ちょっとした「小ネタ」です。北朝鮮に帰国した在日韓国・朝鮮人のあいだで、「日本は彼らを(日本に)帰還させるために努力すべき」だの、「帰還事業を積極的に支持した日本政府は責任を回避している」だのといった、ちょっと理解に苦しむ記事が、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に、相次いで掲載されています。なぜそれを日本に対して主張するのかわかりません。というのも、主張するならば、まずは北朝鮮に対して、それが無理ならば韓国に対して主張するのが筋だからです。
なぜそれを日本に主張するのか?
せっかくここ数日、当ウェブサイトでは韓国と関係のない話題を掲載することも増えていたのですが、私たちの側が「心穏やかになるような話題を」と思っていても、あちらのメディアの方から、わけのわからない言い掛かりのような記事が飛んで来ることもあります。
その典型例が、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に掲載された、次の2つの記事でしょう。
「北朝鮮の人権蹂躙は深刻…日本は在日韓国人帰還のため努力すべき」(2019/12/13 08:01付 朝鮮日報日本語版より)
帰還事業を積極支持した日本政府、責任は徹底回避(2019/12/15 06:04付 朝鮮日報日本語版より)
記事タイトルで何となく想像がつくと思いますが、これらは、1959年からおよそ25年にわたって、「在日韓国人」が北朝鮮に送られたことを「人権蹂躙事件」と批判するものです。
前者は日本が在日韓国人「帰還」(※「帰国」ではないのがミソでしょうか)のために努力すべきと主張する一方で、後者は日本政府の責任を問うものであり、執筆したのはどちらも朝鮮日報東京特派員の李河遠(り・かえん)氏です。
このうち前者の記事では今月12日に東京都内の衆議院議員会館で行われた「在日朝鮮人北送の悲劇60年記者会見」の模様を記事にしたもので、脱北者らが東京で
「今でも1万5千人ほどの北送在日僑胞が生きていて、毎日自由帰郷を切に夢見ている」
などとして、北朝鮮に送られた「在日韓国人」の(おそらく日本への)帰還を要求する声明を採択したのだとか(※というよりも、日本は彼らにとっての「母国」ではないため、「帰郷」する国ではありませんし、だいいち日本を離れた時点ですでに「在日」ではなくなっていますが…)。
正直、普段の彼らの「現在の在日韓国・朝鮮人は強制連行されてきた人たちの末裔だ」とする事実無根の与太話にも呆れますが、長年、日本に残留していた在日同胞たちを見捨てて来た韓国のメディアに、そんなことを言われたくはありません。
一方、後者の記事では
「その後、北送された在日韓国人はもちろん、日本人妻やその子どもらおよそ6000人も差別待遇を受け、苦痛に満ちた生活を送ったことが確認されたが、日本政府は微動だにしない。『全ては在日韓国人の自由意志によって進められた』として顔を背けている」
としているのですが、彼らはあくまでも自発的意思に基づいて北に帰国したわけですから、その在日韓国・朝鮮人らが北朝鮮で差別待遇を受けているのだとしても、批判されるべきは北朝鮮政府と彼らに手を差し伸べようとしない韓国政府であって、日本政府ではありません。
百歩譲って、「騙されて北朝鮮に渡航した日本人妻などに対し、日本政府には道義的に支援する義務がある」、というのならば、まだ話はわかりますが、日本国籍を持っているわけでもない人たちに対し、戦後の日本政府が何らかの面倒を見る義理も法的責任もありません。
人権蹂躙国になぜ手を差し伸べないのか
なにより、一連の朝鮮日報の記事を読んで、最も強く疑問に感じたのは、この記事を執筆した李河遠氏自身が韓国国民の1人として、深刻な人権侵害に苦しむ北朝鮮の同胞たちを見て、心が痛まないのか、という点です。
私たちの国・日本は、敗戦後、幸いにして分割占領を免れましたが、第二次世界大戦後の東西冷戦期において、自由主義・共産主義陣営に分断された国の例としては、ドイツ、ベトナム、中国などの例があります。
これらのうち、ドイツの場合は西ドイツ主導で東西統一が実現しました。正確には、東ドイツを構成していた諸州が西ドイツ(正式にはドイツ連邦共和国 Bundesrepublik Deutschland )に吸収されて消滅した、という形ですが、西側陣営が勝利した格好です。
これに対してベトナムの場合は、東側陣営が勝利しました。というのも、北ベトナムが南ベトナムを吸収合併し、南ベトナム政府はサイゴン陥落によって消滅したからです。
