反財務省デモも良いが…社会を変える最終手段は選挙だ
「財務省デモなどやっても意味がない」。これについては一見するとそのとおりですが、一面的な見方でもあります。警察当局の許可を得た適法なデモなど、憲法で許される範囲の活動は、長い目で見て社会を変える可能性があるからです。当ウェブサイトとしては、財務省職員などに物理的危害を加えるようなデモには強く反対しますが、逆に、適法な活動であれば、それも人々の意思表示手段としてはアリだと思います。ただし、やはり一番大事なのは、選挙です。
目次
財務省デモに冷ややかな視線も
最近、財務省を取り囲んだデモが頻発しています。
新聞、テレビなどのオールドメディアは、最初、これらのデモに静観を決め込んでいたフシがありますが、デモの広がりを受け、これを取り上げざるを得ない状況になったのかもしれません。たとえば、朝日新聞も14日付で、こんな記事を配信しています。
広がる「財務省解体」のデモ SNSに流れる言説に駆り立てられて
―――2025年3月14日 17時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
そして、Xなどを眺めていても、デモの主宰者と思しきアカウントから、「今回のデモには何人集まった」、「財務省解体を叫ぶ人々の熱気はすさまじい」、などとする情報も流れてきます。
ただ、Xという空間は面白くて、積極財政派と思しき人たちから、賛同のみならず、こんな趣旨の反論も出てきているのです。
「財務省なんて、法に従って職務を執行しているだけでしょ?」
「デモ活動をするなら、その相手は自民党でしょ?」
「財務省が解体されてなくなれば、国民生活が滞り、あなたがひどい目にあうだけでは?」
これらのうち、「財務省が解体されれば国民生活が滞る」の意味はよくわかりませんが、「財務省に抗議するのはおかしい」、「抗議する相手は自民党では?」といった批判は、一見すると正しいです。
当ウェブサイトへのコメントにも似たようなものがあった
こうした「官僚に責任はない」などとする言説を見ると思い出すのが、以前、当ウェブサイトに頻繁に書き込みをしてくる、とあるコメント主です。このコメント主、当ウェブサイトにおいて、官僚組織の批判をすると、決まってこんな趣旨の反論をしてきたのです。
「官僚組織は法律に従い職務を執行しているだけ」。
「税や社保の取り過ぎを問題視するなら政治家を批判すべき」。
この反論、ある意味で非常に巧妙なものでもあります。
たしかに「法的には」、官僚組織は「法律は国会でお決めいただいたもの」、「我々(官僚)は法律に従って仕事をしているに過ぎない」、と強弁するからです。
このコメント主、同一IPアドレスからハンドルネームを使い分けて自身の意見が多数であるかのごとく装おうとしたため、その旨を著者自身が指摘したら最初はすっとぼけていましたが、反論しきれないと悟るや、いなくなってしまいました。
ハンドルネームを使い分けるくらいなら、VPNを使うなり、ルーターのスイッチを切って入れ直すなりすれば良いのに、などと思わないでもありません(※IPアドレスがリセットされるためです。実際にそれをやっている者も数名います)。
ただ、そこまでの知恵が働かなかったためでしょうか、同一IPで複数ハンドルネームによるコメント、という、非常に稚拙なコメント偽装を行ってしまったのが、その人物の「敗因」のようなものでしょう。
財務官僚「国会で増税をお決めいただきました」
いずれにせよ、「官僚を批判するな」、「批判するなら政治家にしろ」、などとする意見は、一見すると正論です。
実際、著者自身が日本公認会計士協会のウェブ研修会などで会う現役財務官僚らは、決まって、「日本の財政は非常に厳しい」などとするプロパガンダを展開するのですが、ある財務官僚はこんなことを述べています。
「日本は国会で消費税の増税をお決めいただきました」。
まるで、自分たちは増税に全く関与しておらず、国会の方針「だけ」で増税が決まったかの言い草ではあります。
