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N国党は「次なる選挙互助会」なのか

「NHKから国民を守る党」、略して「N国党」が、これから「台風の目」になるかもしれません。本日、臨時国会が開催されましたが、令和初の国会開会式において、天皇陛下が御即位後初めて国会にお出ましになられ、お言葉を述べられました。ただし、今回の国会はあくまでも臨時会であり、本格的な論戦は秋の通常国会召集以降に始まります。こうしたなか、個人的に注目しているのは、ずばり、「次に衆院の解散風が吹き始めたときに、N国党が『第二の希望の党』になるかどうか」、です。

参議院の勢力を見る

本日、「第199回臨時国会」が召集され、先ほど開会式が開かれ、午前の参議院本会議では自民党の山東昭子氏が議長に、立憲民主党の小川敏夫氏が副議長に、それぞれ選ばれました。また、午後3時からは、天皇陛下が御即位後初めて国会に御臨席になられ、お言葉を述べられました。

ただし、今回の臨時国会は、常任委員会の委員長など院の構成を決めるためのものであり、法案の審議などは行わず、5日に閉会するとしています。

ここで、参議院の会派の最新データを確認しておきましょう。引用するのは参議院『会派別所属議員数一覧(第198回国会)』のものです(図表)。

図表 参議院の会派別所属議員数一覧(抄)
会派名 議員数 議席率
自由民主党・国民の声 114 46.53%
立憲民主党・民友会・希望の会 35 14.29%
公明党 28 11.43%
国民民主党・新緑風会 26 10.61%
日本維新の会 16 6.53%
日本共産党 13 5.31%
沖縄の風 2 0.82%
れいわ新選組 2 0.82%
碧水会 2 0.82%
みんなの党 2 0.82%
各派に属しない議員 5 2.04%
合計 245 100.00%

(【出所】参議院『会派別所属議員数一覧(第198回国会)』より著者作成)

先日の参院選の結果、自民党は過半数(123議席)を9議席下回り、単独過半数を失ったのですが、一方で最大野党・立憲民主党が主体となった会派が保有する議席数は自民党の3分の1以下に過ぎません。

相変わらず野党が弱いなかで、もう1つ目につくのが、「沖縄の風」「れいわ新選組」、「碧水会」、「みんなの党」という、2議席ずつの会派が合計4つも出来上がった、という事実ではないでしょうか(ちなみに辛うじて政党要件を維持した社民党は、参院では立民と同一会派に属しています)。

立花氏が名を捨て実を取る?

こうしたなか、当ウェブサイトとしても注目しているのが、「NHKから国民を守る党」(N国党)の動きです。N国党の代表の立花孝志氏は本日、参議院議員として初登院しましたが、結局、「みんなの党」の渡辺喜美氏と会派を結成し、事務局に届け出たようです(渡辺氏はN国党への入党を拒否)。

この点、先日の『丸山議員がN国党参加の一方、NHKはネット課金目論む?』でも紹介しましたが、立花氏のスタンスは明快です。それは、彼の掲げる「NHKをぶっ壊す」という公約(?)に賛同さえすれば、誰でも入党できる、というものです。

また、立花氏は自身のツイッターで、「総務委員会」には入れなかったものの、「予算委員会」に入ったと述べています。

なかなかおもしろい(?)展開です。

予算委員会だと、何でも質問できますし、ある意味で「聞きたい放題」です。立花氏が登場する会の予算委員会について、果たしてNHKは審議中継できるのでしょうか。

さらには、次の産経ニュースの報道によれば、立花氏は引き続き、「国会議事堂前からNHKをぶっ壊す」、「先生方が既成政党を裏切ってうちの党にお越し頂くのをお待ちしている」、などと怪気炎を上げたようです。

N国・立花党首が初登院 「首相への質問を練習した」(2019.8.1 12:28付 産経ニュースより)

こうしたなか、NHKは最近、立花氏の存在を念頭に、受信料を支払わないことなどについての「法的措置」を辞さない構えも見せているようですが、下手に大騒ぎすれば、却って国会で「NHK改革」が話題になってしまうのもまた事実です。

