2018年9月頃~)
- ②自称元徴用工判決問題(2018年10月30日、11月29日)
- ③レーダー照射事件(2018年12月20日)
- ④天皇陛下侮辱事件(昨年2月頃)
- ⑤日本による韓国向けの輸出管理適正化措置(昨年7月1日発表)
- ⑥慰安婦財団解散問題(昨年7月頃)
- ⑦日韓請求権協定無視(昨年7月19日)
- ⑧日韓GSOMIA破棄通告(昨年8月22日)
- ⑨対日WTO提訴(昨年9月11日)
- ⑩日本人に対するビザ免除措置の停止(今年3月9日以降)
このうち⑧や⑨については、昨年11月の時点で韓国側が事実上の撤回に追い込まれたものの、依然として韓国側ではくすぶっている状況です(どうでも良いですが、「日本が輸出『規制』を撤回しなければ、韓日GSOMIAは3月末で破棄する」、などと言っていたのは、どうなったのでしょうか?)
問題をとっ散らかすだけ散らかして、まったく片づける能力がない国とは、下手に関わるべきではないことだけは間違いないといえますし、これらの問題を韓国が片付けない状態で、日本政府が日韓通貨スワップを再開しようとしたら、政権が揺らぎかねないでしょう。
その一方で、『気がつけば韓国に対する「意図せざる経済制裁」の数々』でも触れたとおり、日本が日韓通貨スワップを再開しないと宣言すること自体、タイミングを選べば、結果として韓国に対する経済制裁を発動したのと同じような経済効果をもたらすかもしれませんね。
もちろん、隣国である韓国との国交断絶は非現実的ですが、皮肉なことに、今般のコロナショックのおかげで、「ヒト、モノ、カネ」の流れが滞り始めています。
こうしたなか、ひと昔前だと、日本政府や与党内から、「こんなときだからこそ、日韓金融協力を推進すべきだ」、といった意見が出て来ていたものですが、今のところは(表面上は)そのような話はいっさいありません(『駐韓公使、「韓国から日韓スワップ要請なし」と明かす』等参照)。
もっとも、これが収束したあかつきに、日韓間でヒト、モノ、カネの流れが「コロナ以前」に戻るのか、戻らないのかについては、もう少し見極めが必要ですが…。
鈴置論考を読みましょう!
さて、その韓国ではまた、何やら不穏な空気が流れているようですが、これについて日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が、最新論考を公表されています。
コロナ対策で「文在寅」の人気急上昇 選挙を控え「韓国すごいぞ!」と国民を“洗脳”
世界中の国が新型ウイルスと闘う中、韓国では国民が2つに分かれ争う。韓国観察者の鈴置高史氏が「肺炎と政争」を読み解く。
―――2020年3月31日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
本稿ではこの論考のうち、関連する論点について取り上げようとおも思ったのですが、少し長くなり過ぎますので、別稿にて改めてじっくりと紹介させていただきたいと考えています。
リンク先記事は、タイトルに「洗脳」というやや過激な文言が踊っていて、しかも長文ですが、文章としては非常に読みやすて説得力もあります。是非、ご一読ください。