先ほどの2本の記事で、私は日米防衛相会談についての話題を取り上げ、「公式の声明からは『日米韓3ヵ国連携』という文言が確認できなかった」、という点から、「断定するのは時期尚早かもしれないが、『日米韓3ヵ国連携』という考え方自体、消滅しつつあるのではないか?」という仮説を提示しました。結論的には、そのように断定するのは時期尚早です。そして、日本の防衛省は驚くほど冷静かつ抑制的に対応しているのですが、あまり抑制的に対応し続けていると、現場の自衛隊員の士気にも悪影響をもたらさないか、心配です。
「日米韓3ヵ国連携」、まだ消滅していない
本日、『日米防衛相会談から「日米韓3ヵ国連携」が消えた意味とは?』と『日米同盟軸にしたインド・太平洋戦略こそが、日本の活路だ』という2つの記事で、岩屋毅防衛相が訪米し、パトリック・シャナハン米国防長官代理と会談をした話題を紹介しました。
このなかで私は、「少なくとも日米の防衛当局の公式発表によれば、『日米韓3ヵ国連携』という文言は確認できない」と述べたうえで、「日米両国の間では、「日米韓3ヵ国連携」という考え方は消滅した可能性が非常に高いが、それを判断するのは現時点で時期尚早かもしれない」と申し上げました。
結論から申し上げるならば、やはり「時期尚早」でした。おそらく岩屋氏自身は現時点において、「日米韓3ヵ国連携」に対する期待を辛うじて捨てていない、ということではないかと思います。私がそう判断する根拠が、岩屋大臣の臨時記者会見です。
防衛大臣臨時記者会見(2019/01/17付 防衛省HPより)
このなかで注目すべきは、次のやり取りです。
Q:シャナハン長官代行との会談ですが、日米同盟に加えて、これまで対北朝鮮では、日米韓という枠組みで対処してきました。韓国とはここのところFCレーダーの照射の件であったり、徴用工の問題があったりと関係にきしみが目立ちますが、この点に関してシャナハン長官代行とはどのようなやり取りがあったのでしょうか。
A:日韓の防衛当局間で協議している問題についても説明をさせていただきました。その上で、日米韓三ヶ国の防衛協力は、それぞれの国家の安全のみならず、この地域全体の安全保障にも寄与するものであるので、本日の会談をつうじても、日米同盟と米韓同盟に基づく抑止力は地域の安全保障に不可欠であるとの認識を共有させていただいたところでございます。したがって、様々な問題はありますが、この三ヶ国の協力体制というものは、しっかりと進めていかなければならないというふうに思っているところでございます。
Q:自民党内からは韓国側との実務者協議の打ち切りを求める声もありますが、今後、実務者間の協議、問題解決に向けて、どのように協議の方向性をお考えでしょうか。
A:二回目の協議、シンガポールで行った協議においても、認識を一致させることが出来なかったということについては、非常に残念に思っております。しかし、協議のあり方については、今後も話し合う必要があるのではないかというふうに思っております。
ここで、ポイントは2つあります。
1つ目は、防衛省の報道発表では「日米韓3ヵ国連携」という文言は確認できないものの、岩屋氏自身が記者会見の場で「3ヵ国の協力体制」と言及した、という事実です。つまり、現段階で「日米韓3ヵ国連携・協力」という考え方は、まだ生き残っている、ということです。
2つ目は、岩屋氏がシンガポールで14日に行われた日韓実務者協議を巡り、協議の結果、日韓両国の認識を一致させるという目的を達成できなかったと素直に認めつつ、協議の今後の継続については含みを持たせた格好である、という点でしょう。
統合幕僚長は韓国側発言を「極めて不適切」と批判
一方、当ウェブサイトでは数日前、『韓国「日本と価値共有せず」 「日本は無礼で非紳士的」とも』のなかで、朝日新聞ソウル支局長の牧野愛博氏らが執筆した記事によれば、韓国国防部が15日の記者会見で次のように発言したと紹介しました。
「日本はわが軍艦のレーダー情報全体について(開示を)要求した。受け入れが難しく、大変無礼な要求だ。事態を解決する意思がない強引な主張だ。」
個人的には、「大変無礼で非紳士的」という表現が当てはまるのは、むしろ韓国政府の方ではないかと思うのですが、その点は脇に置くとしましょう。
それよりも、次の読売オンラインの記事によると、河野克俊統合幕僚長は17日の定例記者会見で、韓国「国防省」(※原文ママ、正確には「国防部」)の報道官の発言を「極めて不適切」と批判したそうです。
韓国の無礼発言「極めて不適切」…統合幕僚長(2019年01月17日 18時42分付 読売オンラインより)
