本日は、緊急で2本目の記事を配信します。韓国メディアの報道によると、オーストラリアと韓国が、今月22日に期限が到来する「通貨スワップ」の規模を倍増することで合意しました。
豪ドル・スワップ増額は「焼け石に水」
豪ドル・韓国ウォンのスワップ協定、倍増
中央日報日本語版が先ほど配信した記事によれば、韓国がオーストラリアとの「通貨スワップ」協定を、従来の2倍の100億豪ドルに増額してもらうことで合意したようです。
日本と通貨スワップ中断の韓国、豪州と2倍に拡大(2017年02月08日14時41分付 中央日報日本語版より)
リンク先の記事を読む前に、「通貨スワップ」について確認しておきましょう。
「通貨スワップ」とは、自国の通貨を担保に、外国の通貨を融通してもらう協定のことです。
韓国の場合、「輸出立国」でありながら、自国の通貨「韓国ウォン」は国際的に通用しない「ソフト・カレンシー」です。このため、韓国の多くの企業・銀行にとって、海外から原材料を輸入したり、海外に拠点を作ったりするためには、外貨(特に米ドル)での調達が必要です。
しかし、韓国には「3700億ドルを超える外貨準備がある」といいながらも、資産性のないものを外貨準備にカウントしている疑いが濃厚であるなど、韓国の実質的な外貨ポジションは脆弱であるとみられます(この点の詳細については『韓国の外貨準備の75%はウソ?』などもご参照ください)。
そこで、韓国にとっては、「緊急時に外国の中央銀行から外貨を融通してもらう」協定が必要なのです。これが「通貨スワップ」です。
そのことを頭に入れたうえで、記事を読んでみましょう。
- 韓国銀行と豪州中央銀行は22日に終了する豪ドル・韓国ウォンのスワップ協定を3年延長し、規模も100億豪ドル(約9兆ウォン、約9,000億円)に拡大することにした
- 韓国の外貨準備高は3,700億ドルにのぼり、通貨危機当時のように簡単に揺れる状況ではないが、武器は多ければ多いほどよい。政府と韓銀が通貨スワップ拡大に注力するのもそのためだ
- 韓国は重点的に推進してきた日本との通貨スワップ協議が中断したのに続き、中国との通貨スワップ延長もどうなるか分からない状況だ
※なお、記事の中で「豪州中央銀行」という単語が出てきますが、これは豪州準備銀行(RBA)の間違いでしょう。
ツッコミどころが多い記事
この中央日報の記事、何かとツッコミどころが多々あります。
まず、「韓国の外貨準備高が3,700億ドルに達する」のであれば、たかだか100億豪ドル(1豪ドル=0.7627米ドルで換算すると76億ドル少々)のスワップなど、全体から占める比率と比べて微々たるものです。しかし、私の試算では、米国財務省が公表するTICレポートなどから判断して、韓国政府・韓国銀行が保有する外貨準備は、1,000億ドル弱に過ぎません(詳しくは『韓国経済の問題点まとめ』をご参照ください)。したがって、76億ドル相当のスワップであっても、韓国にとっては「干天の慈雨」のようなものでしょう。
次に、韓国が保有する「外国との通貨スワップ」の金額は、次の通り、大部分が中国とのスワップです(図表)。
図表 韓国が外国と締結している二カ国間スワップ協定(BSA)
締結日 | 失効日 | 相手国 | 韓国ウォン | 相手国通貨 |
---|---|---|---|---|
2017/2/8 | 2020/2/22 | オーストラリア | 9兆ウォン | 100億豪ドル |
2013/10/13 | 2016/10/12 | UAE | 5.8兆ウォン | 200億ディルハム |
2017/1/25 | 2020/1/24 | マレーシア | 5兆ウォン | 150億リンギット |
2014/3/6 | 2017/3/5 | インドネシア | 10.7兆ウォン | 115兆ルピア |
2011/10/10 | 2017/10/10 | 中国 | 64兆ウォン | 3600億元 |
(合計) | 94.5兆ウォン | 約773億米ドル |
(【出所】韓国銀行ウェブサイト、各国中央銀行ウェブサイト等より著者作成。ただし、「失効日」について明文記載がないものについては応当日の前日を「失効日」とみなしている。また、「相手国通貨」の米ドル換算額については、各通貨を2017年1月26日時点でダウジョーンズから入手した為替相場終値で試算している。また、豪ドルについては2017年2月8日時点のレートで換算し直している)
韓国が外国と締結しているスワップの総額は94.5兆ウォン(米ドル換算で826億ドル相当額)ですが(※ちなみに相手国通貨の米ドル換算額は800億ドル弱)、このうち、実に3分の2を占めるのが中国とのスワップです。しかも、おそらく、図表中のUAEとのスワップについては既に失効していると思われるため、現時点でも有効なスワップは、実質的には88兆ウォン(約776億ドル程度)しか存在しません。
ソフト・カレンシー同士のスワップに意味はない!
