朝鮮半島を巡る時事ネタについては、先日、『「北朝鮮特使団、雰囲気悪くない」。韓国さん、正気ですか?』でも取り上げたばかりですが、よく考えてみると、最近、朝鮮半島を巡る本質的な議論をあまりやっていないような気がします。そこで、本日は久しぶりに、「朝鮮半島の将来シナリオ」について言及し、あわせて従来の「シナリオ実現確率」を修正したいと思います。
目次
朝鮮半島の将来シナリオ
朝鮮半島が将来、どうなってしまうのか――。
これに関するテーマは、私自身が当ウェブサイトを立ち上げたときからの重大な関心事です。
そこで、当ウェブサイトではほぼ1~2ヵ月に1回、「朝鮮半島の将来シナリオ」というものを考え、実現確率とともにアップデートしています。7月時点の予想は『予想通り、韓国では朴槿恵政権時代に戒厳令が検討されていた』で示しましたが、本日、そのシナリオの実現可能性を修正したいと思います(図表)。
図表 朝鮮半島の将来シナリオ8つと、著者が考える実現可能性
シナリオ名称 | 概要 | 予想確率 |
---|---|---|
①赤化統一 | 北朝鮮主導で南北朝鮮が統一される(いわゆる「高麗連邦」シナリオ) | 30%→据え置き |
②韓国の中華属国化 | 北朝鮮という国が存続したまま、韓国だけが中国の属国となる | 20%→据え置き |
③南北クロス承認 | 北朝鮮を日米両国が国家承認し、韓国が中国の属国となる | 25%→10%に修正 |
④統一朝鮮の中華属国化 | 朝鮮半島統一が実現し、かつ、その統一朝鮮が中国の影響下に入る | 10%→25%に修正 |
⑤北朝鮮分割 | 中国やロシアが北朝鮮に軍事侵攻して分割占領し、韓国が中国の属国となる | 10%→据え置き |
⑥現状維持 | とりあえず朝鮮半島の現状が維持される | 5%→据え置き |
⑦米国による斬首作戦 | 米国が北朝鮮に全面攻撃を仕掛け、国家崩壊した北朝鮮を韓国が吸収する | 0%→据え置き |
⑧軍事クーデター | 韓国で軍事クーデターが発生して極左の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領を拘束・排除し、日米との友好関係を回復する | 0%→据え置き |
(【出所】著者作成)
なお、これまで執筆して来た主な記事のうち、昨年秋以降のものは次のとおりであり、いずれもご自由にお読みいただくことができます。
- 2017年11月20日付『韓国は7割の確率で中華属国化する』
- 2017年12月27日付『朝鮮半島は2割の確率で赤化統一される』
- 2018年1月10日付『平昌の欺瞞:赤化統一に一歩近づいた韓国』
- 2018年2月9日付『平昌直前:「6つのシナリオ」アップデート』
- 2018年3月13日付『朝鮮半島の将来シナリオ・2018年3月版』
- 2018年4月28日付『史上3回目の南北首脳会談と朝鮮半島6つのシナリオ』
- 2018年5月17日付『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』
- 2018年6月16日付『大好評・「朝鮮半島の将来シナリオ」2018年6月版』
- 2018年7月19日付『予想通り、韓国では朴槿恵政権時代に戒厳令が検討されていた』
ぜひ、ご参照ください。
シナリオのレビュー
将来シナリオ8種類の意味について
図表ではシナリオが8つ示されていますが、これについては大きく、
- (1)北朝鮮が朝鮮半島の主人公になるシナリオ…①赤化統一
- (2)中国が朝鮮半島における影響力を増すシナリオ…②韓国の中華属国化、④統一朝鮮の中華属国化、⑤北朝鮮分割
- (3)米国が朝鮮半島における影響力を残すシナリオ…③南北クロス承認、⑥現状維持、⑦米国による斬首作戦、⑧軍事クーデター
と、3つのパターンに分けられます。
もっと分かりやすくいえば、現在の朝鮮半島は、(1)北朝鮮が支配するか、(2)中国が支配するか、(3)米国が支配するか、のいずれかであり、それぞれにサブシナリオがぶら下がっている、と理解すればよいでしょう。
そして、今回、(1)の確率は30%で据え置きとする一方、(2)のうち「④統一朝鮮の中華属国化」シナリオを従来の10%から25%へと大幅に引き上げ、(3)のうち「③南北クロス承認シナリオ」を逆に25%から10%へと大きく引き下げました。
また、シナリオ⑦、⑧については引続きゼロ%と置いているなど、その他のシナリオについては実現可能性を据え置いています。
米国は朝鮮半島から影響力を失う?
