トランプ訪亜は「天王山」に差し掛かる

いよいよトランプ氏が中国に入ります。ただ、世界情勢は、少し大きな流れとして眺めておくことも必要でしょう。

トランプ訪韓で見える韓国外交の浅ましさ

調整不足、番狂わせ…。どこまでも他国をコケにする韓国外交

本論に入る前に、少しだけ、昨日の『「新宿会計士の通貨スワップ論」が韓国人に人気?』の補足をしておきたいと思います。

米国のドナルド・トランプ大統領は7日(火)、アジア歴訪の2番目の訪問国となる韓国を訪れました。トランプ大統領を載せた大統領専用機は正午過ぎに韓国の首都・ソウル南方にある烏山(うざん)空軍基地に到着。ここでトランプ氏は韓国の康京和(こう・きょうわ)外交部長官(=外相に相当)の出迎えを受けたのち、専用ヘリに乗り、ソウルのさらに南方にある平沢(へいたく)の米軍基地「キャンプ・ハンフリーズ」に向かいました。

ところが、予定ではこのキャンプ・ハンフリーズで在韓米軍関係者と昼食会を行うはずだったのに、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が「サプライズ」と称してこの場に出現しました。

文大統領が平沢基地「サプライズ」訪問…トランプ大統領を出迎え(2017年11月07日14時03分付 中央日報日本語版より)

文大統領の出現は米国側にとっても予想外だったらしく、その米国側の当惑は、中央日報に掲載された写真からもうかがえます。これによると、米軍関係者との昼食会の場で、トランプ大統領と文大統領は、軍人を1人挟んで着座していることが確認できます(いちおう、著作権があるので、写真そのものの転載は控えます)。

さらに、この文大統領の「サプライズ」のせいで、キャンプ・ハンフリーズを出発するのが1時間遅れてしまったそうです。

果たしてこの国の辞書には、「段取り」「調整」という単語はないのでしょうか?

「10分」と「50分」で打ち切り

このような「番狂わせ」のためにスケジュールがずれる中、トランプ氏は韓国大統領府に移動し、文大統領との間で、米韓首脳会談に臨みました。ところが、肝心のこの首脳会談、わずか10分で打ち切りとなってしまったようです。

韓米首脳会談始まる 対北朝鮮など議論(2017/11/07 16:03付 聯合ニュース日本語版より)

聯合ニュースによれば、通訳だけを同席させた会談の時間はわずか10分で、また、その後の共同記者会見では、文大統領が握手を求めて手を差し出したものの、トランプ大統領が無視するシーンなどが放映されました。

さらに呆れるのは、その後の晩餐会です。昨日も触れましたが、自称元慰安婦を晩餐会に招き、さらに「独島エビ」なる食材を提供したというのです。

【トランプ氏訪韓】/晩餐会に元慰安婦、韓国が露骨アピール(2017.11.7 21:05付 産経ニュースより)

晩餐会とは、外国の首脳を「国賓」としてもてなすための行事であり、本来であれば、政治的対立を煽る場ではありません。近年では、2015年10月に英国を訪問した習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席に対し、エリザベス女王が見せつけた。それなのに、日本と対立している問題を、韓国はわざわざ、米国大統領との晩餐会の場に持ち込んだのです。

いちおう、トランプ大統領はこの自称元慰安婦を「抱擁」したものの、映像で見る限りは、彼女がトランプ氏に握手を求めたのち、みずからトランプ氏に抱きつこうと近付いている様子が確認できます。おそらく、トランプ氏としても、しぶしぶ抱擁に応じたというのが実情に近いようです。

米国側の「困惑」を象徴するかのように、結局、この晩餐会は50分少々で終了。さらに、日本政府は「慰安婦招待」と「独島エビ」を巡り、韓国政府に対して抗議するというオチがつきました。

日本政府が韓国に抗議 米韓首脳晩餐会に元慰安婦招待と「独島エビ」 菅義偉官房長官「どうかと思う」と不快感(2017.11.7 22:08付 産経ニュースより)

