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朝鮮日報「韓国はストックホルム症候群に」 加害者は北朝鮮

ストックホルム症候群、という言葉があります。これは、銀行強盗・立てこもり事件で被害者らが犯人グループに対して愛着を感じたことに起因する症状のことだそうですが、韓国が現在、国を挙げて「ストックホルム症候群」に陥っているのではないか、という指摘が、韓国メディア『朝鮮日報』に掲載されました。あわせて、私自身が以前、『ペロシ米下院議長の「日本が慰安婦合意守るべき」の意味は?』でも申し上げた「ペロシ発言の真意」についても、ヒントとなる情報が掲載されているようです。

朝鮮日報に「賛同できる記事」が掲載された!

私は普段、韓国メディアの報道を批判的に取り上げることが多いのですが、その理由は、多くの記事に初歩的な事実誤認が散見されること、不見識と思しき評論が多いこと、さらには根底が「反日」で凝り固まっていると思われること、などです。

ただ、普段から申し上げているとおり、「このメディアはダメ」などと決めつけるのではなく、私はできるだけ「自分の意見と違う視点」を大切にしようと考えていますし、それは韓国メディアの報道であってもまったく同じことでもあります。

つまり、韓国メディアに事実誤認、不見識、反日などの記事を見つけたとしても、そのこと自体、彼らがどういう思想を持っているのかという点を判断するうえで役に立つ、という発想ですね。

ただ、ごく稀には、韓国メディアの報道を眺めていて、おもわず共感してしまう記事を発見することもあります。本日、『朝鮮日報』(日本語版)に掲載された次のコラムが、その典型例です。

【コラム】北の核の人質、ストックホルム症候群に陥る韓国国会議員(2019/02/17 05:10付 朝鮮日報日本語版より)

いったい、何が書かれているのでしょうか?

(※リンク先に何が書かれているか知りたいという方は、上記文章を直接、お読みください。ただし、朝鮮日報は記事公表後、数日間経過すると、無料版での閲覧ができなくなってしまうそうですので、ご注意ください。)

ストックホルム症候群とは?

朝鮮日報の記事は、ウェブページで3ページ、文字数は2000文字以上に及ぶ長文ですが、長文であることを感じさせない記事でもあります(執筆者は「キム・グァンイル論説委員」とありますが、漢字がわからないので、本稿では便宜上、「キム・グァンイル論説委員」という表記をそのまま用いることにします)。

記事のタイトルにある「ストックホルム症候群」とは、1973年に北欧・スウェーデンの首都・ストックホルムで発生した銀行強盗・立てこもり事件にちなみ、「被害者が犯人とずっと一緒に行動をしていたら、被害者がその犯人に対して愛着を感じるようになってしまう」という症状のことでしょう。

キム・グァンイル論説委員のいう「犯人」とは、核武装に邁進する北朝鮮のことであり、「被害者」とは、もちろん韓国のことです。

ストックホルム症候群はデート暴力や家庭内暴力といったDV事件でも現れる。被害者が不利な証言を拒否するのだ。そして、北朝鮮の核の人質になっている韓国人、中でも韓国の国会議員らに起きている。

では、韓国の国会議員らは、いったい誰に対して、「不利な証言を拒否」しているのでしょうか?

この場合は、もちろん、「最大の同盟国であるアメリカ合衆国に対して」、です。何の前提知識も持たずに次の発言を読むと、いったいどう思うでしょうか?

  • 「北朝鮮は今、経済開発を望んでいるだけに、昔とはかなり変わった」
  • 「北朝鮮がベトナムのように親米国に変われば、米国の役に立つだろう」
  • 「東倉里ミサイル基地を国際社会が視察する中で廃棄し、北朝鮮の核能力の80%を占める寧辺団地を解体すれば、それが(北朝鮮は核廃棄の意思を持っているという)証拠」

キム・グァンイル論説委員の説明によると、信じられないことに、これらはいずれも、先週「議員外交」の一環として米国を訪問した韓国の国会議員の代表団らが口にした内容です(※もっとも、私自身、彼らが本当にそう発言したのかどうかについては検証していませんが…)。

まさに「ストックホルム症候群」とは、言い得て妙です。

ペロシ氏の発言の真相とは?

