有権者は「基本政策の首尾一貫性」をどう判断するのか

連日の選挙ネタで恐縮ですが、明日投票日を迎える衆院選に関して言及できるのは本稿が最後となると思います。これまで指摘してきたとおり、選挙戦を読むうえでは組織票、対立政党がまとまっているかどうか、などの論点も重要ですが、それだけではありません。政治家の本職、つまり「政策を実現すること」という観点からは、その政党・政治家にとっての基本政策をコロコロと変更したりしていないか、といった視点がも大事ではないでしょうか。

またもや選挙ネタです

明日の衆院選に関しては本稿が最後

普段、当ウェブサイトでは選挙前に選挙の話題を掲載することはあまりないつもりなのですが(というか、むしろ「わざと控えている」と述べた方が正確でしょうか)、今回の選挙に関しては、どうやら例外だったです。

自分自身で直近の当ウェブサイト記事を読み返してみて驚いたのですが、今回、すなわち明日投票日を迎える衆院選に関しては、だいたい2日に1回以上の割合で、話題として取り上げているのです(とくにこの1週間に関してはそうです)。

ただ、それでも、明日の衆院選に関して事前に取り上げるのは、おそらくは本稿が最後です。本日を過ぎると選挙期間が終わってしまうからであり、当ウェブサイトでも明日の夜8時までは、選挙に関する話題は極力控えるつもりだからです。

小耳に挟んだ「選挙事務所の雰囲気」

この点、普段から述べている通り、当ウェブサイトは「ウェブ評論サイト」でありたいと願っており、基本的に政治活動とは一線を画しているつもりです(したがって、当ウェブサイトでは読者の皆さまに「投票に行け」とお願いすることはありますが、「OO党に入れてくれ」とお願いすることは基本的にはありません)。

また、選挙情勢に関する個別具体的な分析についても、もともと、できる限り控えています。一部メディアが報じている「OO党は圧勝ムード」、「XX党は惨敗の公算」、といった報道についても、それ自体が選挙の公平を歪める恐れもあるため、基本的には当ウェブサイトで取り上げることはしません。

ただ、そのうえで敢えて指摘しておくと、やはり今回の選挙では、メディア報道もあながちウソではない、という可能性があります。そう判断する根拠のひとつは、とある知り合いから小耳に挟んだ「選挙区内の選挙事務所の雰囲気」にあります。一般に敗色濃厚となってくると、事務所内の雰囲気が悪くなるようです。

実名は出しませんが、とある選挙区では複数の候補者の事務所を見比べている人がいて、たしかに報道通り、劣勢が伝えられている政党の公認候補の事務所はどことなく活気を失う反面、優勢が伝えられている政党の公認候補の事務所では、楽勝ムードが漂い始めているのだとか(直接確認したわけではありませんが…)。

重点区でない場合は早々に見切り?

正直、「楽勝ムード」が漂い始めるのは危険な兆候だとは思います(現に昨年の自民党総裁選でも、優勢が伝えられていたはずの小泉進次郎氏=現・防衛相=が高市早苗氏=現・総理大臣=に敗北しています)。

ただ、それ以上に注目したいのは、敗色濃厚となってくる場合です。このような場合、とりわけ候補者本人がやる気を失うと、「組織」の支援もおざなりになってしまうだけでなく、櫛の歯が抜けるかのごとくボランティアがいなくなっていくのだとか。

この点、とくに当選回数を重ねている「激戦区の大物議員」の場合だと、多少劣勢になっていたとしても、気を抜かないでしっかりと最後まで戦い抜くケースも多いため、この「櫛の歯」理論はありとあらゆる選挙区・候補者に成り立つものではありません。

とりわけ各政党ともに、劣勢が伝えられる選挙区のうち、「負けられない選挙区」では、重点的なてこ入れが行われることが一般的です。

したがって、「なんだかあの事務所、雰囲気悪いらしいよ?」、「なんだかあの事務所、明るいらしいよ?」といった主観的な「雰囲気」論、あるいは応援演説に何人が詰めかけたか、といった局所的な情報だけでなく、やはりメディアの情勢調査などとあわせて票読みをする必要があるのです。

ただ、それでも「重点区」ではない場合や「軽量級」(失礼!)の候補者の場合だと、かなり早い段階で見切りを付けられたりもするようであり、そうした選挙区が増えてくれば、何となく大勢も見えてくるのかもしれません。

要因分析:自民は勝つのか負けるのか

なお、くどいようですが、当ウェブサイトでは「どこの政党が躍進しそうだ」、「どこの政党が惨敗しそうだ」、といった「選挙情勢」について触れるのは、少なくとも選挙期間中に関しては控えたいと考えています。

個人的に、「敗色濃厚な軽量級の候補者」については何人かあたりを付けているのですが、これについては当ウェブサイトで現段階で言及するのは控えることとし、その代わり、当ウェブサイトでギリギリ言及可能な範囲の内容を取り上げます。

その「ギリギリ言及可能な内容」とは、「要因分析」です。

この点、『組織票を侮るな…ダメ候補者にトドメ刺しに選挙行こう』などでも述べたとおり、現在の与党である自民党が苦戦するとしたら、その要因としては、少なくとも2つ考えられます。