日本政府が韓国政府に対し、不快感を示すのも当然のことです。

もはや米韓の意思疎通すらできていない

今回のトランプ氏の訪韓、「1泊2日」といいながら、事実上は1日少々の短い滞在に終わりました。

政治的スタンスが、比較的、文在寅政権に近いと見られる「ハンギョレ新聞」の日本語版は、トランプ氏の訪韓の「成果」として、「強硬発言がなかったこと」や「北朝鮮向けの発言を抑制したこと」などを、あたかも「成果」であるかの如く報じています。

トランプ大統領、お土産に満足したか…北朝鮮の核・FTA関連「言葉の爆弾」なかった(2017.11.08 06:30付 ハンギョレ新聞日本語版より)

ハンギョレ新聞の記事冒頭に記載されているサマリーを、私が修正したうえで箇条書きにすると次の通りです。

  • 米韓首脳会談でトランプ氏は強硬発言を抑えた
  • 北朝鮮・北朝鮮の核問題は「軍事措置以外のすべての道具を使用」としつつ、過去とは異なり対北朝鮮発言を調節
  • 対中3NO・日米韓3ヵ国協力めぐり「韓中関係の改善、北朝鮮核問題の解決に役立つ」と発言するも、THAAD・MD関連し意見表明せず
  • 米韓FTA「廃棄」に言及せず、韓国大統領府「今のところは順調」と満足感示す

もともと私は、韓国のマス・メディアの「お花畑」ぶりについては酷いと思っていましたが、ここまで来ると衝撃的です。トランプ氏の発言の表面だけを追いかけて、米韓両国の関係が深刻に悪化している事実に盲目的過ぎます。

ただ、次のCNNの記事によれば、トランプ氏は、昨日の韓国国会の演説で、「ロケットマン」などの「過激な」(※)表現を控えつつも、北朝鮮に対して「我々を試すな」と強く警告しました。

トランプ氏、北朝鮮に「我々を試すな」 韓国国会で演説(2017.11.08 15:14 JST付 CNN日本語版より)

(※私は「ロケットマン」という表現が過激だとは思いませんが、いちおう、ここではCNNに倣って「過激な」と表記しています。)

CNNによると、トランプ氏は韓国国会での演説の中で、

朝鮮半島の「完全かつ検証可能な非核化」を求め、北朝鮮に対する「いかなる形の支援、供給、承認」も認めず孤立させるよう、全関係国が力を合わせる必要があると主張した」(下線部は引用者による加工)

としていますが、これは明らかに、北朝鮮に対してのみ向けられている発言ではありません。ほかでもない、韓国に対しても、強力な牽制として向けられている発言だと考えるべきでしょう。

「トランプよ、我慢しろ」と安倍総理が「入れ知恵」?

いずれにせよトランプ大統領は慌ただしく韓国滞在を終え、昨日の段階で、すでに次の訪問地である中国に到着しています。

私自身、トランプ氏が韓国に滞在している間、さまざまな非礼を受けるに違いないと予想していましたが、まさかここまで酷いとは、想像すらしていませんでした。

ただ、「短気」だとして知られるトランプ氏にしては珍しく(?)、韓国の非礼の数々に対し、よく忍耐したと思います。考えてみれば、この点については、やや不自然です。

もしかすると、安倍晋三総理大臣の「入れ知恵」も、相当にあったのではないでしょうか?あくまでも私の想像ですが、

安倍「ドナルド、君は韓国に行くとさまざまな非礼を受けると思うよ。」

トランプ「シンゾー、俺はどうすればいい?」

安倍「今回の君の訪問は北朝鮮情勢を巡って韓国にくぎを刺すことが目的だ。それに滞在時間は実質24時間だから、韓国の非礼に対しても我慢すべきだ。」

トランプ「わかった。」

といった会話が、霞ヶ関ゴルフクラブあたりで交わされていたのかもしれません。

いずれにせよ、トランプ氏は韓国の「ナナメウエ」過ぎる非礼に対し、よく辛抱したと思います。

そして、米国としては「韓国に対し、言うべきことを言う」という目的は達成しました。今後、韓国が米国を裏切るならば、米国の怒りは北朝鮮に対してだけでなく、韓国に対しても向けられると見るべきでしょう。

