本日2本目の記事は、最近の時事ネタに関する、ちょっとしたショート・メモです。
名護市長選にみる世代間断絶
今週日曜日に行われた沖縄県名護市長選挙で、「事前の大方の予想」を覆して、保守系の渡具知武豊氏が現職の稲嶺進氏を破り、当選した話題については、当ウェブサイトでも月曜日に触れました(『【時論】名護市長選・沖縄タイムスの現実逃避』参照)。
ところで、選挙から数日が経過する中で、いろいろと情報を集めてみると、今回の選挙戦から、「あるもの」が浮かび上がって来ました。
投票行動は50代以下と60代以上でまったく異なっていた
本日、私が一番注目したいものは、名護市長選挙における「年代別投票行動」です。
地元の「沖縄テレビ(OTV)」が実施した出口調査によれば、10代から50代までの世代と、60代以上の世代で、投票行動が真逆だったとされています。
画像そのものを引用することはしませんが、ツイッターなどで流れているOTVのキャプチャ画像によれば、60代以上で稲嶺氏に投票した比率が軒並み60%を超えていたのに対し、これとは逆に、50代以下では渡具知氏に投票した比率が60%前後を維持していたのです。
私はこれの結果に、「世代の壁」を感じます(図表1)。
図表1 名護市長選に見る「世代の壁」?
年齢 | 稲嶺 | 渡具知 |
---|---|---|
10代 | 37% | 63% |
20代 | 38% | 62% |
30代 | 39% | 61% |
40代 | 41% | 59% |
50代 | 38% | 62% |
(世代の壁) | ||
60代 | 65% | 35% |
70代 | 68% | 32% |
80代 | 67% | 33% |
90代 | 86% | 14% |
(【出所】OTV世論調査に関するインターネット上のキャプチャ画像より著者作成。候補者は敬称略)
ネット時代の投票行動
もちろん、このOTVの調査がすべて正しいとは申し上げませんし、巷間で言われているような、「若年層はインターネット世代」、「高齢者層は新聞・テレビ世代」という、シンプルな二元論に、無条件に与するつもりもありません。
しかし、「新聞・テレビで情報を得ている人と、インターネットで情報を得ている人の投票行動は異なる」とする実証研究は、すでに先行していくつも存在しています。
その典型例が、ときどき当ウェブサイトでも引用する、「社団法人日本経済研究センター」が発表した、2009年8月の衆議院議員総選挙に関する調査結果です。
経済政策と投票行動に関する調査 「子ども手当支持」は3割、政策には厳しい目(2009年9月10日付 社団法人日本経済研究センターウェブサイトより)
このレポートで私が注目しているのは、「投票に際して最も重視したこと」を主にテレビから得たと答えた人ほど、民主党に投票した比率が高かった、とする調査結果です(図表2)。
図表2 情報源と比例区投票先の関係
情報源 | 自民党 | 民主党 |
---|---|---|
①テレビ(410人) | 15.6% | 55.6% |
②新聞・雑誌(228人) | 20.6% | 48.2% |
③インターネット(84人) | 34.5% | 28.6% |
④候補者・政党(143人) | 31.5% | 33.6% |
⑤選挙公報(98人) | 22.4% | 38.8% |
⑥家族・友人(53人) | 9.4% | 41.5% |
(【出所】(社)日本経済研究のレポートP7を参考に著者作成)
一方、インターネットを参考にした層は、ほかの5つの層と異なり、自民党に投票した人の割合が最も高かったことが示されています。
約9年前に行われた調査で、すでにこのような結果が示されていたのです。
沖縄タイムスの敗北
これらの調査結果を踏まえるならば、私には1つの有力な仮説が思い浮かびます。それは、
「若年層ほど新聞・テレビの影響力を脱している」
というものです。
昨年の「もりかけ事件」を例にとってみてもわかりますが、新聞・テレビがあれほど偏向報道を繰り返したにも関わらず、10月22日の衆議院議員総選挙では、事実上、自民党が現有勢力を保持しています。
ここからも、新聞・テレビの影響力が、少なくとも2009年の時点と比べ落ちていることは明らかでしょう。
ただ、新聞社の中には、こうした「都合の悪い真実」から目をそむけようとする人もいるようです。
沖縄タイムスの阿部岳記者が、選挙戦の翌日に執筆した、「記者の視点」という記事は、まさに「永久保存版」ともいうべき記者の咆哮です。
【記者の視点】名護市長選 陰の勝者は安倍政権 陰の敗者は…(2018年2月5日 12:30付 沖縄タイムスより)
阿部記者は
「名護市長選の陰の勝者は、安倍政権だった。そして陰の敗者は、この国の民主主義だった。」
と述べていますが、私は違うと思います。
本当の勝者は名護市民であり、本当の敗者は沖縄タイムスです。
いや、もっときついことを言いましょうか。
本当の勝者は民主主義であり、本当の敗者はマスコミそのものです。
それを、「この国の民主主義が敗北した」ことにしたい、阿部記者の発想そのものが、驕りと傲慢の塊でしょう。
私は今回の名護市長選の正体とは、ずばり、メディア(とくに沖縄タイムス)による世論誘導の敗北だったと考えます。
そして、沖縄タイムスが勝手に世論調査を実施して勝手に民意を決めつけ、勝手に争点をでっちあげたことに対し、名護市民が全体として「ノー」を突きつけた、ということでしょう。
その意味で、今回の名護市長選は、昨年の衆議院議員総選挙に続くメディアの敗北であり、本当の民主主義の勝利だと位置づけるべきだと考えています。
マス・メディアは5年後にどうなる?
