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「GSOMIA終了撤回から100日」、それが何か?

コロナウィルスを巡り、わが国では昨日正午時点でPCR検査陽性者は230人で、死亡者は5人に達しています。これに対し、私たちの隣国である韓国では、死亡者数は17人、感染者数はついに3000人を超えており、文在寅政権に対する風当たりがますます強くなることが懸念されます。なぜ「懸念される」のかといえば、同国は「困ったときの常套手段」で安易な反日行動に出る可能性が高いからであり、実際、昨日は聯合ニュースに「GSOMIA終了延期から100日」という、思わせぶりな記事も掲載されています。

あっという間に3000人超え

わが国では現在、コロナウィルスの蔓延を巡って、「急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との認識のもとで、本格的にこれを抑え込もうとしている状態です。

こうしたなか、厚生労働省のウェブサイトによれば、昨日正午時点でPCR検査陽性者は230人で、死亡者は5人だったそうです。

ここで少し気になって2月下旬以降の感染者数について、厚労省の発表をもとにグラフ化してみると、感染者数自体は右肩上がりに増えている一方で、増加ペースは1日10~20人前後に留まっていることがわかります(図表1)。

図表1 わが国におけるコロナウィルス感染者の状況

(【出所】厚生労働省ウェブサイトをもとに著者作成)

もっとも、厚労省ウェブサイトのデータを数えていくと、わが国の場合、PCR検査実施人数は1日100~200人に過ぎないようであり、この事実をもって、「日本の感染者数が本当に230人に留まっているとは考えられない」、と指摘する人は多いようです。

この点については確かにそうでしょう。

検査体制を拡充し、「真面目に」検査をすれば、実際の感染者数はこれを遥かに上回っているであろうことは想像に難くありませんし、だからこそ、『コロナ対策での営業自粛と買占め』などでも報告したとおり、日本政府はコロナの抑え込みに向けて舵を切ったのでしょう。

したがって、「日本のウィルス感染者数は230人に留まっているから、みなさん安心してください」などと申し上げるつもりはありません(※というか、今までもそんなことを当ウェブサイトで申し上げた記憶はありませんが…)。

いずれにせよ、手間のかかる感染者数の調査よりも、むしろ感染拡大を抑止すること、咳エチケットの徹底、手洗いの徹底といった、国民レベルでできることの啓発に力点を置く現在の日本政府の対応こそ正しいと思います。

(というか、厚労省は結局、先月末の『【読者投稿】新型肺炎、日本は「いつもどおり」で良い』と同じことを言っています)。

韓国では3000人を超える!

その一方、私たちの隣国では、昨日、コロナウィルスの感染者数がついに3000人の大台に乗ったようです。

韓国の新型コロナ感染者 3000人超え=死者17人に(2020.02.29 17:20付 聯合ニュース日本語版より)

2月19日時点で31人だった韓国の感染者数は、わずか10日で一気に100倍になり、いまや日本の10倍を優に超えているという状況にあります。図表1にならって、韓国についても感染者数の実数と前日比増減をグラフ化しておきましょう(図表2

図表2 韓国におけるコロナウィルス感染者の状況

(【出所】各種報道より著者作成)

「指数関数的な増え方」といえば言いすぎですが、それでも「倍々ゲーム」に近い増え方です。ただ、外国がやることについて文句を付けるのもおかしな話ですが、個人的には検査を実施して感染者数を増やしたところで、なにか実益があるようには思えません。

よく「安心と安全」という表現がありますが、現時点において抗体が開発されているわけでもないなかで、結局、現時点においてできることといえば、「日常基本動作でウィルスの蔓延を防ぐこと」、「風邪や発熱などの症状が出た時点で自宅で療養すること」、「医療崩壊を防ぐこと」などしかありません。

起死回生策は「GSOMIA破棄」?

くどいようですが、外国がやることについて、私たちが何か文句を付けるのはおかしな話ですし、私たちにとって重要なことは、まずは日本において医療リソースの無駄遣いを避けつつ、医療崩壊を防ぎ、重症患者の救命に注力することだと思います。

ただ、昨日の『鈴置論考から読み解く「文在寅弾劾・政権崩壊リスク」』でも触れたとおり、どうも私たちの隣国では、新型コロナウィルス蔓延という国家的な危機すらも、政争の具にしているようなフシがあるのです。

こうしたなか、昨日は韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、こんな記事を発見してしまいました。

GSOMIA終了延期から100日 韓日関係の転機はいつに(2020.02.29 06:01付 聯合ニュース日本語版より)

最近のコロナショックのためでしょうか、すっかり世間の関心は薄らいでいますが、日韓関係が悪化している要因の中核にある「3点セット」(自称元徴用工問題、輸出管理適正化措置、GSOMIA破棄問題)は、何も解決されていません。

日本政府が昨年7月1日に発表した対韓輸出管理適正化措置への対抗策として、韓国政府は8月23日に日本に対し『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(俗称「日韓GSOMIA」)の終了を通告しました。