いよいよ「本丸」に迫る

NBOに福島氏が寄稿

予定では本日から2泊3日で中国に滞在しますが、習近平国家主席との最大の懸案は、北朝鮮問題となりそうです。

もちろん、米中間では、北朝鮮問題以外にも、それこそ外交問題は山積しています。すぐに思いつくものだけを列挙しても、貿易不均衡問題(とくに中国を「為替操作国」として認定するかどうかとする問題)や、中国による南シナ海での海洋進出の問題、さらには中長期的に見て、米国が中国を大国として認めるかどうかという議論など、いずれも一朝一夕には解決を図ることが難しいものばかりです。

一方、今回の訪問は、米国からみれば「トランプ氏にとって大統領として初の訪中」ではありますが、中国からみれば、共産党大会を乗り切った習近平政権にとっての初の外交上の「晴れ舞台」でもあります。

こうした中で昨日、日経ビジネスオンライン(NBO)に、ジャーナリストの福島香織氏の手による大人気連載シリーズ『中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス』の最新記事が掲載されています。

習近平「特別接待」で狙うトランプとの“蜜月”/政権二期目、「特色ある大国外交」喧伝に注力(2017/11/8付 日経ビジネスオンラインより)

福島氏の論考はいつも優れていますが、今回の記事は、普段にも増してシャープです。というのも、福島氏によれば、中国に先立ち訪日したトランプ氏をめぐって、「日本の歓待ぶりを中国メディアが詳報」したという点に注目しているからです。

詳しい内容については、ぜひ、リンク先の記事を直接読んでいただきたいと思いますが、ここでは私が気になった点を、ほんの一部分だけ抜粋して紹介してみましょう。

中国メディアは意外に、トランプ訪日を細かなところまで報道している。2020年東京五輪のゴルフ競技会場となる霞が関CCで(中略)松山英樹が(中略)トランプにレッスンをつけたこと(中略)、天皇陛下・皇后陛下との会見、トランプに先立って訪日したイヴァンカへの接待ぶり、どこでどのようなメニューの宴席が設けられたか、なども含めて、日本の徹底した“おもてなし”ぶりを報じていた。

では、中国のメディアが日本におけるトランプ氏の歓待ぶりを詳報した目的とは、何なのでしょうか?これについて福島氏は、次のように述べます。

こうした報道の目的のひとつは、おそらくは習近平のトランプ接待と比較するつもりであろうと思われる。つまり習近平も安倍に負けないトランプ接待が重要だと考えている。これが習近平政権二期目の外交デビューであり、政治活動報告で語った“世界の舞台の中央に近づく中国”の姿を見せつけ、中国の特色ある大国外交というものを、喧伝する場だからだ。

「中国の特色ある大国外交」!

この言葉は、今後の中国の動向を見る上で、極めて重要です。

日本が「はしごを外される」リスク

福島氏が指摘している通り、中国は現在、習近平体制が第二期に入り、これから威信をかけて大国外交を進めようとするものと考えられます。

現在のところ、日本は米国と史上で最も強固な関係を築き上げていますが、この強固な日米同盟の存在は、中国にとっては不快なことこのうえありません。必然的に、中国にとっての「隠れた最大の外交目的」は、日米同盟の解体に置かれるでしょう。

これについて福島氏の記事の末尾にある、次の下りについては、私たち日本人にとっても深く考えさせられるものです。

もっとも、両者が我こそは最強最大の国家という自意識を持ち続けていれば、一時的に米中融和が演出されても、最終的には米中対立の新冷戦構造に向かうだろう。日本は、だからこそ“反中の先鋒”としての立場で米国との同盟強化にいそしむわけである。中国としても、米中冷戦時代というのは形をかえたG2時代という意味で、むしろ望んでいるフシがある。双方が牽制しあって長期安定時代を迎えられるという意味で。

日本が突然、米国からはしごを外される、という可能性は常識的にいって小さいが、ただ、外交に友情など通用しないというのは常識で、おもてなし外交の笑顔の下で、日本が米国の影響力に頼らない国際的地位の確立を模索していくことの重要さはいわずもがなだろう。