まず、8つのシナリオのうち、「米国が朝鮮半島に何らかの影響力を維持し続けるシナリオ」は、③、⑥、⑦、⑧です。
しかし、あらためて図表を眺めて頂ければ分かるとおり、私が考えるシナリオ⑦、⑧の実現可能性は現状でゼロ%、辛うじて「⑥現状維持」シナリオが5%、シナリオ③は10%です。ということは、米国が朝鮮半島に何らかの影響力を残す確率は、せいぜい15%に過ぎない、ということです。
前回まで確率が25%だと見ていた「③南北クロス承認」シナリオを、今回、10%へと大幅に下方修正した理由は、米国・トランプ政権が北朝鮮による非核化努力の欠如を理由に、北朝鮮との対話を、一時的に棚上げにしようとしているからです。
もう少し踏み込んでいえば、この「③南北クロス承認」シナリオとは、北朝鮮を日米両国が国家承認し、韓国は中華属国化するという「複雑骨折シナリオ」です。ただ、このシナリオが成り立つためには、米国が北朝鮮を自陣営に取り込むという強い意志が必要であり、現状、米国からその意思は感じられません。
さらに、米国が北朝鮮との関係を強化しようとしても、日本がそれを許さない可能性も非常に高いといえます。いうまでもなく、安倍政権が続いている限り、日本人拉致問題が解決しないうちには、日本が北朝鮮を支援することなどあり得ないからです。
トランプ政権の対応、そして安倍政権の決意を見る限り、「③南北クロス承認シナリオ」の実現可能性は非常に低くなってきたと思い、今回、判断を変えたいと思うのです。
中国の朝鮮半島への影響力が増す理由
これに代わって、予想確率を引き上げたのが、シナリオ「④統一朝鮮の中華属国化」です。
これは、北朝鮮を巡って、米中両国が談合し、金正恩王朝を除去するという決断を下す、というものです。この場合、中国が北朝鮮の政権の首を挿げ替える代わりに、バーターで米国は韓国から在韓米軍を撤収し、結果的には南北朝鮮がそろって中国の影響下に入る、というものです。
では、なぜ今回、このシナリオの予想実現可能性を引き上げたのでしょうか?
それは、「米中貿易戦争」にあります。
あくまでも私の理解によれば、米国は「高率関税」を武器に中国を経済的に追い詰め、中国にさまざまな要求を突き付け、譲歩を迫っています。そして、トランプ政権は北朝鮮のバックに中国が存在していると考えているようであり、改めて中国に対し、北朝鮮を何とかしろ、と要求する可能性が高いと考えます。
むろん、このシナリオが実現するには曲折もあります。
たとえば、北朝鮮は中国だけでなく、ロシアとも国境を接しています。いくら米中両国が「談合」して「北朝鮮お取り潰し」で合意したところで、ロシアが介入してくれば、米中両国の構想は失敗に終わります。
また、現状で米中露3ヵ国が北朝鮮処分に関する問題で、一堂に会して首脳会談できる状況だとも思えません。そうなって来ると、米中2ヵ国が足並みをそろえたとしても、ロシアが何らかの形でこのシナリオ「④統一朝鮮の中華属国化」の実現を妨害する可能性も否定できません。
ただ、こうした「ロシア・リスク」は否定できないものの、それでも米中貿易戦争の結果、米国が中国に朝鮮半島を押し付けるのではないか、という判断から、敢えて私は今回、中国が朝鮮半島の支配者になる可能性を大きく引き上げたいと思うのです。
北朝鮮は果たして「主役」になるのか?
ところで、シナリオ①、つまり「赤化統一」については、予想確率を30%と据え置いています。
これは、ごく簡単にいえば、北朝鮮が存続したまま、韓国(=南朝鮮)を取り込み、その経済力を生かして朝鮮半島全体が朝鮮民族の支配するおそるべき軍事国家になる、というものです。そして、このシナリオ①は、私が提示している8つのシナリオのなかで、現状、最も実現可能性が高いものです。
なぜこのシナリオの実現確率がこんなに高いのでしょうか?
