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毎日新聞が報じた「安倍4選論」と後継者育成、そして野党問題

毎日新聞によると、二階俊博・自民党幹事長が「安倍4選論」を唱えているのだそうです。これを受けて、『「安倍総理は独裁者」と主張する方とツイッターで対話してみた』で申し上げたような、頭の悪い「アベ独裁」論が多数出て来ることは間違いないと思います。ただ、私自身、安倍総理は歴代総理大臣のなかでも最も有能な政治家の1人だとは思いますが、現段階で議論すべきは、「安倍4選論」ではなく、日本人拉致事件の完全解決など、残りの任期でできる仕事に優先順位を付けることと「ポスト安倍」の人材育成であり、また、私たち国民の側が問題にすべきは「特定野党」のレベルの低さではないかと思うのです。

安倍政権2268日目

第二次安倍政権が発足したのは2012年12月26日のことですので、本日までの安倍政権(第二次~第四次)の連続在任日数は、実に2268日に達します。単純に365日で割れば、約6.2年、という計算でしょうか。

歴代政権と比べた連続在任日数の長さでは、吉田茂政権(第二次~第五次、通算2248日)を抜き、佐藤榮作政権(第一次~第三次、通算2798日)に迫る勢いです。

また、安倍晋三氏の総理大臣としての「通算在任日数」は2006年9月から366日続いた「第一次安倍政権」の日数を加えれば2634日に達しますが、これは歴代で4位の長さです。

歴代内閣総理大臣の通算在任日数(敬称略)
  • 1位…桂 太郎(2886日)
  • 2位…佐藤榮作(2798日)
  • 3位…伊藤博文(2720日)
  • 4位…安倍晋三(2634日)
  • 5位…吉田 茂(2616日)

(【出所】首相官邸HPより著者調べ)

仮に今年6月7日まで在任すれば、安倍政権の通算在任日数は2721日となり、伊藤博文政権を抜いて歴代3位に浮上します。

また、夏の参院選を乗り切り、8月24日まで在任すれば、在任日数は2798日で歴代2位に浮上。今年11月20日まで政権がもてば、桂太郎政権を抜いて在任日数歴代1位する見込みです。

  • 2019/06/07(金)までで在任2721日となり伊藤博文政権を抜いて歴代3位に浮上
  • 2019/08/24(土)までで在任2799日となり佐藤榮作政権を抜いて歴代2位に浮上
  • 2019/11/20(水)までで在任2887日となり桂太郎政権を抜いて歴代1位に浮上

長期政権の長所と短所

一般に、政権が長持ちすればするほど、外交的にも発言力が増していきますし、そのこと自体が日本の国益に資するものでもあります。

とくに、小泉純一郎元首相(第三次)が退任して以来、安倍総理、福田康夫元首相、麻生太郎総理、そして「民主党の三首相」は、それぞれ在任期間が1年前後でした(安倍総理366日、福田元首相365日、麻生総理358日、鳩山元首相266日、菅元首相452日、野田元首相482日)。

G8(現・G7)やG20をはじめとする国際会議の場では、よく、「日本の首相・総理は1年単位でコロコロ変わる」などと揶揄されたものですが、2005年11月22日から本日時点まで4859日在任しているアンゲラ・メルケル独首相と比べると、日本の首脳の在任日数は極端に短く見えます。

ただ、その一方で、長期政権となってくれば、さまざまな弊害が目立つことも事実でしょう。

ドイツやロシアなどは極端な事例として、同じ人物がいつまでも首脳を務めていると政策もマンネリ化して来ますし、世代交代も進まないというデメリットもあります。それに、やはり、一国のトップともなれば、緊張の連続であり、すごい重圧に晒されることは間違いありません。

人間の気力、体力、集中力が4859日ももつとも思えず、実際、ドイツは移民政策の失敗や民間金融機関の不良債権処理の失敗により、さまざまな爆弾を抱えている状況にあります。