私は、この福島氏の主張には全面的に同意したいと思います。

日本にとって最も重要な同盟国は米国です。このことは間違いありません。しかし、それと同時に、万が一、中国の「日米同盟解体工作」が成功しようものなら、中国、ソ連、米国の3者を敵に回して惨敗した第二次世界大戦の悪夢が脳裏をよぎります。

安倍政権におかれては、引き続き気を引き締めて、外交を進めてほしいと思います。

米中外交のさやあてはアジアに舞台を移す

ただ、いきなり日米同盟の解体を目指そうとしても、それを今すぐ実現することはできません。そこで、中国はまず、「足元を固める」ことに注力するはずです。具体的には、日本を除く東アジア諸国を中国側に「抱き込む」戦略が、これから加速するとみられます。

習近平国家主席自身、11月10日から14日にかけて、ベトナムとラオスを訪問します。

外交部、習近平国家主席のAPEC首脳会議出席、ベトナム・ラオス訪問について(2017年11月06日11:13付 人民網日本語版より)
習近平国家主席がAPEC首脳会議出席、ベトナム・ラオス公式訪問(2017年11月03日10:24付 人民網日本語版より)

『人民網』日本語版によると、10日と11日の両日はベトナムに滞在し、同国ダナンで開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席。その後、12日から14日にかけて、ベトナムとラオスの両国と首脳会談を行うとしています。

ところが、このうちのベトナム訪問については、トランプ米大統領と、日程が重なっています。

トランプ氏自身も、中国滞在が終わって10日に次の訪問先であるベトナムに移動し、同国で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)のCEOサミットに参加してスピーチを行ったのち、11日にはベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席と首脳会談を行うとしています。

ということは、ベトナムには米中両国の首脳が相次いで訪問することになり、ここで米中間の大きな「さやあて」が繰り広げられそうです。

朝鮮半島処分と「陰の主役」

米中密約の可能性

ただし、今回のトランプ氏の訪中では、両国とも、友好ムードの演出に腐心するでしょう。というのも、米国にとっては「世界のならず者」である北朝鮮の処分を巡って、中国の協力を必要としているからであり、中国にとっても「習近平政権第二期」の最初の大型首脳会談だからです。

こうした中、今回の米中首脳会談で話し合われる最大のテーマは、ずばり、「朝鮮半島新秩序」でしょう。

米国(と日本)にとっては、朝鮮半島からICBMを含めた核兵器の脅威が除去されることが必要ですが、逆にいえば、その目的が達成されるのであれば、米国(と日本)にとっては、譲れるところは譲って良いはずです。

一方で中国にとっては、米軍が駐留する韓国(南朝鮮)とは直接国境を接したくないため、「緩衝地帯」が必要ですが、逆にいえば、「緩衝地帯」が確保され続けるならば、中国も米国に対して譲れる部分があります。

そこで、今回の米中首脳会談では、何らかの「密約」が成立するかもしれません。

論点①米国による北朝鮮攻撃を容認または黙認するのか?

では、今回成立するかもしれない「朝鮮半島処分に関する米中密約」について、勝手ながら考えてみましょう。

私が最も強い関心を抱いているのは、米国が北朝鮮の攻撃に踏み切るかどうかですが、そのためには、中国が容認(または黙認)しないという確証が必要でしょう。

攻撃といっても、限定空爆(サージカル・アタック)なのか、「斬首作戦」を伴うものなのかという問題があります。この点、自然に考えて、米国が北朝鮮に侵攻し、北朝鮮の体制を作り替えるような形での軍事介入を、中国が認めるとは思えません。

したがって、中国が容認するとしたら、限定攻撃(ミサイル発射基地などに照準を絞って、ピンポイントで攻撃を加えること)でしょう。

論点②中国は情勢に介入するのか、しないのか?