ただ、この発言自体、「法形式的には」、たしかに間違ってはいません。
消費税と地方消費税の税率を引き上げる法案は、民主党の野田佳彦首相の時代に閣議決定され、国会に提出され、自公の要求で付帯条項は付されたものの、国会で可決・成立したからです。余談ですが、故・安倍晋三総理大臣が2度目の消費増税に抵抗し、結局、4年間延期したのは有名な話です。
(※余談ついでにもうひとつ、当ウェブサイトの読者コメント欄に最近、またぞろ、俗にいう「アベガー」が涌いているようですね。そのわりに安倍総理の何が悪かったのか、具体的なことはひとつも指摘できないというのも面黒いです)。
ワニの口というデタラメ図表
ただ、官僚によっては、法の許すギリギリの範囲で(あるいはときとして法を半ば逸脱して)露骨な政治活動を行っているケースも多く、さらには与野党に在籍している官庁出身の議員のなかには、出身官庁の立場を露骨に代弁したりすることもあります。
さらには、官僚組織はさまざまな手段で、行政をなかば私物化しようとすることがあります。
たとえば、現在の日本では、法案の多くは政府提出法案であり、政府提出法案は官僚が起草していることが多いです。一部法案は与党の平場や部会などで意見集約し、修正が反映されることもないではありませんが(消費税の付帯決議など)、いずれにせよ、法律の骨格は官僚が作っているのです。
消費税を含めた税制に関しても、財務省による露骨な政治的誘導があることは間違いありません。その証拠はいくつもあるのですが、わかりやすいインチキが「国の借金は膨らみ、歳出の大部分これから増えていく『ワニの口』状態となる」、などとする言説です。
しかし、この「ワニの口」(図表)にはインチキがあって、歳出(支出)側には国債の元本償還や利払いが含まれているのに、収入側は「歳入」ではなく「税収」が書かれているのです。
図表 ワニの口
(【出所】財務省)
税収と歳出を比べたらこうなるのは当たり前でしょう。
デモ活動も表現の一種だが…暴力は許されない!
いずれにせよ、税や社保の負担を増やしてきたのに、官庁、とりわけ財務省、総務省、厚生労働省といった省庁の役割が大きかったことは間違いありません。
そして、「デモ活動をしても意味がない」とおっしゃる方もいますが、これも物事の見方がやや一面的です。
この点、著者自身は財務省デモに参加したことはありませんし、参加するつもりもありませんが、デモに参加する人たちがたくさんいるという事実を当事者同士で共有し、このSNS時代にそれを全国に向けて発信することの効果は小さくありません。
政治家にも人々の思いが伝わるからであり、また、政治家にとっても力になるからです。
細かいところでいえば、財務省に対するイメージが低下し、優秀な新卒を採用することが難しくなる、といったものもありますが、これにより財務省という組織の体力が低下し、財務省が政治家に対するロビー活動を行う能力を低下させるという効果もあるかもしれません。
(※といっても、官庁に優秀な若者が入らなくなってしまうことが国益にかなうのかどうかは別問題ですが。)
ただし、最近はデモも一部が過激化・先鋭化しているようであり、これについては懸念されます。
当たり前ですが、日本は自由・民主主義国家であり、権力を持っている相手に対する事実に基づく批判の自由は認められています。官僚機構(たとえば財務省)という「組織」の在り方に異議を唱えることは自由ですが、現にそこで働いている人たち個人に対し、物理的危害を加えることは絶対に許されません。
まさに、安倍総理を暗殺した狂人、岸田文雄首相(当時)に襲い掛かった狂人、あるいはNHKから国民を守る党の立花孝志氏にナタで切りかかった狂人と同じ発想です。
許されるのは、憲法により認められる「表現の自由」の範囲内―――たとえば、SNSなどを通じた事実に基づく情報発信や警察当局の許可を得た適法なデモ活動など―――であり、その範囲を超えることは許せませんし、許してはなりません。
最終的には選挙で!