さて、キム・グァンイル論説委員の記事のなかに、1つ、見過ごせない下りがあります。それは、ナンシー・ペロシ下院議長による次の発言です。

この席でペロシ議長が語った言葉を紹介する。「金正恩(キム・ジョンウン)の本当の意図は非核化ではなく、韓国の武装解除だ」「シンガポールの第1次米朝首脳会談は何も成果がない。失敗作。ただのショーだった」「今こそ言葉ではなく、北朝鮮が非核化するという証拠、実際の行動を確認しなければならない」

お恥ずかしながら、私自身、『ペロシ米下院議長の「日本が慰安婦合意守るべき」の意味は?』で告白したとおりペロシ氏の実際の発言について、さまざまな情報源を当たってみたものの、まったく見つけられませんでした。

もともとは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)が報じた、「ペロシ氏が『慰安婦合意については日本が尊重することを望む」と述べた』とする記事を検証しようとしたものの、ペロシ氏の発言どころか、韓国の国会議員団が米国の議員らと面会したという記事自体、ほとんど見つからなかった、というものです。

しかし、キム・グァンイル論説委員の説明が事実ならば、ペロシ氏の発言は、明らかに韓国を糾弾しているものです。

ペロシ氏が本当に「慰安婦合意は日本が守らねばならない」などと発言したのかどうかはさておき、それよりもはるかに厳しい注文を、訪米した韓国の議員団に対して突きつけた、ということでしょう。

「韓国人は、金正恩の善意を信じねばならない核の人質」

キム・グァンイル論説委員は

韓国人は、金正恩の善意を信じねばならない核の人質になっている

だの、

問題は、韓国の政治家がまるで金正恩をかばい、金正恩を擁護し、金正恩の心を十分理解しているかのような発言を続けていることだ

だのと指摘していきますが、これをストックホルム症候群に見立てるのは、なかなか興味深い視点です。そのうえで、

いつか統一されれば、その核兵器がそっくり韓国の核兵器になるではないか、と語る人も見受けられる

などと述べているのですが、実際、この点については私も普段から韓国メディアの報道に接していると、そのように感じることが多々あります。また、

韓国の小中高597校の児童・生徒8万2947人にアンケート調査をした結果、「北朝鮮を敵と思う」という回答は前年の41%から今年は5.2%まで減った。実に8分の1という水準まで落ちたのだ。金正恩の笑う姿、慈愛に満ちた姿、豪胆な姿、友好的な報道…こうしたものが、まず韓国の子どもたちにストックホルム症候群を引き起こしているらしい。

という記述は、なかなかのホラーでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただし、金正恩(きん・しょうおん)自身を含めた北朝鮮人、韓国人が理解していない点が1つあるとしたら、もし本当に北朝鮮が核武装したならば、日本でも必ず、核武装論が持ち上がってくる、という事実ではないでしょうか。

私個人的には日本の核武装には反対ですが、「議論すること」自体は非常に良いことだと思います。というのも、それを「議論すること」自体、中国やロシア、そして究極的には米国を(良い意味で)刺激することになるからです。

私は、北朝鮮が米朝対話を通じて核放棄に応じることは絶対にないと考えています。

もっといえば、中国、ロシアという責任大国を巻き込み、韓国を排除した「日米中露4ヵ国会談」こそが、北朝鮮の核放棄と日本人拉致事件の完全解決の鍵となると考えているのです。

いずれにせよ、現在は2月末には米朝首脳会談、3月1日には「100周年目(?)の独立節」を控えているタイミングであり、また、徴用工判決問題を巡る「仲裁手続」の動向なども気になるところでもあるため、もうしばらく、当ウェブサイトでは朝鮮半島の話題が続くことをお許し頂きたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (32)

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     朝鮮日報の「ストックホルム症候群」仮説が正しいとして、(ここから
    は私の仮説ですが)北朝鮮と自身を同一視することで、(核交渉で)アメ
    リカを翻弄し、(かつて)中ソ対立を利用して漁夫の利を得ていた北朝鮮
    の外交を、自分も行っている気になっているのではないでしょうか。
    (韓国自身、北朝鮮の前例に倣って、米中貿易戦争で米中から漁夫の利を
    得られることを、当然のことと考えているのかもしれません)

     駄文にて失礼しました。

    • 引きこもり中年さま

      >自分も行っている気になっているのではないでしょうか。

      確かに、米露中という大国を手玉に取っている(ように見える)北朝鮮の尻馬に乗っただけなのに自らがメインプレーヤーかのように振る舞って見えますね。「朝鮮半島の運転者は文大統領」というのもそれの一つのパターンでしょう。
      大韓帝国の時代から「清とロシアを下した日本の尻馬に乗り」、ベトナム戦争では「アメリカの尻馬に乗り」、そして今は北朝鮮の尻馬に乗っているような印象です。それが国家レベルのみならず、飛ぶ鳥を落とす勢いの人物(あえて政治家とは言いません)を為政者の頂点である大統領に据えてしまうことが国民レベルから行われています。
      しかしながら尻馬に乗った結果、何か不都合があった場合にはだれも責任は(自発的には)取りません。国民総懺悔なんてどこの星の話?と考えていることでしょうね。

