先ほど『【速報】韓国政府、日本をホワイト国から除外』で、「韓国も日本をホワイト国から除外する予定だ」とする話題を紹介しました。といっても、所要により外出していたため、取り急ぎ、タイトルのみを投稿した格好です。ようやく時間が取れましたので、ごく簡単に所見を述べておきたいと思います(なお、グローバルサプライチェーンから韓国の措置が「セルフ経済制裁」になってしまう可能性については、本稿ではなく、明日以降、どこかで議論したいと思います)。
記事の訂正
当ウェブサイトでは『「日韓GSOMIA破棄検討」?それカードやない、地雷や!』のなかで、経産省が公表している3ページ物のPDFの資料を紹介したのですが、これによると日本が「グループA」に指定している国の数は27ヵ国だ、という話題を紹介しました。
このなかで、私自身、うっかり事実関係を確認せずに、「4つの国際管理レジームすべてに参加している国は、日韓を含めて28ヵ国だ」と申し上げてしまったのですが、これについては「4つの国際レジームすべてに参加している国は、日韓を含めて30ヵ国だ」に訂正しておきたいと思います。
改めて説明すると、「4つの国際輸出管理レジーム」とは、輸出品の武器転用などを防ぐための、次の4つの国際的な仕組みのことです。
- NSG(原子力供給国グループ)→原子力専用品、技術などを規制
- AG(オーストラリア・グループ)→化学兵器、生物兵器を規制
- MTCR(ミサイル技術管理レジーム)→ミサイルや無人航空機などを規制
- WA(ワッセナー・アレンジメント)→武器、汎用品などを規制
そして、この4つの国際管理レジームすべてに参加している国は、日本自身、および日本が「ホワイト国指定」している国(※韓国を含む)の28ヵ国に加え、トルコ、ウクライナも含まれます。
参考:4つの国際管理レジームすべてに参加している30ヵ国
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国、トルコ、ウクライナ
日本がこれまで「ホワイト国」指定していた国は、この30ヵ国から日本とトルコ、ウクライナを除いた27ヵ国だったのですが、今後は「ホワイト国」から韓国も除外するとともに、呼び方を「グループA」に変更する、というのが、今後の日本の輸出管理体制なのだそうです。
日本が今後、「グループA」(旧「ホワイト国」として扱う国)
上記30ヵ国から日本を除外した29ヵ国のうち、韓国、トルコ、ウクライナを除く26ヵ国
なお、経産省は今後、武器転用を防ぐための輸出管理制度については、「ホワイト国」「非ホワイト国」という表現を使わず、「グループA~D」という呼び方で、キャッチオール規制とリスト規制の2つの規制を運用していくそうです(図表)。
図表 国別・品目別許可手続
カテゴリー | 具体的な国 | キャッチオール規制 | リスト規制 |
---|---|---|---|
グループA:旧ホワイト国 | 27ヵ国から韓国を除いた26ヵ国 | 免除 | 一般包括か特別一般包括か個別許可を適用 |
グループB:レジーム参加国 | 4つのレジームのいずれかに参加している国 | 適用対象 | 特別一般包括か個別許可を適用 |
グループC:レジーム参加国以外 | A、B、Dのいずれにも該当しない国 | 適用対象 | 特別一般包括許可か個別許可を適用 |
グループD:懸念国 | いわゆる懸念国 | 適用対象 | 個別許可のみ |
(【出所】輸出貿易管理令、経産省資料等を参考に著者作成)
ちなみに「懸念国」とは、次の10ヵ国です。
参考:いわゆる「懸念国」
アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、イラン
韓国はグループAではなくなりましたが、引き続きグループBという優遇措置を受けることができますし、今までの「一般包括許可」は出ませんが、品目によっては「特別一般包括許可」を受けることもできますし、「特別一般包括許可」を受けることができる品目も、グループCより優遇されています。
韓国が「WTO違反」を実践へ!