読売オンラインによると、河野氏の発言は次のとおりです。
- 主権国家たる我が国に対して、責任ある韓国の人間が「無礼」などと言ったことは極めて不適切で遺憾だ
- 我々の要求は全く合理的なもので、韓国の批判は当たらない
あそこまで韓国にコケにされているわけですから、河野氏も内心、腸が煮えくり返る思いがあるのではないでしょうか?しかし、この記事から判断する限り、河野氏は「韓国に対して言うべきは言う」という姿勢を貫きつつも、非常に抑制的です。
ここ数日、インターネット上では韓国を巡って、「日韓断交を通告しろ!」、「韓国に宣戦布告しろ!」といった極論が見られることも事実ですが、相手が日本を口汚く罵ってくるからといって、日本が同じ次元に堕ちてはならないことは言うまでもありません。
河野氏の統合幕僚長として態度は、実に立派だと思います。
自衛隊員の士気の問題にもつながる
ただし、日本政府や自衛隊などが冷静さを崩していないことは称賛に値しますが、それと同時に、「冷静な議論」が成り立つ相手ではないという点も事実です。
一例を挙げましょう。
昨日の『【速報】韓国は非公開の約束破り、しかもウソの情報を公表?』で、韓国側が14日のシンガポールにおける日韓協議を巡り、韓国政府側が「協議内容を非公開とする」という約束を破ったうえで、でたらめな内容を発表していたと産経ニュースが報じた、という話題を紹介しました。
本日、これに続報が出ています。
韓国国防省「日本が合意を破った」と逆抗議 レーダー照射問題(2019.1.17 19:37付 産経ニュースより)
同じく産経ニュースによると、韓国「国防省」(※正確には「国防部」)は17日、韓国に駐在する日本の防衛駐在官を呼び、「韓国側が事実と異なる内容を非公開の取り決めに反して公表したとして抗議したこと」に対し、「厳重に抗議した」のだそうです(同じ話題は韓国メディアも取り上げています)。
今回のレーダー照射問題を巡り、韓国はこれまで、ウソにウソを塗り固め続けました。その結果、日本側が何か韓国側のウソを1つでも指摘すると、韓国側はそれに対し、感情的な「逆ギレ」で応じざるを得なくなっているのでしょう。
つまり、「日米韓3ヵ国連携」という枠組みは、現場レベルでは限界が来ているのではないでしょうか?
何より、レーダー照射事件はわが国を守ってくれている自衛隊員の命にもかかわる問題ですし、本件についていつまでも「抗議だ」「遺憾だ」「協議だ」と言い続けていると、そのうち自衛隊員の士気にも悪影響が生じかねません。
そのことを、私は懸念しているのです。
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最近韓国の話ばかり聞いてるせいで、悪夢を見てしまいました。韓国が中国の自治領化になってるのはまあ夢の中とはいえ納得してましたが、済州島はなんとロシアの支配になっており、半分リゾート半分軍港として運営されておりました。この件で日本と中国との関係は悪いらしく、済州島からツアーガイドの「ここから見える昔韓国だった場所は中国政府の意向により、日本人は立ち入りできません」との説明を虚しく聞いておりました。
いや夢の話ですよ。ただ目覚めて思ったのが、ロシアを無理やり国境防衛に巻き込むための餌として絶対にないともいいきれないなと。
なお対馬がどうなってたかわかりません。最悪に備えるなら今すぐ対馬の防備を固めるべきです。最悪に転がっていく場合の、3手先の世界での最重要地点は小さな島ですが絶好の位置にある対馬です。
段々と韓国が感情的になり、馬脚を表してきましたね。昔の日本ならそろそろトーンを落として有耶無耶にしたでしょうが、淡々と言い返すことは言い返す、本当に頼もしい限りです。韓国は国民の手前、言い返されれば黙っているわけにはいかず、どんどん嘘を重ねて墓穴を掘っていく。ここまで嘘を重ねればもう引き返すことはできないでしょう。岩屋大臣が協議を継続する=韓国の嘘が継続するということ。韓国がどこまで嘘を重ねるか、ぜひ協議を継続して欲しいですね。
シンシアリーさんのブログでは韓国の議員の中からGSOMIAの見直しという話も出ているとか。日本から破棄すれば対米関係などで難しい局面も出るでしょうが、韓国から破棄してもらえば日本に傷はつきません。もう一息。自衛隊の皆さんには気苦労も多いでしょうが、今後対中で連携できない韓国との関係はどこかで整理しないといけないことですし、米国を説得できるネタを韓国側からどんどん出してくれるこのチャンスを生かさない手はないと思います。この調子で慰安婦問題も淡々と「合意を守れ」と言い続け、韓国が逆ギレして合意破棄を言い出させる方向に持っていくとか、ぜひやって欲しいです。
