優れたジャーナリストの社会的機能
今日は、「ジャーナリズム」とインターネットの社会的役割について、少々じっくりと考えてみたいと思います。私自身、新聞もテレビも日常的に見ない人間ですが、それでも優れたジャーナリストは社会的には必要だと考えています。本日は、「優れたジャーナリストに対する社会的ニーズは高い」という点、及び、「規制産業であるマス・メディアの先行きは極めて暗い」という点についての議論をまとめておきます。
もはや新聞・テレビは信頼できない
私には、アメブロや楽天ブログを更新していた時代から一貫している行動が一つあります。それは、「テレビを見ないこと」、「新聞を読まないこと」です。これにはきちんとした理由があります。「現在の新聞・テレビのレベルが低すぎるから」、です。
新聞については、誤報・捏造・偏向報道が酷いので、もう私自身は全く信頼できないと思っています。一例を挙げますと、朝日新聞が捏造した記事をもとに、「戦時中、日本軍が関与して朝鮮半島で少女20万人を強制連行した」とされる、いわゆる「従軍慰安婦問題」で、日本人は今でも国際社会から批判され続けています。この問題は、吉田清治なる人間が「戦時中に朝鮮・済州島で『慰安婦狩り』に関与した」などの虚偽の事実を「告白」し、当時、朝日新聞社の記者だった植村隆がこのウソに基づいて捏造記事をでっち上げたことに全ての問題が集約されます。
もちろん、慰安婦問題が大きくなった理由については、これを「利用」した者が多数いたこと(特にひどいのは韓国政府と韓国国民)、きちんと責任を持って事実関係を否定しなければならないはずの外務省や歴代政権が、これを積極的に放置したことなどがあります。しかし、だからといって、朝日新聞社の責任が薄まるものではありません。それどころか、朝日新聞社は2014年8月5日付の「朝日新聞朝刊」で、「一連の記事」を「誤報」だとして「取り消す」と表明していますが、いまだに「捏造」の事実を認めておらず、かつ、英語版を含め、世界中にばら撒いた虚偽の事実を撤回する努力を一切怠っています。問題の根本的な原因を捏造し、そして現在進行形でそれを拡散し続けている「朝日新聞社」という法人組織が、過去・現在・未来のすべての日本国民に対して責任を取らなくて良いはずがありません。
新聞社の誤報事件といえば、他にも、日本経済新聞(日経)の誤報体質も問題でしょう。リーマン・ショックの直後の2008年10月に、日経は「時価会計が凍結される」という、世紀の大誤報を垂れ流しました。しかし、どうやらこの記事は、日経の記者が「有価証券の保有目的区分」も、「時価評価・損益処理」と「時価評価・純資産直入処理」の違いも、一切理解しないででっち上げたものであり、「捏造」とまではいわないまでも、きわめて悪質な誤報でした。日経はいまだにこの件で、日本国民に対して訂正も謝罪も行っていません。
テレビ番組に関しては、私自身がリアルタイムで直接視聴していないので、どんなレベルなのかを知ることはできません。しかし、橋下徹氏が大阪府知事・大阪市長だった時代の記者会見の様子を、動画サイト等を通じて当時からリアルタイムで閲覧していたのですが、新聞記者だけでなくテレビ記者の知的水準も極めて劣悪であるという点については痛感しています。
ここに、面白いデータがあります。2009年の総選挙といえば、自由民主党が衆議院議員総選挙で惨敗し、民主党が地滑り的躍進を遂げたときですが、この選挙の直後に実施され、公表された調査によれば、「総選挙の投票先を判断するための情報を主にテレビから得ている」と答えた有権者の約半数が、比例区で民主党に投票したのだそうです。
経済政策と投票行動に関する調査 「子ども手当支持」は3割、政策には厳しい目(2009年9月10日付 社団法人日本経済研究センターウェブサイトより。PDF注意)
リンク先のファイルに転載規制があるため、内容をそのまま当ウェブサイトに転載することはしませんが、私はこの調査結果も、テレビ報道がいかに歪んでいるかを示す重要な証拠の一つだと考えています。
優れたジャーナリストは存在する
私がいかに新聞・テレビを嫌っているかについては、当ウェブサイトをご愛読くださっている方であれば既にお気づきだと思います。ただ、それでも「客観的事実を正確に伝えるとともに、専門家としての知見に基づきこれを解説する」という意味で、「ジャーナリスト」は社会的に必要な存在です。
いつも当ウェブサイトで主張している内容の繰り返しですが、情報には二つの種類があります。一つは「事実」、もう一つは「意見」です(図表1)。
図表1 二つの情報
区分 | 意味合い | 具体例 |
---|---|---|
事実 | 客観的に誰が見ても正しい情報、あるいは誰が報じても全く同じ内容になる情報 | 1941年12月8日、大日本帝国はアメリカ合衆国に対して宣戦を布告した。 |