ただ、これに対する米国の反発があまりにも強かったためでしょうか、結局韓国政府は11月22日になって、このGSOMIA破棄については事実上の撤回に追い込まれました(『韓国の「GSOMIA瀬戸際外交」は日本の勝利だが…』等参照)。

ところが、韓国政府は現在でもこの措置を「GSOMIA終了通告の撤回」であるとは認めておらず、あくまでも「GSOMIA終了通告の効力の停止である」と強弁している状況です。

実際、この聯合ニュースの記事でも、

文大統領が昨年8月の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の演説で、未来志向の関係樹立に向け対話の手を差し伸べたが、日本に態度変化が見られなかったことから、韓国は同月に日本とのGSOMIA終了を決定。だが、関係悪化を放置できないとの判断から失効直前で条件付きの終了延期を決断した。

などの記載が入っていて、「日本としてはGSOMIAを破棄されると困るはずだから、輸出『規制』を元に戻すべきだ」、といった認識が濃厚に伝わって来ます。

そもそも終了通告の「効力停止」などあり得ない

といっても、韓国政府がいう「いつでも韓日GSOMIAの効力を終了させることができる」という前提については、法律の専門家である弁護士の方(ペンネーム「狐の手おじさん」様)が当ウェブサイトに寄稿して下さった次の論考にもあるとおり、言い分はデタラメだと考えられます。

【読者投稿】GSOMIA[事実上の延長」の真否(2019/11/23 16:00付 当ウェブサイトより)

狐の手のおじさん様の見解は、こうです(※表現については一部手直ししています)

  • 韓国はウィーン条約第68条の規定に基づいて『8月23日付けのGSOMIAの不延長通告』を撤回し、それによって日韓GSOMIAは1年間延長された
  • したがって、「韓国がいつでもGSOMIAを終了させることができる」などということはない
  • 韓国政府が「いつでもGSOMIAの効力を停止させることができることを前提とした」と発表した目的は、「無条件にGSOMIA終了を撤回して延長した」という韓国国民からの批判を避けるため
  • 日本や米国は「それは勝手にやらせておけば良い」ということで、その点には何も触れていない

おそらくこの見解がすべてでしょう。

「終了通告の効力停止」なる概念は国際法に存在しませんし、したがって、実際に韓国政府が「終了通告の効力を再開させる」などという行動に出たとして、国際法上、「GSOMIAが即日終了する」というものではないと思います。

しかし、韓国自体が国際法をないがしろにする国であるという事実を踏まえれば、その可能性はゼロではありません。

とくに現在、コロナウィルス騒動への対応を巡り、韓国国内で文在寅(ぶん・ざいいん)政権への批判が強まっていることから、韓国政府が「困ったときの常套手段」である反日に舵を切る可能性は十分に警戒しておく必要はあるでしょう。

自意識過剰すぎる韓国

この点、先ほどの聯合ニュースの記事には、

地理的要件から北朝鮮軍事情報の収集能力が韓国よりも劣る日本の立場を踏まえると、GSOMIAは対韓輸出規制強化の完全な撤回を迫る重要なカードとして使われる可能性がある。

といった記載もあります。自意識過剰すぎますね。

日韓両国が置かれている地理的立場が違うのは事実ですが、だからといって「日本の北朝鮮軍事情報の収集能力が韓国よりも劣る」と勝手に決めつける根拠もよくわかりません。

しかし、何気ないこの記述からわかることは、韓国国内では「韓日GSOMIAが破棄されれば日本は困るはずだ」、という誤解が(韓国政府に限らず広く韓国メディアにも)蔓延している、ということです。

いずいれにせよ、コロナショックでの対応に忙殺されている日本政府にとって、韓国でいきなり、日韓GSOMIA破棄や自称元徴用工問題の資産売却の強制執行などのイベントが生じれば、下らないことに外交リソースが割かれてしまいます。

じつは、日本政府にとっての本当のリスクは、コロナに集中すべきところを隣国のくだらない茶番に付き合わされることなのかもしれませんね。

新宿会計士:

View Comments (33)

  • 更新ありがとうございます。
    リスカブスは相手にしないのが一番です。

    新宿会計士 様

    細かいことですが、
    > 「指数関数的な増え方」といえば言いすぎですが、それでも「倍々ゲーム」に近い増え方です。
    倍々ゲームは、2を底とする指数函数ですよ。

    • そうですね。

      バイバイ(倍々)でもトウヒ(等比)でも構わないので、距離を置かないと良好な状態は保てないかも。

    • 別の言い方をすると、グラフでの傾きが一定では無く、右に行く程傾きが急になる増え方ですね。
      (現在日本での感染者数は大体直線的な増え方になっている)

  • ウィスル対策で大忙しの時にこんな記事を書ける、書かないと気が済まないということは、日本を何らか貶める事を言うかするかしないと、心の平静を保つ事が難しいのでしょう。

