10億円拠出の決定に思う

日本政府が韓国の財団に10億円を拠出する方針を固めたそうです。保守系のメディアや掲示板、インターネットのブログサイト等では強い批判も出ていますが、私自身は今回の決定を「条件付きで」歓迎したいと思います。ただし、10億円を拠出してお終い、ではなくて、現在日本が置かれている国際環境や未来を見据え、韓国との関係を抜本的に見直す機会として、肯定的に捉えることが必要です。

10億円拠出をめぐるメディア等の報道

すでに報じられている通り、いわゆる「慰安婦問題」を巡って、韓国政府が設立した「元慰安婦」を支援するための基金に、日本政府が10億円を拠出することを決定したようです。「保守系のメディア」として知られる産経ニュースは、早速これを強く批判する記事を掲載していますが、それ以外の主要メディアは、事実関係のみを淡々と報道しています。

「拙速」世論の反発必至 慰安婦財団 10億円、月内拠出へ(2016.8.13 07:00付 産経ニュースより)
慰安婦財団事業、日韓外相合意…10億円拠出へ(2016年08月13日 00時07分付 読売オンラインより)
元慰安婦支援10億円、月内にも拠出 日韓合意(2016/8/12 21:58付 日本経済新聞電子版より)
慰安婦財団 速やかに10億円拠出 岸田氏、韓国側に表明(2016年8月13日 01時30分付 毎日新聞デジタルより)
慰安婦合意:日本政府、少女像移転と無関係に10億円拠出へ(2016/08/13 07:48付 朝鮮日報日本語版より)
元慰安婦への支援事業で大筋合意 速やかに10億円拠出へ(2016年8月12日 20時50分付 NHKニューズウェブより)
韓日「慰安婦財団」拠出金の使途で合意(2016年08月12日16時38分付 中央日報日本語版より)

(なお、NHKや朝鮮日報などの場合、記事のリンクそのものが消えるのが早いのでご注意ください。)

これらのメディアの報道を眺めていると、産経ニュースの記事が日本政府の決定に対し、非常に批判的です。

「日本政府が韓国に設置された元慰安婦支援のための財団に10億円を拠出することが決まった。資金の具体的な使途が詰め切れていない中での拠出合意。日本側は日韓両政府が使途で合意しなければ事業は進められないとするが、「拙速」との指摘を受けかねない。在ソウル日本大使館前の慰安婦像の撤去も実現しておらず、韓国側が慰安婦問題を二度と蒸し返さないことを担保できなければ、日本の世論の反発は必至だ。」

また、インターネットの掲示板などを眺めてみても、「今までも先にカネを渡してしまって日本が有利になったことなど一度もない」「どうせまた韓国から賠償を要求されるだけ」などの書き込みが多く、特に保守系の論客の間で、安倍政権の拙速な合意に対する批判や失望が渦巻いているようです。たとえば、某著名ウェブサイトでは、

「『10億円を先に渡したほうが日本に有利になる』と考える人がいるのが分からない。今までお金渡して有利になったパターンなんて一つもなかったというのに、今回に限ってそうなる理由を教えてほしいです。約束を守ってお金渡して本当に有利になるんなら、日本はとっくに圧倒的有利になってたよ。」

といった意見も表明されています。

具体的な反論

改めて私自身の意見を述べておきます。

まず、「慰安婦問題」自体が朝日新聞社と同社元記者の植村隆らによる捏造記事から始まったものです。その意味で、最も責任が重大な者は植村隆と法人としての朝日新聞社ですが、それだけではありません。問題を大きくしてきたのは歴代韓国政府と韓国国民であり、それを叩き潰す機会が何度もありながら、みすみす問題を放置してきたのは、日本の歴代政権や外務省です。

これに加えて、昨年12月に「慰安婦合意」をしてしまったのは事実です。この合意により、国際社会からは、日本政府が「慰安婦問題の存在を認めた」だけでなく、「過去の慰安婦に対する謝罪・賠償が不十分だと認めた」と受け止められています。また、手弁当で日本の名誉回復を願って活動する心ある日本人たちの努力を、完全に無に帰したものでもあります。余談ですが、昨年の日韓合意に対し、私個人としても一人の日本人として非常に悔しく、とても悲しい気持ちになりました。

ただ、それと同時に理解しなければならないのは、「相手と同じ土俵に立ってはならない」、という点です。日本はこれまで愚直に国際法を守ってきた国です。相手が国際法を守らないからといって、日本も国際法を破って良い、という話ではありません。日本が国際法をきちんと守っていれば、相手が国際法を破った時に、相手を糾弾することができるからです。

