某電機大手の粉飾疑惑:朝日新聞よ「お前が言うな」

本日2本目の配信です。某大手電機メーカーの「粉飾決算疑惑」がニュースを賑わせていますが、本日はこれに関する雑感を述べておきたいと思います。ただし、私の方針として、「疑惑」の段階で会社の実名を出すことはできるだけ控えたいと考えています(といってもバレバレだと思いますが…)。本日は、あくまでも「一般的な粉飾決算のテクニック」と、これに対する朝日新聞社の「ブーメラン社説」を紹介し、あわせて朝日新聞を嘲笑の対象としておきたいと思います。

某社の粉飾疑惑に思う

粉飾決算の基本テクニック

某電機大手メーカーが、現在、「不適切会計問題」で揺れています。

「儲かっていないのに儲かっているかの外観を創出する決算」のことを、俗語で「粉飾決算」とよびます。企業会計は「複式簿記」で設計されています。そして、「当期純利益」とは、売上高などの収益から、人件費や税金などの費用を引いて求められます。このため、損益計算書(P/L)面から見ると、究極的には、粉飾決算は「収益の過大計上」か「費用の過少計上」のいずれかしかありません。これをバランスシート(貸借対照表、B/S)側から言い換えると、「資産の過大計上」か「負債の過少計上」の形で現れます(図表1)。

図表1 粉飾決算の基本
区分項目概要
B/S面から資産の過大計上本来、資産として計上できない項目を資産計上すること
負債の過少計上本来、負債計上しなければならない項目の負債計上を見送ること
P/L面から収益の過大計上計上してはならない収益を計上すること
費用の過少計上計上しなければならなない費用を計上しないこと

典型的な事例は「架空資産」と「簿外債務」

そこで、典型的な粉飾テクニックを確認してみましょう(図表2)。

図表2 典型的な粉飾テクニック
区分細目具体例
収益の過大計上資産の過大計上架空の売上計上に伴う架空の売掛金計上、工事進行基準の進捗率の操作
負債の過少計上ポイント給付引当金の引当率の操作
費用の過少計上資産の過大計上ソフトウェア勘定や建設仮勘定に人件費を過大に混ぜ込む、減価償却の過少計上
負債の過少計上賞与引当金、退職給付引当金などの過少計上

つまり、企業会計が「複式簿記」で構成されているため、粉飾決算を行えば、必ずバランスシートに異常が出てきます。

インチキ・ザル基準IFRS

この企業は、2017年3月期に予定していた国際財務報告基準(IFRS)の任意適用を「いったん見送る」と表明しているようです。私に言わせれば、「ザル基準」であるIFRSの適用が間に合わなかったので、日本基準の下で「粉飾決算」が露呈してしまったといえるでしょう。

というのも、IFRSだと「のれん」の償却が行われないからです。いわば、日本基準と比べて「費用の過少計上」、「資産の過大計上」が行われている格好です。仮に同社がもう少し早く、「合法的粉飾テクニックが遥かに多い」IFRSを採用していたならば、問題はここまで大きくならなかったのかもしれません。

本日の「お前が言うな」

同社の「不正会計疑惑」については、まだ調査中のものでもあるため、私は現段階で、個別企業についてこれ以上深く言及することは控えたいと思います。当然、報道されている7000億円ともされる粉飾決算疑惑が事実であれば、関与したとされる同社経営陣は、当局による捜査を免れないでしょうし、監査に関与していた某大手監査法人や監査業界にとっても、『中央青山事件』以来の不祥事かもしれません。当然、国民に対する説明責任上も、全容解明は待ったなしでしょう。

ただ、これについて私は、「呆れて物も言えない」記事を一つ発見してしまいました。

社説/東芝巨額損失 再生へうみ出し切れ(2017年2月16日付 朝日新聞デジタルより)

記事のタイトルで会社名が出てしまいましたが(笑)、「慰安婦問題」を捏造した犯罪組織・朝日新聞が、偉そうに次のように高説を垂れています。

先の不正会計では、経営トップらが部下に過大な収益目標の達成を迫り、利益の水増しにつながった。その反省が生かされていないのではないか。問題を究明し、公表することが急務だ。うみを出し切らないと、失った信頼は取り戻せない。/東芝は、株主や従業員、取引先に加え、社会にも重い責任を負っている。特に、福島第一原発の廃炉をはじめ、多くの原発で安全管理を担っている。/福島第一の事故後、原発の安全規制が国内外で強化され、建設費は膨らむ傾向にある。東芝が、リスクが高まっている原発事業を縮小するのは当然の経営判断だろう。それでも、安全の確保に必要な人材や技術を保ち、メーカーとしての責任を果たさなければならない。

  • 慰安婦問題に関する真相を究明し、公表することで、膿を出し切らないと、失った信頼は取り戻せない。
  • 公正な報道の確保に必要な人材や取材力を保ち、新聞社としての責任を果たさなければならない。

これほど見事な「ブーメラン」を発する新聞社を、私は存じ上げません(笑)。

明日の予告:「為替介入」について

最近、中国の為替介入に関する記事を見かけることが増えてきました。ただ、国内外のメディアの報道を見ていても、いまいち仕組みがよくわからないと感じる方も多いでしょう。そこで、明日は『FT「韓国が為替介入」記事とトランプ通商戦争』の続編として、「為替介入の仕組みそのもの」について、じっくりと考えてみたいと思います。どうかご期待ください。

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