産経ニュースによれば、中国の漁船が今年11月上旬、日本のEEZ内で違法操業していた疑いで立ち入り調査中だった日本の水産庁の職員12人を乗せたまま、半日間逃走していたことが明らかになったとしています。産経ニュースの報道が事実であれば、これは言語道断であることは当然ですが、ただ、それと同時に先日の韓国海軍によるレーダー照射事件と併せて考えるなら、完全に日本が「舐められている」ということでもあります。
中国漁船による犯罪行為?事実なら言語道断
本日の産経ニュースに、こんな記事が掲載されています。
中国漁船、水産庁職員12人乗せ半日逃走 停船命令無視 EEZ漁業法違反の疑い(2018.12.27 05:00付 産経ニュースより)
産経ニュースの報道を箇条書きでまとめると、次のとおりです(ただし、箇条書きに適するよう、原文を適宜変更しています)。
- 鹿児島県沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で11月5日午前、中国漁船が水産庁の職員12人を乗せたまま、半日間逃走していたことが、26日、政府関係者への取材で明らかになった
- 職員12人にけがはなかったが、外交ルートを通じ、漁船員らを中国国内法で処罰するよう中国側に要請した
これが事実だとしたら、とんでもない話です。
日本のEEZ内における外国の活動といえば、今月、15日に大和堆漁場で韓国当局が日本の漁船に退去を命じた事件や、20日に韓国の海軍が日本の海自哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した事件などが発生したばかりです。
さらに、EEZ内では最近、北朝鮮や中国の漁船による不法操業なども相次いでいるとされており、こうした中で本日の産経ニュースの報道が事実なら、日本の海の安全と日本の国益が危機に晒されているという意味で、深刻に受け止める必要があります。
EEZと領海の概念とは?
もちろん、EEZと「領海」は同じ概念ではありません。海上保安庁のウェブサイトの説明によれば、領海とは「低潮線」から12海里(約22km)の範囲に限られるのに対し、EEZは200海里(約370km)までの範囲が含まれます(※大陸棚の延長が可能)。
ちなみに、「24海里(約44km)までの海域」のうち、領海ではない部分のことを「接続水域」と呼びますが、「領海」「接続水域」「EEZ」をまとめると、次のとおりです(図表1、図表2)。
図表1 領海、接続水域、EEZの違い(図示)※クリックで拡大
(【出所】海上保安庁HP)
図表2 領海、接続水域、EEZの違いのまとめ
概念 | 概念 | 備考 |
---|---|---|
領海 |
| すべての国の船舶は、領海において無害通航権を有する |
接続水域 |
| 「出入国管理」とは密輸入や密入国等が含まれる |
EEZ | 領海の基線からその外側200海里の線までの海域(領海を除く)並びにその海底及びその下。以下の権利、管轄権等が沿岸国に認められる
|
(【出所】海上保安庁HPより著者作成)
つまり、EEZとは、その国の主権が及ぶ「領海」と、それ以外の部分に分けられます。
厳密に言えば、「領海」と「接続水域」は「EEZ」に含まれますが、私が報道発表などを眺めている限り、EEZ内であっても領海内であれば「日本の領海内」、接続水域内であれば「日本の接続水域内」と表現されるため、「EEZ」と呼称される場合は「24海里から200海里の範囲」を指しているようです。
「撃沈しろ」は言いすぎだが…
以上を踏まえ、よくインターネット掲示板などを眺めていると、
- 日本の領海侵犯をする漁船など不届きだ
- さっさと撃沈してしまえ
といった過激な意見を見ることもあります。実際、世界中には不法操業をしていた漁船を見せしめに爆破して撃沈するという国もあるからでしょう(下記記事参照)。
違法操業した外国漁船を次々爆破…インドネシアの女傑 スシ海洋・水産相の素顔に迫る(2016.5.6 09:00付 産経ニュースより)
ちなみに、産経ニュースが2年前に報じたこの記事によれば、インドネシアのスシ海洋相は、インドネシアのEEZ内で操業していた中国漁船などを爆破するなどして、国内からは喝采を受けているのだとか(といっても、まさか乗組員ごと撃沈しているわけではないと思いますが…)。
