サイレント・クレーマー議論再掲
自分自身のウェブサイトを立ち上げたのを契機に、久しぶりに、「日本人のサイレント・クレーマー性」について議論してみたいと思いました。これは、「日本人は不満があっても言葉に出さない『サイレント・クレーマー』である」とする仮説であり、オリジナルの議論は、今から約5年前に「楽天ブログ」に掲載したものです。あれから時間もかなり経過しており、自分自身の記事に対する「検証記事」という意味合いでもアップデートしておこうと思います。
日本人はサイレント・クレーマー
かつて、楽天のブログサイトにブログを更新していたころ、日本人の「サイレント・クレーマー性」について議論したことがあります。当時の議論を要約して再掲しておきますと、だいたい次のような流れです。
「◆日本人観光客はホテルの部屋をキレイに使うし、レストランでも礼儀正しいため、どこの国でも歓迎される傾向がある、◆しかし、一部の国では日本人が「サイレント・クレーマー」として恐れられている、◆「サイレント・クレーマー」とは、サービスに不満があっても口に出さない客のことだ、◆日本人はサービスに不満があっても、決して口に出さず、カネを払って黙って出ていくことがある、◆しかし、日本人が本国に帰ると、口コミで自分が受けた不満を周囲に宣伝するため、いつの間にか日本人旅行客が来なくなる、という現象だ…」。
いかがでしょうか?
確かに日本に住んでいると、レストランの中で客が大声で「メシがマズイ!」「サービスが悪い!」などとクレームを付けているのを見掛けることは滅多にありません。私も長年、新宿に暮らしていて、多くの飲食店が開店したり閉店したりするのを眺めて来ました。サービスが悪い店であっても、客が店に文句を言っているのを見たことがありませんが、そういう店は、いつの間にかお客さんが来なくなって潰れていたりします。
しかし、海外(特にヨーロッパ)の場合、レストランのサービスに不満を感じたら、その場で店員さんに苦情を伝えているのを見ることが多々あります。あるいは、チップの慣習がある国では、「わざとチップを払わない」ことで不満を伝えるというパターンもあるようです。ただ、言い換えれば、顧客が「店のサービスに不満があればその場で抗議する」のであれば、店にとっては改善点が見えやすい、という言い方もできます。
私の主観ですが、日本では「不満があってもその場で抗議せず、顧客はお金だけ払って黙って出て行ってしまい、二度と来ない」という傾向があるのは事実だと思います。日本で飲食店を経営するのは、外国で経営するのと比べると、結構大変なことなのかもしれません。
9万円ボッタクリ事件
さて、楽天ブログ時代に「サイレント・クレーマー」を論じたのはもう5年以上前のことですが、当時、インターネットで検索した内容を基に、次のようなエピソードを紹介しました。
「◆2009年7月ごろ、ある日本人夫婦がイタリアの観光都市にある有名店で食事をしたが、700ユーロ(当時の為替レートで約9万円)を請求された、◆夫婦は泣く泣く、クレジットカードでその金額を支払った、◆しかし後日、この夫婦がボッタクリ事件をブログにアップしたところ、大反響となった」…。
当時の情報で恐縮ですが、この「ボッタクリ事件」だけでなく、イタリアでは日本人観光客に多額の飲食代金を吹っ掛ける事例が頻発していたそうです。ただ、当時のインターネット・メディアでは「この事件をきっかけにイタリアを訪問する日本人観光客が激減した」などと報じられていましたが、JTB総研が公表する「日本人出国者の国別統計」を年度ごとに集計してみたのが、次のデータです(図表1)。
図表1 イタリアに「宿泊した」日本人観光客の人数
年 | 宿泊者数 | 延べ宿泊数 |
---|---|---|
2004 | 1,656,213 | 3,442,864 |
2005 | 1,657,688 | 3,325,128 |
2006 | 1,648,220 | 3,198,038 |
2007 | 1,474,014 | 2,882,194 |
2008 | 1,307,729 | 2,595,488 |
2009 | 1,298,068 | 2,534,836 |
2010 | 1,363,444 | 2,593,846 |
2011 | 1,410,677 | 2,665,424 |
2012 | 1,449,115 | 2,765,414 |
2013 | 1,432,051 | 2,765,168 |