次の論点は、中国が米国による北朝鮮攻撃を認めるとしても、米国に全面的にそれをやらせるのか、それとも中国自身が情勢に介入するのかどうか、というものです。

中国にとって絶対に避けたい事態とは、「米軍の支配領域と直接、国境を接すること」です。ということは、たとえば米軍が北朝鮮に対するピンポイント攻撃を行い、その後、中国が直接、「斬首作戦」を行う、というパターンもあり得るかもしれません。

それができるかどうかは、まさに習近平政権の指導力次第です。しかし、習近平氏の権力基盤が固まっていて、瀋陽軍区を押さえつけることができるのだとすれば、中国自身が北朝鮮情勢に何らかの軍事介入を行う可能性は十分に考えられます。

論点③ロシアとの関係をどうするのか?

ただし、ここでもう1つ、悩ましい論点があります。それは、仮に米中が「共同斬首作戦」で合意したとしても、北朝鮮には「ロシア」という不確定要素があるからです。

たとえば、北朝鮮を処分するための「米中協調介入」が行われているさなか、ロシアが金正恩(きん・しょうおん)政権を支援するために逆介入を行えば、米中共同作戦が失敗してしまいます。

そのリスクを考えるならば、米中両国の合意だけでは北朝鮮処分が達成できない可能性もあるのです。

したがって、11月10日までのトランプ氏の中国滞在では、いくつかの案で比較検討が行われ、最終的にはベトナムのダナンで、ロシアのウラジミル・プーチン大統領とトランプ氏、習近平氏がそれぞれ合意しなければならないかもしれません。

大胆予測:朝鮮半島処分案

ところで、当ウェブサイトでは以前から、「朝鮮半島情勢を巡る7つのシナリオ」というものを提示して来ました。

図表 朝鮮半島情勢を巡る7つのシナリオ
区分パターン 具体的な内容
(1)南北統一シナリオ①北朝鮮主導の赤化統一北朝鮮がミサイル開発危機を生き延び、韓国で親北派大統領が誕生し、朝鮮半島は北朝鮮主導で赤化統一される
②米国主導の吸収統一米国が北朝鮮を軍事攻撃し、これにより北朝鮮が崩壊し、韓国が米国の命令により北朝鮮を吸収する
③中国主導の吸収統一米中密約により中国が北朝鮮の体制を崩壊させ、韓国から米軍が撤退し、韓国が中国の後ろ盾を得て北朝鮮を吸収する
(2)南北分断継続シナリオ④中華属国化南北朝鮮が同時に中国の「属国」と化す
⑤南北朝鮮の「クロス承認」韓国は中国の属国となり、日米両国と断交する一方、北朝鮮は日本と米国が国家承認し、中国と断交する
⑥軍事クーデター韓国で軍事独裁政権が成立し、民政を停止し、韓国の赤化統一や中華属国化を防ぐ
⑦現状維持・膠着周辺の大国(とくに米中日露4ヵ国)の都合で、朝鮮半島の現状が維持される

ところが、現実の情勢の方がはるかに先に行ってしまっていて、この「7つのシナリオ」についても改変しなければならなくなりそうです。

まず、シナリオ⑥(韓国で軍事クーデターが発生すること)については、もはや、その可能性は極めて限定的です。文在寅政権に対する支持率は低下しているとはいえ、いまだに60%台を維持しているそうですが、これは、この政権の愚かな反日・親北政策を、国民の多くが支持している証拠でもあります。韓国の軍部が、韓国国民の恨みを買ってまでクーデターを起こすとは考え辛いところです。

次に、私は、米中両国が「密約」により、北朝鮮という国家自体を分割し、消滅させてしまう可能性が出て来たと考えており、北朝鮮という国家が消滅してしまった場合、シナリオ①(韓国が北朝鮮により赤化統一されてしまうこと)の可能性はなくなります。ただ、何らかの理由で北朝鮮が現在の危機を生き延びた場合、韓国は北朝鮮に飲み込まれてしまう可能性は、引き続き強く残ると考えています。

ところで、②のシナリオについては、少し修正が必要となりそうです。というのも、少なくとも米国が単独で北朝鮮攻撃に踏み切る可能性は高くなく、中国・ロシアとの連携に基づく北朝鮮の「米中露3ヵ国共同分割」が実現する可能性が出て来たからです。