そして、デモ活動はあくまでもただのデモ活動であって、やはり社会を変えていくには、最終的には選挙によるべきでしょう。
ちなみに山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士はすでにXでその旨を発信しています。
反財務省デモが高じて財務省職員に物理的危害を与える者が出て来ることは危惧される。
認められるのはあくまでも言論を通じた批判の自由であり、物理的な暴力は絶対的に許されない。 https://t.co/0MTslB54yZ— 新宿会計士 (@shinjukuacc) March 14, 2025
「どう思いますか?」
→やり過ぎ。一般職員を盗撮してネットに晒す行為は犯罪の疑いもある行為であり、明らかに行き過ぎ。まったく支持できない。 https://t.co/BhTwaLQQnq— 新宿会計士 (@shinjukuacc) March 16, 2025
❌選挙で官僚の暴走を止められる
⭕️選挙で官僚の暴走を止めなければならない
民主主義って時間がかかる手続きなんですよ。
官僚利権にも踏み込めるほどに優れた政治家をどれだけ国会に送り込めるか。
これが有権者の責務です。 https://t.co/cv5HHZrmNO— 新宿会計士 (@shinjukuacc) March 14, 2025
こうした考えをバカにする人もいるようですが、それは勝手にすれば良いと思います。
ですが、やはり日本は自由・民主主義国家であって、最終的には選挙結果がすべてを決めます。
仮に将来、財務省を含めた統治機構の大幅な改革を提唱し、かつ、その能力を備えた政党が出現すれば、私たち国民がその政党に多数を与えれば、それだけで官僚機構の暴走は止められますし、完璧な政党が出現しなくても、たとえば自民党内の親財務省派が力を失うだけでも、似たような効果は得られるかもしれません。
そして、選挙は1回や2回で世の中を変えられるものではありませんが、それでも池から少しずつ泥水を追い出して清水を注入するがごとく、何回も選挙を経ることで、少しずつ浄化していくよりほかないのです。
現実社会はゲームではありません。
独裁者が出現し、「りせっとぼたん」を押してすべての仕組みをクリアすることなどできないのです。
Xユーザーの中には、良い年をしてそんなこともわからない人もいるようですが、それでも当ウェブサイトではそのことを何度でも伝えていきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
デモで政治家に危機感を抱かさる、またはデモをみて、その流れになろうとする政治家を生み出すのなら、デモは意味があるのではないでしょうか。
>日本は国会で消費税の増税をお決めいただきました
なるほどご尤もです。
なので、我々は選挙によって財務省関連を改革をするという議員を送り出し、国会で決定させれば、彼らは何一つの文句も言わず小細工もせずに法に則り粛々と従って頂ける、ということですね。エリートに相応しい実に潔い素晴らしい宣言であり、忘れないでおこうと思います。世の隅々まで拡散させるべき宣言ではないでしょうか。
時間はかかるでしょうが、間違っているものを正すにあたり、日本国においては暴力も嘘も必要無いのです。むしろそれらを使ってしまうと後退すらする。
だから独裁者が出来るのではないですかね。民主主義が官僚と経団連、マスコミなどの既得権益に侵され、既得権益の妨害も含め意思が反映されるまでのあまりに長いタイムラグに、民衆が既存システムに絶望するから。
そして、立憲民主国家は余程優れたシステムを持ち、国力が強くないと、独裁政や共産政には絶対勝てません。為政者が変わら無いことの強み、意思決定の早さ、動員力の大きさ、無法、非道なことを躊躇なく出来る卑劣さ。
日本の人口減少は某国に侵された官僚のせいで、日本は属国になる、との陰謀論が正しいのではと思えてくる。
日本の大学の法学部で、法律を作ることを教え・研究している「学科」(立法学科?)を設けているところがあるのでしょうか?