もちろん、私はマス・メディアを全否定するつもりもありませんし、インターネットを全肯定するつもりもありません。
とくに、インターネットのなかにも、一部の過激な「まとめサイト」のように、平気でウソを垂れ流すサイトがあります(『フェイク・ニュース・ブログを批判する!』、『ブログ批判に対する反響』参照)。
これに対し、しっかりと丹念な取材を怠らずにシャープな見解を世に送り出す優れたジャーナリストも、新聞社・テレビ局には、ごく少数ながら存在しています。
しかし、一般論として見るならば、新聞・テレビは「オールド・メディア」であり、読者、視聴者にニュースを取捨選択する自由はありません。これに対し、インターネットは「ニュー・メディア」であり、日々、新しいウェブサイトが立ち上がり、厳しい競争を勝ち抜こうと切磋琢磨しています。
現在はいわばウェブメディアの黎明期であり、まだ新聞社やテレビ局の社会的権威は強いですが、いずれウェブメディアに逆転されるのも時間の問題でしょう。
実際に発生していることから目をそむけ、自らにとって都合が良い情報しか見ようとしない、沖縄タイムスの阿部記者の傲慢な記事を読むにつけ、私はそのことを痛感せざるを得ないのです。
View Comments (7)
< 本日も夕刊の配信ありがとうございます。
< なるほど60歳代で稲嶺氏が倍近くに増え、以後、年配者は新聞やテレビが主たる情報ツールなんで、稲嶺氏が圧倒するんですね。まあ細かいパソコンの液晶文字を見続けるのは疲れますし、リモコンでパッと映るテレビがラクかもしれません。新聞も文字は小さいが、以前に比べポイントが大きくなりました。1行15文字が今1行12〜13文字。それでも心ある読者なら『偏向が甚だしい』内容と気づくと思うんですがね。
< 沖縄タイムスの阿部記者(変な発見ですが、西日本でこの「阿部」姓は極めて少ない。アベ姓自体メジャーではないが、比較的「安倍」「安部」姓は多いです。「阿部」は東日本の姓です。ましてや九州沖縄では本当に少ないはずなんですが、どっかから来られた方でしょうか(笑))は、『安倍政権が勝者』と思っているようでは、記者として落第ですなー。誰が何処から見ても民主主義が勝った(名護市民)。
< 『敗者が民主主義』って、貴方民主主義の国に生まれ育って何を言うか?阿部氏の言う民主主義とは沖縄タイムスの報道スタンスを良しとする者や基地移転反対派の恫喝だけかな。沖縄タイムスや琉球新報が正義であり、立場の違う人は邪悪な思想の持主とでも?敗者はオールドマスゴミでしょ。人口100万人ちょっとの県で地元紙が3つも4つもあるのは中央5大紙が印刷、配送の関係で島嶼部に入り込めないから。いずれネット化が進むと2社は無くなるよ。
< 最初の話に戻り、渡具知氏リードは60歳以下が分かれ目でしたが、そういえば仕事でワープロ普及し出したのが80年頃、自分の事を考えてもパソコンを触り出したのは26〜27年前から、インターネットは90年代中頃、自分より10歳上の方々は特に興味を示した人以外、ついていけなかったですね。部下に全部振るとかして。これが今ネット社会に対応出来るか或いはオールドマスゴミに政治的思想的に染まってしまうかの分水嶺だったのでしょうか(笑)。
< 失礼しました。
直接関係する話ではありませんが、現在問題となっている憲法9条改正の国民投票で否決される公算が高いと言われてますが、名護市の投票をみてみると案外、自衛隊を認める票が50代以下に多くなり可決されるのではないかと思うようになりました。災害復旧や中国の脅しがあって自衛隊は絶対必要だと考える人が多くなっています。共産党は自衛隊予算を人殺し予算と言ったときの盛大なブーイングを思い出します。いずれ現在の60代以上は絶対数は確実に減りますから。
