東京の中古マンション価格急上昇

首都圏の中古マンション物件の価格がずいぶんと上昇しているようで、とりわけ東京都心部の高騰は、なかなかにおそろしいところがあります。2012年ごろの水準と比べ、地域によっては3倍に上昇しているからです。ただ、「予算に合う家を買う」が目的ならば都心以外の物件を探すしかないかもしれない反面、「希望する場所で子育てをする」が目的ならば、その場所で10数年、物件を借りてしまうというのはひとつの手ではないでしょうか。

中古マンション価格相場とは?

近年、物価高といわれていますが、当ウェブサイトが注目している指標がひとつあるとしたら、それは首都圏の中古マンション価格です。

東京都内などの首都圏にお住まいの方ならご存じかもしれませんが、首都圏ではマンション暮らしが一般的であり、また、ファミリーだけでなく単身者(ビジネスパーソンや学生など)も多く暮らしていることから、ワンルームマンションなどの供給も豊富です。

一般に不動産物件は個別性が強く、借りるにせよ買うにせよ、良い物件を見つけたらすぐに契約を決断すべきだといわれていますが、著者自身の経験上、これは正しいといえると思います。

ただ、東京のように中古マンションの供給が豊富な都市の場合だと、地区(都心、城東、城南、城北、城西、多摩など)、物件の用途(単身者用、同棲用・夫婦用、ファミリー用、事務所用など)、タイプ(木賃、低層集合住宅、タワマンなど)を指定すれば、だいたい相場が決まってくるようです。

もちろん、これに採光面(東西南北)や幹線道路・駅との距離、周囲の環境(とくに商店街やスーパー、学校などの有無)などの細かい条件も加味されるため、物件によって価格には多少のバラツキはあります。

しかし、東京などの大都市圏で物件探しをする立場からすれば、基本的には地区ごとの平米単価と希望する住居面積などを頭に入れれば、だいたいの相場がわかるのではないかと思います。

首都圏、東京都内ともにマンション成約価格が上昇

こうしたなかで、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表している中古マンション成約状況に関するデータを見ると、首都圏、あるいは東京都内の中古マンションが、成約価格、平米単価ともに過去最高水準にあることがわかりました。

東日本レインズが先月公表した2025年1月までのマンション価格は、首都圏全体が5147万円、平米単価81.88万円(図表1-1)であり、東京都内だけに限定したら成約価格は6622万円、平米単価は112.44万円(図表1-2)と、100万円の大台を大きく超えているのです。

図表1-1 中古マンション成約状況(首都圏)

図表1-2 中古マンション成約状況(東京都)

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

どちらも、2012年頃の水準と比べ、倍以上に値上がりしています。

ただ、それ以上に気になるのが、その値上げペースです。

首都圏全体でいえば、コロナ禍の2020年ごろ、および日銀の利上げ(2024年7月)直後の昨年8月に、それぞれいったん小幅で下落したものの、不動産価格は沈静化せず、上昇基調を続けています。東京都に至っては、上昇基調にほとんど変化はありません。

東京都心部の状況はさらにすごい

さらに驚くのが、東京都心部の状況かもしれません。

都心3区(千代田区、中央区、港区)の中古マンション成約状況を見ると、図表2-1のとおり、平米単価では219.06万円、成約価格では1億3275万円と、どちらも過去最高を記録。2012年11月の69.03万円/㎡、3757万円と比べると、3倍以上の価格です。

また、都心3区以外ほどに極端ではないにせよ、少なくとも都区部に関しては、城東、城南、城西、城北ともに、価格、平米単価ともに高止まりが続いている状況にあると考えられます(図表2-2~2-5)。

図表2-1 中古マンション成約状況(東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区))

図表2-2 中古マンション成約状況(東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区))

図表2-3 中古マンション成約状況(東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区))

図表2-4 中古マンション成約状況(東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区))

図表2-5 中古マンション成約状況(東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区))

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

多摩、埼玉、千葉、神奈川は比較的リーズナブル

ただし、同じ東京都でも多摩地区であれば、価格は上昇しているとはいえ2012年当時の倍以上の水準というほどのことはなく(図表3-1)、また、埼玉、千葉、神奈川に関していえば、マンション価格高騰にも一定の歯止めがかかりつつある(図表3-2~3-4)様子がうかがえます。