一方で中国の場合は、「中華人民共和国」の方が、人口、面積、経済力で台湾を圧倒的に凌駕している状況ですが、台湾では自由、民主主義が立派に機能しており、中国としてはなかなか台湾を「武力統一」できない状況が続いていて、「東西のどちらが勝つか」の帰趨はわかりません。
(※余談ですが、個人的には、台湾が「中華民国」という国号を捨て、「ひとつの中国、ひとつの台湾」を認める形が一番すっきりした落としどころだと思うのですが、この点については私たち日本人が言及するべきものでもないのかもしれません。)
ただ、国力で圧倒的に凌駕していて、人口、面積でも数十倍というレベルの大きな違いがないという意味では、南北朝鮮は中台というよりも、南北ベトナム、あるいは東西ドイツのような事例と似ているのではないでしょうか。
大韓民国憲法は「国土は韓半島」と規定
ところで、韓国の憲法では、「大韓民国の領土は韓半島と周辺の島嶼とする」(同第3条)と規定されており、いちおう、韓国の国内法では、北朝鮮は大韓民国の一部であり、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)自身も韓国国民であるはずです。
ということは、北朝鮮に送られた「在日同胞」たちを助ける責任があるのも韓国政府ですし、北朝鮮が発生させた日本人拉致事件についても、本来であれば韓国も連帯して責任を負うべき局面であるはずでしょう。
もっといえば、日本人拉致事件に関連し、「韓国国民である金日成(きん・にっせい)一味が日本人を日本の国土から誘拐したこと」について、日本政府としては韓国政府に対し、事件の全容解明を求めるとともに、不法行為責任を追及しても良いはずです。
韓国も目を吊り上げてちっぽけな竹島に対する領有権を主張している暇があったら、「大韓民国平壌(へいじょう)市」をはじめとする韓国領全体に対する支配権を確立し、反政府活動を行っている韓国人である金正恩一味を逮捕し、国家反逆罪として大韓民国の法律で裁くのが筋ではないでしょうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ところで、「在日朝鮮人」として生まれ、のちに韓国籍を取得したと主張する友人によると、在日韓国・朝鮮人の国籍は、厳密には「韓国」と「朝鮮」なのだそうです。
日本は北朝鮮を国家承認していませんが、この友人の主張によると、在日朝鮮人とはあくまでも「サンフランシスコ平和条約で日本国民の地位を失った朝鮮半島出身者」という意味であり、「北朝鮮国籍を取得した者」という意味ではないのだとか。
また、日韓国交正常化以降、日本が韓国を国家承認したことによって、それ以降は外国人登録上の国籍を「朝鮮人」から「韓国人」に変更する人が増えたものの、単に面倒だから、といった理由で、北朝鮮籍でもないくせに「朝鮮人」の地位に留まっている人もいる、というのが、この友人の説明です。
これが本当なのかどうかはよくわかりませんが、法的な事実に照らせば、説明に不自然な部分はありません。そして、在日韓国・朝鮮人は、日本国内でも外国人、韓国本国でも在外僑胞、北朝鮮でも親日派として、どの国からも不当に差別されてきた、というのが、この友人の昔の言い分でした。
その友人は、在日韓国人がいかに苦労して来たかという点について、次のようにも述べています。
「現在、東京にある韓国大使館の土地、建物は、在日韓国人社会が韓国政府に寄贈したものである。」
もちろん、これが本当なのかどうかはよくわかりませんし、個人的にそこまで調べようとも思いませんが、この友人の説明が正しいのだとすれば、戦後の韓国政府は在日韓国人を帰国させようともせず、むしろ棄民しただけでなく、彼らを経済的に利用したということでもあるのでしょう。
本稿で紹介した朝鮮日報の記事を読み、昨今の韓国政府の無責任ぶり、当事者能力のなさを思い起こすにつれ、この友人の話をふと思い出してしまった次第です。
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たかだか100年程度の歴史を鑑みても、数少ない個人的な経験からしても、関わると碌な事が無いですから、ボランティアでも募金でも関わりたく無いのが正直な気持ちです。
特に政府レベルで出来る事は、後で主権侵害とか色々言いがかりを付けられる可能性が高いですから、主様のご意見通り、先ずは北朝鮮政府、次いで韓国政府が出来る事をやるのが先で、そもそも元の新聞記者は何の権限で日本政府だか日本社会だかに意見しているのかと、疑問に思います。
新宿会計士さんの言う通りですね。
