政治家の発言が「ノーカットで」有権者に直接届く時代
新聞やテレビというメディアの力を借りなくても、政治家や政党は、自分たちの考えを「ノーカットで」有権者に直接届けることができる時代がやってきています。その威力をうまく理解しているのか、産経ニュースは昨日、国民民主党の玉木雄一郎代表に対するノーカットでのインタビュー動画をYouTubeにアップロードしました。玉木氏自身の主張に賛同するかどうかは別として、政治家の発言がノーカットで有権者に届くというのは、本当に良い時代が到来したものだと言わざるを得ません。
目次
新聞、テレビ、雑誌、芸能事務所が権力を握っていた時代
「新聞やテレビが取り上げてくれなければ、それでおしまい」。
ひと昔前であれば、どんな良いことを主張していようが、新聞やテレビといったメディアに取り上げてもらえなければ、社会から注目されることはほとんどありませんでした。
ネットが出現する以前を思い浮かべていただければわかりますが、たとえばあなたが歌好きで、友達からも(歌が)「上手い、上手い」と褒められていて、また、見た目もアイドルのように可愛らしかったり、格好良かったりしても、それであなたがすぐに歌手デビューできる、というものではありません。
現実的には、どこかの芸能事務所が主催するオーディションに参加したり、テレビ局が主催する素人音楽コンテストに出場したりして注目されるなどの必要がありました。
そういえば昔は全国ネット局が高校生などを対象にしたダンス大会を番組の恒例企画としていた、といった事例もありますが、いずれにせよ、テレビ局という「権威」があなたに注目し、認められたら、そのときに初めてあなたが全国デビューできる(かもしれない)、といった可能性が出てきたのではないでしょうか。
ちなみにこれは、アイドル(イケメン、美女)の世界だけではありません。
たとえばお笑いの世界を目指すにしても、お笑いの芸能事務所の門を叩いたり、著名芸能人の付き人としての下働きを始めたりするところがスタートであり、下積み生活を経て、運が良ければお笑い芸人として花開く(かも)、といった状況だったのではないでしょうか。
小説家・漫画家にしても同じで、自分に才能があると思っていても、実際に小説・漫画を執筆してみて、それを新聞社や雑誌社、出版社などに持ち込み、編集者などの目に留まれば、デビューの可能性が初めて出てくるのでしょう。
ネットの発達がすべてを変えた
ところがどうでしょう、昨今はこの「テレビ局、芸能事務所、お笑い事務所、新聞社、雑誌社、出版社」というルートを踏む必要など、一切なくなりました。
インターネットが発達したからです。
今日では成人のおそらく9割以上がスマートフォンやPCなど、ネットにつながる何らかのデバイスを所持しており、しかもYouTube、X、インスタグラム、各種ブログサービスといった具合に、その気になれば誰の助けも借りず、自分自身で自分の作品などをプロモートすることができてしまいます。
要するに、オールドメディアの力を一切借りずに、自分自身で直接、情報発信できるようになったのです。
これは、凄い変化と言わざるを得ません。
もちろん、歌唱力が優れている、容姿に秀でている、お笑いの才覚がある、漫画や小説の文才がある、といった点に着目し、芸能プロダクションであったり、出版社であったり、といった業者がこれらの才能を持った人にコンタクトを取ることがあり、そこからメジャーデビュー、という可能性だってあります。
しかし、これもネット出現前と比べ、順序が逆転しているという点に注意してください。
「素人」が自分の作品を、新聞、テレビ、雑誌、あるいは出版社や芸能事務所などの「中間業者」を経由せず、いきなり世に発表してしまうことができるようになり、これら「中間業者」が後追いで優れたクリエイターを発掘する、という関係に逆転してしまったからです。
政治経済評論家にもネット経由で業務依頼が来る時代に
そして、こうした流れは政治経済評論の世界でも同じです。
著者自身も当ウェブサイトを開設し、今年で9年目ですが(来年、めでたく10年を迎えます)、長くウェブサイトを続けていると新聞社や雑誌社、テレビ局などから取材を申し込まれることもあります(なかには某テレビ局のように、「今夜の番組に出演していただきたい」というメールをその日の朝に送り付けてくるケースもあります)。
ただ、月刊正論や月刊WiLL、月刊Hanadaのように、編集者の方が非常に丁寧で常識的、というケースもあるのですが、某新聞社のように、いきなり「記事を無料で書け」などと高圧的に依頼して来るケースもあり、これはこれで困惑する限りです。
さて、どうでも良い余談ですが、今までで最も驚いた依頼があるとしたら、とあるAというサイトの運営者から寄せられたもので、いろいろごちゃごちゃ書いてあったのですが、要約すれば、こういうことです。
『新宿会計士の政治経済評論』に掲載される記事を、当ウェブサイトAに転載させてほしい。ただし、ウェブサイトAに転載された記事は、「オリジナル記事」の扱いにしてほしい。つまり、うちが「オリジナル記事」に指定した記事は、『新宿会計士の政治経済評論』からは削除してほしい
