慰安婦問題の「解決」を定義する

私は7年前に「ブログ」を開設して以来、一貫して「従軍慰安婦問題」について考察を続けてきました。昨年暮れに、韓国・釜山の日本領事館前にも「慰安婦像」が建立されるという騒動がありました。これについては『【緊急上梓】釜山の慰安婦像問題の本質』の中でも触れたとおり、韓国政府が「対日関係を巡っては法を捻じ曲げてでも国民感情を優先する」という姿勢を取っていることがわかります。本日は、普段と少しだけ視点を変えて、日韓関係、とりわけ「慰安婦問題」を巡る「末路」について、じっくりと考察してみたいと思います。

年初から多難な日韓関係

新年3が日を、皆様はいかがお過ごしになりましたか?

私は某経理専門誌の締切を勘違いしており、そのことに気付いたのが正月の2日目で、結局、正月はほぼ仕事をして潰れてしまいました(涙)。

それはさておき、日韓関係は、年初からさっそく、急激に動き始めています。

日本メディア「釜山日本領事館前の少女像のため日韓通貨スワップ停滞も」(2017年01月03日11時31分付 中央日報日本語版より)

日韓スワップは、恒常的な外貨不足に苦しむ韓国にとっては、「喉から手が出る」ほど欲しい協定です。しかし、それと同時に慰安婦問題を巡っては、日本としてもこれ以上、韓国の好きにさせておくことなどできません。日本を公然と侮辱する韓国に、韓国を助けるための日韓スワップを提供するとなると、日本国民の怒りは安倍政権に向かうことでしょう。年初から、日韓スワップをはじめとする日韓の様々な懸案は、停滞を余儀なくされそうです。

ところで、年初の時期は、国際関係などの課題を巡り、ゆっくりと立ち止まって思索を巡らすにはちょうど良いタイミングでもあります。そこで、本日は、普段とやや趣向を変えて、時事ネタよりも「慰安婦問題そのもの」について「正確な定義」を試みたうえで、「日本人が何をしなければならないのか」について、考察して参りたいと思います。どうか本日もお付き合いください。

あらゆる「問題」には「定義」が必要だ

私が新聞社などの社説(日本、韓国、あるいは欧米)を眺めていて、いつも感じることがあります。それは、「何かを議論する時に、問題を正確に定義していない人が多い」、という点です。

例えば、安倍政権が2014年に推進した「安全保障関連法案」を巡っては、左派メディアを中心に、「集団的自衛権の行使は憲法違反だ」、などとする論調が見られました。しかし、これらのメディアは、「そもそも自衛のための戦争すら禁止する憲法第9条第2項の規定自体がおかしいのではないか?」とする論点を一切無視し、「憲法違反だから問題だ」、という「一点張り」で、いわば完全に思考停止していたのです。

つまり、「問題の正確な定義」ができていないのに、その「問題」を議論することなどできませんし、「解決策」など導き出すことは不可能なのです。

その意味で、世の中の「ありとあらゆる問題」には、必ず、「正確な定義」が行われていなければなりません。

「慰安婦問題」を「定義」する

慰安婦問題についても、議論の全てが「問題の正確な定義」から始まるべきです。では、「慰安婦問題の定義」とは、いったい何でしょうか?

慰安婦問題とは、一般に、

「1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が朝鮮半島で組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷としたとされる問題」

のことです。

これが事実であれば、本当に痛ましい話であり、また、ナチス・ドイツの戦争犯罪にも匹敵する「人道に対する罪」です。私たち日本国民は、元慰安婦に対し、真摯に首を垂れ、謝罪するとともに、戦争犯罪者を見つけ出して処罰しなければなりません。もちろん、この問題が「事実ならば」、ですが。

しかし、それと同時に、もし仮にこの定義が「事実」なのだとしたら、日本人が謝罪するよりも前に、「それがいかなる証拠により裏付けられるのか」を、朝日新聞社と植村隆と韓国政府と韓国国民が、証明しなければなりません。ところがこの問題は、現実には文筆家である吉田清治(故人)の捏造に基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆がでっち上げた記事が、全ての発端であることが、既に判明しています。