立法(法律案を作る)のノウハウを官僚(行政機構)が独占していて、立法府にはノウハウが無い。
国会の議員さんたちは、せいぜい法制局(官僚)に教えて(下書きを作って)もらいながら、法律を作る。要は、いいように(主導権は官僚に)やられている。
そんな中で、統治機構の大幅な(官僚が全力で阻止するような)改革を提唱し、かつ、「改革実現能力」を備えた議員が出現するのだろうか?
これからはAIで法律の原案を作るようになるかもしれませんね。
AIをうまく使えば役人に言いくるめられることは少なくなると思いますが。
自分は法に触れない範囲で財務省に圧力を掛けるのは有意義だと思います。アイツらは結局私利私欲しか考えてない連中であり、最終的に応募者が減って電子化されれば有能な才能が他に回ると言うことですから。
秘伝のタレが腐らないのは塩分や糖分濃度が高めで継ぎ足しによる循環の作用によるものだそうですね。そういう意味で選挙というのは数年に一度定期的な入れ替え作業なので官僚組織より議員の方が新陳代謝があるのかもしれません。
ウチの選挙区の近くにも松川というセーヌ河並みに濁った川だか池だがありますの、流量や流速のある大きな川から水を引っ張ってきて、流れを良くしなければなりません。
陰謀論に染まっている私の意見としまして・・・
財務省および財務省の方針に否定的な議員を有権者が選んでも、出所の不明なスキャンダルで潰される懸念があります。
昨年の国民民主党の玉木党首のスキャンダルの出所も財務省が関わっていると疑っています。
参考:森永 卓郎氏『「天下りポスト確保」のために玉木代表の「不倫スキャンダルを暴露」!?…森永卓郎さんが明らかにしていた「財務省の“国民民主党潰し”」の真実』
https://gendai.media/articles/-/146215?page=2
財務省の職員は、私たち有権者が選んだ議員に従うつもりは無いと想像します。
正論として私たちは選挙しかないのはその通りです。
しかし有権者の代理の議員に従うつもりは無い官僚を切ることができる現在のアメリカの様な強権が無いと何もできないのかもしれないと思いました。
追記です。
財務省の方針に否定的な政党を与党にすることができても、政権に従わない官僚職員を辞めさせないと、いつまでも邪魔をされてしまいます。
日本もアメリカの様に政府に従わない公務員の首を切ることができないと、変われない気がします。
公務員も政策の責任を負ってリストラされるべきだと思いました。
うーん、財務省解体デモを批判するのは結構なのですが、この場合は問題の核心を見違えていると思うのですけれどね。
不気味な財務省解体デモは「日比谷焼き討ち事件」に似ている アゴラ
https://agora-web.jp/archives/250316063943.html
結局は財務省(旧大蔵省)が俗に言う「失われた30年」で「何をしてきたのか」なのですよ。
自分達の「駒になり得る政治家」を使って、増税や二重課税或いは三重課税を導入した結果が今回のデモに到ったのですから、自らの誤りを素直に認めて、減税や税そのものの廃止を進めていくべきなのです。
また主権者を蔑ろにし、外国人を優遇する様な諸制度も同時に廃止にすべきだと思います。
その通り選挙です。
年配者の投票比率にはたして若者は勝てるでしょうかね
年配者の立場でいえば此処で自民党や立憲民主党に負けられると困るはずです
今度の選挙は世代間抗争になりますね
昨日の千葉知事選挙にがっかり。
天気があまり良くなかったとはいえ、投票率32%とは・・・
3人に2人が選挙に行かない。
安心安全は誰かが勝手に担保してくれると思ってるんですかね。
税金は常に正しく使われていると思ってるんですかね。
『社会を変える最終手段は選挙だ』
その通りなんでしょうけど、日本人はその権利を放棄したようです。
もう日本は民主主義じゃないんじゃないかと思います。