これに対し、米国大統領の標準任期は2期8年だそうであり、第二次世界大戦中、大統領職に居座ったフランクリン・D・ルーズヴェルトを除けば、どの大統領も最大8年で任期を終えています。

アメリカの民主主義が絶対的な正解だと申し上げるつもりはありませんが、やはり、「世界の民主主義の原型」の1つである米国型民主主義の知恵に学ぶところは大きいように思えてなりません。

安倍4選論

こうしたなか、自民党の二階俊博幹事長は12日午前の記者会見で、自民党総裁でもある安倍晋三氏の「党総裁4選」については「十分あり得る」と述べたのだそうです。

二階氏「安倍首相の総裁4選、十分あり得る」(2019年3月12日 13時22分付 毎日新聞デジタル日本語版より)

毎日新聞の報道であるという時点で、何らかの悪意を感じてしまうのはさておき、毎日新聞が報じた概要は、次のとおりです。

  • 二階氏は、総裁任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長した2017年の党則改正を主導した
  • 二階氏はこの日の会見で、連続4期への任期延長の可否について、安倍首相を念頭に「余人をもって代え難い時には何ら問題はない」と指摘した

この二階氏の発言が事実ならば、これをどう解釈すべきでしょうか。

もちろん、私自身も安倍総理は歴代で最も優れた総理大臣の1人だと考えていますし、「どうしても安倍総理でなければできない」ということがあるのならば、引き続き総理大臣としてその課題に取り組んでいただくことは、一般的には悪い話ではないと思います。

しかし、安倍総理だって人間ですから、いつまでも健康体でいられるというものではありません。

また、確かに外交や軍事、憲法など、「安倍総理ならでは」の事績はたくさんあるのですが、2012年に鳴り物入りでスタートしたアベノミクスも、財務省が財政出動にブレーキを踏んでいるために、中途半端な代物に終わってしまっており、経済政策的には満点を付けることはできません。

現段階で「安倍4選論」が出て来る背景

ただ、二階氏が唐突に「安倍4選論」を唱え始めたのは、安倍政権下で後継者育成が進んでいないことに対する危機感があるのかもしれません。

日本の場合はマスコミの力が強く、日本のために正しい政策であっても、マスコミ(とくに朝日新聞)が虚報、捏造報道などを引っ提げて、全力で政治家を潰しにかかることは、よくあることでもあります。マスコミの攻撃をかわしつつ、安定した政権を運営するとなれば、それだけでも大変な労力でしょう。

私自身、稲田朋美氏などもマスコミの虚報に潰された政治家の1人だと思いますが、今から3年後に稲田氏が復活を遂げ、「ポスト安倍」に名乗りを挙げることができるかどうかは、疑問です。

その意味で、いまのうちに「安倍4選」を可能にするよう、党則を再度、改正する、というのが、「ポスト安倍は安倍晋三」とするための布石なのかもしれません。

ただ、北方領土問題、日本人拉致問題、憲法改正問題など、さまざまな問題が山積していることは事実ですが、これらの課題と並んで安倍総理が最優先で取り組まねばならないことは、後継者育成です。

これらの諸懸案は1日も早い解決が必要なものばかりですが、安倍総理在任中に絶対に解決しなければならない問題(とくに日本人拉致問題)と、後世に先送りできる問題(消費税法廃止、NHK解体、財務省解体、日本共産党非合法化など)とを、そろそろ峻別し始めて欲しいと思います。

どんなに優れた政治家であっても、たった一代ですべての問題を片づけることなどできません。

ましてや日本のように歴史が長く社会も安定しているような国だと、「改革」を進めるにしても、社会の仕組みをきちんとメンテナンスしながら、出来るところから少しずつ取り組む以外に方法はないのです。