ひとつは最大野党だった立憲民主党と強い組織票を持っているとされる公明党が「合体」したこと(これにより組織票が自民候補から剥落するだけでなく、旧立憲民主系候補に流れる可能性があります)、もうひとつは自民票を奪う政党がいくつか出現していること、です。

ただ、その反面、自民党が躍進する材料も、少なくとも2つあります。

ひとつは「組織票」に強いとされる政党(たとえば立民や公明に加え、日本共産党など)が支持層の高齢化に悩んでいること、もうひとつは(立民・公明の両党を除けば)今回の選挙戦では左派政党同士が連携できていないことです。

こうした状況を踏まえると、『野党の動向次第では自民圧勝も自民大敗も両方あり得る』でも述べたとおり、今回の選挙は、本当に読み辛いのです。

投票率と基本政策

投票率に注目する価値がありそう

もっとも、以上に関わらず、もうひとつ注目すべき要因があるとしたら、それは「サナエ旋風」が吹くか、吹かないか、です。

ぶっちゃけていえば、投票率が上がれば、「ふだんは投票に行かない層」が投票に出かける、ということを意味するため、これが「サナエ旋風」となって自民、あるいは連立相手である日本維新の会の得票を押し上げる可能性がある反面、投票率が下がれば、連立与党側が思わぬ大敗を喫する可能性もゼロではありません。

では、投票率は上がるのでしょうか。

首都圏を含め、いくつかの地域では投票日に天気が崩れるとの予報もあります(日曜日の東京都内では、珍しく雪の予報が出ています)。

足元が悪くなれば、その分、投票率が下がりがちです(※もっとも、晴天でなかった場合であっても、「行楽を取りやめて選挙に行く人」というが出現するため、投票率が下がるとは限らない、といった説もあるようですが…)。

期日前投票はどうなっているのか

もちろん、当日の投票率を読むのは現時点では困難ですが、ここで巷間、よく指摘される「悲観材料」のひとつである、期日前投票の動向についても、簡単に触れておきましょう。結論からいえば、期日前投票率が低くても、当日の投票率が低下するとは限らない、ということです。

まず、期日前投票の状況に関しては、総務省が『令和8年2月8日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報資料』のページで公表している『期日前7日現在』の期日前投票状況が参考になります。

これによると期日前7日現在の投票状況は4,562,823票で、「選挙人名簿登録者数に占める合計の割合」でいえば4.41%と、前回(2024年10月27日執行分)の4,681,523票(4.51%)と比べると118,700票(0.08ポイント)落ち込んでいます。

これだけを見ると、今回の選挙は投票率がさらに下がるのか、という懸念もあります。

ただ、「期日前7日」の状況はその後の振れ幅が大きい、という事情については注意が必要でしょう。

たとえば、前々回(2021年10月31日執行分)は、同じく期日前7日時点で5,666,485票(5.38%)もあり、2024年はこれと比べて投票数が984,962票、投票率が0.89ポイントも落ち込んでいました。

しかし、最終的な期日前投票総数で見ると、2021年は20,955,450票(19.90%)、2024年は20,579,825票(19.74%)と、落ち込み自体は375,625票(0.16ポイント)にまで縮まりましたので、正直、期日前7日の状況ですべてを読むのは難しいのが実情です。

しかも、今回の選挙は衆議院解散(1月23日)から投票日(2月8日)までの日数が16日と、2024年の18日、2021年の17日などと比べさらに短い(というか史上最短である)、という点にも注意が必要でしょう。

公示日から投票日までの期間は、2021年、2024年、2026年のいずれの回でもちょうど12日であり、まったく同じではありますが、衆院解散(かその少し前)から選挙期日までの期間の長さで見ると、今回の選挙は史上最短です。

あくまでも想像ですが、今回の選挙は解散から投票までの日数が史上最短であり、また、解散の予定がある程度わかっていた前回・前々回と異なり、全国の選管も正月明けの「寝耳に水」の解散となったため、準備が間に合わなかった自治体が多い(かもしれない)、といった事情もあるのではないでしょうか。

期日前投票自体は投票所整理券が手元に届いていなくても可能ですが、やはり整理券がないと心理的には期日前投票には行き辛い、といった事情もあるのかもしれず、こうした仮説が正しければ、「当日の投票率は下がるだろう」と断定するのは、やや早計でもあります。

現時点で予断は禁物ですが、少なくとも投票率の低下を悲観するにはまだ早いのです。

政治家の本職っていったいなんだ?

ただ、以上はこれまで当ウェブサイトで述べて来た内容の繰り返しなのですが、最後にもうひとつ、決定的なことを述べておきます。

政治家の本職って、いったい何でしょうか?