韓国政府が、北朝鮮の人権問題を非難する事無く、自由意志で北朝鮮に渡った朝鮮人の人権問題を、日本の責任にするという事は、酷い話です。
何度も書いてますが、韓国人は自分の問題を自分で解決する事が出来ません。今回も無責任に、日本に解決させようとしている一連の話です。
韓国が憲法で北朝鮮部分を自国領土と主張するのであれば、朝鮮人と結婚して付いて行った日本人女性の責任や、拉致問題の責任も韓国が、解決する必要のある案件です。
> 北朝鮮籍でもないくせに「朝鮮人」の地位に留まっている人もいる
このご友人の説を否定する材料は持ちませんが、朝鮮総連の存在や、いわゆる「朝鮮学校」との整合性が気になります。
朝鮮総連は事実上、北朝鮮の出先機関です。韓国籍を持つ者は民団に、朝鮮籍を持つ者は朝鮮総連に所属?し、パスポートの管理などを委ねています。
朝鮮学校の運営資金は、北朝鮮からの「教育援助金」と「奨学金」が使われていて、教育内容も、北朝鮮を支持し、金一族を崇拝するような「民族教育」が行われています。
つまり、日本にいる「朝鮮人」は北朝鮮の支配下に置かれており、事実上の「北朝鮮の国籍を有する者」になっています。
「北朝鮮籍でもないくせに」と言われる人々は、民団からも朝鮮総連からも排除されているのでしょうか… この辺りの事情は詳しくないので、おいおい調べてみようと思います。
阿野煮鱒さま
いくつか勘違いが見られるようなので、ご指摘させていただきます。
>韓国籍を持つ者は民団に、朝鮮籍を持つ者は朝鮮総連に所属?し
国籍のように自動付与されるものではありません。また、現在では両団体の融合(総連の民潭懐柔)が進んでいる状況で、両団体に所属する方も存在します。
>パスポートの管理などを委ねています。
韓国籍の方パスポート発行などの権限は、特別永住者であっても韓国政府です。民潭の役割は日本語オンリーの方に対するサポート、普通免許で例えるなら昔の代証屋的役割がメインです。
朝鮮籍の方の正規パスポートは存在しないので、総連が管理することもできません。彼らが日本から出国する際には、日本政府が発行する再入国許可証をその都度発行し臨時パスポートとします。また、再入国許可書所持者の保護責任は日本政府にあります。
以上です。
丁寧な解説ありがとうございます。私、半島ばかり見ておりまして、国内の在日については無知なのです。大変助かりました。重ねてありがとうございます。
>また、現在では両団体の融合(総連の民潭懐柔)が進んでいる状況で、両団体に所属する方も存在します。
かつて広島?の民団の上層部の人が国会で「日本社会に貢献しない在日コリアンは日本社会に居る資格が無い」と述べたそうですし、
「アボジ聞かせて〜」の証言集をまとめたりした民団ですが、
総連との融和が進んだ結果、
「在日コリアンは日本による強制連行の被害者と其の子孫である!」との主張をし始めたりしたみたいですね。
愛知県で北朝鮮に対する反核デモを行った在日コリアンも居ましたが、そういう真っ当な在日コリアンは在日コリアン集団から排斥され、日本などに帰化して日本に同化していき、在日コリアン集団に属する者達は対日被害者コスプレを競い合い、対日レイシストとして先鋭化していくのだろうな、と見ています。
私としては、そういう在日コリアン集団を日本社会はいずれ朝鮮半島へ強制送還せざるを得なくなるだろうし、其れは人種差別には該当しないと考えています。
毎日の更新ありがとうございます。
この件は あの反日パヨク弁護士である高木健一が被害者ビジネスモデルを確立し、トリックスター吉田清治が裁判で徴用工の強制動員の証人としてデビューしたサハリン訴訟ビジネスモデルの4匹目のドジョウですね。
1匹目 サハリン
2匹目 戦時売春婦
3匹目 戦時出稼ぎ労働者
4匹目 北朝鮮帰還事業
サハリン徴用工
慰安婦問題はサハリン訴訟から始まった
https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/180217/wor18021709320009-n1.html
【月刊正論】慰安婦問題で日本を批判してきた韓国がウソ謝罪碑を復活させた本当の理由
https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/180217/wor18021709320009-n1.html
オワコンビジネスモデルに固執しますねー
自称慰安婦、自称徴用工に続く、新たな難癖のネタ探しなのでは?との感じがしますねぇ。
数年後には、自称北送在日韓国人やその親戚から、慰謝料を払え、謝罪しろ運動が起き、財団方式の解決案が出てくるのではないでしょうか?