さらに、③については、米国を排除して中露だけで北朝鮮処分を行う、という可能性もあります。

このため、これらのシナリオについては、トランプ氏のベトナム訪問とプーチン大統領との首脳会談の結果を踏まえて、アップデートする必要がありそうです。

陰の主役は日本

ところで、トランプ氏は今回のアジア歴訪の締めとして、12日以降にフィリピンに移動し、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領とも首脳会談を行います。

当初、トランプ氏がフィリピンを訪問する予定はありませんでしたが、なぜ、最終的にトランプ氏がフィリピンを訪れることになったのでしょうか?

その「陰の主役」は、おそらく、日本です。

ドゥテルテ大統領自身、先月29日から日本を訪問。安倍総理との首脳会談や晩餐会もこなしつつ、31日には天皇陛下とも会見しましたが、これにより日比関係は盤石なものとなりました。

フィリピンと日本には、実は重要な共通点があります。それは、中国による頻繁な領海侵犯に悩まされている、という点です。

そして、このタイミングでのフィリピン大統領の訪日には、米国とフィリピンの間を日本が取り持つという効果があったことは間違いありません。

さらに、報道されていないベースではありますが、日本がトランプ氏の対アジア外交に相当強い影響を与えているであろうことは、想像に難くありません。

その意味で、「米中さやあて外交」の裏に黒子として存在している「陰の主役」とは、日本に他ならないのです。この時期に、安倍晋三氏が日本の内閣総理大臣であったことは、後世の歴史家からは「奇跡だった」と評価されるではないかと思います。

しかし、本当の勝負はここから先であり、「朝鮮半島処分を巡る米中談合」が終了すれば、いよいよ本格的に、「海洋勢力」対「中華帝国」のにらみ合いが始まります。日本はそれこそ気を引き締めて、これからの国難に取り組まねばならないと言えるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. poponta より:

    お疲れ様です。
    民放各社のトランプ大統領アジア歴訪の報道はやはりワイドショーの域を越えずNHKに至っても偏向報道をおこなっています。ただBS放送の夜の報道番組は2時間体制5夜連続といった扱いのところもあり各報道番組とも大臣クラス・独自のニュースソース、情報源を持ったコメンテーターを配置して編成、放送をおこなっています。内容もコメンテーターの「これ以上話すと自分の情報ルートが壊れますのであとはおまかせします」的な話もあり想像(妄想)が膨らみます。従来の情報源+ネット関連の情報・SNSなど得られる情報は多岐にわたりますが情報の氾濫は弊害にもつながりますね。おばさんのワイドショー、高齢者大好きの朝日・毎日の反日かわら版新聞などは洗脳に近いものを感じます。それにしても南朝鮮の報道メディアのレベルの低さは大笑いです、民度の低さに合わせているのか?救いようがない位の薄く価値のない報道になっています。文大統領とトランプ大統領の会談時間が10分、26分とか会食が50分で終わったとか日本には伝わってきて内容がなかったようです、これには触れず売春婦とエビの話題で終了、報道する内容もなかったが事実で報道のやりようがなかった、もしくは恥ずかしくて本当の報道ができないというところでしょうか。トランプ大統領は南朝鮮に行かずに電話と国際郵便で請求書出すだけで良かったと思います、日中にもっと時間を割いた方が有意義でしたね・・・南朝鮮の馬鹿さ加減を再認識したのが成果かかな。今回のトランプ大統領のアジア歴訪はあらためて日本の真面目さ南朝鮮の存在感のなさ(存在自体がじゃま)、そして中国のしたたかさと懐の深さ(恐怖を感じます)を再認識させてくれました。さて新宿会計士様の言われる通り天王山を迎えるわけですが日本は中国と米国を抜きにして未来は語れません、ある意味、覚悟の選択をせざる得ない状況です。さぁ、どうする安倍首相。