以前の『政治家や政党は志や基本政策を簡単に変更して良いのか』でも述べたとおり、著者は政治家(とりわけ国会議員)の本職とは「法律を作ること」だと考えています。

改めて繰り返しておきますが、そもそも日本国憲法前文には、こう書かれています。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し<以下略>」。

つまり、国会議員の位置付けは、日本国民の代表として行動することであり、その本職は立法府の一員として法律を作ることに携わることです。また、日本は議院内閣制を採用しているため、行政府のトップである内閣総理大臣は国会議員でなければなりません。

もちろん、現実問題として、国会議員は「数合わせ」なども重要ですが、やはり重要なのは、その議員が「国会議員」として、いったいいかなる法律を実現させようとしているか、いかなる政策を実現しようとしているかという「理念」ではないかと思うのです。

ということは、私たち国民が国会議員選挙でどの候補に投票しようかと判断する際、見るべきポイントは、少なくとも2つあるはずです。

ひとつは、その候補者の政治家としての資質であり、とくに高度な実務能力を持っているかどうか、という視点ですが、それだけではありません。決定的に大事なのは、その候補者のビジョン、理想とする政策などの志(こころざし)が私たち有権者の求めるものと合致しているかどうかです。

このうちの「政治家としての実務能力」とは、たとえば、現状の社会の何が問題かを把握する能力(とくに法令の知識)であり、また、それらの立法趣旨などを踏まえ、それを変えて行くための実行力(とりわけ、官僚や利権団体などとの交渉力やキーパーソンとの人脈など)があるか、といった観点です。

基本政策を大事にしない人たちは信頼できるのか

以上の議論は非常にわかりやすいのですが、ここでもうひとつ指摘しておくべきが、「候補者のビジョンないし志」です。これは、その候補者が提唱する理想の社会、理想の政策などのことです。

もちろん、一般に、個々の有権者にとって理念やビジョンなどに100%合致する候補者はいないと考えられますが、それでも多くの有権者としては、「自身の考えと最も近い候補者」を選んでいるはずですし、その意味で、基本政策を大事にしない政治家は、少なくとも著者にとっては「信頼に値しない」と思います。

たとえば、「憲法をどうするのか」―――改憲を目指すのか、護憲を目指すのか―――などはその典型例でしょうし、ほかにも原発をどうするのか、財政政策をどうするのか、社会保障をどうするのか、といったテーマなども重要です。

「私は平和国家を目指したい」、「だから頑固に護憲派!」、といった主張を持っている有権者がいたとしたら、その有権者の主張に合致する政党や候補者を選ぶのが普通です(※少なくとも著者自身はそういう考え方は持っていませんが)。

しかし、こうした「私は頑固に平和!護憲派を選ぶ!!」、あるいは「私は反原発主義者!原発再稼働に反対する政治家を選ぶ!」、などとする主張を持っている有権者がいたとして、その有権者が1票を投じた政治家が、途中でその主張をコロッと変えたら、どうでしょうか?

自然に考えたら、呆れるのではないでしょうか。

じっさい、「議席が欲しい」というだけの理由で、政策(しかもその議員にとって一番の根幹をなす部分)をコロッと変えたりしているならば、その政治家を支持していた人は呆れるでしょうし、だからといって今までその政党・政治家を支持していなかった人が、あらたにその政党・政治家の支持者になることもありません。

とにかく投票に行け!

なお、これ以上、この論点の議論を進めてしまうと、個別具体的な政党名称に言及してしまうため、本稿ではこの論点はここでおしまいとしますが、ここまで書けば明日・8日の午後8時過ぎに当ウェブサイトにて公表する(かもしれない)記事で何を論じるか、だいたいのご想像がつくと思います。

ただ、その記事を読者の皆さまに公開する前に、皆さまは皆さまで、(選挙権がないという人を除いて)必ず選挙に行っていただきたいと思います。

くどいようですが、投票先については皆さま自身の判断において決めていただきたいと思いますし、其の投票先を選んだことで生じる事態の責任も私たち有権者に帰属します。

しかし、著者の見立てが正しければ、日本国民は賢明であり、その総意は現時点で最も適正な判断を下すはずであり、その前提に立ったうえで、明日の夜8時を迎えたいと考えている次第です。

なお、選挙は「ダメな候補にキッチリとトドメを刺しに行く手続」でもありますので、そのことについてはゆめゆめお忘れなきよう、謹んでお願い申し上げる次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. より:

    昨日、期日前投票に行ってきた。すると区役所には100人近くの人が順番を待っていた。
    大阪では、i党に入れる人が多いですがこんな行列になっているとは思わなかった。
    思うに、インターネットで投票できるようにしてほしい。
    また最高裁裁判長の投票?もあったが、その人物は誰も知らないので選挙と同時に投票する制度を変えないといけないと思う。

  2. んん より:

    公明は議席を確保できた以上
    政策で相容れない立憲を応援する必要はないでしょうね

  3. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    特定野党&オールドメディア:「有権者は、基本政策の首尾一貫性を気にしていない」
    蛇足ですが、党名を変えれば、それまでの基本政策はリセットされるのでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      トランプ大統領が、衆議院選挙での高市総理への支持を表明しましたが、(接戦ならともかく)圧勝予想のなかでの支持なので、アメリカの協力が必要な(高市総理の)政策も支持してくれる、ということになるのでは。

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