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韓国メディアがまた「G20と通貨スワップ締結を」

コロナ騒動による市場の混乱が続いていますが、気が付いたら外為市場で韓国の通貨・ウォンが主観的に1ドル=1240ウォンの大台に乗せています。また、これに加えて「ドル・ウォン為替スワップ市場におけるベーシスが縮小した」、「韓国企業のドル調達が難しくなっている」、などの報道も出てきました。韓国は前回のリーマン・ショックの際には日本や米国がスワップで支援したことで国家破綻を免れましたが、果たして今回はどうなのでしょうか。

市場の相関がぶっ壊れた!

本日も株式市場は大変な混乱に直面しています。

ダウ工業平均30種は昨日だけで前日比3000ポイント近く下落し、引け値は20,188.52ポイントと、20,000ポイントの大台を割り込む直前の状況にあります。

Dow Plummets Nearly 3,000 Points As Virus Fears Spread(米国夏時間2020/03/16(月) 17:58付=日本時間2020/03/17(火) 06:58付 WSJより)

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、昨日の株安はFRBによるコロナ対策の金融緩和が不十分であることに対する失望ということであり、また、「安全資産」である米10年債利回りは26ベーシス・ポイント(bp)も下落する(つまり債券高になる)展開となりました。

※bp…100分の1%

こうした流れを受けて、日本時間でも日経平均は前場で一時下落幅が600円を超え、その後は逆に400円を超える上昇に転じ、さらに下落するなどの混乱が生じています(その一方で債券価格は小幅下落、ドル円は前日比小動きで推移しています)。

さらに、気が付いたらダウ先物が前日比でプラスに転じたりしており、まさに株式、債券、為替の相関がぶっ壊れたという表現が妥当ですね。

もちろん、市場では投資家の狼狽売りなどによって一時的に極端な動きを見せることもありますし、株価・債券利回り・為替相場が経済指標のすべてではありません。しかし、リスク資産の売却、安全資産への資金シフトは、混乱を懸念するマーケットの意思でもあります。

いずれにせよ、今朝の『日銀への失望は当然 必要なのは金融政策より財政政策』でも報告したとおり、現在の局面は金融政策一本足打法からの脱却と財政政策への期待を市場が表明している、という意味でもあると考えるべきでしょう。

USDKRWが2009年8月以来の安値

さて、今朝から少し気になっているのが、外為市場で韓国ウォンが米ドルに対してジリジリと売られているのです(韓国ウォンの対米ドル相場はコンチネンタルタームで表示されているため、韓国ウォンが売られる際には、チャート上は「上昇」方向に行きます)。

具体的には、1ドル=1220ウォンを軽々突破し、一時、1ドル=1240ウォンの大台を試す展開になっていますが、もし1ドル=1240ウォンを超えるようなこことがあれば、2009年8月24日以来約10年半ぶりのウォン安水準です。

一方で韓国では株安の一方、債券価格は上昇に転じているため、「トリプル安」状態にはありませんが、それでも国を挙げて外国からの借入金に依存している韓国にとっては、行き過ぎたウォン安状況は韓国経済にとっては非常に大きな脅威でもあります。

スワップ欲しがる韓国

こうしたなか、昨日の『G7緊急会議とドル為替スワップを韓国が強く意識か?』で報告したとおり、韓国政府は緊急G20電話会議を米国に提案したそうですが、これとあわせて「コロナ19国難克服委員長」を務める李洛淵(り・らくえん)氏(=前首相)が通貨スワップの必要性に言及したそうです。

正直、自分の国のことしか考えていないのかと呆れてしまうのですが、この李洛淵氏の提唱と前後して、韓国メディアでは最近、やたらと通貨スワップ待望論が目につきます。本日も韓国メディア『中央日報』(日本語版)にこんな記事が掲載されていました。

韓経:「韓米通貨スワップ締結…外国為替の防波堤さらに高めなければ」(2020.03.17 07:44付 中央日報日本語版より)

タイトルに「韓経」とあるとおり、原文は韓国経済新聞に掲載されたものと思われますが(※リンク先に韓経のロゴが掲載されています)、論調を要約すると次のとおりです。

  • 1997年の通貨危機と2008年の金融危機当時は危機が起きた直後に外国人資金が韓国市場から流出して株価が暴落し、次いでウォン相場が急落して外貨流動性不足が生じた
  • とくにドルを調達するのが困難になった銀行が企業などに貸し付けた外貨を回収し、輸出手形の買入も大きく減らすことで企業の資金繰りがますます苦しくなるという悪循環が発生した
  • 最近は外為市場と債券市場で当時のようなドル不足の兆候が少しずつ現れている
  • 韓国銀行のデータによれば、13日のウォン・ドルのスワップポイント1ヵ月物価格は金融危機直後の2009年以降で最も低い水準に落ちた

