「政府内では現在、コロナショックに対応するために、リーマン・ショック時の1.2万円を上回る定額給付金を配ることを検討している」――。こんな報道がありましたが、正直、「遅すぎるしショボ過ぎる」という感想しか出ません。どうせやるなら「1.2万円以上」じゃなくて、「120万円以上」と景気よく行きたいものではないでしょうか。
Too Late Too Little
「遅すぎるしショボすぎる」――。
コロナ騒動でサプライチェーンが寸断され、観光産業が壊滅的な打撃を受け、そして自粛ムードのために各地でコンサートが中止され、商業施設が休止に追い込まれるなど、経済は苦境に陥ることが現段階でほぼ確定している状況だと言ってよいでしょう。
こうしたなか、日銀は先日、ETFの買い入れ額の倍増などを打ち上げましたが、経済対策としてはまったくもって不十分です。ここは金融政策だけでなく、抜本的な財政政策が必要な局面ですが、一部のメディアは本日までに、政府が1人あたり1.2万円以上の現金給付を検討している、などと報じたようです。
政府・与党、コロナ対策で現金給付1万2000円以上を検討-報道(2020年3月18日 12:24 JST付 Bloombergより)
Bloombergによると、2008年のリーマン・ショック後に1人あたり1.2万円の給付措置が実施されたことを踏まえ、政府高官は「リーマン・ショックの水準を超える規模(の給付)が必要だ」と述べたのだそうです。
また、「給付対象については子育て世帯や所得の低い人に限ることも検討」、「与党幹部からは商品券の配布で消費につなげる案も浮上」、などとしています。
正直、 “Too Late Too Little” という表現をお贈りしたい気持ちでいっぱいです。
消費税の税率引き下げが手っ取り早い
これについては当ウェブサイトではすでに『総理、「リーマン級のショック」は生じていますよ!』などでも報告したとおり、正直、消費税という欠陥税制の無力化が一番早いと思っています。
昨年10月に消費税と地方消費税の税率が引き上げられた理由は、「日本は財政難にある」、「抜本的な社会保障改革が必要だ」、といった、官僚的にはもっともらしい(しかし経済理論としては完全に破綻している)屁理屈に基づくものです。
その代表的なロジックは、だいたい次のようなものです。
- ①日本は国の借金が1000兆円とGDPの2倍に達している
- ②したがって、このままだと財政破綻は不可避だ
- ③だからこそ日本は財政再建が必要だ
- ④財政再建のためにはプライマリバランスの黒字化(増税と歳出減)が必要だ
しかし、このロジック、①からして認識が間違っています。「1000兆円を超えている」のは「国の借金」ではなく、「中央政府の金融負債」です。よくマスメディアが「国民1人あたり800万円の借金」などと報じますが、返済義務があるのは中央政府であって日本国民ではありません。
また、①→②、②→③、③→④、という構造は、すべて理論的につながるものではなく、途中の理論にもかなりの無理が含まれています(『日銀への失望は当然 必要なのは金融政策より財政政策』等参照)。
では、なぜ消費税の税率引き下げは実現できないのでしょうか。
その理由は簡単で、もし消費税の税率を引き下げ、日本経済が復活を遂げてしまうと、過去3回の消費税率の引き上げが間違いだったということが実証されてしまうからです。
だからこそ、財務省としては「日本経済をぶっ壊す」ことを優先してでも、せっかく実現した消費税の税率引き上げをもとに戻されたくないため、全力で減税には反対しているのではないでしょうか。
「1.2万円以上」ではなく…
ただ、もし財務省がどうしても消費税の税率を引き下げたくないと言い張るのならば、定額給付金として、「1人あたり1.2万円以上」ではなく、少なくとも「1人あたり12万円以上」、いや、「1人あたり120万円以上」を検討するくらいのことをやってもらいたいものです。
消費税の減税よりも、1人あたり一律120万円の定額給付金(※非課税)が振り込まれるならば、それはそれで経済対策としては面白いと思います(財源の144兆円は国債発行でもしますか)。
おりしもわが国は現在、国債市場では債券不足が深刻化している状況ですので、少なくとも300兆円ほど国債の追加発行が必要だと思うのですが、「1人あたり120万円」を実施すれば、必要な国債発行額が半額に達します。
残り150兆円で教育なり、子育て支援なり、スーパー堤防なり、地方衛生研究所の法的予算手当なりをすればよいのではないでしょうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