日本から断交だの貿易の制限だの、そういう行動を取るのは後々外交的に負担になります。相手がそういう行動を取るように外堀を埋めていく、対外的、特に対米的にはその方が優位に対応ができます。そして対韓国にしても、日本が先にやってしまったら、日本に責任転嫁して終わりですが、韓国自身が決めたことが後々負担になるようなことがあれば、国内で分裂して不毛の言い争いになるのが目に見えています。輸出制限よりもこの方が遥かに効果的に韓国経済を停滞させるでしょう。
災害救助なんかの極限的状況でしかなかなか国民に感謝されることもないのに、国防という重大な任務を日々黙々とこなす逞しい自衛隊員です。本件の政府閣僚や自民党の国防部会の反応も、いつもの日本よりは言うべきは言うという対応になっていることを自衛隊員も分かっているのでは。そもそも昨年末に動画を公開したこともでも、以前の尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件とは違い、現場の隊員に対する上の思いが少しはあったはずではないかとも思います。
さらにいえば、動画に出てくるFCコンタクトの際の哨戒機の自衛隊員の冷静沈着な対応を見ると、この程度のことはそれほどでもないような態度にさえ見えます。
政府や統幕部が、何もせずに時間ばかり過ぎるような下手な対応をすれば話はまた別でしょうが、いつも結構な日陰の道を歩かされてきた自衛隊員の精神性は、我々の想像を上回るものではと想像します。
しかし、だからこそそのような自衛隊員の命を守るべく政府には毅然とした対応を望みます。ヒロさん同様に、私もこちらから強硬な手段をうつべきではないと思います。内部的に党の国防部会などで声をあげていくのはいいですが、対米関係を考えても韓国側からアクションを起こさせるのが良策のように思います。
韓国国内の分裂はいつもの事ですし、既に分裂しているとも言えますので、それが経済的に悪影響を及ぼすのは考えにくいですが、少なくとも文政権の間ではたとえ南北関係が好転しても、経済制裁が解除されない限りは経済的な浮上はなさそうなので、時間の問題じゃないかと。
中国での半導体生産の本格化、造船業界のWTO提訴、自動車の製造減少と労働争議と外資の撤退、鉄鋼は米国との間のクォータやEUで発動されるセーフガード、スマホやディスプレイなどの中国の台頭…
韓国の主要産業には明るい話題に事欠きませんから。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190117-00000168-kyodonews-pol
既出でしょうか?
来週中に、スイスで日韓外相会談の予定。 1/17(木) 19:13配信 共同通信
どうなるんでしょうね。でも、どうしてスイスなんでしょうね?
>でも、どうしてスイスなんでしょうね?
https://www.asahi.com/articles/ASM1K6GW7M1KUHBI02G.html
河野太郎外相と韓国の康京和(カンギョンファ)外相が、22日からスイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の機会に会談する見通しになった。日韓関係筋が明らかにした。
よくわかりました。ありがとうございました。
こちらのコメント欄を読んでいると皆様冷静だなぁと感心しきりです。
レーダー照射問題に関しては国防に関わる事なので、特に日米関係を考えると今後予定されている米朝会議の結果待ちの部分もあるのかなと思っています。
ただ米朝会議については詳細が決まっていなさそうなのでいつになるのやら・・・というのもあり、いつまでこの不毛とも思えるやり取りを韓国としなくてはいけないのか、と鬱憤が物凄くたまります。
レーダー照射問題について日本側から制裁などを加えるのは反対、というのは自分もそう思います。韓国側からアクションを起こさせる方向へ・・・というのが理想ですが、韓国側も多分日本側から強硬手段を取らせようとしているように思えるので、しばらくはこう着状態が続くんだろうと予測してますが。
反対に偽徴用工裁判に関しては、韓国を国際司法裁判所に引っ張り出すために経済制裁を加えるなどの措置は絶対に且つ強硬にやるべきだ、と思います。(韓国は二国間協議も第三者委員会も当然出てこないと予想しています)
衆議院常会の冒頭解散が
逆ギレ 某国の影響で 現実化しかねない 気がしてきた
公明党の 状況は どうなんだろうか?