その理由は、文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、2017年5月に発足して以降、一貫して北朝鮮のエージェントとして動いて来たからです。また、北朝鮮は瀬戸際外交が上手な国です。その北朝鮮は、つい最近まで、中国と米国を両天秤にかけ、いわゆる「米中二股外交」を繰り広げて来ました。
北朝鮮は確かに世界の最貧国ですし、戦争もとても弱い国ですが、それでも得意の瀬戸際外交を、米国だけでなく中国に対しても繰り広げる可能性は十分にあります。そんな北朝鮮が韓国を併呑し、自立した国家として瀬戸際外交を続けていくというシナリオは、決して非現実的なものではありません。
その意味で、私はこの「北朝鮮が主役になる」というシナリオの確率を、引き続き30%で維持したいと思うのです。
韓国が主役になれないわけ
芯を持たないフニャフニャな国
ところで、外交や軍事といえば、どこか遠い世界のことだと勘違いする人は大勢いらっしゃいます。そういう人たちは、よっぽど専門的な知識を持った外交官、外交評論家、国際政治学者じゃなければ外交や軍事を論じてはならない、と勘違いしているかもしれません。
しかし、国もしょせんは人間の集合体ですから、外交や軍事は、究極的には「人間同士のお付き合い」の延長で理解できます。私のように、外交官でもない単なるビジネスマンであっても、むしろビジネスの現場の感覚を知っていたほうが、外交もその延長で理解できるのではないかと自負しています。
それはともかく、韓国という国を理解するためには、この国が基本的に「芯を持たないフニャフニャな国である」という点を理解しておくことが必要です。古今東西どんな国であっても、「軍事的安全保障」と「経済的発展」という2つが国家にとっての目標ですが、韓国はこの当たり前のことを理解していないように見えます。
いうまでもなく、韓国は「自由主義、民主主義、法治主義」などの「西側的な価値観」を受けいれることで、米国からの軍事的支援や日本からの経済的支援を得て、世界の最貧国レベルから一挙にOECD加盟国にまで駆け上ることに成功した国です。
それなのに、韓国は米国の同盟国という地位を維持しておきながら、たとえば前任の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代には中国に擦り寄り、現在の文在寅政権は北朝鮮に擦り寄っています。中国も北朝鮮も、「自由主義、民主主義、法治主義」などの考え方から遥かに遠い国であるにも関わらず、です。
そして、「自由主義、民主主義、法治主義」などを採用する、韓国にとっての「仲間」であるはずの日本との関係は、ありもしない(従軍)慰安婦問題だの、竹島領有権問題だの、日本海呼称問題だのの難癖を付けることで、史上最悪レベルになってしまっています。
現在のところ、日本の安倍晋三総理大臣、河野太郎外相らは韓国との関係について、「基本的価値を共有する国」ではなく、「(これ以上悪化しないように)マネージすべき関係」と認識しており、実際、そのように動いています。
それも国家としての核たる芯も持たず、本来は敵対国であるはずの中国や北朝鮮に擦り寄り、本来は味方であるはずの日米を苛立たせ続けた韓国の、いわば自業自得でもあります。
韓国が「主役」となる可能性は限りなくゼロ%
ただ、韓国が朝鮮半島の「主役」となれる可能性は、ゼロではありません。その数少ない可能性が、シナリオ「⑧軍事クーデター」です。これは、韓国の軍部あたりが立ち上がってクーデターを発生させ、極左・親北派の文在寅氏の身柄を拘束し、憲政を停止する、というものです。
このようにして成立する政権は、決して「民主的に選ばれた政権」ではありませんが、それでも、韓国の軍部あたりが強権を発動し、反日、反米感情で凝り固まった国民感情を力ずくで矯正し、北朝鮮や中国のスパイを徹底的に摘発し、社会から排除できるのならば、韓国の未来は変わってきます。
その過程で、日本から不当に奪い取った竹島を日本に返還しなければなりませんし、慰安婦問題など日本を叩くネタについても、それを主導している団体を徹底的に潰すなどの強権を発動しなければならない可能性もあります。
では、現在の韓国の軍部が、果たしてそんなリスクを取るのでしょうか?
その答えは、「あり得ない」、でしょう。
軍部がクーデターを起こして政権を掌握するには、韓国は少々経済発展し過ぎましたし、また、反日感情を矯正するにしても、反日感情があまりにも深く韓国国民の間に根を降ろしてしまっています。もう韓国社会を矯正することは、限りなく不可能に近いのです。
自立する?長いものに巻かれる?
もう少し厳格に申し上げるならば、その国を論評するに際しては、
タテの軸…その国がどんな歴史を持っていて、これからどこに向かおうとしているのか?
ヨコの軸…その国が現在、どんな国とどんな関係を持っているのか?
という2つの軸で見てあげる必要があります。これは韓国についてもまったく同様に当てはまります。
韓国は「タテの軸」で見てあげると、古来、「完全に自立した国」というものは稀で、たいていは中国に臣従していたり、日本に併合されていたり、あるいは諸外国の言いなりになっていたりします。要するに「長いものに巻かれる」ことを是とする文化・歴史であり、これこそが、自立志向の強い日本との、最大の違いです。
また、「ヨコの軸」で見てあげると、現在の韓国には「長いもの」にあたる、韓国にとっての強大国が5ヵ国存在しています。それは、中国を筆頭に、北朝鮮、米国、ロシア、そして日本です。
韓国にとっての最大の味方である日本を無駄に挑発して激怒させる一方、韓国を隷属させようとする中国や北朝鮮に媚びを売る。そんな「敵味方の識別能力」すら持たない韓国が、賢明に独立国でありつづけられるわけなどないのです。
そう考えていけば、冒頭に示した8つのシナリオのうち、「⑥現状維持」を除けば、いずれのシナリオも韓国が主体性を失い、どこか他国(とくに中国か北朝鮮)の属国に成り果てる、という未来しか残されていないのです。
シナリオは変動している!