2014 | 1,309,943 | 2,579,169 |
((出所)イタリア政府統計局データをJTB総研「日本人出国者数」より孫引き。宿泊者数、延べ宿泊数はいずれも「居住地基準」)
これを見ると、確かに2004年に166万人に達していた日本人宿泊者数が、2009年には129万人にまで落ち込んだあと、近年はおおむね130~140万人程度で推移していることがわかります。ちなみに、外国に出掛ける日本人の数は2004年以降、全体として年間1600~1800万人程度ですから、「日本人出国者全体に対するイタリアに宿泊した日本人数」が落ち込んでいることは間違いありません。
もっとも、このデータだけだと、2009年に落ち込んだ理由が「ボッタクリ事件」のせいなのか、それともリーマン・ブラザーズの経営破綻(2008年9月)に端を発する金融危機のためなのか、よくわかりません。よって、「ボッタクリ事件の影響でイタリアを訪問する日本人旅客数が減少した」と結論付けるのは早計でしょう。
日本人の素行
ところで、不思議なもので、アメリカやヨーロッパなどで街角を歩いているアジア人を見掛けると、現地の人からすれば、その人が日本人なのかどうか、一目見て分かるのだそうです。私自身も何回か外国に出掛けたことがあるのですが、確かに、前から歩いてくる人が日本人なのか、日本人ではないのか、何となく分かります。その理由は良くわかりません。やはり、空気のようなものを感じるからでしょうか?
こうした中、やや古いニュースで恐縮ですが、「欧州12カ国のホテルが最も歓迎する観光客は日本人である」とする記事があります。
欧州のホテルが最も歓迎する観光客は?ワースト3はフランス、インド、中国本土―中国メディア(2014年10月27日付 FOCUS-ASIAより)
リンク先記事によると、旅行サイトで有名な「エクスペディア」が、欧州12カ国のホテル関係者1万5000人を対象に「最も歓迎する観光客」「最も歓迎しない観光客」を尋ねる調査を実施。次の結果が得られた、ということです(図表2)。
図表2 歓迎される/されない観光客
ランク | 歓迎される観光客 | 歓迎されない観光客 |
1位 | 日本人 | フランス人 |
2位 | 米国人 | インド人 |
3位 | スイス人 | 中国本土人 |
((出所)上記FOCUS-ASIA記事本文)
「FOCUS-ASIA」によると、
日本人を歓迎する理由は「言動に節度がある」「礼儀正しい」「現地の文化風習を尊重する」「好奇心が旺盛」などが上がり、「理想的な観光客」と絶賛された。「チェックアウト時の部屋の状態がチェックイン時より整っている」として、「観光客の模範」と称えられた。
ということだそうです。
少ない情報からある結論を決めつけるのは不適切かもしれませんが、敢えて本日は一つの仮説を提示しておきたいと思います。確かに日本人は「礼儀正しく、節度があり、ホテルをキレイに使うしマナーも良い」が、「受けたサービスに不満を持っていても口に出さず、日本に帰ってからその国の悪口を言いまくる」という側面がある、という仮説です。
これをもっと一般化して言うと、日本人は誰か・何かに不満を持っても、その場では我慢し、あとになってからその不満を周囲に宣伝する、という性質があるのかもしれません。このテーマについては興味深いものですので、当ウェブサイトでも引き続き追いかけて行きたいと考えています。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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サイレントクレーマーという感覚よくわかります。
私自身、この記事に書かれているような観光客かもしれません。
ただ勘違いしていただきたくないのが、旅行中はどんな些細なことでも台無しにしたくないという気持ちがあるということです。
よほど好戦的な性格、もしくは金銭的余裕がない以外は、なるべくトラブルは避けたいですし。
むしろその場でクレームをいれる人は、お金を払った上に、失礼な態度の店員を説教してあげるなんてとても親切な人だと思ってしまいます。
私は、その店員の親でもなければ、マネージャーでも、オーナーでもありません。
ただ、同じ思いをする被害者は出さないように、事実に沿った注意換気を最低限することは、一種の義務だと思っています。その場合、自分が冷静になれるタイミングで、本当にクレームをつけるに値するか吟味してからですが、、、