というのはさておき、あくまでも個人的な感想ですが、今回のコロナショックで示されたのは、財務省という組織が財政出動を阻んでいること自体が日本の最大の問題点だ、ということではないかと思う次第です。
コロナ騒動が落ち着いたくらいのところで、財務省改革とうい議論を本格化させる必要があるはずなのですが、特定野党の「コロナより桜」という体たらくを見ていると、現在の国会がこうした前向きな議論をするだけの意思も能力もないように見えてしまうのが、残念でなりません。
また、コロナ騒動でもデマをばら撒く某メディア(『本当に「日本は韓国手本に検査増やせ」と言ったのか?』参照)を眺めていると、まさに日本のボトルネックは不勉強極まりない新聞、テレビなどのマスメディア産業関係者が情報の円滑な流通を妨げていることにあると思わざるを得ません。
結局のところ、私たち日本国民ひとりひとりが、
- おかしな報道をする新聞は読まない
- おかしな番組を流すテレビは見ない
- 選挙では必ず選挙権を行使する
を徹底する以外に、日本を良くする方法はないのかもしれませんが…。
View Comments (30)
臨時休校を要請を決断した安倍首相のリーダーシップに期待します。
臨時休校もイロイロ批判されているけど、結果的に評価されてます。
ココは、不退転の決意で、これまでにない発想で思い切った措置を講じていく決断が必要です。
無利子144兆円の長期復興国債(仮称)でも発行して、購入者の税額控除を図るというのもありかも。
ボーンズ 様
こういう自由な発想は大事ですね!
消費税の是非はともかくとして、現状の景気低迷は外出自粛が原因ですので
消費税を下げようが給付金をばら撒こうがあまり効果がない気がします
不要不急の外出を控えてと言っている、現状外出を促す経済対策はしないほうが良いとも思いますし
そのあたりの対策をするとしたら、収束後ではないかと
個人へのバラマキが時期尚早だということは同感です。
コロナショックが治まった後に、というのも同感ですが、わたしはまあだ早いと思います。
今、身動きが取れなくなっている供給サイドがある程度活動を平常に戻せるようになってから、消費サイドに資金をばらまかないといけない。
たとえば、対観光産業ならコロナショックがおさまって少しずつ様子を見ながらで良いと思います。すぐに客が来ても対応できない可能性があります。北海道地震のあとのようなやり方で地域ごとに任せてもいいかもしれません。
たとえば、対製造業のうち国内向け生産なら原料供給が正常化するに従って製品供給できるようになるので、そこらへんを分野ごとに見極めなければいけない。
いずれにせよ、バラマキのタイミングによってはまったく恩恵に預かれない分野があったり、ポストコロナバブルになる分野もあるかもしれません。単に〇〇万円給付では、貯金に回ったり(直接でなくとも生活必需品の購入にまわして、消費額は減らさない結果貯蓄が増える)すれば無意味ですので、時限的、かつ、分野ごとに分けたばらまきをするべきでしょう。それならば、一律〇〇万円ではなく、「購入助成金」という形が適切です。
先の北海道地震の例だと、海外からの観光客に割引をしました。今回は海外というわけにもいかないので、逆に国内地域を絞って、例えば北海道九州四国がコロナ流行が同時期に落ち着いたとかいう感じで、関東関西がまだ流行中なら、「北海道↔九州四国、観光割引」のような形で相互に消費をし合うようにすれば、観光(飲食も含む)・航空・地域内公共交通がターゲットになりますし、各県や市町村レベルに知恵を出して他の産業にも普及するように、地元生産物のクーポンとかを配布して地域活性化につなげるとか、工夫をしていかないとダメです。
消費税の急ぎすぎる減税やとりあえずのバラマキは、無意味です。コロナは地域ごとに流行状況が異なるので、丁寧に都道府県と連携して、供給サイドの産業側の状態を見ながら、カネを出すべきです。重病人にいきなり暴食させても消化不良を起こすのと同じです。適切なアフターケア・リハビリを計画的にするべきです。産業ごと、地域ごとでカルテ(復旧計画)を立案させ、どのようなケアが必要かを考えさせるべきです。野党のキ〇〇イがキーキー騒いでも無視して、じっくりと取り組むべきでしょう。内閣支持率なんか気にする必要のない次の候補も見当たらない長期政権であることを小狡いほどフル利用するべきです。
今はセーフティーネットレベルの支援で、状況が落ち着いてからの消費刺激にする方法は、中長期的に見れば良い方法と言えますね。
(感染ハイリスク箇所への改善指導及び支援も平行して)
企業、自治体には、災害防疫面での強化(良い意味での冗長化を含む)を図るようなインセンティブを与える事も重要ですし、国としても施策の結果を検証して、予算や法整備を進めるのは必須です。
インフラ、空調関連辺りが今後期待できるかな?