問題はこれに留まりません。

この定義が「虚偽」なのだとしたら、派生して深刻な問題が生じます。それは、国際社会で、あたかも日本がナチス・ドイツの戦争犯罪にも匹敵する人道上の罪を犯したかのごとく、日本人の名誉を傷つけている、という問題です。この場合、裁かれるべきは朝日新聞社と植村隆だけではありません。この「ウソの問題」で日本政府から謝罪を引き出し続けた韓国政府、そして何より、全世界において、現在進行形で日本人の名誉を傷つけ続けている、一人ひとりの韓国国民です。

そこで、私は「慰安婦問題」について、このように定義を変更したいと思います。

「文筆家の吉田清治の虚偽証言などに基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆が朝日新聞に執筆した捏造記事をきっかけに、韓国政府が1990年代に『朝鮮半島で1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷にした』とされる虚偽の事実をでっちあげ、韓国政府及び韓国国民が今日に至るまで日本人の名誉を世界中で傷つけている問題」

捏造記者・植村隆

ところで、朝日新聞社の記者(当時)だった植村隆は、1991年8月11日と12月25日、元慰安婦を自称する金学順(きん・がくじゅん)に関する記事を執筆。「挺身隊」と「慰安婦」を意図的に混同させたことが、朝日新聞自身の検証からも明らかになっています。

記事を訂正、おわびしご説明します 朝日新聞社/慰安婦報道、第三者委報告書(2014年12月23日付 朝日新聞東京本社朝刊37ページより)

朝日新聞は

「日中戦争や第2次大戦の際、『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』のうち、1人がソウル市内に生存していることがわかり……」(91年8月11日付朝刊社会面〈大阪本社版〉)

これは、「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」との見出しで掲載した記事の前文部分です。記事は、韓国人の元慰安婦の一人が初めて、自らの過去を「韓国挺身隊問題対策協議会」に証言したことを、録音テープをもとに伝えました。

 しかし、同記事の本文はこの女性の話として「だまされて慰安婦にされた」と書いています。この女性が挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません。

 前文の「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」とした部分は誤りとして、おわびして訂正します。

と述べています。

余談ですが、「お詫びして訂正」するくらいで済むのなら、そんな簡単なことはありません。しかも、この朝日の記事では、植村隆の捏造記事を、「捏造」とは認めていません。今でもこの文章を引用すると、日本国民の一人として、思わず朝日新聞社と植村隆に対する怒りが湧きたってきます。ただ、ここでは私の感情を述べるのは「余談」に留め、議論を進めましょう。

捏造の文筆家と捏造新聞

この点、問題の記事をでっち上げた「主犯」は植村隆ですが、慰安婦問題は植村隆が一人で捏造したものではありません。実は、朝日新聞社の複数の記者が、文筆家の吉田清治(故人)の虚偽証言を報道しているのです。

朝日新聞社のウェブサイトでは、同社が2014年12月時点で「取り消した」記事(「一部取り消し」を含む)が全部で18本あるとしつつ、そのうちの15本を、先ほど紹介した「検証記事」にて公表しています(図表1)。