図表3-1 中古マンション成約状況(東京都 多摩地区(都区部・島嶼部以外))

図表3-2 中古マンション成約状況(埼玉県)

図表3-3 中古マンション成約状況(千葉県)

図表3-4 中古マンション成約状況(神奈川県)

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

このようなデータを見ると、とくに若い子育て世帯などにとって、東京都心部はなかなか暮らしづらい地域と化している様子が伺えます。東京で働く人も、子育て世帯は自宅を買いたければ多摩、埼玉、千葉、神奈川などに動くしかないのでしょうか。

物件とどうお付き合いするのか

ただ、ここまで物件価格が上昇すると、物件購入は諦めて、一生賃貸暮らしを選ぶ人も出てくるかもしれませんが、それはそれで「アリ」かもしれません。

子育て世帯の方はお気づきかもしれませんが、じつは必要な自宅の広さはライフステージによって変わります。

進学や就職で地方から東京にやってきて独り暮らしを始めると、正直、そこまで広い物件は必要ではありません。一般に独り暮らし物件だと、20~25平米もあれば良いとされるからです(※経験上、それよりもっと狭くてもなんとかなります)。

※そういえば、YouTubeで「ミニマリスト」「激狭」などで調べていただけると、さまざまな物件や間取り、ライフスタイルが出てきますので、ご興味があればご参照ください。

しかし、同棲したり、結婚したりすれば、さすがに20平米だと狭く感じます。やはり、最低でも30平米は必要ではないでしょうか(そういえば10平米ちょっとの物件でルームシェアをしているという動画もあるようですが、それも厳しいところがありそうです)。

さらに子供が1人や2人生まれると、「夫婦で最低限の広さ」というのは難しくなりそうです。

お子さんが小さいうちは良いのですが、だんだん大きくなってくると、たとえば上の子が就学するあたりで生活が破綻しかねません。勉強机を置くのも難しいからです。

ちなみにUR都市開発機構ウェブサイトの2019年11月15日付の『四人家族に理想の間取り~ライフステージに合わせた快適な住まいを~』という記事によれば、夫婦2人と子供2人の4人家族に必要な最低の面積は50平米(理想をいえば95平米)、などとされています。

こう考えたら、お子さんが生まれたタイミングで最低でも50平米程度の物件を探すべきなのかもしれません。

いっそのこと借りてしまえば?

ただ、子供もいずれ、大人になります。

小学校に入学してから高校を卒業するまでの標準的な年数は12年ですので、2歳違いで2人の子供を持った夫婦の場合、上の子が小学校に入学してから下の子が高校を卒業するまでの年数は14年、ということです。

もちろん、高校を卒業しても大学や専門学校に進学するケースもあるでしょうし、就職しても自宅から職場に通うという人もいるでしょうが、ただ、子育ての義務は一般に18歳までとされるなかで、上の子が就学してから14年後にはそこまで広い物件は必要ではなくなる、ということかもしれません。

このように考えたら、家というものは一生所有する財産というよりは、単なる消費財と考えた方がよいのかもしれません。

すなわち、希望する場所に家が買えなかった場合、「家を買う」が目的であれば、自分の予算に合致した物件が手に入る場所に移動する、という話になりますが、「希望する場所で子育てする」が目的であれば、正直、10数年少々の期間、物件を借りて住むという選択肢もあるのではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 陰謀論者 より:

     これについては、習近平に締め出されたチャイナマネーが流れ込んでいると噂されており注意が必要です。転売で儲けられなくとも、そのまま住めばええやんという話らしいです。
     もうすでに大阪はチャイナの手に落ちており、高校の無償化でがっぽり稼ぐ算段がついてるとか何とか。
     まあお金に色がついてない、これが資本主義の有るべき姿か。知らんけど。

  2. 丸の内会計士 より:

    お金持ちが購入するのは、全く問題ないと思いますが、フルレバでバワーカップルが購入するのは、危険なように思います。まだAI で失業ということは、聞いたことはないですが、雇用は、かなり不安定になると思います。AI環境下でどのように自分の事業展開を行うかが問われことになりそうです。特にホワイトカラーのサラリーマン。

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