「国の財政が崖っぷちに」という認識自体が崖っぷちに
崖っぷちなのは「国の財政」なのか、それとも「国の財政崖っぷち論」の方なのか―――。日本の「国の借金」がGDPの2倍を超え、危機的水準にある、といった悪質なウソがネットで論破されるようになって久しいのですが、いまだにこんな「財政崖っぷち」論を唱える者がいるようです。改めて申し上げておきますが、日本の財政は「危機的状況」にはありませんし、「崖っぷち」にもありません。
国の借金論
「国の借金は、危機的な状況だ」。
「国の財政は、ほぼ毎年赤字だ」。
こうした認識が誤っているという点については、当ウェブサイトでもこれまで何十回、いや、何百回となく繰り返してきた論点です。
そもそも論ですが、「国の借金」あるいは「日本の借金」という用語自体が、経済学に照らし、適切ではありません。国債などの政府債務を負っている主体は、あくまでも「中央政府(日本国政府)」であって、「日本国民」ではないからです。
したがって、その「国の借金」とやらを国民1人あたりで割ったところで何ら意味はありませんし、何ならミスリーディングですらあります。
資金循環構造をちゃんと見てみろ
ちなみに日本のように自国通貨建てのみで国債が発行されている国の場合だと、国家債務の持続可能性については、基本的には一国の資金循環バランスで決定されます。では、現在の日本の資金循環構造がどうなっているのかといえば、図表のような具合です。
図表 日本の資金循環構造(2024年9月末時点、残高、速報値)
(【出所】日銀『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』サイトのデータをもとに作成)
資金循環構造からわかるのは、現在の日本が国債の発行余力をかなり残している、という点でしょう。
そもそも家計部門(図表の右上)が保有している金融資産が2179兆円、うち現金預金が1116兆円・保険年金資産が540兆円であり、これらの資金が機関投資家(預金取扱機関、保険・年金基金、社会保障基金など)に流入しています。
(※ちなみに家計が保有している資産としては、金融資産以外にも土地・建物などの不動産、自動車や大型家電、PCなどの耐久財、宝飾品・美術品などがあるのですが、これらの資産価値は資金循環統計では出てきません。)
そして、これらの家計・企業資産が機関投資家(銀行等の預金取扱機関や保険・年金基金、社会保障基金など)に流入する結果、これら機関投資家は預かった資金を何らかの資産で運用せざるを得ず、その余資の運用先として、企業向けの貸出金、株式などと並び、日本国債があるのです。
もし機関投資家にとっての資金運用先が足りなければ、その分、日本国の国富が海外資産に向かいます。
実際、資金循環構造図の右下にある「海外」部門は、500兆円を超える資金不足に陥っていることがわかりますが、これは、「海外」という部門に対する「日本国」という部門からの投融資残高が500兆円以上上回っていることを意味しています。
つまり、日本国全体から見たら資産超過なのであり、これについては国際決済銀行(BIS)統計などの統計データからも明らかです(『またもや日本が「世界最大の債権国」に=国際与信統計』等参照)。
つまり、日本国全体の資金循環構造を無視して政府債務の規模「だけ」に着目し、「日本の国の借金は危機的な状況だ」、などと言われても、それは資金循環的にも、経済学的にも、会計学的にも、金融理論的にも誤っていると断じざるを得ないのです。
財政再建目的の増税は政府資産の圧縮や無駄の見直しをやってから
ただし、名目GDP(約600兆円)に比べて「国の借金」(?)とやらの額が1200兆円を超えていて、「公的債務残高がGDPの2倍以上である」という状況が問題だ、とでもいうのであれば、これについては対処のしようがあります。
巨額の政府資産を流動化すればよいのです。
真っ先にオフバランス化すべきは総額200兆円弱にも達している外貨準備ですが、それだけではありません。
各種天下り関連法人(たとえば総務省の管轄下の「ふるさと財団」など)を民営化・解散するなどして残余財産を国庫返納させるべきですし、無駄の極みという意味では「公共放送」を自称するNHKに廃局(または業務大幅縮小)を命じて資産を国庫返納させるべきでしょう。
あるいは肥大化した財政について、支出をひとつひとつ点検し、無駄な予算を減らすことでそもそもの徴税額自体を減らすことができますし、ことに社会保障費についても、「無価値医療」やOTC類似薬の保険収載廃止、窓口負担の一律3割化などでかなり削減できるはずです。
そうした必要な努力もせず、「国の借金」とやらを税金だけで返済しようして無理な増税を繰り返した結果が、この30年の経済停滞なのです。
国の財政崖っぷち論
それなのに、性懲りもなくこんな話が出てきたようです。
【速報】「国の財政は崖っぷち」衆議院・予算委員会で中央公聴会 有識者が与野党の国会審議に苦言
―――2025/02/25 09:42付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG Powered by JNN配信】
TBSによると「有識者」(※原文ママ)が国会の中央公聴会で25日、「国の財政は崖っぷちに来ている。回避の視点が欠落している」などと述べたのだそうです。
国会ではいまだにこんなことを主張する者がいるという事実には驚愕しますが、いちおうこの人物の発言を引用しておきましょう。
「世界最悪の状態にある私達のこの国の財政運営をどうやったら持続していくことができるのか。崖っぷちに来ていると思います。それをどうやったら回避できるのかっていう視点というのがちょっと欠落していたんじゃないのかなっていうふうに思っております」。
「最悪の状態にある」のはこの発言者の経済学に対する理解のなさであり、「崖っぷちに来ている」のは旧態依然とした「国の借金」論の方ではないでしょうか?
ネットやSNSなどの発達により、いわゆる「国の借金」論のデタラメっぷりは白日の下にさらされてしまったからです。
もちろん、無駄な支出については厳しい視線を注ぎ、無駄をなくしていくための努力も必要ですが、それ以上に、この手の「財政崖っぷち論」を崖っぷちに追いやるのも、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士を含めた専門家の役割なのだと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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>世界最悪の状態にある私達のこの国の財政運営をどうやったら持続していくことができるのか
「世界最悪の状態に財政運営を持続していきたい」そうですから、その邪悪な立場からすれば、実際には健全な現状は崖っぷちなのでしょう。
台本が無いにしたって日本語下手すぎんか有識者。
この有識者氏は誰が推薦したのでしょうか。自民党だったら救いようがない。
・昨年の衆院予算委 中央公聴会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240229/k10014374301000.html
何度論破されても壊れたレコーダーのように同じことを繰り返す。
「嘘も百回言えば本当になる」ということなのでしょうね。
一応この有識者さん、想像上の人物ではなく実在する人物の様ですね。
と言う事は、この人はこの論調で飯を食っている側ですか。
その方がオールドメディアから仕事貰いやすそうだしなあ。
国民の数が大幅にすくなくなる危機なのですから
緊急対策として団塊の世代がいなくなって落ち着く15年間で300兆の団塊世代国債をだしてピークは年40兆円を入れてその後は少なくしていく
それによって年金の掛け金を少なくすることで、今年金を支えているそうと団塊の世代の安心も買うことができ経済も回って老後の安心と今の生活の安定があることによって子供も増えていくと思います
この先の日本でも中々おこる事の無い人口減少を救うための国債は必要では
無駄な予算でいうなら、ヨガ教室とかに膨大な額を無駄遣いしている男女共同参画予算も。