さらに、韓国がスワップを締結している相手国にも大きな問題があります。
相手国のうち、豪ドルだけは国際的に通用する通貨(準ハード・カレンシー)ですが、それ以外の通貨は、国際的に通用しない通貨(ソフト・カレンシー)です。こんな通貨を受け取っても、韓国を襲う通貨危機では全く役に立ちません。
だいいち、豪ドルの価値も3年前と比べて低下しています。WSJによると2013年初頭で豪ドルと米ドルはほぼパリティ(等価)でしたが、現時点で1豪ドル=0.7627米ドル程度に下落しています。豪ドル自体が米ドルに対して為替変動する通貨であると考えるならば、韓国が危機の際に本当に必要とする通貨(米ドル)でのスワップが、それこそ「喉から手が出るほど」欲しいことは間違いないでしょう。
今回の豪ドル建てスワップの倍増措置は、韓国銀行にとっては、いわゆる「焼け石に水」なのです。
終わらない危機
もちろん、今のところ韓国の通貨が暴落する兆候はありません。
しかし、国際的な資本市場では、米・トランプ政権の誕生を受けて、新興市場(EM)諸国からの資金引き揚げの流れが続いており、また、米FRBは年内に最多で3~4回の利上げに踏み切る可能性もあります。その意味で、韓国を含めたEM諸国は、国際的な投機筋から攻撃を受けやすい状況が続いているのです。
それだけではありません。韓進(かんしん)海運の経営破綻をはじめ、現在の韓国では、大型の経営危機・経営破綻が相次いでいます。そんな状況に加えて、「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」配備を受けて、中国が韓国に対して「激怒」しています。現在の韓国は、既に中国に対する「経済属国」と成り果てていますが、その中国は「限韓令」(げんかんれい)を発動し、韓流スターや韓国製品の締め出しを始めているようです。
いずれにせよ、今回の措置はまさに「焼け石に水」であり、韓国経済の危機は全く収束する気配を見せないというのが実情に近いのではないでしょうか?
View Comments (3)
お初です。
貴殿サイトには最近訪問したばかりの新参者ですが、よろしくお願いします。
いゃ、貴殿の論評・解説には誠に感心しきり、う~む「なるほど!」と、日々勉強させていただいております。(もっとも、貴殿ご専門の経済論評・解説には「なんのこっちゃ?」感満載でチンプンカンプンなのですが…)
某国の行く末は如何に、静かに赤化していくのか、クーデターによる戒厳令か、それとも保守(…といっても反日には変わりなく…)が勃興して、かろうじて〝民主主義”国を標榜していくのか。
直近を振り返っても「なぜ、突然『催・順実(さい・じゅんじつ)』醜聞がバレたのか?」、この点一つをとっても「おまえら、40年も気付かないほど○鹿なの?」と、突っ込みたくなります。
たぶん、北シンパが起こした周到な準備による実行行為とは勘繰りますが、これほどまでに従北左派(…当然ウシロにはキンペイ…)が国内を蹂躙しているのか、と、驚愕しきりです。
今後とも、事象に即したレスポンス良い情報を、ご提供賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
何だオーストコリアとスワップ結んだのか。じゃあ日本とのは必要ないよね。さようならw
憂国の志士 様
通りすがり 様
コメントありがとうございます。
引き続きご愛読賜りますと幸いです。