図表1 朝日新聞社が「取り消した」記事
掲載日見出し記事の内容
●1980年3月7日朝刊(川崎・横浜東部版)連載 韓国・朝鮮人2(27) 命令忠実に実行 抵抗すれば木剣吉田氏への取材をもとに「2回ほど朝鮮半島に出かけ、“朝鮮人狩り”に携わった」などと記述。現地で警官とともに若者100人を集め、労働力として日本へ送り、抵抗する者には暴力を使ったとする証言を紹介
82年9月2日朝刊(大阪本社版)朝鮮の女性 私も連行 暴行加え無理やり大阪市内であった集会で吉田氏が行った講演内容をまとめた。吉田氏は、直接指揮して日本に強制連行した朝鮮人は約6千人、うち950人が慰安婦だった、と説明した
83年10月19日夕刊韓国の丘に謝罪の碑 「徴用の鬼」いま建立6千人の朝鮮人を日本に強制連行し「徴用の鬼」と呼ばれた、と吉田氏を紹介。田んぼや工場、結婚式場にまで踏み込んで若者たちを手当たり次第に駆り立てた、などと活動を説明している
83年11月10日朝刊ひと 吉田清治さん「国家による人狩り、としかいいようのない徴用が、わずか三十数年で、歴史のヤミに葬られようとしている」などの吉田氏の発言をとり上げた
83年12月24日朝刊たった一人の謝罪 韓国で「碑」除幕式吉田氏が韓国に建てた「謝罪の碑」の除幕式の様子を報じた。「私は戦前数多くのあなた方を強制連行した張本人」などの発言を紹介
●84年1月17日夕刊(大阪本社版)連載 うずく傷跡 朝鮮人強制連行の現在(1) 徴用に新郎奪われて本文冒頭で、吉田氏が朝鮮人強制連行業務の一端に連なった、と書き、同氏が韓国・天安に建てた謝罪の碑の除幕式の様子を紹介
86年7月9日朝刊アジアの戦争犠牲者を追悼 8月15日、タイと大阪で集会吉田氏について、慰安婦を含む朝鮮人の強制連行の指揮に当たったと言及している
90年6月19日朝刊(大阪本社版)名簿を私は焼いた 知事の命令で証拠隠滅「多くの朝鮮人女性を従軍慰安婦として連れ去ったこともあります。当時の私は、徴用の鬼、といわれて誇りに思っていました」と吉田氏の発言を記載
○91年5月22日朝刊(大阪本社版)女たちの太平洋戦争 従軍慰安婦 木剣ふるい無理やり動員吉田氏が「私が今日、最も恥ずべきこと、心を痛めている問題の一つは、従軍慰安婦を950人強制連行したことです」などと語った内容を、集会での発言を収録した本を引用して紹介
91年10月10日朝刊(大阪本社版)女たちの太平洋戦争 従軍慰安婦 乳飲み子から母引き裂いた吉田氏のインタビュー記事。慰安婦を強制連行したとして、「若い母親の手をねじ上げ、けったり殴ったりして護送車に乗せるのです」などと語っていた
92年1月23日夕刊窓 論説委員室から 従軍慰安婦「(慰安婦を)戦場に運び、1年2年と監禁し、集団強姦(ごうかん)し、そして日本軍が退却する時には戦場に放置した」などと吉田氏の発言を紹介
92年3月3日夕刊窓 論説委員室から 歴史のために吉田氏の告白に多くの投書が来たことに触れ、日本軍の残虐行為を否定する意見を紹介。知りたくない、信じたくないことがある。だが、その思いと格闘しないことには、歴史は残せない、と結んだ
92年5月24日朝刊今こそ 自ら謝りたい 連行の証言者、7月訪韓吉田氏が韓国に謝罪の旅に出ることを報じた。「残虐行為に直接かかわった日本人が謝罪に来た、という歴史を残したい」との発言にも触れた
92年8月13日朝刊元慰安婦に謝罪 ソウルで吉田さん吉田氏が韓国で元慰安婦に謝罪した様子を報じた
94年1月25日朝刊政治動かした調査報道朝鮮に渡って強制的に慰安婦を送り出した元動員部長の証言に、読者から驚きの電話が何十本も届いた、と吉田氏を匿名で紹介

(【出所】朝日新聞のウェブサイトから原文通り抜粋。なお、漢字仮名遣いがおかしい個所も多々あるほか、吉田清治を「吉田氏」と敬称付きで表現しているなどの理由は、朝日新聞の記事をそのまま抜粋しているため。なお、掲載日の冒頭に「●印」を付しているのは、2014年12月時点で新たに「取り消し」「一部取り消し」扱いとした記事)

朝日新聞社は、あくまでも植村隆などの同社記者が、吉田清治の「虚偽の証言」に「騙された」かのように装っていますが、私に言わせれば、実質的には吉田清治に全ての罪を被せている行為ではないかと思えます。

「誰が」「何のために」利用したのか?