      • 庭師さんへ

        ピーター・セラーズのファンなので、
        "庭師"のHNにグッと来ます

  • ストックホルム症候群では無いかとの見方については納得感は有ります。但し、ストックホルム症候群は元々は加害者の敵が、行動を共にしている中で起きたものと理解しております。韓国は世界有数の極悪人権蹂躙犯罪国家に自ら飛び込んでいるわけですから、別の症例として世に残すべきだと思いました。

    • めたぼーんさんへ

      >極悪人権蹂躙犯罪国家に自ら飛び込んでいるわけですから、別の症例
      ですよね
      不良のガキが、暴力団に憧れるみたいな感じですよね
      自分から舎弟に成りたがってる

  • ストックホルム症候群は加害者(この場合、北朝鮮)と被害者(韓国)の関係で成立しますが、もともと両方が加害者という可能性もあると思います。
    そして、このような中でも韓国は自分達が被害者だという意識が見てとれるのではないでしょうか。
    併合したら北朝鮮に慰謝料でも請求するつもりでしょうか(駄文ですが)

  • 記事更新誠にありがとうございます、大変参考にさせて頂いております。

    「朝鮮日報」は韓国保守系メディアですし、左派系議員を貶めつつ、対外的にはお得意の「被害者ヅラ」で煙に巻いて、現政権失敗後の担保にしておこうという魂胆ではないかと、疑わしい気持ちでおります。
    かの国にあっては「正論」ですら御都合主義で利用しているだけとしか感じられず、正直虫酸が走ります(天皇陛下侮辱発言以来、韓国には冷え切った目しか向けられず、つい侮蔑的表現になってしまいますが、読んでおられる方々がご不快に感じましたら大変申し訳ございません)。

    話変わりますが、日本の核武装に関しましては、当方も必要ないのではないかと思っております。
    なにせ周辺国が勝手に「抑止力」を発揮してくれておりますし。
    相対的に攻撃力がアップするだけでも、やれ「軍国主義の復活だ」などとかしましい時代錯誤の国々が、これまた勝手に日本の存在感をアピールしてくれますから、示威行動する必要すらない。
    「勝手にふるえてろ」とばかりに自国防衛戦略を洗練させていければ、申し分なしかと思います。

  • >金正恩の笑う姿、慈愛に満ちた姿、豪胆な姿、友好的な報道…こうしたものが、まず韓国の子どもたちにストックホルム症候群を引き起こしているらしい。

    違います。これはただ単なる親愛の情です。ストックホルム症候群の根底にある、トリガーとなる感情は恐怖心です。いつ殺されるかも分からない極限状態での、生存本能的に起る心理作用です。

    韓国の場合、違うでしょ。何が違うかと言うと、米朝会談のあった去年の6月以降、状況としてはむしろ非核化へ向けて事態が動いているからです。どうして、非核化への流れが話し合われ、事態が好転するかもしれないと、「ソルレバ」できる状況下で、「恐怖心」が肥大するのですか?んな訳ないでしょ。

    じゃあ、何故、金正恩に韓国の子供たちが親愛の情を寄せるのか?これこそ長年に渡り、教育分野を親北左派が乗っ取り、北朝鮮は敵だとする表現を削除し続けた結果でしょ。

    敵ではないと認知してる状況下で、「金正恩の笑う姿、慈愛に満ちた姿、豪胆な姿、友好的な報道…」を子供たちが見れば、親愛の情を抱く、実に当たり前のことじゃないですか。

    ついでに言えば、従北左派の連中についても、行動の根底にあるのは、「恐怖心」ではないため、ストックホルム症候群には該当しません。彼らがやっているのは、ただ単なる国を乗っ取るための侵略行為ですからね。

  • >「金正恩(キム・ジョンウン)の本当の意図は非核化ではなく、韓国の武装解除だ」
    >「シンガポールの第1次米朝首脳会談は何も成果がない。失敗作。ただのショーだった」
    >「今こそ言葉ではなく、北朝鮮が非核化するという証拠、実際の行動を確認しなければならない」」

    たしかに、アメリカ下院議長らしい発言内容です。やっと、本物らしいペロシ議長の発言が手に入ったのですね。と喜びたいところですが、朝鮮日報は、どのような意図でこれを報じたのでしょう。
    私には、そのことが気にかかります。朝鮮日報が今回報道したペロシ議長の発言が本当のものと仮定すると、韓国の文喜相(ぶん・きそう)国会議長は日韓関係の仲裁をお願いにいって、その北朝鮮寄りの姿勢を同盟国アメリカから叱られたということになります。