野党を擁護するわけではないですが、一部ネット情報にて国民民主が消費税期間限定半減などの対案を出すとの声が。出自はともかく案としては悪くない気もします。
Atsh 様
与党だろうが野党だろうが、良い政策には良い、悪い政策には悪いと言うのが大事ですね。
選挙には行きますが、入れたい候補がない時が多い。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
管理人様>残り150兆円で教育なり、子育て支援なり
当方は人間への投資分野で国債を利用するシステムは反対です。
人間への投資分野での原資は企業が持つ内部留保の一部をプールさせる形で実施するべきです。
出資の償還は援助された人間が個人的に払う以外に特許、著作権や発明等の知的権利に基づく収入の一部をこのプールに払い込むのが良いかと思います。
ついでにこういったプールに上積みしてXX基金として高等教育の実施時に個人に援助して、その後その個人が知的分野で成功した場合その基金の構成者に対して低位でよいので叙勲して国家がパトロンに名誉を与える形でモチベーションを上げる工夫をするべきと思います。
企業が持つ内部留保は凄く多いです。このカネを利用して出生率をあげながら社会で循環させるシステムを作る事が必要ではないでしょうか。
以上です。駄文失礼しました。
財務省の人間達は、頭が日本でトップクラス賢い人達なのです。
東大でもトップクラス。
相当に自分の頭の良さに自信を持っていると思います。
が、
原点主義の官庁では、発想の切り替えをして、チャレンジングな選択をすることには
ビビリでできないのでしょう。
幼いころから、ケンカしたことない優等生の集団。
優秀だ、優秀だとおだてられて育ったプライド。
社会の現場で働いたこともない机上思考。
優等生なので失敗を必要以上に嫌い、体裁を整えることに必死。
モリトモの文書改竄がその典型的な例。
思考が常にディフェンシブ、そもそもガキの頃からオフェンシブな行動をしたことがない。
正解のある問題は得意だけど、正解の見えない問題だと萎縮。
日本のことより、自身の立ち位置の保身が優先。
省内でもヤンチャな人間は、高橋洋一先生のように、周囲から嫌われてスピンアウト。
日本でトップクラスの賢い人達だが、ブレイクスルーの発想ができない
残念な優等生集団。
採用の仕方が問題なのかもしれませんね。
賢い頭を持ってるだけに、勿体ない。
すみません
原点主義✖️
減点主義◯
消費税をマイナスにして、お金を使うほど恩恵が大きくなるようにすればよいかと。
昨年来、長年乗り続けてきた車を買い換えようか迷いながら、オリンピック後の不景気で大きく値下がりするのを待とうと決めたのは内緒です。
イーシャ 様
>消費税をマイナス
こういう自由な発想が大事ですね!
今度の救済案が発表されたら、真っ先に韓国が真似すると思います。
小生は韓国に住む日本人ですから、どちらからも恩恵は受けられないと思います(泪)。
駄文にて失礼します。
国債をまだ増発できる・むしろすべき、と考えられる人には巨額の割にすんなり受け入れられる案だと思うのですが、残念ながら「コクサイハシャッキン」とだけ脳に刷り込まれている人はまだまだ大勢居ます。
野党も「財源はどうするんだ!あーまた借金だ!!」とどの口で言うのかというような脊髄反射をするのが目に見ていますし。
消費税0といい、英断を見たいものですが……
野党も国民民主党(玉木雄一郎党首周辺)とれいわ新選組は
「財源が~」とは言わないと思います
保守系が評価している維新の会の方が怪しい
あと立憲・社民は論外 解党して欲しい
また、自民党・公明党の議員もプライマリーバランス論に毒されており問題
城内実、安藤裕ら真面な自民党議員方がただのガス抜きではなく
実効性のある行動を取られることを期待してます