今月に入ったくらいからでしょうか、韓国の政府、メディア、研究機関などが、相次いで、「日本の輸出規制は韓国に影響を与えていない」、「むしろ日本の方に大きな打撃をもたらしている」、とする主張をするようになりました。こうしたなか、昨日の『自称元徴用工:朝日が報じた「同額報復」構想の現実性』のなかで「予告」しましたが、本稿では韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、『「日本の輸出規制、韓国への影響限定的…日本に大きな打撃」=韓国対外政策研究院』という記事についても、ツッコミがてら、紹介しておきたいと思います。
韓国に打撃ゼロ、日本に大きな打撃
何度も同じ話を繰り返して恐縮ですが、日本政府が7月1日に発表した、韓国に対する輸出管理適正化措置を巡っては、4ヵ月が経過するにもかかわらず、韓国政府や韓国メディアはしつこく「輸出規制」だの、「貿易報復」だのと誤報し続けています。
韓国メディアに通常の取材力と理解力があれば、日本の措置が「規制」でも「報復」でもないことくらいはわかりそうなものです(なお、輸出管理適正化措置自体が「経済制裁」や「報復」ではない理由については『総論:経済制裁について考えてみる』にまとめていますので、ここでは繰り返しません)。
ただ、それと同時に、今月くらいからでしょうか、韓国政府や韓国メディアなどからは、「日本の輸出『規制』は韓国経済に大した影響を与えていない」、「むしろ日本経済に対して大きな打撃が生じている」、とする報道が目立ち始めた気がします。
たとえば、『「輸出規制影響なし」は対日譲歩を要求するメッセージ』でも紹介した、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載された『日本の輸出規制100日、安倍の誤判』という記事は、
「安倍政権の輸出規制により、韓国企業が直接的被害を受けたという報告はまだ一件もない」
などとしつつ、むしろ韓国の不買運動などにより、日本企業や日本の観光産業などが深刻な打撃を受けていると主張している、という話題を紹介しました。
このハンギョレ新聞の記事は、「韓国に被害はゼロ」「むしろ日本に大きな被害が生じている」などとしつつ、
「とは言え、韓日関係がこのまま行くことは望ましくない。韓国と日本は、これまで地理的に最も近いという利点を活用した分業と協業で『ウィン・ウィン』を実現してきた。両国関係の悪化は、双方にとって損失だ。日本の良心的市民社会のみならず、保守政治家の間からも『韓国と共に進まなければならない』という声が出てきている。」
と述べているのですが、これだとあたかも「韓国側は日本の輸出規制で困っていない。だからそろそろ日本の方が韓国に譲歩せよ」とでも言いたいかに見えますね。
同じような主張や報告が相次ぐ
ただ、これと似たような主張は、ほかにもいくつか見られます。
たとえば、韓国大統領府の政策室長は今月7日、ラジオ番組で
「日本の直接的な規制とホワイトリスト(輸出審査優待国)除外措置などが、直接、韓国経済にもたらした被害は一つも確認されていない」
などと述べています(『韓国大統領府「日本の輸出規制は影響なし」の意味不明』参照)。
また、韓国の与党「ともに民主党」のシンクタンク「民主研究院」は23日、
- 両国の貿易紛争を巡り、主要海外機関は韓国経済が深刻な水準の打撃は受けていないと評価するなど、その中間評価は事実上、韓国の判定勝ちだ
- 主要な経済指標は輸出規制が日本経済にブーメランとして作用したことを示唆している
- 既存の憂慮とは異なり、韓国の中小企業の対日本輸出実績は化粧品、電子応用機器品目などを中心に、最近3カ月連続で上昇し緩やかな増加傾向を維持した
などとする報告書を公表しているようです(『韓国の研究院「輸出規制と韓日葛藤は日本の判定負け」』参照)。
つまり、韓国の政権に近いとされる『ハンギョレ新聞』、韓国政府高官、韓国与党シンクタンクなどがそろって、「日本の輸出規制は韓国に打撃ゼロ」だの、「日本に対してブーメランとして作用している」だのといった主張を繰り広げているのです。
(※余談ですが、わが国でも「ATM」と呼ばれるメディアを中心に、「日本の輸出規制は日本にも悪影響をもたらしている」などとする主張が相次いで掲載されていますが、日本の極左メディアは韓国メディアとつながっているのでしょうかね?)