…。

文脈から判断して、記事本文中にある「スワップポイント」とは、スワップ市場におけるいわゆるベーシスのことを意味していると考えられます。これは、為替スワップ(※)取引において、通貨A(たとえば韓国ウォン)と通貨B(たとえば米ドル)を交換するときに、市場金利で説明できない要因のことです。

(※ここでいう為替スワップは “Bilateral Liquidity Swap” ではなく “Foreign Exchange Swap” 、つまり直物為替取引と先物為替取引の組み合わせのことを意味しており、日本では会計上・法人税法上のデリバティブに位置付けられる取引のことです。)

たとえば米ドルの短期調達コストが1%、ウォンの短期調達コストが2%だったとすれば、理論的にはウォンを借りる側がドルを借りる側に対して1%の金利を支払うはずなのですが、現実にはウォンを借りる側がドルを借りる側に対して支払う金利が0.5%であったり、0%であったり、マイナスだったりします。

このスワップポイント(ベーシス)の縮小は、韓国におけるドル資金供給逼迫の証拠であり、だからこそ韓国銀行はFRBとの為替スワップ(※)を求めているのかもしれませんね。

(※ここでいう為替スワップは “Foreign Exchange Swap” ではなく “Bilateral Liquidity Swap” の方です。)

「日韓」通貨スワップ、ではなくなった

韓経はまた、韓国企業のドル調達がますます難しくなっていると指摘します。具体的には、先月3億ドル規模の永久債発行を見送った大韓航空(『韓国企業が永久債のコールをスキップしたらどうなる?』参照)に加え、韓国石油公社も5億ドルの外債発行を延期したそうです。

ただ、肝心の記事のタイトルにある「韓米通貨スワップ締結」の主張部分については、何やら本文でムニャムニャ言っているようですが、何が言いたいのかよくわかりません。びっくりすることですが、次の記載で本文は唐突に終わっているからです。

外貨流動性不足に対する懸念が大きくなり、学界だけでなく政界でも対応を求める声が大きくなっている。与党『共に民主党』は16日の会見で『米国をはじめとする主要20カ国(G20)と通貨スワップを積極的に締結することを政府に提案することにした』と明らかにした。韓国は2008年に2600億ドル水準だった外貨準備高が2005億ドルまで落ち込むと、300億ドル規模の韓米通貨スワップを締結し外国為替市場を防御した。

だからどうしたいんですか、韓経は?(笑)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、以前の『「日韓スワップ500億ドル」の本当の意味とは?』でも報告したとおり、韓国が外国(とくに日本や米国)と通貨スワップなり、為替スワップなりを結ぶ際の目標は、おそらく次の2点にあります。

  • 国際的なハード・カレンシー、とくに米ドルであること
  • 金額は500億ドル前後であること

この「500億ドル」というのは、2008年の金融危機の際に、韓国が更新(ロール)できなかった短期借入金の額であり、国際決済銀行(BIS)が公表する短期債務に関する統計でも、韓国銀行が公表する外貨準備高でも、ざっくり500億ドル前後が韓国から流出したことが確認できます。

韓国銀行が毎月嬉々として「外貨準備高は過去最大」などと発表しているくらいですから(『外貨準備高に関する韓国銀行の説明は正しいのか?』等参照)、韓国はご自慢の外貨準備を使って通貨防衛をすれば良いのに、と個人的には思ってしまいます。

しかし、韓国がしつこくハード・カレンシー(とくに米ドル建て)の通貨スワップ、為替スワップを求めている、という点については、韓国の外貨準備の実在性が疑わしいという状況証拠を裏付けているように思えてならないのです。

新宿会計士:

View Comments (31)

  • ウォンの急落はアメリカとの金利差が0.75%じゃ足りないってことですね。
    アメリカやヨーロッパに比べコロナはコントロール出来てるので、この下げはコロナ要因じゃなくて金利政策の失敗との評価かもしれません。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     韓国メディアの記事が願望であろうと、妄想であろうと、それが実現す
    る可能性だけは、ゼロではないのではないでしょうか。