    朝鮮日報は、韓国国民を北朝鮮を信奉するストックホルム症候群の被害者と言っていますが、少なくとも、その親北の指導者を選んだ時点で既に韓国国民はストックホルム症候群だったのですかね。今回の狂乱ともいえる反日や不法行為が韓国国民も被害者だからという論旨にすり替わるのは、私には吞めません。

  • 更新ありがとうございます。

    韓国が人質ですか(失笑)。犯人に愛情を感じるようになって、法廷で罪科を軽くする発言や行動を取るというのは多少世界的な事象では理解出来ますが、このケースは違うと思います。韓国にそれはない、と言えば言い過ぎか。

    相手が赤の他人でもない『同胞』ですからね〜。むしろ韓国は、共犯か従犯に近い立場です。このキム・グァンイルという論説委員も、自分達は被害者だ、とでも言いたいのでしょう。

    別に現在の韓国与党や親北派らは『犯人に抵抗したが首根っこ押さえらている』訳でもなく、『悪い事するが情けが出て来た』と思っている訳じゃない。

    むしろ北にかされた、米国はじめ自由主義国らの手錠、足枷、胴体ぐるぐる巻きのロープを解いてやろうとしているようにしか見えません。或いはナイフや合鍵を渡そうとしている。

    「ストックホルム症候群なんて、ええカッコ言うなッ!」というのが私の見解です。論説委員の馬鹿もバカなりに、浅はかな知恵出して考えたのかも知れませんが、常に自分達はヒーロー?被害者?悪を助ける?なんて妄想が酷いです。

    悪者同士であり、主犯が腕力も知恵もある、無いのはカネだけで、共犯が『早くシノギを持って来いッ』と尻叩かれてるようなもんです。どっちもどっち(大笑)。このキム・グァンイル論説委員の署名記事で、かの民族の低劣さを再確認しました。

    • これは珍しく(笑)おやっさんの見立てに同意だな
      1.なんだかんだ言っても同じ穴のムジナである
      2.論説委員は大好きな被害者コスプレしてるだけ
      であって、なんちゃら症候群ちゃうで~

      昔々読んだ対談本で、金大中と金正日の首脳会談をテレビで見てた話題になったとき、呉善花さんが「うまく言えないんだけど、金正日が意外と魅力的に思えた」と苦笑してたのを思い出した。表情や仕草、気の利いたコメント、立ち居振る舞いが朝鮮人的には「カッコイイ」のだと。おじいさんの金日成の方も、日本で言うなら「古武士」、中国なら「大人」の風格が感じられて、雰囲気が民族の琴線に触れるのだと。「うまく言い表せないんだけどねw」とちょっと恥ずかしそうだった。
      ふ~ん、そんなこともあるんだねえ。日本人には到底理解できないけど。

  • >北朝鮮がベトナムのように親米国に変われば、米国の役に立つだろう
    こんなことになったら中国が黙っていないだろうけどな・・・。結局米中の間をうろうろするだけで、韓国同様、大して役には立たないでしょう。もう米中対立の時代なのだから、米国側に立って中国に言うべきことを言ってくれる国でなければな〜。

  • 更新ありがとうございます。
    私もストックホルム症候群とは違うと思います。
    子どもへのアンケートも、わざわざ子どもにアンケートしているところがミソでして。
    私は日の丸を巡って校長が自死した県の公立校で小〜高校までを過ごしましたが、皆さんが聞かれたら驚くような教育を受けました。多分、当時の私達にアンケートを取るとほぼ100%で天皇が韓国に謝罪すべきだと答えるでしょう。
    日本より言論の自由がない韓国の場合、別の視点に立つのは日本より難しいと思われます。
    教育の怖さはここにあります。将来は完全に北朝鮮を愛する国民で埋め尽くされるだろうと思います。

    • 「朝鮮は、1910年に日本に「併合」されてから、1945年までの36年間、日本の植民地支配のもとにあった、この間、生命や財産を奪われた朝鮮人は数限りなく、日本風姓名や日本語、神社参拝の強制など、朝鮮民族の文化を否定する圧政が行われた」 中村泰三編著(2003)『理解しやすい地理B』文英堂、175p

      高校の時の参考書がこれですもんね。以下強制連行で炭鉱で働かされただの、帰国の道を閉ざされた在日朝鮮・韓国人が不当な差別を受けて今日があるだのといった記載が続く。こういう教科書や参考書で勉強させられ試験問題に多く正解しないと大学に行けない。まして外務省の官僚になるとしたら、東大に入る前の受験秀才時代にこういう教科書で「正しく学ぶ」ことを必要とされるわけで、どんな歴史観の日本人が作られるか、わかりますよね。

  • ヤバそうだからって気軽に逃げてこられても迷惑なので日本海側の沿岸警備のさらなる強化や韓国人の入国制限始めないとヤバいですね。

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