  2. 激辛大好き より:

    popontaさんのご意見に賛成です。
    >南朝鮮の報道メディアのレベルの低さは大笑いです、民度の低さに合わせているのか?救いようがない位の薄く価値のない報道になっています。
    朝日新聞のW吉田のねつ造記事は日本を貶めた最たるもので、廃刊に値すると思っている。そんな朝日でも韓国の新聞に比べれば害は少ない。今回の安倍首相がトランプ大統領にしたもてなし方に、流石の朝日もクレームをつけにくかったのか、外信の記事を取り出して揶揄するぐらいのことしかしてない。もしこれが韓国のように対談時間がわずかに10分程度であったなら朝日はとことん批判するだろう。曰く「実りなき対談」「わずか10分で何が話し合われた?」「韓国を無視したトランプ大統領」などの批判記事が目白押しになること請け合いだ。しかるに韓国では「トランプの国会演説に拍手が20回も起こった」ような提灯記事であふれている。朝日のねつ造記事により日本は大損害を被ったが、それでも国が傾きはしない。韓国の新聞の提灯記事ばかりでは外交、安保政策にまず批判はできない、何より政府の怠慢を許してしまう。国難は大抵政府の怠慢が招くもので、提灯記事の羅列では国が傾きかねない。それが朝日新聞がまだ韓国紙よりもましに思えた理由です。
    いずれにしても、すでに安倍トランプ会談で日米の北への対応は固まったと見てよいし、ムンジェインが蚊帳の外であったことがまた証明されたわけです。トランプと習近平の会談ではどのような結果になるか分かりませんが、その答えはトランプ帰国から数か月ではっきりするでしょう。私は年内にもキンジョンウン斬首作戦が決行されると見ます。

  3. spaceman より:

    更新ありがとうございます。

    今の韓国のありさまは愚民化の帰結ですね。国民に真実を見せず、幼少期から煽情的に特定事象への反感だけを植え込み続けるとどうなるかという一つの見本です。今や、そのような教育で育った連中がリーダにまで上り詰める時代となり、結果、「国体」そのものがきわめてポピュリズムに乗りやすい、ある種無防備・無能な姿を晒すに至りました。

    最近思うのは、日本に火の粉が降りかかるならしっかり振り払うのは当然のこととして、もはや韓国のことで無用に心を乱すのは避けるべきなのだろうということです。動物が愚かでも、誰も責めたりはしません。同様に「韓国とはそういうものだ」として捉えるべきなのでしょう。

    むしろ問題は日本国内ですね。「そんな韓国」のことをまだ知らない日本人は多いと思います。こちらのサイトのような、証拠と論理を積み上げての告知活動は非常に重要だと思います。

    韓国があのようになったのは北朝鮮による工作だけが原因とはいえませんが、工作を放置した罪はあります。日本も同様で、中韓北による工作や諜報活動は、いろいろとあるでしょう。それを放置してはいけない。秘密保護法ではずいぶんモメましたが、この先、スパイ防止法の制定も進めるべきでしょう。防衛問題というとどうしても、自衛隊や兵器システムの話になりがちですが、Intelligence assessmentとそれを背後で支える法制についても見直しが必要です。

    私は、希望の党で現実的にものを考えられる人がもう少し表に出てくるかと思ったのですが、代表戦を見る限りもはやそれは難しいといわざるをえません。このままだと第二立民党ができるだけです。(先に民主党を離党した面々はいったい何をしているのか。)したがって、野党に「現実的対処」を求めるのは、もはや不可能になりつつあります。

    自民党は、選挙で信任を得たとみなして、今後の国際的な混乱をにらんだ国内体制──憲法や各種法制など─一を一気に固めてしまう必要があるでしょう。そうして、朝鮮半島に強烈な反日統一国家ができてしまっても対処できる体勢を整えるべきです。

    最終的に統一されるにせよ、その過程で朝鮮半島は大混乱に陥り、一般の南北朝鮮人たちはエライ目に遭うでしょう。が、まあ、そんなことは知ったことでありません。その結果として彼らが多少賢くなってくれれば100年後ぐらいには役立つでしょう。
    防衛と合わせて日本が考えておくべきは、亡命者や難民の問題です。うんざりしますが、しかたありません。