最近のメディア腐敗の顕著化の影響もあると思いますが、それ以上に50代以下が1972年沖縄返還後の世代であることも大きいと思います。
メディアの扇動もありましたが、敗戦〜返還までは沖縄県民が米兵問題で苦労したことは事実でしょうが、現状米兵の規律が厳しい統制されている事を示していると思います。
左翼メディアや活動家の公職選挙法違反じみた行動や、選挙結果という民主主義の根幹無視の報道には憤りを感じます。
民主主義は未来の正解を出すシステムではなく、民意を反映するシステムであり、正解の見方も一方的な価値観であることを胆に命じるべきです。
夕刊拝読いたしました。私事ですが、父が早期退職して沖縄(宜野湾市)へ移住した経験もあり、今回の名護市長選挙は注目していました。稲嶺市政は基地反対に殆どの勢力を注ぎ込み、地域経済は底を探っていた状況だと聞き及んでいます。また、名護市で不動産業を営んでいる豊見城市出身の友人ともSNSでやりとりしましたが、「名護は不動産の借り手が少なく困窮している、地元の小売店や観光業などの関係者は渡具知氏に投票したのではないか。」との見解を示していました。今回の選挙結果は、ネットの普及に加えて、前市政への失望感も大きい要因であったように思えます。
< きゃん’t⇔R 様
< ホットな生情報ありがとうございます。
< 私が昨年リタイアした会社も沖縄は別会社にしてまして、出張もありませんでしたが、本島北部は厳しい数字と聞きました。やはり、地元の方もそういう自治体の長は敬遠するでしょうね。
< 失礼します。
生の情報ありがとうございます!
幾ら地方の島だと言え市長変わるだけで経済状況変わるものなのですね……しかしこの市長選で勝った側からしてみれば経済政策も市民から見られて判断された訳で結構大変な仕事になりそうですね。まっ製造業を持ってこれるわけでも無いですから、サービス業、IT産業、漁業と集中は出来るか。
しかし前市長さん一体どんな失政したんだろ………こんな小さな地域じゃ失政しても傷は小さい筈なのにww
某所からのコピペですが。
(ある程度は裏取りしましたがおおむねこの通りのようです)
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前回選挙と今回選挙までの経済面と基地移設問題の変遷
・辺野古沿岸の漁協全てが漁業権放棄
・辺野古隣接地区に政府が直接交付金を支給。やっとこ40年前に購入したまんまの消防団の消防車と30年前から使ってるゴミ収集車がが最新鋭機種に一瞬でなる
・沖縄県、裁判で全敗して止める手段が全て無くなる
・切り札の土砂納入条例も那覇と同じ土砂を使われ全く意味がなくなる
・漁業権が放棄されたので岩礁破砕許認可自体がいらなくなる
・日ハムキャンプ移転で経済損失が20億円超える→慌てて名護市営球場改修中、なお2020年まで前半キャンプは他でやる
・名護市の民宿・ホテルの8割が辺野古工事の工事関係者で埋まる
・名護市の飲食関係のお客が工事関係者が大半を占める
・2017年度の道路工事入札が全て不調、随意契約に切り替える予算も無いので工事が延期になる
・40年前に作った下水道施設を新しくします→出来ないで老朽化が進み一部施設内の立入が禁止される
・給食センター作ります→いちども計画を作らないで県内唯一の無給食地帯
・病院作ります→計画すらしない
・今回の最大の目玉公約「パンダを名護へ誘致!!」→そもそも名護市に動物園はありません、ネオパークならあるけど
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