そして、一番重要な点は、この「慰安婦問題」を、「誰が」「何のために」利用したのか、という点です。

韓国国内ではその後、複数の「自称元慰安婦」が「被害者」として名乗り出るなどした結果、韓国人ブロガーのシンシアリーさんの指摘によれば、現時点での「韓国政府公認の日本軍慰安婦」は生存者が40人なのだとか。「20万人を強制連行」したはずなのに、韓国政府が認定した慰安婦が239人、生存者が40人しかいないとは、これはこれで、非常に奇怪な現象です。

それはさておき、この「自称元慰安婦」を「利用」する勢力が存在することも事実です。では、それは誰でしょうか?

端的にいえば、それは韓国政府と韓国国民です。ただ、その背後には、韓国社会を崩壊させようとする北朝鮮の意図や、「慰安婦問題」を巡って日本に対し外交上優位に立とうとする中国の意図も見え隠れします。

そこで、「誰が」この問題を利用しようとしているかについての一覧を作成してみましょう(図表2)。

図表2 慰安婦問題を利用しようとする者
主体目的備考
韓国政府慰安婦問題を巡り外交上、日本に対して優位に立つため、あるいは韓国国民の不満を外に逸らすため韓国政府はこの問題を、米中二股外交を続けるための、米国に対する「言い訳」としても利用している
韓国国民日本に対する精神的優位を保つために、日本を叩いて溜飲を下げるため韓国国民を扇動している勢力には「親北系市民団体」の影もちらつく
北朝鮮韓国社会を「極端な反日」に染め上げることで日韓の分断を図り、韓国社会を弱体化させるため韓国大統領選で親北朝鮮系候補者を当選させれば、北朝鮮主導での平和統一も視野に入る
中国日本との外交戦を続けるうえで、日本に対して優位に立つため中国共産党政権にとっては、「利用できるものは何でも利用する」
日本国内の左派メディア

ところで、慰安婦問題自体を捏造した朝日新聞社を始め、「日本国内の左派メディア」が、この問題を積極的に取り上げているのは、どういう理由があるのでしょうか?「日本のメディアが日本を崩壊させるようなことをやる」とは、どう考えても不思議です。

ただ、実は「日本国内のメディアが反日的な報道を行う」という問題については、「慰安婦問題」とは別に、きちんと議論する必要があります。このため、本日は「日本国内の左派メディアが(なぜか)慰安婦問題を喧伝している」ということを指摘するに留めたいと思います。

慰安婦問題の「落とし前」

ここまでの議論で、慰安婦問題が本質的にどういう問題であるかについて確認して来ました。

繰り返しになりますが、私が考える「慰安婦問題」とは、

「文筆家の吉田清治の虚偽証言などに基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆が朝日新聞に執筆した捏造記事をきっかけに、韓国政府が1990年代に『朝鮮半島で1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷にした』とされる虚偽の事実をでっちあげ、韓国政府及び韓国国民が今日に至るまで日本人の名誉を世界中で傷つけている問題」

のことです。

韓国国民の壮大な勘違い

私は、図表2で指摘した「慰安婦問題を利用しようとする者」の中で一番悪質な主体は、一般の韓国国民だと考えます。

例えば、韓国と同じ「反日国」というカテゴリーには中国があります。しかし、中国の場合は中国共産党による一党独裁体制にあり、中国国民には自由選挙権も言論の自由もありません。このため、一般の中国国民の反日感情が強かったとしても、やむを得ない部分もあるかもしれません。

しかし、これに対して韓国は、(見た目は)日本や米国と同じ「自由民主主義国家」であり、大統領や国会議員は韓国国民が直接選挙で選びますし、言論の自由もあるはずです。それなのに、中国と同じような「極端な反日国」となっている理由を、考察する必要があります。

これについて、国際戦略の専門家で、米戦略問題研究所(CSIS)の前上級顧問のエドワード・ルトワック氏は『中国4.0』の中で、

韓国がそもそも憎んでいるのは、日本人ではなく、日本の統治に抵抗せずに従った、自分たちの祖父たちだからだ。(中略)日本の統治は、当時、大した抵抗に遭っていなかったのである。

と述べています(同P129「記憶のパラドックス―戦わなかったからこそ許せない」より)。

ただ、私に言わせれば、韓国人の反日感情は、もっと深刻なものです。歴史的・伝統的に、「自分たちこそが小中華であり、世界の尊敬を受けなければならない国だ」という意識(あるいは「勘違い」)を持ったまま、現実には自分たちが蔑んでいるはずの日本が世界からの尊敬を集めているという現実が許せない、ということではないでしょうか?