意見 | 事実をもとに、誰かが「思う」、「考える」、「分析する」などした情報 | この戦争は大日本帝国が自己防衛のためにやむなく始めたものだ。 |
例えば、「1941年12月8日(※日本時間)に大日本帝国がアメリカ合衆国に対して宣戦を布告した」という情報は「事実」(歴史的事実)ですが、日本から見ると「自衛戦争だった」という主張があるかもしれませんが、米国から見ると「宣戦布告に先立って真珠湾を奇襲攻撃した卑劣な日本を叩く戦争だった」、となるかもしれません。つまり、「事実」と「意見」とは、その正確さにおいて全く異なる性質のものなのです。
もう一つ、今度は最近の例を挙げてみましょう(図表2)。
図表2 事実と意見の違い
区分 | 最近の具体的な事例 | 備考 |
---|---|---|
事実 | 2015年12月28日、日韓両国外相は「従軍慰安婦問題の不可逆的な解決」で合意した。 | この情報自体、外務省ウェブサイトに行けば誰でも入手可能 |
意見 | この合意は日本人の多くを失望させたが、「中国封じ込め戦略」を優先する安倍政権の対韓関係改善意欲が優先されたものだ。 | 意見の中でも「分析」の範疇に属するもの。ただし、この「情報」には具体的な出所はない |
昨年12月28日に日韓両国外相は、いわゆる「慰安婦問題の解決」で最終決着しました。このこと自体は「事実」であり、合意自体の文書化はされていませんが、外務省のウェブサイトに行けば閲覧可能です。そして、世の中の情報のすべてが「事実」だけであれば、この世の中にジャーナリストなど必要ありません。外交、財政、国防といった国政に関する情報であれば、官公庁のウェブサイトに行けば、誰でもすぐに入手できるからです。実は、ジャーナリストの本当の価値は、「意見」の部分にあります。
図表2に挙げた方の問題を巡っては、私自身、ずいぶんといろんなウェブサイトを検索してみたのですが、これについて、大手マス・メディアの中で、完璧に納得のいく説明を掲載している会社は、私が知る限りは皆無でした。中には、「慰安婦問題」を捏造した当の朝日新聞社のように、完全に「他人ごと」のような報道をしている無責任な会社もありましたが、このようなメディアは論外というべきでしょう。
しかし、私は個人的に尊敬するジャーナリストが数名います。彼らの論説を聞くことで、自分なりに昨年12月の合意は、「中国封じ込め戦略」に従った、安倍政権による極めて一貫した外交戦略の一つであると理解するようになりました。
図表3 「尊敬に値する」ジャーナリスト
氏名 | 現時点の所属・肩書き | 尊敬できる点 |
---|---|---|
鈴置 高史 氏 | 日本経済新聞社 編集委員 | 知る人ぞ知る、日本国内の「韓国問題」専門家。韓国、日本、米国などで報じられる客観的情報を丹念に読み解き、専門家の立場から解説する記事には定評がある |
長谷川 幸洋 氏 | 東京新聞・中日新聞 論説副主幹 | 「左派メディア」とみられる東京新聞にあって、記者クラブや左翼を批判するなど、異色のジャーナリスト |
青山 繁晴 氏 | 参議院議員 (当選1回) | 共同通信出身のジャーナリストで「独立総合研究所」の創設者。2016年7月の選挙で参議院議員(比例区)に当選 |
いずれの方も、大手マス・メディアに現時点で所属されているか、それともその出身者である、という共通点があります。ほかにもまだ、私自身が「尊敬に値する」と考えるジャーナリストの方はいらっしゃるのですが、「プロフェッショナルのジャーナリスト」として真っ先に思い浮かぶのはこの3人です。また、ブロガーの三橋貴明さん、メルマガ著者の北野幸伯(よしのり)さんの論説も、個人的には非常に参考にさせていただいていますが、彼らはマス・メディア出身の「ジャーナリスト」ではないため、ここには挙げていません。
日本経済新聞社の鈴置編集委員は日経ビジネスオンラインに「早読み深読み朝鮮半島」というコラムを連載されており、東京新聞の長谷川氏はニッポン放送のラジオ番組「ザ・ボイス そこまで言うか!」で、たいていは月曜日に出演されています。さらに、青山氏はインターネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」で、木曜日に出演されています。念のため、まとめておきましょうか(図表4)。
図表4 「必ず読むべき・聴くべき・観るべき」記事と番組
氏名 | 主な出稿・出演先 | 曜日・時刻等 |
---|---|---|
鈴置 高史 氏 | 日経ビジネスオンライン「早読み深読み朝鮮半島」 | 不定期 |
長谷川 幸洋 氏 | ニッポン放送のラジオ番組「ザ・ボイス そこまで言うか!」 | 月曜日・午後4時~ |
青山 繁晴 氏 | インターネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」 | 木曜日・午前8時~ |
ジャーナリストの知見とは?