私も日本国民の1人として、日本のEEZ内で違法操業をしている中国、韓国、北朝鮮などの発見したら、「即座に撃沈して欲しい」といった気持ちにならないといえばウソになりますが、EEZ内で不法操業していたからといって、ただちに撃沈するというのは、法治国家としては不適切な対応です。
ただ、非常に残念なことに、日本の海上保安当局が外国の漁船や海上警察などと衝突事案は増えています。
冒頭に紹介した産経ニュースの記事でも、今年11月の事案では、
「中国漁船2隻が日本のEEZ内で違法な底引き網漁をしている疑いがあるとして、日本側の取締船が漁船を停船させて立ち入り検査に着手したものの、漁船は命令に反して逃走しながら漁を継続した」
とあります。俗なコトバでいえば、「完全に舐められている」、ということですね。
鈴置説は「現場の嫌がらせ」
さて、こうした外国船舶による日本に対する不法行為を眺めていると、やはり当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』でも以前から精力的に追いかけている、韓国海軍による日本の海自哨戒機へのレーダー照射事件についても触れておくべきでしょう。
私自身、レーダー照射事件が発生した理由としては、次の2つの仮説を立てています。
- 北朝鮮による瀬取りの証拠などを抑えられることを嫌った韓国海軍が日本の自衛隊機を追い払おうとした(『韓国軍のレーダー照射は「瀬取り」と関連付ければ説明が付く』参照)
- 今回のレーダー照射と似たような日本に対する嫌がらせは、実は過去に何度も行われていた(『正論に慌てふためく韓国 徴用工判決の強制執行はどうなる?』参照)
これについて、日本経済新聞社元編集委員にして日本を代表するコリア・ウォッチャーでもある鈴置高史氏が、本日、日経ビジネスオンラインに次の記事を寄稿しています。
「現場の嫌がらせ」では済まないレーダー事件/くるりと言い訳を翻した韓国(2018/12/27付 日経ビジネスオンラインより)
鈴置氏の説明は、私の仮説でいう2番目、つまり「現場の嫌がらせ」だ、というものです。該当する下りは、次のとおりです。
「結局、レーダー照射の意図は何だったのでしょうか?
鈴置:安全保障の専門家も韓国の専門家も、現場による嫌がらせと見る向きが多い。「広開土大王」の艦長かレーダー担当兵が、上部の指令なしに跳ね上がって犯行に及んだとの見方です。/韓国では「日本には何をやってもいい」という風潮があります。ことに21世紀に入り韓国が日本を見下すようになってからはそれが強まった(『米韓同盟消滅』第3章「中二病にかかった韓国人」参照)。/韓国海軍にしても「旭日旗を掲げるなら国際観艦式に来るな」と言ってみたら、日本はろくな抗議もせずに引き下がった。竹島で演習しても抗議するだけ。これなら「射撃管制レーダーで脅して追い払ってやれ」と考える艦長や兵が出てくるのは当然です。」
中国漁船のEEZ侵犯ニュースなどを読んだ直後だけあって、輪を掛けて暗い気持ちになってしまうのですが、それと同時に、やはり日本が徹底的に「舐められている」という点を、私たち日本国民はしっかりと認識する必要があることだけは間違いないでしょう。
View Comments (8)
毎々の執筆、ありうがとうございます。
年末まで色々と立て込んでいまして、なかなかコメントできず、申し訳ない限りです。
さて本件、とどのつまりは、日本が「普通の国家になれるかどうか」に掛かってくるのかと思います。
周囲の国家は日本の憲法の制約で、手出し(実力行使)が出来ないことは十分理解しており、
それを良いことに舐めた態度を取っているのかと。
隙あらば何でもするのが彼らのメンタリティーでしょうから、やはり憲法改正は急いだ方が良いのかもしれません。
(野党のくだらない事案に付き合っている暇は無いと思います)
北海道の漁師が、ロシア艦船から銃撃や拿捕などを受けたニュースがたまにありますが、
中韓にも同様な「教え(こういうことしたら、日本もやるよー)」が必要なのだと思います。
失礼いたしました。
更新ありがとうございます。
日経のNBOで、本日重村氏のコメントが掲載されてますね。皆さんご存知でしょうからクドクド書きません。興味ある方は見てください。