韓国・北朝鮮などのニュースを見ていると、なにかにつけて「わが国」あるいは「わが民族」が「いかに偉大であるかを世界に知らしめなければならない」と力説しているのを見ると、やはり、「自分たちは優秀なのだ」という壮大な勘違いが、全ての問題の背後にあるように思えてならないのです。

韓国国民の「集団自殺」?

そして、こうした「壮大な勘違い」は、韓国を自滅に追いやりつつあります。

昨年暮れに、韓国メディア「中央日報」の日本語版に、こんな記事が掲載されました。

釜山日本領事館前の少女像設置を容認…「自治体が対応するのは難しい」(2016年12月30日11時13分付 中央日報日本語版より)

この経緯を簡単に振り返っておきます。

  • 日韓両国の「慰安婦合意」から丸1年となる今月28日、韓国・釜山(ふざん)市の日本領事館前の公道上に、地元の市民団体「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会」が慰安婦像を設置したところ、釜山東区庁は同日、これを強制排除し、撤去・押収した
  • ところが、慰安婦像が撤去された直後から、同庁には「業務がマヒするほどの抗議電話」が殺到。同庁ホームページには苦情の書き込みが相次ぎ、29日夕方4時頃にはホームページがダウンするという騒ぎにまで発展した
  • こうした韓国国民の声を受け、区庁長は「多くの市民に謝罪する」と表明。押収した慰安婦像を市民団体側に返還するだけでなく、さらには慰安婦像の設置そのものを許可する方針に転換した

私にはどうも韓国国民が「集団自殺」に向かって走っているようにしか見えません。なぜなら、それをすることで、韓国が「無法国家である」と、世界に向けて宣伝しているのと全く同じだからです。韓国国民の行動は、まさに常軌を逸して暴走し始めているのです。

慰安婦合意の破棄がもたらすもの

ところで現在、韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領は、国会での弾劾決議を受けて、職務停止状態にあります。韓国の憲法の規定上、憲法裁判所は、国会の弾劾決議(2016年12月9日)から180日以内、すなわち遅くとも今年6月7日までに、朴大統領を罷免するかどうかを決めなければなりません。

仮に、朴大統領の罷免判決が下された場合には、同国憲法第68条第2項の規定に基づき、判決時点から60日以内に後任の大統領が選出されることになります。

また、罷免されなかったとしても、彼女の任期は2018年2月24日に満了するため、同国憲法第68条第1項の規定に基づき、任期満了70日前から40日前(つまり2017年12月16日から2018年1月15日の間)に、後任の大統領が選出されます。

したがって、どちらの場合であっても、おそらく今年中には大統領選挙が行われるでしょう。

朴大統領の後任候補の就任予定時期は、次の通りです。

  • 朴大統領の罷免判決が1月だった場合には3月頃
  • 朴大統領の罷免判決が6月だった場合には8月頃
  • 朴大統領が罷免されなかった場合には来年2月

そして、『韓国の次期大統領と日本』の『誰が後継者になっても極論?』でも議論したとおり、国連の潘基文(はん・きぶん)前事務総長を除く全ての有力候補が、揃いも揃って、「慰安婦合意の破棄」を主張しているようです。

この「慰安婦合意」とは、日本政府が10億円を支払うことなどと引き換えに、未来永劫、韓国政府が慰安婦問題を蒸し返さないと約束した国際合意であり、安倍政権が国民の反発を覚悟で合意にこぎつけたものです。これを韓国側から破棄するということは、安倍政権にとっては韓国から顔に泥を塗られるのと同じことです。