以上、本日は久しぶりに、「朝鮮半島8つのシナリオ」の最新版をアップデートしてみました。
朝鮮半島の将来を予測するうえでは、「半万年の中華属国」という朝鮮半島自体の歴史に加え、周辺大国の意向などを正しく読むことが必要だと思います。
もちろん、私がそれを正しく読めているという保証はありません。ただ、韓国が擦り寄る先が中国か北朝鮮かという違いはあるものの、韓国内では一貫して米国や日本から敵対し、離れようとする力学が働き続けていることもまた事実です。その意味で、これらのシナリオも、それほど荒唐無稽なものではないはずです。
また、朝鮮半島について論じるときには、朝鮮半島「内」のことだけでなく、朝鮮半島の動向に大きな影響を与える外国の動き(とくに中国や米国、さらには日本)を読むことも必要なのです。
いずれにせよ、朝鮮半島にこうした特徴があることから、本日示したシナリオにつきましては、随時変動するものであることをご了解ください。そして、私はこれからも、この話題に興味深く取り組んでいきたいと考えています。
どうか引き続きご愛読ならびにお気軽なコメントを賜りますと幸いです。
View Comments (2)
< 更新ありがとうございます。
< 【朝鮮半島の将来シナリオ8つのパターン】 --- すみませんが、少々食傷気味になりました(笑)。でも分析と考察が鋭いし読み応えあるので、楽しませていただいてます。何故、食傷気味なのか。詰まる所、韓国という国がおよそマトモな国家ではないからです。推定の範囲を越えた事をする。
< 寄生虫です。大国に寄り添っていないと存在できない。自己のアイデンティがよく分かってない。そんな事よりも、『相手より上か下か』、『ラクして金儲けできそうか』、『派手な生き方ができるか』、といった辺りが脳内の中心を占領しています。そのくせ、日本には世話になったのに、一言の礼も無し。ただ、旧日本軍慰安婦や強制徴用工という、遠い昔の嘘、偽りで非難するだけ(売春婦、徴用朝鮮人は居たが)。
< 少しぐらいは徐々にでも日韓が信頼できる国になるかと期待してましたが、一向に気配なし。むしろ退行している。日本には何をしても許されると、甚だ迷惑な勘違いを国民ほぼ99%がしている。だから、関わりたくないのが、ホンネです。でも、お隣さんなので、行く末は大変気になります。
< 私は米国は北朝鮮の親分役を中国に任せ、金正恩を除去もしくは骨抜きにし、米国はその代償として在韓基地を撤収すると考えています。そうすると韓国は米国から離れて、文は親北外交で統一したいだろうが、中国が半島全体を属国にすると思う。南北が統一しても、いずれ近いうちに諍いを起こし、高麗統一国など、絵に描いた餅である。
< あのドイツでさえ、東独に資源をぶち込んでも、東西の差はいまだに歴然とあります。首相が東独出なので、政治オンチなのですが、30年経っても移民問題や国民の政府への不満が蓄積されているわけで、コレが朝鮮民族ならとっくに空中分解してます。つまり、南北が統一しても上手くいかない。
< 8つのシナリオのうち、「無い」と思うのは⑦斬首作戦、⑧クーデター。⑥現状維持も文-金が続けば無い(但し南愚民はローソクで味をしめているから、経済破綻すれば文は弾劾)。③の北を日米が承認、ここまでポンペオ長官らをシカトすれば、これももう無い。
< 残るのは日本にとって悪い方向だが、①と④の折衷変形型とでも言いますか、北主導で統一して、南の一部が反旗を翻す前に中国の属国となる。金は強制引退か遠島(笑)か除去される。南北赤化統一だけでは、韓国民は火病を起こすだろう。資産のある者は海外へ逃げ出す。で、その直前に中国が介入する。勿論、米国とはデキレース。
< 在韓米軍は撤去し日本、沖縄、台湾、比に展開。対馬が最前線になるが、今の韓国のヘタレ アホタレが居るより、北前方すべて友邦にあらずの方がスッキリします。 以上。
アイデンティティ自体捏造で、時の政権で解釈を変えられる国ですから、フニャフニャは納得です。