以上を踏まえて、あらためて本日の話題です。
韓国政府は本日、日本を「輸出管理上のいわゆるホワイト国」から除外すると発表したそうです。ここでは韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に掲載された次の記事をもとに、事実関係を確認しておきましょう。
韓国 ホワイト国から日本除外=輸出規制に対抗(2019.08.12 15:31付 聯合ニュース日本語版より)
- 韓国の成允模(せい・いんも)産業通商資源部長官は12日の記者会見で「ホワイト国(輸出管理の優遇対象国)」から日本を除外する制度の改正案を発表した
- 韓国政府は現行の戦略物資輸出入公示上のホワイト国である「カ」の地域を「カの1」「カの2」と細分化し、従来のホワイト国はカの1、日本はカの2に分類する
- 成長官は「新設されるカの2の地域には国際輸出統制(体制)への参加国のうち、国際輸出統制の原則に基づかず輸出統制制度を運営する国が含まれる」「今回の公示改正案では日本がカの2の地域に分類される」と説明した
- 成長官はまた、今回の見直しは定例的な輸出管理体制改善の一環だと説明したが、事実上、日本が韓国をホワイト国から除外したことへの対抗措置だ
日本が韓国を「ホワイト国」から除外した措置は、自称元徴用工問題に対する報復に見えなくもありませんが、あくまでも名目上は「輸出管理上の運用の見直し」に過ぎませんし、当ウェブサイトで繰り返し何度も報告しているとおり、事実上、「経済制裁」と呼ぶには非常に弱い措置です。
しかし、今回の韓国側の措置については、明らかに「日本が韓国をホワイト国から除外したことに対する対抗措置」でしょう。
韓国は日本の経産省が7月1日に『韓国向け輸出管理の運用の見直し』を発表した直後から、「この措置はWTOルール違反だ!」などと大騒ぎしてきた格好ですが、「韓国政府がWTOルール違反だと主張していた措置」を「韓国政府自身が」講じたわけですから、これはなかなか興味深いブーメランです。
韓国のホワイト国指定は日本と範囲が異なる
本論を進める前に、聯合ニュースの記事で、気になる下りが1つあります。
これによると、現在、韓国が指定している「ホワイト国」は全29ヵ国だそうです。
「韓国が指定しているホワイト国は29カ国で、輸出統制に関する国際的な取り決め「ワッセナー・アレンジメント」、原子力供給国グループ(NSG)、オーストラリアグループ(AG)、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)の四つの国際輸出統制の枠組みに入っている国が対象だったが、日本を除外することで28カ国に減る。」
前述のとおり、4つの輸出管理レジームに参加している国は、日韓を含めて30ヵ国です。
これに韓国自身を除外した29ヵ国を、韓国はそのまま「ホワイト国」に指定していた格好ですので、おそらくウクライナとトルコも「ホワイト国」に含められているということでしょう。これには正直、驚きました。
もちろん、どの国を「ホワイト国」「非ホワイト国」に含めるかはその国の判断であり、ウクライナやトルコを「ホワイト国」に含める措置自体が、何か非難されるべき話ではありません。
しかし、日本よりも「ホワイト国」の範囲が広いという事実自体、韓国政府が「4つの輸出管理レジームに参加している国を、何も考えずに『ホワイト国』扱いしている」という証拠に見えてしまいます。実際、聯合ニュースは、韓国政府高官の発言を次のように紹介しています。
「産業通商資源部の朴泰晟(パク・テソン)貿易投資室長は『毎年1~2回、輸出統制体制を補完、改善してきた』として、『従来、四つの輸出統制の枠組みに参加しているかしていないかだけで地域を分類することは制度の運用上、問題点をしっかり反映しないということを考慮し、変更することになった』と説明した。」
このこと自体、やはり、韓国の輸出管理の運用が果たして適正なのかについて、改めて疑念を巻き起こすものでもあります。
現に韓国は4つの輸出管理レジームすべてに参加しているにも関わらず、世耕弘成(せこう・ひろしげ)経産相は7月3日付のツイートで、韓国が欧州連合(EU)からは「非ホワト国」扱いされていると説明しています。
正直、韓国が日本を「ホワイト国」から外したければ好きにすれば良い、ということだと思いますし、日本政府もおそらくそのような反応を見せるのだと思います。
ホンネは最後に現れる
さて、問題の聯合ニュースの記事の続きを読みましょう。
記事によれば、成氏は次のように述べたのだとか。
「意見公募の期間中、日本政府が協議を要請すれば、韓国政府はいつ、どこでも応じる準備ができている」。
おそらくはこれがホンネでしょう。
要するに、日本が韓国をホワイト国から外したことに納得がいかないという姿勢が垣間見えますが、「わが国も日本をホワイト国から外してやる」、「どうだ、それは嫌だろう?」「嫌なら協議に応じろ」、という姿勢が見て取れるのです。
ということは、韓国政府はやはり、「日本をホワイト国から除外すること」を「交渉材料」にしようとしているのではないでしょうか?