それだけではありません。慰安婦合意の背景には米国の日韓両国に対する強い圧力がありました。ということは、慰安婦合意を韓国が破棄すれば、韓国は日本に対してだけではなく、米国に対しても、「喧嘩を売る」ということになるのです。

また、慰安婦合意は米国が仲介人となったわけですから、韓国がこれを破棄すれば、米国としても心中穏やかではありません。少なくとも、日米韓の三カ国での安全保障協力は、間違いなくストップするでしょう。

つまり、「日韓合意破棄」を公約に唱える候補が次期大統領に就任すれば、早ければ今年3月、遅くとも来年2月には、日米韓で非常に大きな動きが生じることになるのです。

「米韓同盟破棄」は安全保障的にも理想的

2016年7月に米韓両軍は、朝鮮半島に駐留する米軍にTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を2017年12月までに導入することで「合意」しました。さらに、2016年11月には、長期間「たなざらし」状態にあった日韓GSOMIA(包括軍事情報保護協定)の署名に漕ぎ着けました。

これらの動きをもたらしたのは、いずれも昨年の慰安婦合意です。いわば、慰安婦合意により韓国が「反日」のための言い訳を封じ込められたことで、「逃げ道」を塞がれたというのが実情に近いでしょう。

ただ、今のところは強引に米国が韓国を「同盟」に繋ぎ止めていますが、韓国が慰安婦合意を破棄すれば、日本は間違いなく、韓国に対する防衛に協力しなくなります。このため、日韓GSOMIAは協定だけ存在していても、実効性はなくなりますし、米国としても朝鮮半島へのTHAAD配備が遅れれば、それだけ米国の防衛計画にも影響が出てきます。

また、無理やり「米韓同盟」と「日米韓軍事協力」の枠組みを維持したとしても、韓国は日米の軍事機密情報を中国側に流す、ということをやりかねません。

余談ですが、私は、いっそのこと日本が水面下で積極的に、米韓同盟をやめさせるべく活動すべきではないか、とさえ思っているほどです。

韓国人の6割「慰安婦合意を破棄すべき」

ところで、「慰安婦合意破棄の可能性が高い」という仮説は、あながち私が勝手にでっち上げている「与太話」とは限りません。昨年暮れの韓国の世論調査によると、「慰安婦合意を破棄すべきだ」との回答が6割近くに達していたのだそうです。

韓日慰安婦合意 韓国世論「破棄」に傾く=世論調査会社2016/12/29 13:00付 聯合ニュース日本語版より)

聯合ニュースの記事によると、

  • 日韓慰安婦合意から1年経過した2016年12月28日時点で韓国の世論調査会社「リアルメーター」が成人525人を対象に世論調査を行ったところ、「韓日合意」(※日韓合意の韓国側からの呼称)について、「破棄すべきだ」が59.0%、「維持すべきだ」が25.5%、「よく分からない」が15.5%との回答を得た
  • 合意直後の2015年12月30日時点で「韓日合意は韓国政府の誤りだった」が50.7%、「韓日合意を評価する」が43.2%だった

ということです。

聯合ニュースによると、慰安婦合意を「破棄すべきだ」と回答した比率は、40代で79.2%、30代で76.4%でした。いわば、「社会の中核層」である30代や40代の7~8割が慰安婦合意破棄を望んでいるということです。調査対象サンプルが韓国社会という母集団を正確に示していると仮定すれば、「日韓慰安婦合意を求める意見」は、「社会のごく一部の極端な層」にみられるのではなく、「韓国の現役世代のマジョリティ」を占めているということです。

私は、このことからも、慰安婦合意撤回を公約に掲げる候補者が韓国の次期大統領に当選する可能性は極めて高いと見ています。

日本人は何をしなければならないのか?

「従軍慰安婦問題」を捏造したのは植村隆と朝日新聞社ですが、これに「少女20万人」という尾ひれまでつけて世界に広め、日本人の名誉を傷つけてきた犯人は、歴代韓国政府と韓国国民です。では、日本人は何をしなければならないのでしょうか?