つまり、「時間がかかるのは当たり前」、なのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ところで、「安倍4選」と言い出すと、かならず「安倍の独裁」などと言い出す輩が出現します(ちなみに「アベは独裁者だ!」などと主張する人と会話が成り立たないという点については、『「安倍総理は独裁者」と主張する方とツイッターで対話してみた』)あたりもご参照くださると幸いです)。

ただ、残念ながら、「安倍4選」が実現したとしても、それは自民党内の党則変更によるものであり、自民党が選挙で選ばれ続ける限りは、「安倍独裁」という屁理屈は成り立ちません。「安倍4選が気に入らない」と思うのであれば、自民党以外の政党に投票すれば済む話でしょう。

その意味で、日本の本当の問題点とは、「ポスト安倍が心もとない」という点ではなく、「まともに議論できる野党がほとんど存在しないこと」に尽きるのではないかと思うのです。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • いつも勉強になる記事ありがとうございます。
    歴代総理大臣の中で有能とはとても思えない。
    言えるのは今いる議員の中で一番マシというだけだ。

    以上。

  • 4選結構。誰がほかにトランプやプーチンやメルケルととダチになれて、キンペイとそこそこ付き合えて、半島をマネジメント出来る方がいればいいのですが、いませんね。

  • こういうのをみると小泉元首相は自民党をぶっ壊すといってホントにぶっ壊していったんだなぁと思う。

  • 安倍4選は、私もお願いしたいところだけど、安倍さん体大丈夫かなぁ。ただ、椅子に座っていただけの歴代総理と違って、本当に頑張っているもの。心配です。
    一回休みぐらいさせてあげたいけど、あなたに代わる人がいない。せめて、対半島、対中国問題が落ち着くまで、何とかお願いしたいです。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     「アベノセイダース」は、安倍総理が独裁がどうかではなく、一人の人
    間が何年も総理大臣をやっていること自体が、気に入らないのだと思いま
    す。
     しかし、それ以外の(日本の)有権者が安倍総理を辞めさせるとしたら、
    (日本の)有権者が「安倍総理は、長く首相職にありすぎ」と考えた時で
    しょう。そうなれば他に理由がなくても、選挙に負ける(または、その危
    険性が出てきて)首相を降ろされると思います。
     ただし、日本社会に(早急に)解決すべき問題が山積みなら、そして、
    その問題が解決できそうなら(または解決できると思われているなら)、
    いくら在職期間が長くても我慢(?)するのだと思います。(逆に言うと
    とりあえず、社会の問題が解決したら、安倍総理といえども、嫉妬からか
    首相辞任に追い込まれると思います)

     駄文にて失礼しました。

  • 2Fさんは総理、総裁分離が頭に有るのかな?総理候補今の時点で適任者は思い浮かびませんよね。
    安倍総理の政治手法が全て良いという訳では有りませんが、安倍氏以外では誰しも後退するのではと感じているのでは無いでしょうかね。
    野党のだらしなさが気楽な与党を作り出し、危機感の無い国民がマスコミに毒され周回遅れのグローバル化、ポリコレを容認し結局日本を駄目にしていく、結局今の日本人は一発食らわないと目覚めないのでしょう。

  • 基本、政治に興味無いし
    自民党にも思い入れは皆無だ
    しかし、自民党しか選択肢が無い

    この状態は絶対にオカシイと思う

  • 更新ありがとうございます。

    まずは毎日新聞の報道には作為が感じられます。本音は『アベ4選絶対阻止!』なんでしょ(笑)ただし、野党に自分らの目にかなう適当な候補者が居ない。どう見ても全く居ない(笑)。

    自民党内は石破なら安倍総理総裁にボロ負け、進次郎は人気先行型で私は党をいずれ割ると思う。河野外務大臣か菅官房長官がかろうじて対抗候補か。

    でも、安倍首相の身体と気持ちが続くなら、4選やらせてみればいいと思う。現状の課題を一つでもやり遂げるなら、時間がなさ過ぎる。二階氏の発言は額面通り受け取りにくいが、日本の国益を考えれば、続投は十分アリですね。

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