私もそう思ってしまいます。
本人の気持ちよりも、日本から金をふんだくりたい、
それだけ。
いわゆる「北送事業」については、簡単に言えば
主催:朝鮮総聯
共催:北朝鮮政府
事業主体:朝鮮総聯、(北)朝鮮赤十字
協賛:日本マスコミの大半
日本側事業管理:日本赤十字
の構図で実行されていて、日本政府の関与は、朝鮮人出国に関する法的事務管理および帰国朝鮮人の新潟港移動に関する安全保障(北の宣伝に使われることと帰国者のほとんどが慶尚道出身であることから、韓国民団などは強烈に反対し移動の妨害活動をしていた)に限定されています.すなわち、
朝鮮人の出国に関する自由意志に関して、出国の事務手続きなどを政府の代行として(朝鮮赤十字のカウンターパートとして)当たった日本赤十字を除いて、日本政府および公的機関の関与はなかった
ということです.
帰国朝鮮人の自由意志形成について国ぐるみの宣伝工作を仕掛けた北朝鮮政府や朝鮮総聯は当然として、仮に朝鮮日報が日本側を批判するのであれば、その矛先はそうした宣伝を無批判に垂れ流すばかりではなく「自らの意志」で「地上の楽園」と言い続けて来た日本マスコミの大半(あろうことか当時は讀賣あたりでも北礼賛記事が目立った)と、当時の社会党や共産党など左翼政党であって、日本政府を糾弾しようとするのはとんだ筋違いです.
そもそも、この帰国事業の時期に日本政府は韓国政府にも在日朝鮮人・韓国人の帰国を日本の帰国費用持ちで打診しただけど、韓国政府は断ってるんだよね。
いわゆる「棄民政策」って奴で、その事は北朝鮮からも糾弾されてる事を韓国政府も韓国人も知らないといけないよな。
匿名さま
その通りです。
強制労働者(嘘)の遺骨問題とか言い出してますが、それも韓国側が断ってる話を、日本が放置したようにしようとしています。
どうも朝鮮日報などが世論戦として仕掛けてきているようです。 また新たな被害者ビジネスを展開するための布石でしょう。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
匿名MK様へ
>また新たな被害者ビジネスを展開するための布石でしょう。
韓国では、もはや日本から慰謝料をせしめる被害者ビジネスが、また日
本を批判することで新聞を売る韓国メディアビジネスが、そして自民党を
批判することで新聞を売る日本マスゴミ村ビジネスが成立しているために
次々と新しいネタを作り出す必要があるのでは、ないでしょうか。そのせ
いか、朝日新聞に、戦後に日本から北朝鮮に戻った人の悲惨な体験が載っ
ていましたが、それもこのための布石でしょうか。
蛇足ですが、韓国では「(何でもよいから)日本が悪い」と言えなくな
ればアイデンティティーが崩壊して、国家が崩壊(?)するのかもしれま
せんし、朝日新聞としては「自民党政権が悪い」と言えなくなれば、社内
が混乱するのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
更新お疲れ様です。
南北朝鮮が抱える全ての問題の全ての責任は日本にある、という狂った価値観がコリアンにあると考えれば理解は出来る主張ですね。
ちなみに、朴正煕大統領の日韓基本条約締結時の談話が此方ですが、
日韓条約批准書交換に関する朴正煕韓国大統領談話
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19651218.S1J.html
『在日僑胞のその苦労の原因をたどってみると,ひとえにそれは本国政府の責任となる他ありません。』以下の談話を読むと、朴正煕大統領は日本からの独立や自立をまだ意識してたと言えるのではないか?と思います。
今のコリアンが対日寄生部族なのは、日本の似非リベラルが日本の赤化の為に在日コリアンの寄生精神を利用したのも一因でしょうが、だからといって在日コリアンの寄生主義はもうお断りです。
別稿でも申し上げたのですが、この数年、東アジア情勢はとてもシリアスな局面に入っており、どこで戦火があがっても不思議ではない情勢です。なので、日本は隣国の寝言を笑っている場合じゃない。優先すべきは他にあります。
先日、プライムニュースにご出演された、退役された自衛隊幹部の方々は「一旦、事があった際には我々は身を挺して国を守る。」とおっしゃっておられましたが、守っていただく我々は何をしているのでしょうかね。憲法9条の改正もなく、彼らにまともな装備を準備することもなく、あたりまえのように彼らに守ってもらうのでしょうか?恥ずかしいですね。
ごめんなさい。Web主様の論考にとやかく言っている訳ではありません。コメントは控えても、毎回しっかり拝見させていただいております。今回のお題も、半島人が苦難に際してどう考え、どう対処するかの基準にはなります。自分の物は自分の物。他人(日本)の物は自分の物。というあの国の考え方や、その国から棄てられてもその国を慕う在日の方々の愛国心?も少し判りました。でも、そんなに慕わしいのであれば、何故帰国しないのでしょうかね。