  4. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < もうトランプ大統領御一行は中国に行かれてますが、訪韓では米韓首脳会談で、韓国が米国の兵器、数千億円を発注するという成果がありました。でも喫緊の北問題は進展なし。それに訪韓するなり、在韓米軍基地に文がサプライズで居たり、あそこは在韓米軍基地で、文大統領といえども勝手に入ったりしてはいけない。韓国軍も入れてたが、トランプ大統領としては、在韓米軍の士気を高める場だ。横田と同じ。二人のテーブルの間に韓国兵が居たが、顔は見たくないというカーテン代わりかな(笑)。いくら韓国大統領でも他国の敷地、マナーを知らんのか。だから朝鮮人は嫌われる。
    < 晩餐会にはちっこい海老を出し、竹島海老ですか、名前をおぞましい韓国語に変えて挑発、全体的に黒っぽい色調で食欲のそそらないメニュー。どうせなら伊勢海老持って来い(笑)。朝鮮料理ってキムチと焼肉しかない。後は気色悪い食いもんだ。また売春婦婆を登場させ、仕方ないトランプ大統領は抱擁して見せたり、ホントに韓国は国対国の公式行事に、同盟国日本を貶める内容、トランプ氏も「あいつは何なんだ!」でしょう。日本を最同盟国と信じてる米国に対しても、小猿が何を言うかという感じです。国際感覚が完全に欠如している。これはマトモな国ではない。「オレのものはオレのもの、オマエのものもオレのもの、トモダチは助け合おう」の精神、言っとくが日本は助けてもらった事などないし、助けても後で文句言われる常識なし国が南鮮である。
    < 肝心の米韓首脳会談はわずか26分、うち通訳をのぞけば10分。経済面でのやりとりだけ。もうトランプ氏も気持ちは中国に飛んでたでしょう。さらに8日の早朝、間抜けの文は38度線の板門店で先回りして待ってたそうだが、そんな危ないところ、米国側が行かせるはずがない。急いで京城に戻ったそうだが、これもサプライズを期待したらしい。阿呆丸出し。KYだね、アンタ。
    < さて、『朝鮮半島の七つのシナリオ』です。①は、なさそう②も可能性低い、⑥は韓国に腹の座った軍人いない、、となると米中露による分割統治はありますね。キンペイ君にトランプ大統領は北の攻撃に対し暗黙の了解、承知の返事を取る。プーチン氏にも会うので話を通しておく。実際、ロシアはわずか数10kmとはいえ国境があるので、難民、軍を堰き止めるでしょう(やり方が荒っぽいので、死者が出そうだ)。中国も鴨緑江沿いに朝鮮族兵を防衛ラインとして、押し寄せる難民、軍人らを威嚇射撃、北鮮に戻すか勾留するか射殺するだろう。
    < これなら、米軍は思い切って重要核処理施設、原発、ミサイル発射台、移動式発射台、ミサイル格納庫、司令部、38度線上の夥しいロケット発射台、ミサイル群を叩ける。中国、露が戦いを傍観あるいは堰どめしていてくれたら、12時間以内に作戦終了です。日本は米軍の後方支援と被弾した米軍の支援名目で戦闘地に参加する。陸、海、空でアシスト出来ます。その前に日米豪加印比尼などの民間人は、日本、グアム辺りに避難完了に4日はかかる。また、日本海には巡視艇フル出動で沿岸守らねば。麻生副首相の言うように、射殺できれば簡単だが、拘束するなら、大量のコンテナが必要。水だけ与え釜山、仁川に翌日送還。これなら人道的です。
    < 今回、トランプ大統領はフィリピンのドゥテルテ大統領とも会います。中国の領海侵犯に対して、先週安倍首相と話したばかりで、トランプ大統領も協力するでしょう。北処理が目処がついたら、次はシナ国。だいたいアメリカを含む欧米人は、中国に対してそれほど脅威を感じないのか肯定的ですね。しかし、シナの覇権に対する執着は想像を絶します。日本国など海洋勢力と中華帝国の睨み合い、もうすぐ始まります。インド洋太平洋連合頑張れ!
    < 失礼しました。

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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
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