やっぱりよくわからない…
こうした「韓国に打撃ゼロ、日本にブーメラン」とする研究報告が、他にも出て来たようです。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された次の記事によると、韓国の『対外経済政策研究院(KIEP)』という国策研究機関が出した報告書では、「日本の輸出規制の韓国産業への影響は限定的だ」と記載されているようです。
「日本の輸出規制、韓国への影響限定的…日本に大きな打撃」=韓国対外政策研究院(2019.10.30 16:48付 中央日報日本語版より)
中央日報の報道を要約し、箇条書きにしておきましょう(※日本語表現は部分的に整えている箇所があります)。
- KIEPが30日に発表した報告書『日本の輸出規制100日の経過、影響、今後の対応』によると、当初はかなりの経済的影響が懸念されたが、現在までにその影響は限定的な状況だ
- これに対し、同報告によれば、韓国の不買運動などの影響で日本の衣類、食品、自動車、観光など消費財の消費が急減し、日本の関連業種に非常に大きな打撃が生じたと述べている
- 日本の財務省の8月の貿易統計によれば、日本からの韓国への輸出は、ビールが前年同月比92.1%減少、乗用車が前年同月比60%減少となっており、また、オンワード・ホールディングスは韓日関係悪化に伴う売上高減少を原因として来年2月までに韓国内の事業を撤退すると発表した
- また、8月に訪日した韓国人旅行客は前年同月比48%減少するなど、日本は主要な観光産業にも打撃を受けている
…。
ここでも、「日本の輸出規制は韓国に何の打撃もない」、「むしろ日本の方が大きな打撃を受けている」、といったロジックが展開されているようですが、このあたり、本格的に意味が分かりません。
韓国自身、9月11日に、「日本の輸出規制によって韓国が深刻な被害を受けた」日本を世界貿易機関(WTO)に提訴しているからです(『韓国のWTO提訴はセルフ経済制裁への近道』参照)。
「深刻な被害を受けた」のか、「被害はゼロ」なのか、いい加減にしてほしいものです。
(なお、わりとどうでも良いことかもしれませんが、『韓国人観光客が減って旅行収支が過去最大』などでも触れているとおり、韓国人観光客が減少したところで、日本の旅行収支には大した影響が生じていないというのも事実でしょう。)
ホンネは「輸出規制撤回を」
さて、先ほどの中央日報によれば、この報告書を執筆した人物は、次のように述べているそうです。
「韓日の対立が長期化した場合、韓国だけでなく日本、さらには東アジア経済にマイナスの影響を与えるため、両国は対立を解消するための出口戦略を設けるべきだ/長期化に備えてサプライチェーンの安定化を推進し、リスクを最小限に抑える必要がある」
はて。
自分で「韓国政府も企業の輸入先の多様化と国内生産を支援したことで実際の影響は大きくない」などと述べておきながら、「サプライチェーンにマイナスの影響が生じる」という下りについても、理解に苦しみます。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただし、こうした韓国側からの理解に苦しむ反応を見ていると、韓国が本音では日本の輸出管理適正化措置を撤回して欲しいと感じている、ということだと思います。
もちろん、現時点において日本の輸出管理適正化措置自体、(あくまでも表向きは)韓国にはさほど実害が顕在化していない、ということは間違いないでしょう。
ただ、日本が韓国を「(旧)ホワイト国」リストから除外したことが、彼らのプライドを痛く傷つけたことに加え、「その気になればいつでも日本が戦略物資の対韓輸出を停止することができる」という状況に、韓国がおびえている、ということではないでしょうか。
だからこそ、「韓国は日本による輸出管理適正化措置には困っていないが、日本の方が困っているはずだから」などと主張して、日本の譲歩を迫っている、といったところが実情に近いと思います。
もっとも、自称元徴用工問題などで日韓関係が悪化している中で、追い打ちをかけるように韓国側が日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)の破棄を打ち出してみたり、日本をWTO提訴してみたり、といった瀬戸際外交に乗り出していることは、日韓関係がもはや末期的状況にあることを示唆しているように思えてならないのですが…。
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折角韓国側から「何の影響も無い。」と申し出て居られるのですから、それを尊重して、現状維持で良いと思います。
妙に変更したのでは、韓国様に失礼だろ。
御意の通りですね。
昨日、NHKでもやってましたよ、9時のニュースで。
ビールの韓国向け輸出激減とか、観光にも影響がとか。
で後者について下記の方々がインタビューされてて、
「ビジネスに支障が出て、困ってます」と。
・LCCの大阪支社長
・大分のホテルの副社長
両方とも韓国人なんだな、これが。最後に例のムンムン
似のアナが、「一刻も早い関係改善を望みます。」
「それはギャグでやっているのか?」
(魁!クロマティ高校より)
名無しAさま
随分と分かりやすい印象操作ですね。
NHKも、韓国は被害無くて日本に被害が出ている事にしたい側です。今朝のラジオでも、難しい問題があるからこそ、日韓首脳会談をすべてと言ってました。
韓国の国際法違反を、難しい問題と抽象的な表現にすり替えて、韓国が悪い事が分からないように、印象操作をしていると思います。
この日本マスゴミの、印象操作は、止む気がしませんね。
だんな様
私としては、マスコミが「バカを晒していることに気付いていない」のか「バカにされていることに気付いていない」のか「バカであることに気付いていない」のかが、気になります。
それとも、ピエロを演じても韓国推しをしなくてはならない何か崇高な使命を帯びているのでしょうか?
自転車の修理ばかりしているさま
私は、中国朝鮮の工作員だと考えています。
マスメディアの情報操作は、工作活動の基本で、まだかなり有効だと思います。
彼らが何を考えているかを考えるより、工作員と決めつけて考えた方が、思考のステップが減って楽ですよ。
更新お疲れ様です!