そのことを踏まえて、前出の意見に反論しておきます。まず、インターネットの著名ウェブサイトの意見について、です。

『10億円を先に渡したほうが日本に有利になる』と考える人がいるのが分からない。

とありますが、別に私は「10億円を先に渡したほうが日本に有利になる」とは考えていません。むしろ逆に、「10億円を拠出しなければ、日本が相手に糾弾される可能性がある」からです。そして、

「日本はきちんと約束を守ってお金を相手に渡して来たのに、なぜ圧倒的有利な立場になっていないのか」

という疑問に対する答えは、「歴代外務省がまともに仕事をしてこなかったから」、です。約束を履行したあとは、相手の不法行為を糾弾しなければなりません。つまり、「過去にお金を相手に渡しているのに日本が不利な立場にいる」というのは、「日本がお金を渡したから」ではなく、「合意を履行した後で相手の約束違反をきちんと批判して来なかったから」、です。もっと言えば、国際社会で、「日本はこれだけきちんと合意を守っています」「それでも韓国はウソをついて日本の名誉を傷つけています」という事実を、きちんと広報しないからです。

いずれにせよ、「いままで日本が約束を履行してきたのに不利な立場にある」からといって、「今後は日本から国際合意を破って良い」という論拠にはなりません。

次に、産経ニュースの記事に反論しておきます。産経ニュースは

「資金の具体的な使途が詰め切れていない」
「慰安婦像撤去も実現していない」

という点を問題視していますが、そもそも慰安婦合意で「資金の具体的な使途」は韓国側に一任されているはずであり、慰安婦像の設置はそもそもが国際法違反であり、慰安婦問題と関係ありません。つまり、批判が批判になっていないのです。

これからの韓国との付き合い方

ここからは、私個人としての意見を述べておきます。っ私は今回の「10億円拠出の決定」自体については歓迎したいと思いますが、一つ、条件があります。それは、今回の10億円拠出を「韓国に対する手切れ金」と位置付けるべきだ、という点です。

韓国政府・韓国国民は、これまでウソの事実から他国の名誉を傷つけてきたわけであり、今回もいわば「ごね得」となってしまった格好です。昨年暮れの慰安婦合意は、返す返すも悔やまれます。しかし、それだけでは終わりません。彼らは今や経済力をつけており、韓国国民・韓国企業は世界中に出かけ、現在進行形で日本の名誉を傷つけ、日本の製品・文化を窃盗し、日本を貶めて回っているのです。ウソツキの韓国政府と韓国国民は日本にとって明らかに信頼できない相手です。いいかげん、日本も学習すべきでしょう。

もちろん、現在の日本が置かれている国際的環境を見るならば、中国の急速な軍拡が日本と東アジアの平和と安定を脅かしています。その一方、今年秋の米大統領選でどちらの候補が勝利するにしても、米軍の再編は避けられない問題であり、日本は自力で防衛力を高めなければなりません。

こうした環境下で、中国以外に仮想敵国をもつ余裕など、今の日本にはありません。ロシアとの間では速やかに北方領土問題を解決すべきですし、ASEAN諸国や台湾などとの連携を強めるべき時期でもあります。

こうした中で日本は韓国とどうおつきあいすべきでしょうか?

もちろん、「敵の数は少なければ少ないほど良い」ことは間違いありません。しかし、残念ながら韓国は、日本と同じ「米国の同盟国」という立場にありながら、今まで日本に対して「背後から撃つ」ということを何度も繰り返してきました。中途半端に、日本と同じ陣営に属しているという状況が、むしろ仇になってきたのです。

こうした状況を打破するための手法は、二つあります。

一つは、韓国を米国の同盟国の地位に留めたまま、実質的に韓国の政治的発言力を封殺すること、もう一つは、いっそのこと韓国を「中国陣営に属する国」にしてしまうことです。

日本としては、米国との同盟国という地位を活用し、米韓同盟の事実上の「骨抜き化」を図るべきでしょう。米軍は2017年をめどに、朝鮮半島にある基地にTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を設置する予定ですが、これにより、韓国に駐留する米軍の数を減らすことができます。このTHAADの設置を契機に、在韓米軍の大幅圧縮とあわせ、日本列島に余剰米軍を受け入れれば、米韓同盟の比重は飛躍的に軽くなります。

ただ、韓国が日本と「同一陣営」にあるという状況は、将来的には解消した方が良いでしょう。現在の韓国は、米中両国との「二股外交」を繰り広げていますが、結果的に両国から睨まれ、動きが取れなくなっています。しかし、長期的には韓国が中国に確実に取り込まれていくことは間違いないでしょうから、日本が水面下でそれを後押ししてあげる分には悪いことではないと思います。

日本政府にお願いしたいのは、これから10年単位で、韓国との関係をほぼ完全に清算してほしい、ということです。また、我々日本国民も、韓国が将来的に中国に変わると認識し、それに備えるべきでしょう。

10億円を韓国に拠出して、はい、それでお終い、ではないのです。

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