  • >日韓両国が置かれている地理的立場が違うのは事実ですが、
    >だからといって「日本の北朝鮮軍事情報の収集能力が韓国
    >よりも劣る」と勝手に決めつける根拠もよくわかりません。

    恐らく会計士様は謙遜されていらっしゃるのだろうと思いますが、「勝手に決めつける根拠」とは「下朝鮮でのみ通用する世界観・常識」である「朝鮮は日本よりも上位の存在である」からでしょう。

    日本国民は幸か不幸か、この地震・噴火・津波・嵐などの自然災害の多い国土に住んでいますので、「自然現象に対して主観によって曇る事の無い観察眼」と「自然界における自らの立ち位置を謙虚さを持って客観的に認識出来る能力」を養って来ました。

    そこが劣化版朱子学に毒されて「根拠のないあるべき姿」以外の」現実を全て無視する傾向のある彼の民族との決定的な差だと思います。

  • 更新ありがとうございます。

    いつものように韓国の「瀬戸際外交」発言と思いたいです(笑)。

    自国の衛星さえ持たず、北朝鮮とは地面が繋がっているだけで、板門店の防御兵器も無くすわ、一体何処が「日本の北朝鮮軍事情報の収集能力は韓国よりも劣る」のでしょう。ほぼ、情報は日米経由でしょうに。実力は更に無いし(失笑)

    感染者が韓国3,150人!日本は230人。人口で言うと日本が12,500万人、韓国5,100万人。日本の約40.8%の人口なのに13倍の感染者数!恐ろし過ぎます。丁寧に感染の疑いも少ない人まで探すから、こうなる。そこまでしなくていいだろ。

    思うに、韓国は何が起きてもヒステリックにぶちまける。が、あとの整理整頓がからっきし出来ない。

    文大統領としたら、目を逸らせる為GSOMIAの破棄をニュアンス的に言って来るかも知れません。でも無視!関知しない。途中では辞めれないよな〜。それよりも大邱はどうなんだ、と言ってやって欲しいです。

  •  終了通告の効力停止(呆れ
     これがまかり通るのであればあらゆる事前調整や交渉も無意味になり言い出した方が恣意的にどうとでも覆せるのですが、法治国家でないと理解できないでしょうね。
     さらに言えばこれを以って「ウリナラの道徳性で延ばしてやった、日本に貸しができた、輸出管理強化撤回は当然だ」となってるわけですが、普通に考えたらこんな横暴は「日本(アメリカ)に借り」を作ったとするのが普通の感覚。
     異常な自己評価の高さと、物事を理解していないから謎の判断を繰り返す。悪い方ばかり選択するってもはやコイントスで決める方がマシ。コロナ防疫でも外交でも根は同じですね。

  • GSOMIAの有効期間の話は、携帯電話の2年縛りの話に似ていますね。
    あれも公取かなんかの指摘で、契約解除可能期間の厳密な設定や通知義務が設定されたと思いました。

    韓国もそうしたいなら今の契約は解除して、いつでも好きな時に解除できる契約に直すべきなんですけどねえ。

    • りょうちん様

       絶対どこの国も契約しませんね(笑)つまりは韓国のやってる事は、そういうことという事ですね。

      • 元々、解除を前提とした協定では、有りません。
        普通なら破棄する事自体が、深刻な外交問題になる案件です。

  • 現在の状況では、GSOMIA自体は張り子の虎状態でしょう。
    日米韓の軍事的枠組みがあるという意味しか持たないと考えた方が妥当であるかも。
    北は政権内外共に動きが取れなくなっているし、かの国も宗主国と同様大流行の感染症で下手に動けない状況ですので、交換する情報も無いでしょうし、秘密が守られているのかも疑問を持たざるを得ない。
    (サバクトビバッタという悪魔もジリジリ接近しつつある)

    日本はいつも通り隣国が衰弱するまで放置し、崩壊を前提とした体制造りを進めるだけですね。
    なおコロナウイルスについては、市中感染者数の指数関数的増加の抑圧(スピード及びピーク値)を賭けた大事な時期ですので、隣国の状況を肝に銘じ、感染拡大防止への意識と行動を続けて欲しいです。

  • ふと思ったのは、
    今の韓国は北朝鮮工作員が自由に闊歩できる、
    ってことは、
    その工作員が北朝鮮に帰って報告する、
    となると
    北朝鮮国内でもコロナ蔓延。
    北も南も衰弱滅亡の道か、な。

    • 老兵R2さま
      韓国に生活地盤の有る工作員だから、帰らないと思います。
      入れてくれないとも、思います。

  • おまいら、100日も何してたんだ。 
    ずっと切り株にウサギが、頭をぶつけるのを、待っていたのか。
    と言ってあげましょう。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     韓国メディアの聯合ニュースとしては、「日韓GSOMIA破棄を撤回してや
    ったのだ」ということを、日本に思い出せたいのでしょう。もっとも、こ
    れは韓国国内でどう思われるのかが重要で、日本がどう思うのかは関係が
    ない可能性もありませすが。

     駄文にて失礼いたしました。

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