朝日新聞社に「倒産」を!

私は、朝日新聞社については、もう「倒産」という社会的制裁を与えるしかないと考えています。

ただ、朝日新聞社は少し前まで800万部(!)もの部数を誇る「日本の最大手新聞」の一角を占めていて、優良資産もたくさん抱えており、少しくらい「不買運動」をしたところで、同社の経営基盤はびくともしません。

しかし、私は、朝日新聞社については少なくとも「ウソで日本人を傷つけた新聞社である」という事実を、私たち日本人が共有し、何十年も語り継ぐべきだと考えています。いまこの瞬間は、朝日新聞を購読する人たちが存在していたとしても、私たちが「朝日新聞の犯罪」を語り継ぐことで、やがて朝日新聞はジリジリと売れなくなるはずです。

どんなに優良資産をたくさん抱えていたとしても、会社組織である以上、優秀な人材が入社しなくなり、商品が売れなくなれば、必ず経営が傾いて来ます。その時が来ることを信じて、私はこれからも、朝日新聞社の犯罪行為を、何度も何度も蒸し返していくつもりです。

なお、日本は法治国家です。朝日新聞社に対し、事実をもって「言論」で批判を加えることは極めて正当な行為であり、全く問題ありません。ただし、朝日新聞社を憎むあまり、朝日新聞社に対する違法行為・暴力的行為で私的に制裁することは許されませんし、朝日新聞に「つけ入る隙」を与えてしまいます。あくまでも朝日新聞社に対する批判や不買運動は、紳士的・公正に行うようにしましょう。

韓国に対する「制裁」は少し待とう

韓国は慰安婦問題で日本を侮辱し、日本人を傷つけてきました。この「罪」は、未来永劫消えません。忘れてはならないのは、韓国は「過去の歴史」を巡って、私たち日本人に対する「加害者」であり、「被害者」では決してありません。

ただ、韓国に対しては、「制裁」は少し待つべきです。というのも、韓国が反日で自滅する可能性があるからです。

上記で触れたとおり、その試金石は、韓国の憲法裁判所の判断です。

じつは、韓国大統領の罷免が決定されるためには、憲法裁判所の9人の裁判官のうち、6人以上が弾劾に賛成しなければなりません。ただ、次の報道によれば、1月末に憲法裁の所長が、3月中旬に裁判官が、それぞれ退任します。

韓国憲法裁の弾劾判断(2016/11/27-16:43付 時事通信より)

判決が、憲法裁判所の裁判官が2名退任する3月中旬以降にずれ込んだ場合、後任裁判官が任命されなければ、残り7人中6人が賛成しなければ、弾劾は成立しません。

ところが、憲法裁の所長は、自身が退任する1月末までに判決を出したいと述べている、との報道もあります。そうなれば、9人中6人の賛成で弾劾が成立するため、判決が1月中に下される場合には、朴大統領の罷免が決定される可能性も十分に見込めます。

そして、仮に1月中に朴大統領が罷免されれば、3月中には新大統領が選出されます。この新大統領が「日韓合意破棄」を実現すれば、事態は急展開を迎えることになるのです。

最悪のケースでは、米韓同盟が破棄され、私が『10年以内に朝鮮半島は赤化統一へ?』で議論したのよりも、相当早く、「北朝鮮主導での赤化統一」ないしは「中国の同盟国化」が完了するかもしれません。

その場合、「反日の末に自滅する」という、「壮大なコスト」を、韓国国民一人ひとりが払うことになります。そうなればそうなったで、制裁としては十分です。

その意味で、私は今すぐ韓国に対する「目に見える制裁」を行うよりも、韓国側から「日韓合意破棄」を言い出しやすい環境を整えることが大事だと考えています。日本政府は引き続き、ソウルの日本大使館前の慰安婦像の撤去を韓国政府に要求し続ければ良いのです(どうせ撤去されっこないですが)。

また、私たち日本人は、韓国国民が日本人に対して行っている不法行為を、しっかりと記録し、共有していきましょう。地道な活動ですが、それはいつの日にか、実を結ぶに違いありません。

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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
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