その意味で、今後、NHKとしても対応に苦慮するのではないでしょうか。

なかなか評価が難しいが…

先月の参議院議員通常選挙の結果については、なかなか評価が難しいところです。

確かに自民党は単独過半数割れしましたが、連立与党(自民+公明)でみれば、しっかりと過半数を維持していますし、これに維新を加えれば158議席で、あと5議席もあれば、改憲発議に必要な3分の2以上(つまり163議席)に届きます。

さらに、国民民主党や無所属議員などを改憲勢力に寝返らせ、彼らがいっきに「大連立」に加わるようなことがあれば、公明党を連立与党から排除しても改憲の発議が可能になるかもしれません。

そうした「ウルトラC」を実現する触媒となる可能性があるのが、まさに立花氏ではないでしょうか。

実際、『N国党をどう見るか NHKと「国民の敵」論』でも述べたとおり、立花氏は参院選の直後に、「NHK改革と憲法改正」をバーター取引しても良い、といった見解を、インターネット番組で表明していたそうです。

NHK改革なら改憲賛同 N国党代表がネット番組で(2019.7.24 00:22付 産経ニュースより)

このように考えていくと、良いか悪いかは別として、立花氏が1つの「台風の目」となっていく可能性は十分にあります(それが良いか悪いかは別として)。

さらに、立花氏のスタンスは「NHK改革にさえ賛同してくれれば、あとはどうでも良い」、というものであり、実際、すでに衆議院では丸山穂高議員がN国党に参加していますが、どこかの時点で今度は国民民主党あたりからN国党に雪崩を打って議員が参加する、という展開もあるかもしれません。

次の焦点は「選挙互助会化」?

ところで、政治の流れという意味では、2017年9月の衆議院解散は、非常に興味深い事件でした。

なぜなら、当時の最大野党だった民進党が、衆議院議員選挙で候補を公認せず、「自爆スイッチ」を押して丸ごと「敵前逃亡」したからです(『自爆スイッチを押した前原の「敵前逃亡」』参照)。

民進党は、当時、東京都議会選挙で快勝し、勢いに乗っていた小池百合子都知事が主体となって結成された「希望の党」に集団で乗り移ろうとしたものの、小池都知事が「排除の論理」を持ち出したことで、弾かれた格好となった民進党左派が立憲民主党を作ったというのも、興味深い事件でした。

それはさておき、「希望の党」は事実上の選挙互助会として民進党右派に乗っ取られた格好となったのですが、実際、2018年には参議院で残っていた民進党と合流する形で「国民民主党」に化けるという意味で、見事な「政党ロンダリング」が行われました。

ただし、このインターネット時代、下手な政党ロンダリングで騙せるほど有権者は甘くありません。

現在の支持率だと、国民民主党は衆議院議員総選挙で壊滅的な敗北を喫するでしょう。したがって、次に「解散風」が吹き始めれば、おそらく国民民主党に所属する衆議院議員は一様に慌てはじめるのではないでしょうか。

この点、「NHKをぶっ壊す」以外にこれといった政策のないワンイシュー政党というのは、選挙互助会としてはある意味で最強です。2017年のときのように、「雪崩を打って合流する先」としては、N国党はちょうど良い組織なのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • NHKは「法的措置を取る」と言っているが、上から目線に感じられて仕方ない
    立法府に身を置く立花議員にはぜひその法律を変えてもらいたい

  • N国党が議席を取ったことを、自民党を含めた既成政党が正しく認識できるかどうかということが、一番の問題だと私は思っています。

    NHKの問題に対しては、与党も野党も、既成政党がまったく無視していたように私には見えます。本来、心ある政党であれば、国民の要望や不満をきちんと吸い上げて、政策に反映させるはずなのですが、それが全くできていなかったと思います。だからこそこれだけ票を集めることができた。