ここに挙げた記事・番組のうち、ラジオ放送やストリーム放送などの番組については、多忙な社会人の方であればあるほど、リアルタイムの視聴等が難しいという事情もあるでしょう。しかし、鈴置編集委員の記事は「ウェブ記事」であり、時間を問わず閲覧することは可能ですし、最近だと高速回線さえあれば、後日、YouTubeなどの動画サイトで配信されている「公式版」を閲覧することもできます。この、「読みたい・聴きたい・観たい」時に、いつでもアクセスできるという点が、新聞・テレビとの最大の違いです。
先日、私は「テレビ局のビジネスモデルは行き詰った」と題する記事の中で、「テレビ局からはスポンサーが逃げていく」「早ければ数年以内に、地方のテレビ局あたりが経営危機に陥るのではないか?」との見解を示したばかりですが、何のことはなくて、実は優れたジャーナリストは、複数のメディアを「かけもち」することで、難なく生きていくことができるのです。つまり、「コンテンツを提供してくれるジャーナリスト」そのものが、テレビから「そっぽを向く」可能性がある、ということです。
私の持論は、「マス・メディアの時代は、もはや終焉を迎えた」というものですが、それは「インターネットの出現で新聞・テレビの優位性が失われた」という側面と、「日本のマス・メディア自身がいい加減な報道を繰り返してきたので、視聴者・読者が離れていく」という側面の二つがあると考えています(図表5)。
図表5 「日本の」マス・メディアが衰退産業である理由
項目 | 現在の危機的状況 | 備考 |
---|---|---|
新聞のビジネスモデルの限界 | 紙に情報を印刷して配達するという情報伝達手法自体が、インターネット出現により存続の危機に瀕している | 少々古くなっても良い情報(時事評論等)であれば、週刊誌のように紙媒体に印刷したものに対するニーズは残るはず |
テレビのビジネスモデルの限界 | 決められた時間にしか放送できないため、ユーザーの「オンデマンド」需要に対応できない | 良質なコンテンツであれば、録画需要、もしくはコンテンツの再販等をビジネスとすることは可能であるはず |
日本のマス・メディアの問題 | 勉強しない新聞記者・テレビ局員が多すぎる | 極端な偏向報道は日本独自の問題? |
つまり、新聞もテレビも、日本だけでなく「世界的に」ビジネスモデルが陳腐化しているのですが、マス・メディアの劣化は日本特有の問題です。たとえば良質なコンテンツを提供する会社であれば、新聞・テレビの限界を補うために、ウェブサイトを開設し、ネットを通じたコンテンツ販売をするなどして、生き延びていくことはできるでしょう。しかし、良質なコンテンツの提供を怠ってきた日本のマス・メディアに、そのような努力・創意工夫ができるとも思えません。これが、私が「日本のマス・メディアが近いうちに経営危機に陥るのではないか」と考える理由です。
規制産業と保護産業は衰退する!
私の持論は「規制産業」や「保護産業」は衰退する、というものです。もちろん、銀行のように、社会的影響が大きい業種に対しては、ある程度の規制も必要でしょう。しかし、マス・メディアに対してはそもそも、社会的には規制も保護も必要ないはずです。日本は言論の自由が認められている国であり、しかも民主主義国です。何らかの政治的主張を行って投獄されるようなことはあり得ません。
日本の消費者は高品質な情報の提供を求めているにも関わらず、既存のマス・メディアには、それができていません。だからインターネットを通じ、私も「情報提供業」に新規参入したのです。そのように考えていくならば、インターネットの出現はあくまでも「きっかけ」に過ぎず、日本のマス・メディアが衰退するのは必然だったのかもしれませんね。
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