先週でいったん落ち着いたかに見えた「日本の輸出管理問題」が、今回の決定により、韓国国内で勝手に再燃し始めるのかどうかには、要注目です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、輸出管理上、日本が韓国から輸入している製品、素材のたぐいで、韓国からの輸入が完全にストップしてしまうと代替がきかずに困る、といった製品は、実際のところ、あまりありません。
サプライチェーン上は、「日本→韓国→日本」、という具合に、基幹部品・素材はだいたい日本が握っていて、韓国は「モノづくり大国・ニッポン」の工程の一部分を分業している(分野によっては工程の一部をやや強引に奪って行った)、という姿が正確な描写だと思います。
もちろん、短期的には韓国から製品が輸出されなくなると、日本でテレビなどの生産ができなくなる、という品目はありますが、一般にそれらの製品は、ホワイト国から除外されただけで禁輸措置が適用されるということはありませんし、もし韓国が液晶パネルの輸出を禁止すれば、それこそWTO違反です。
その意味で、正直、「やりたければどうぞ」、としか言い様がありません(※もっとも、日本企業の多くがリスク管理の観点から自主的にサプライチェーンから韓国を外す動きが加速する可能性もありますが、このあたりはまた別稿で検討します)。
ただ、8月15日を迎えるにあたり、韓国側がさらに激昂していけば、「日本のホワイト国除外」だけでなく、さらには日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)破棄通告にまで至る可能性がゼロとは言えません。
「落ち着いた」と思ったら落ち着かない。
それが日韓関係というものなのかもしれませんね。
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今日は12日、
地獄の釜が開くのは16日。🐧
明日は韓国内の特別なイベントは無いけれど
14日は「売女の日」
15日は「闇復節」
どんなに盛り上げてくれるか楽しみ。🐧
相手に喜ばれる事をやって相手から好条件を引き出すのも、
相手に嫌われたり怒りを買ったりする事をやって相手から好条件を引き出すのも、
好条件を引き出せるのであれば一緒だ、
と韓国は考えているんでしょうかね?
韓国の交渉術って、
中国みたいに即殴らない日米みたいな国には短期的には有効かも知れないですけど、
最終的には日米であっても韓国へのしっぺ返しをするだろうって事で、
ホント頭が悪過ぎるなぁと。
「意見公募の期間中、日本政府が協議を要請すれば、韓国政府はいつ、どこでも応じる準備ができている」
速報のコメントにも書きましたが、こちらにも。
日本が「事務的な詳細を伺いたいので説明会を開いて欲しい。(協議はダメ、あくまで事務的説明会)」と言って経産省の事務官が押しかけてて詳しく聞いてみて欲しいところです。きっとぐだぐだな説明会になるような気がします。
しかし、事務的な内容なら関連する企業にとって重要な情報ですので、もし開かれるのならその議事録をそのまま公開してみて欲しいなと。
自己レスです。
韓国の対日優遇除外「影響少ない」 経産相
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO4857619015082019EAF000?s=2
> 韓国は日本から要請があれば協議に応じる姿勢を示しているが、日本側はあくまで協議ではなく説明を要求する構えだ。
世耕経済産業相、さすがです。
場外乱闘は超得意だけど、ヒラ場での喧嘩の仕方を知らないのかもしれないですね。
「対抗手段」と言えば、相手が自分のカードを引っ込めたくなるほどの、打撃を与えることを言うと思うんですが、
どうも、彼らの言う「対抗手段」は、日本の経産省がやったことと、同じことを真似してやることだと思っているようですね。
これだと・・・相手が折れるわけないですよね。