    仮に、青山繁晴議員あたりが、NHKのスクランブル化を国会で主張していれば、N国党は誕生していなかったでしょう。つまり、既成政党が、国民の心情と乖離している、国民と向き合っていないということの表れです。

    こうした、既成政党の怠慢は、今後どのような形になるか分かりませんが、いずれ大きなウネリとなって覆いかぶさってくると思います。このまま手をこまねいて見ているだけであれば、自民党もいずれ消滅かと思ってしまいますね。

  • N国党が「次なる選挙互助会」になるというのは、大いにあり得る読みですね。その結果何が起こるのか、楽しみなような、怖いような。

    希望の党の「排除する」は「安全保障や憲法観という根幹部分で一致していくことが政党の構成員として必要最低限」という筋の通ったものでしたが、言葉の印象が悪く、小池百合子の株を下げ、希望の党の勢いを殺ぐ結果になりました。

    NHKから国民を守る党の場合、入党あるいは党公認候補の条件が「NHKをぶっ壊す」に賛同するか否かだとすれば「排除の理論」ほどには物議を醸すことはなく、思想信条の相容れない候補者がひしめくことになります。

    衆議院選挙の場合、小選挙区ではN国党候補者が善戦する見込みはないと思います。比例代表では一定の票を取るでしょう。そうなると拘束名簿の順番の奪い合いですね。もしかしたら内輪もめで蠱毒の壺になるかもしれません。

    参議院と違って衆議院の場合は、たとえN国党候補者が大勢出てきても、当選者は少ない予感がします。

    • 今さらですが、小池百合子が「排除」ではなく変節を促す発言をしていたら、あれほど世間から反発されなかったでしょう。

      例えばこんな風です。

      「公認申請する方々には、以前に在籍していた政党と我が党(希望の党)の方針が異なる事があることはご承知いただいていると存じます。党の公認候補となる以上は、我が党の安全保障や憲法観にご賛同いただきたたくお願いいたします。」

      N国党のワンイシューは、比べると敷居が低いですね。互助会としては便利です。

      • いやぁnhk壊すだけに全身全霊かけてギャンブル以上の国政ギャンブルで当選してともうこれ訳分からないですね。
        しかもnhkが韓国寄りの報道で与党や政府に訂正をされ続けて敵対関係にある訳ですからnhk改革に自民党が諸手を挙げて賛同しやすい&国民から嫌われてる状態がセット………つい数年前までは考え付かない状態かと……

        まさかマスゴミ最強のnhkから血祭りに上げられるとは凄い時代ですね令和

  • N国はその目標を果たす為に機能するなら良い
    れいわは立憲票を食う為の装置であるなら良い
    (今回はその装置としては、かなり機能したと思います)

    まともな野党の維新はかなり勝ちましたし。
    あまり大きくなられても困るが、今のところは大して文句は無いです
    立花氏と太郎のキャラの強さのせいで、枝野など全く埋没してしまいました

    N国がNHKのスクランブル放送という目標を果たしたなら、
    立花氏には「財務省から国民を守る党」という新たなワンイシュー政党を
    立ち上げてもらいたいです

    • いや、もし立花議員が財務省の増税路線・財政再建路線を問題だと本気で思うのならば、速やかに「NHKと財務省とから国民を守る党」という2イシューの党へと名乗り変えれば良いわけで。どちらも国民にとっては非常に分かりやすいイシューですから。

      ただ、財務省あるいは増税と戦うというスタンスになると、共産や立憲民主などの左翼に乗っ取られかねないのが最大の問題あるいは危険性でしょうね。彼ら左翼も本質はバラマキ財政路線ですから。

      但し、左翼のバラマキは、バラマキ先が在日永住者(特に南北朝鮮系や大陸チャイナ系)や被差別部落出身者や障害者やシングルマザーといったノイジーマイノリティに属する個々人への直接的な現金バラマキであって、生産性の向上による将来の産業育成や社会インフラ・災害対策といった国民生活の向上など、将来の日本に有益な財政拡大とは無縁な方向で、ばら撒いた金が一部の人間の懐へと消えて何の社会的効果ももたらさないのが致命的なのですが。