要は『韓国駆逐艦の先走り』『射撃手の判断または上官、司令官』の中で、歯止めが効かなかった。軍では最高司令官の指示が絶対です。
という事は、文の指揮命令系統がボロボロという事です。さて、日米韓の3か国での協議になるか。日韓だけなら韓国が嫌がる(重村氏)から。
もう、韓国文政権はオワコンですね(笑)。さて、どうなるか楽しみ〜。
ハハハ、オモシロイデスネー(最近子供らとリメイクされた塊魂プレイ中)
https://japanese.joins.com/article/542/248542.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp
韓国野党議員「日本がまるで北朝鮮のようになっている…必ず謝罪受けるべき」
>韓国野党「正しい未来党」の河泰慶(ハ・テギョン)議員が、最近、韓日の間で論争となっている「日本海上自衛隊哨戒機レーダー照準」に関連して「挑発したのは韓国ではなく日本」としながら「むしろ威嚇的な近接飛行をした日本が謝るべきだ」と明らかにした。
>河議員は27日、フェイスブックに「日本は連日、駆逐艦『広開土大王』が自衛隊海上哨戒機に攻撃型ビームレーダーを放射する挑発的行為をしたとして韓国の謝罪を要求している」としながら「いかなる電磁気波証拠も提示できずにいるのに」と記した。
まあ、いってみればミズポたんの空母からB-52が発進レベルの妄言なんでしょうけど、押すなよ!押すなよ!と言ってる様にしか見えませんw
憲法前文で国民の生存を他国民に委ねると宣言している国です。
事なかれ主義の遺憾の意ともあいまって、舐められない方が
不思議だと思います。
憲法前文抜粋
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
これを
> 国民の生存を他国民に委ねる
と 考えるのは
公正と信義を裏切る国ばかりです。
価値観が違う信頼出来ない国ということです
そしてまた、それらの国は「平和を愛する諸国民」ではありません
まずその価値観が異なっている
平和を愛する諸国民である私たちの価値観を守るためにこそ、現行憲法の欠陥を早急に改正する必要があります。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
のであるのだから、なおのこと‼︎
防衛省は映像公開の模様
主要韓国メディアの嘘だ!証拠を出せ!の詭弁に
対抗処置
少しは留飲を下げれそうです
これですね。
https://www.sankei.com/politics/news/181228/plt1812280002-n1.html
防衛省、韓国駆逐艦のレーダー照射時の映像を28日にも公開へ
>政府関係者は「日本の主張が正しいことを国内外に示す必要がある」とし、映像公開の判断に踏み切った。
>韓国駆逐艦の航跡を示す資料などの公表も検討している。
正直、映像ってほとんど意味のないものだと思うんですが、STIR-180が連動している様子でも映っているんでしょうか。
EOTSが動いてたってストーリーを既に持ち出していますからねえ。
航跡は面白いかも。そもそもP-1がEEZ内を飛んでいたというのは韓国側も認めていたのに上空を飛んでいたとか500mに接近したとか、じゃあお前らどこを航行していたのよって話だったので。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/27/2018122780123.html
中国軍用機が防空識別圏に3回進入 韓国国防・外交部が抗議
どうも韓国軍・政府は国際法とか本当に知っているのかと思いますわ。
防空識別圏はあくまで領空の外に設定した公空で、フライトプランにない機が接近したら対応しないといけない義務が設定国にあると言うだけの話。
アラートかける側には業腹でも、キッチリ、ランデブーして警告を出す意地を見せないといけない。
5年前に中国が米軍が設定した各国のナワバリを無視して、自国の防衛識別圏を拡大した時に呼ばれもしないのに韓国が俺も俺もとKADIZを拡大したときは、本当に対応できるんだろうな?とか思いましたが・・・。
https://www.sankei.com/world/news/131209/wor1312090030-n1.html
東アジアの空「一触即発」 韓国、防空識別圏を拡大 日中と重複