…。
要するに、このAというサイトが要望する、「うちのサイトへ転載する記事は、うちのサイトへのオリジナル投稿という扱いとしてほしい」、という内容は、当ウェブサイトで掲載した記事がそのサイトに転載された瞬間、当ウェブサイト側の記事を消さなければならなくなる、というものです。
当ウェブサイト側にまったく何のメリットもないどころか、実害すら生じる申し出ですね。
本当に驚く限りです。
なお、当ウェブサイトとしては基本的に、商業出版でない限り、出所さえ示していただければ、記事の引用や転載は自由としており、実際、いくつかのサイトが当ウェブサイトの記事を転載しるようであり、また、YouTuberの数名が当ウェブサイトを題材に使っているようです。
産経ニュースがアップロードしたノーカット動画
さて、それはともかくとして、テレビの制約といえば「尺」、新聞の制約といえば「文字数」ですが、ネットの世界には多くの場合、こうした制約がありません。
そこで、こんな企画が成り立つようです。
リンク先は産経ニュースが5日にアップロードした、国民民主党の玉木雄一郎氏に対するインタビュー動画です。
内容については、本稿では詳しく触れませんが、ご興味があればご視聴ください。
正直、著者自身は現在の国民民主党については「手取りを増やす」がたまたま自説の方向性と合致しているだけで、玉木氏の主張のすべてに盲目的に賛同するつもりはありませんし、今回の動画のなかでも、たとえば財務省に対するデモなどを巡って、見解がまったく違う部分もあります。
ただ、本稿で述べたいのはその部分ではありません。
政治家の発言がノーカットで有権者に直接届くようになった、という部分です。
メディアも発想を変えるべき
今回の動画に関しても、以前から国民民主党の政策や同党幹部らの言動を研究している身としては、新味はほとんどありません。ですが、玉木氏の主張に初めて接した人にとっては新鮮味があることは間違いなく、こうした動画が出ることは、有権者の間で国民民主党のファンを増やすことにつながるはずです。
該当の動画も公開から現時点までの20時間前後で20万回を超える再生回数を記録しており、なかなかに良い拡散具合です。
また、読者コメント機能がうまく機能し、同党や対立政党(?)である自民、公明、維新などに対するざっくばらんな有権者の反応も見ることができ、なかなかに有益です。こうした「動画を見たほかの視聴者がどう感じたか」をリアルタイムに共有するというのは、新聞、テレビにはできない芸当です。
いずれにせよ、時代は大きく変わりました。情報はすべて、透明性と検証可能性が必要です。
各政党は党首・党代表・党総裁みずからが有権者に向けてもっと積極的に情報発信しなければなりませんし、その際、読者コメント機能をオープンにしておくべきでしょう。そうでなければ、情報開示に消極的な政党は、次回以降の選挙で順次、議席を減らしていくのみです。
また、新聞社やテレビ局も、ビジネスモデルの抜本的な転換を急ぐべきです。
政党党首に対するインタビューを恣意的に切り張りするのではなく、あとからの検証に耐えられるよう、できればノーカットで発言を正確に報じるべきです。それができない新聞社は今後、順次、部数(や有料読者契約)を減らしていくでしょうし、テレビ局は視聴者を失っていくでしょう。
そのことに気づけた政党、政治家、メディアが生き延び、そうでない政党、政治家、メディアは淘汰されていくのではないかと思いますし、今回の産経ニュースのように、ノーカットにバリューがあると気づくメディアが増えると良いと思うのですが、、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
あの醜聞を集めたフジテレビのエンドレ記者会見。
集まった記者の中に権力の監視こそマスメディアの役割、と息巻いた人がいたような。
ブログ主さまも承知の助で書かれていると承知していますが、自説を拡散することを社是としそこに新卒だったら数十年もの期間その世界に浸っていたら。毒を盛ることが自身の付加価値。透明水を流すなんて出来ないでしょうねぇ。
メロリンQへの誹謗中傷はやめてください!w
角度をつけるな
新聞記者不要時代へ突入
発言全部文字起こし、機械の助けを借りて「無料で」ちゃっちゃとできる時代です
文字起こしの上、AIで要約まで出来ちゃいますからね。話が長くても大丈夫です。
会社で議事録に利用(※)してますが、かなり精度上がってます。
※突っ込まれないように一応書いておくと情報漏洩の心配が無い社内のセキュアAIです。そういう環境が無い方は安易に社内の議事録にAI使わないで下さいね。機密情報が漏洩します。
「産経」はまともなんですよねえ。どうして「フジ」はああなのか。
昔、久米宏氏時代のニュースステーションで、選挙での各候補者の第一声を伝えるときに
候補者の発言を演説開始から一定時間(例えば30秒)だけ流すことで、
公正な報道をしたという体を取ったことがありましたな。
そのため、どの候補者の発言も途中でぶった切られた状態で放送されてました。