    • N国はNHKを潰す。
      れいわは太郎ちゃんを繰り上げ当選させる。
      どちらも選挙中から分かりきった事。

      どちらのワンイシューが国民の為になるかは明白ですね。

      N国が互助会政党になるとしても、ゴミ政治家達がワンイシューの手段に使えるという点で、廃物利用になるだけなんぼかマシかもしれません。

      小池百合子の時は、乗っ取られなくても彼女の出世欲の道具になるだけで、国民の利益にはなりませんでしたからね。

  • N国党、ぜひ頑張ってもらいたいです。
    NHKに対する不満、全力でぶつけて来て頂きたい。

    どんな動きをして成果を出してくれるのか、今後の活動に注目していきたいと思います。

  • 安倍首相の後任ってどうなるのだろう?
    太郎や立花氏見てると、国政運営の立ち回りだけでなく、単純に首相の存在感という意味でも欠けるわけにはいかないと思う

  • ワンイシュー政党のメリット、デメリットを分析してみる必要がありそうですね。
    メリットは選挙民に対する政策の解りやすさや、左右のイデオロギーの違いを乗り越えられるとか、
    ある意味プラグマティックな強いエネルギーを集中しやすい。
    しかし一方で「その他の政策」が見えない、思想の異なる政治家の烏合の衆になり
    いつ分裂するか解らない政党として信頼性や安定感のなさも共存するわけですが
    既成政党の終わりなき分裂野合の茶番劇を散々見せられてきた我々としては、「N国の方がまだマシ」
    「害が少ない」ということで自民党に対する不満票の受け皿になる可能性は高そうな気もします。

  • なるほど、行き場を失った議員の最終的な受け入れ先がN国党になるということですね。その先に何が起こるのかはわからないけど、なんだか楽しみな感じではあります。ちなみに、「NHK撃退シール」なるものを入手してみました。これをドアに貼るかどうかは、これからの展開を見守って判断しようと思っています。

  • 正直、N国党とは距離を置こうと思っていましたが、時代にそぐわなくなった組織の既得権益を一度取り上げるためには劇薬もやむなしかと思い始めました。
    この際、NHKがいつも言う「公共放送が~」というお題目じゃなくて、スクランブル放送を前提とした制度設計を本気で検討して、現状とそれを比較できるように提示してほしいですね。
    N国党がスクランブル放送を前提としたグランドデザインを構想として既に持っているかどうかは知りませんが、これからは大多数になるほどと思わせるような論理展開が必要になってくると考えます。

    ちなみに、調べてみても考えてみても、NHK BS放送が今現在スクランブル化されてないことについて、大義名分が全くわかりません。
    とりあえずそこからスクランブル化すれば、マンションの共同アンテナ、ケーブルのパススルーやSTB経由などで受信可能性があると言われて、団体割でお得などという言葉に踊らされて、見ないのに受信料を徴収されるケースがなくなるはずなんですが。

    • 衛星(BS)放送のスクランブル化が一番妥当かもしれませんね。
      放送法があるにしても確かにおかしい。
      あと、私が以前投稿した際に教えていただきましたが、立花氏は意見を良く変えるし、
      N国党は内輪揉めが多い。選挙互助会にはなるかもしれませんが信用できないと思いますよ。

      • 泣ける 様

        立花氏について今現在知っていることは、イラネッチケーの裁判で負けた人、ということだけです。
        これは書くべきか迷うところですが、何かに非常に執着(毛嫌い)していて、発言がコロコロ変わるって……
        一部の政治家はいつもそうなんですが。
        とりあえず判断保留中です(気を悪くした人がいたならごめんなさい)。

        実はBSについては例のパブコメでスクランブル化してくれと書いておきました。
        ネット配信の是非はともかく、NHKが受信できるかどうかとネット接続できるかどうかでは、ネット接続の方が重要度が上だと思っています。
        ネット配信できるようにするなら、地上波が受信困難な地域への考慮はいらなくなりますよね、ということで。