首尾一貫した言動を首尾一貫してとる事が出来ないという首尾一貫したダブスタ姿勢は、韓国や北朝鮮、似非リベラルに共通しているところで、同類とか同族の類いなのだろうなぁと思います。
韓国にはこのまま「自己評価が高過ぎるメンヘラリスカブス」として突き進んで頂きたいですね!
相変わらず韓国の理解力の低さには閉口しますね。
「誰かに被害を与えたい」目的ではないのに。
韓国に被害があろうがなかろうが日本にとってはどうでもいいのです。
改めて韓国とは緩やかに断交へと向かって欲しいと願うばかりです。
過去に会計士様がおっしゃられていたとおり執拗なプロパガンダ攻勢が続いているようです。主要なオールドメディアが某国に乗っ取られている感じがして何だか寒気を感じます。我が国にまともなマスコミは何社残っているんでしょうか?
賛成です。
韓国がここまで受け入れられないことをしても、非難する報道がない。
不自然だと思うようになってきました。
普通なら韓国のおかしい所を、特集するとおもいます。
韓国に明らかに悪意があるのに、それを隠して報道している感じを受けます。
シンシアリーさんによれば、それは韓国人のよくやる手だとか。
社内の韓国系の方が、力を持っているんだろうと思いました。
日本の輸出管理適正化→韓国に悪影響はない
韓国の不買運動→日本に悪影響を与えてる
この状況で関係改善を図りたいなら、悪影響を与えている韓国が、それを辞めるという選択肢だと思うのですが・・・・
まぁ韓国からしたら不買運動は日本の輸出管理適正化への対抗だから、それを辞めれば不買運動も自然と終わるということなのかな?
ということで、以前紹介されてた中央日報のパクリですが、あたしからの提言なのです♪
「文大統領はハロウィンをきっかけにGSOMIA破棄を撤回する一方、約束破りと反日活動に対して心を込めて謝罪し反省する立場を明らかにしなければならない。安倍総理も韓国の真正性のある謝罪を前提に「韓国が困るなら、賠償を受けない」と宣言し、適切な輸出許可申請に対して許可を与える」
韓国経済に影響がないのであれば、とても結構。
このままホワイト国除外を今後も永久に続けていけばよろしいだけ。
お忘れの方が多いかも知れませんが、文大統領が、もう日本に負けないと言ってた通り、韓国にとっては、日本との経済戦争だと思っているんだと思います。随分甘ったれた戦争ですけどね。
負けているとは言えないのて、韓国は被害0だけど、日本は被害が大だと言う、大本営発表が続いています。
韓国は、国民に対して、そう言う事にしないと、一人相撲をしている理由が、説明出来ないのです。
新宿会計士さんか引用している以下の文章ですが。
「韓日の対立が長期化した場合、韓国だけでなく日本、さらには東アジア経済にマイナスの影響を与えるため、両国は対立るための出口戦略を設けるべきだ/長期化に備えてサプライチェーンの安定化を推進し、リスクを最小限に抑える必要がある」
ここで重要な単語は、「(東)アジア」です。
韓国は、韓国の事を、韓国だけの事と認めたくない時に、周辺を巻き込んで、「アジア」を使うことが、多いです。
また、もっと話を大きくしたい時には「世界が」になります。要は、自らを正当化する為に使う嘘で、朝鮮式の誇張表現です。
「アジア」の使い方に関しての例は、海外で韓国人がツリ目のポーズをされた時に、アジア人に対する侮辱だと言います。「世界が」は、良くご存知の通り、慰安婦、旭日旗、福島の放射線などが、相当します。
「アジア」や「世界」を、「韓国」置き換えて、その後の文章に、大体本音が来ます。
「東アジア経済にマイナスの影響を与えるため、両国は対立るための出口戦略を設けるべきだ」
→「韓国経済にマイナスの影響を与えるため、両国は対立るための出口戦略を設けるべきだ」
となります。
以下の文章も続けて読むと、「ああ韓国困ってるんだな」ということが、分かります。
このように、韓国の記事や発言は、嘘がないケースは、無いと考えた方が良いです。
コピペが上手くいかなかったようです。
両国は対立る→両国は対立を解消するための
でお読み下さい。
失礼しました。
ふと気付いたんですが、韓国も日本をホワイト国から外しましたよね。
日本が韓国をホワイト国から外したのは、GSOMIA破棄の再検討することで元に戻せと要求しています。
日本をホワイト国に戻すとか、IMF提訴を取り下げる話は、出て来ません。
気づいてみると、とてもふざけた要求だと思います。
これも、韓国の論点ずらしで、騙されたのかなと思います。
だんな様
言われてみればそんなこともありましたね
ホワイト国に入れる・入れないは、その国の勝手だから、どうでもいいやって思ってて忘れてました♪
恐るべし韓国の深慮遠謀 交渉の達人なのです♪
というわけで、関わると碌なことが無さそうなので、出来るだけ疎遠な関係を目指すのが良いと思います (*´▽`*)ノハーイ
またまた、ムンさん発の対話しようプロパガンダ。
で、日本も発表、説明会を開きます。条約を守る重要性の説明会。
ぜひとも日本にお越しください。
文さん、日本に来てお土産なしでお帰りいただく怪談。
来ないだろうな〰w