     蛇足ですが、韓国では今回の新型コロナウィルス感染騒動で、韓国が漁
    夫の利を得ることが、(表にでない)法律で決まっているのかもしれませ
    ん。

     駄文にて失礼いたしました。

  • 世界中どこも武漢肺炎対策で忙しいんだから、相手をしている暇はない。
    余所へ行ってやってくれ。
    どこがいいかな ?
    そうだ、クラピカの名言を贈ろう。
    「人に迷惑がかからない荒野がいいな。お前の断末魔はうるさそうだ」

    • 嗚呼…。
      あれであるかな?

      たしか、場面は、
      クラピカが、
      幻影旅団・通称クモのメンバーである
      『ウボーギン』だっけ?
      其奴を倒す時のことだな!

      17~20年くらい前に漫画で読んだなあ。

      嗚呼…。懐かしい。

  • 韓国には掃いて捨てるほどの外貨準備があるんだから、スワップなんていらないですよね。まさか世界中が(韓国含めて)国難の時期に、外貨準備王の韓国が余所の国の経済を心配してくださるなんてことではないでしょうに。ご自分の国に集中してください。

    • 我が国はわざわざ韓国様からお借りしなくても
      アメリカ合衆国様から必要なだけ
      ドルが借りられますからw
      からの~
      ふぁびょーん
      (通貨と為替ががが!はひとまず置いといて)

  • まず宗主国にお願いするのが筋では?
    中韓スワップはどうなったんだろう。

  • 韓国銀行の中の人は外貨準備高の実態を把握しているとして、中央日報などの韓国マスコミが、どの程度それを知っているのか、前々から疑問に思っています。

    実態を知った上で韓銀の表向きの発表に沿って記事を書いているのか、韓銀の対外発表を信じず、薄々不安を感じるが故にスワップを言い募るのか。

    FCレーダー照射事件や、日本の輸出「規制」問題もそうですが、韓国政府の見解と韓国マスコミの論調はいつも一致しています。国内問題ともなれば各紙様々な論調が出るのに、対外問題、特に日本が絡むと、あたかも言論統制が敷かれているかのごとく論調が一致するのも不思議です。

    渡すが考える最も単純な仮説は、ウリとナムの範囲が伸び縮みするというものです。国内問題では左右や地域や階層でウリ・ナム党争を行うも、対外的には国民全体がウリとなり外国のナムに立ち向かう、という見方です。

    実際にどういう仕組みでやっているのか分かりませんが。韓国政府のメディア・コントールの強力さは羨ましいと思うことが多々あります。

  • どの国も自国の経済対策で一杯々々。
    G7間の連携は通貨スワップなどを通じて
    行わざるを得ないが、それ以上は無理でしょ!

  • ウォン1240は、定着した感じですので、次は1250攻防戦だと思います。
    朝鮮日報は
    「外国人資金引き揚げに備え、米日と通貨スワップを速やかに締結すべき」
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200317-00080017-chosun-kr
    とのたまっております。
    まず、スワップは相手がいる話なんですね。
    以下引用します。
    NEAR財団の鄭徳亀(チョン・ドック)理事長(元産業資源部長官)は「米国が金利を急激に引き下げ、当面は外国人の資金引き揚げはないとみられるが、コロナウイルスがさらに拡散し、中国経済がハードランディングすれば、韓国には大きな危機が訪れかねない」とした上で、「そうなれば外国人の投資資金が大量に流出する」と懸念した。鄭理事長は「今急いでこそ、米国などと最大限大きな規模の通貨スワップ協定を結ぶことができる」と述べた。
    引用ここまで。
    全部突っ込める感じですが、
    1.米国の金利引き下げは、効果が無かったので、金利を引き下げた韓国の、外貨を引き留める根拠にはならない。
    2.中国よりも、韓国がハードランディングするのが詐欺でしょう。
    3.アメリカが韓国とスワップしてくれると、思っている様ですね。
    WSJが、最後の砦の様ですね。WSJにスワップして貰えば、良いのでは無いかと思います。

  • 新宿会計士さんが、だからどうしたいんですか、韓経は?(笑)と書いてます。知ってて書かなかったんだと思いますので、書いときます。
    韓国は、アメリカから韓国に「スワップして下さい」と言って欲しいんです。
    これも、馬鹿だからに分類されます。

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