まだまだ逆ギレが足りないようです。日本海で操業されている漁業関係者に被害が及ぶようなことが起こると、解散、改正と一気に進むかもしれませんね。
私は、現場の自衛隊員の皆様の士気は日頃から極めて高く、少々の罵倒や非難にはビクともしないと信頼しております。対するに、岩屋防衛大臣は、平時はさておき有事に耐えうる人材ではないと落胆しています。
東日本大震災の際、献身的に救助と復興支援にあたった自衛隊の姿は日本国民に大きな感銘を与えました。震災はつらい出来事でしたが、それを機に国民の自衛隊を見る目は変化したと思います。それまでは左翼の言説がまかり通り、「人殺し集団」だの「暴力装置」だのと罵られ、自衛隊員の子女が学校で虐めに遭うなどは良くあることでした。(「暴力装置」はテクニカル・タームとしては問題ないと私は思いますが、仙谷由人の発言に見られるように左翼は悪意を込めて用います。)
自衛隊を敵視卑下する左翼人士と、そういう人々を含めて国民の生命と安全を守るのが自衛隊の使命であると覚悟を決めている自衛隊員の高潔な振る舞いを示す典型的な事例があります。
第1空挺団新年初降下における、小西ひろゆき議員の残念な振る舞い
https://japansdf.com/archives/10432
自衛隊は、戦後ながらく誤解と偏見に晒されつつ任務を全うしていました。中朝韓から仮想敵国扱いされていることも十分承知していたと思います。そうした状況に鑑みれば、国民の意識が変わりつつあり、自衛隊の存在をありがたく思い、自衛隊の合憲化のために憲法改正を唱える人々の数が増している現状は、自衛隊員にとって大いなる励みになっていると思います。
岩屋防衛大臣に対する私の心証は悪化する一方ですが、全くの主観であり、他者を説得するに足る客観的材料がありませんのでここには書きません。
韓国を手元に置いておくことにまだメリットがあります。日本は韓国の前で戦うことが、たとえ9条をクリアしても、できなくなりました。たとえ作戦を司令する米軍が日本にそのような馬鹿げた要請を万が一しても、日本は断れます。いつ寝返るか分からない韓国軍ですが、使い道はあるのです。敵に回すか、捨て駒にするかですね。
韓国国防省の無礼発言は取り返しのつかない言葉だったね。対して幕僚長の抗議が不適切とは恐れいる。抑制ここに極まれりだよ。官僚言葉に毒されているのでなければ、言葉の使い方があかんね。麻生太郎に講義を受けたらどうかと頭に浮かんだよ。しかし岩屋氏はカカシだな。まれにみるヘタリぶりに国民は脱力していると思うぞ。もう交代させた方がいいだろう。理由は後から考えればいい。小野寺氏に再登場させたら良かろうよ。情け無い表情だが、東北人の芯の強さを感じるからね。国難にあたっては人こそ大事になりにけり。首相は忙しいんだから、党内のちょうろが早く動くべきだの。麻生さんそうでしょう?
ほうって置いても死にそうな韓国への制裁は、なかなか難しいとは思うんですよね
他国から日本が韓国を殺したと云う非難をあび、落とし前を要求される可能性がある以上
単独での露骨な制裁は避けたほうがいいのではと、考えます。
気持ちてきには躾じゃないレベルで締め上げてやりたいですけどね。
同意します。制裁は手段であって、目的ではない。
現状、韓国は衆愚政治、左傾化に陥り、日本にとって連携できる
相手ではなくなり、むしろ脅威になりつつある。
従って日本としては、
1.国際社会(特に米国)と協調し
2.韓国の経済力・軍事力を大幅に低減させ
3.難民流出等の混乱を避けながら、徐々に国際社会から隔離する
を目的にすべきかと思います。
そのために、米韓同盟の形骸化、国際的な制裁気運の盛り上げを
進めたい。となるとあからさまな国連決議違反の北朝鮮支援に
踏み切らせたいところです。今般の瀬取り監視強化(英仏参加)も
その一助になるかと思います。今の調子だと米朝会談後に、勝手に
工業団地や観光の再開とかやらかしそうだと思います。露骨な単独
制裁はまだ早い、もう少し様子を見ましょう。