ひとえに彼らが相手の気持ちを読もうとしないことに尽きると思いました。
同じことを真似してやってるのに、「協議には応じる」と言う点は日本と違っていて。
非対称で負けてるじゃん、と国内からツッコミないんでしょうかね。
彼らが良く言う「頭を後ろから撃つ」以外のケンカの仕方ができないんでしょうね。
横流しを否定できる証拠書類等とともに管理不十分の点を詫びればこじれなかっただろうに。
どんどん自分の首を絞めてますね。
もっとも、横流ししていない証明すらしようとせずにいきなりファビョーんだったので
横流ししてるか、していないとしてもそれを証明できないほど杜撰な管理なのか、どっちにしろ
ホワイト国除外は免れなかったけど。
韓国側に原因があるのにブチ切れてるのは他国にも知って欲しい。
>韓国が日本をホワイト国除外、ホンネは「協議したい」
ホンネがどうであれ、約束を守らない国と協議する意味がないでしょう。
>>韓国の輸出管理の運用が果たして適正なのかについて、改めて疑念を巻き起こすものでもあります。
約束を守らない、論理破綻でもケンチャナヨですから管理運用出来なくて当然ですよね。
自国の経済知らんぷりで何時まで無駄なカラ騒ぎをするつもりなのでしょうね。
こんな話しも
>>実は、日米防衛当局者の間では「文政権がGSOMIAを破棄する可能性が高い」「日本に責任を押し付けて、中国や北朝鮮に接近する兆候がある」と分析している。
日米情報当局関係者は「ホワイトハウスには『北朝鮮は戦略的な敵だが、韓国の文政権はもっと問題だ』という分析がある。明確に『韓国を切るべし』という強硬意見もある。
なるほど韓国はトランプゲームでもやってるつもりなんでしょうね。おそらく大富豪(一部では大貧民とも呼称される)あたりのゲームが近そうだが、どんなローカルルールでも同じ強さのカードを後出しできるルールはないので反則負けなんだが、どんなトランプゲームをやってるつもりなんだろうか。
いやまあ本当に大富豪なら、手持ちのカードが多ければ多いほど勝つのが面倒な場合もあるので違うなら良かった。
今後注意しなければならないのは韓国に寝技に持ち込まれて引き分けに持ち込まれないようにすることですね。日本人は折衷案とか妥協案とか「なあなあ」が大好きですから本当に気をつけないと。
米国も韓国を非ホワイト国にしてますよね?
そこには文句言わないんだ。
https://trendnews-diary.blog.so-net.ne.jp/2019-07-15
彼らの思考を想像すると
「日本は朝鮮半島を『不法』に植民地支配した道徳的に劣る国である。道徳的に優位な韓国が日本から享受しているモノやコトなどは、日本の朝鮮半島への贖罪を韓国が仕方なく手助けしてやっている」ということでしょう。
韓国は日本の保護国からいつ脱するのだろうか。
日本の支援や協力や優遇措置が無くなれば、北朝鮮の様になるのは間違いない。
文大統領はそれを目標にしているのだから、始末が悪い。
>韓国が日本をホワイト国除外、ホンネは「協議したい」
うーん、そうなんでしょうかね。私はもう一つ疑っています。
韓国は日本側が協議には応じてこないだろうと見越しているのではないでしょうか。それでいながら、いつでも協議に応じるとあえて日本に言う。
徴用工に対しては、韓国は日韓請求権協定の手続きに全く応じなかったわけですが、それだけを見ると韓国に非があるように見えます。
しかし、後から「1+1」基金などを提案して日本に拒否られています。日本側からの輸出管理に関しても、日本が協議を拒否しています。
つまり、韓国は話し合いで解決しようと誠意を見せているのに、日本がそれにさっぱり応じようとしないという論陣を張るつもりなのではないでしょうか。要するに、傲慢な日本が悪い、韓国は被害者だと世界に向けて訴えるわけです。もちろんそれを世界中のマスコミがサポートするのでしょう。
そういうのが韓国の手口のように思えますが、いかがでしょうか。