フジ3Q決算にみる「営業損益構造」とその課題とは?
昨日公表されたフジメディアの2025年第3四半期の決算短信によれば、同社グループの「メディア・コンテンツ事業」は、相変わらず経費率が95%に達するなど、低収益性が目につきます。こうしたなか、仮に2025年1~3月において、同社グループのCM収入が400~500億円ほど落ち込んだ場合、同社グループが経費を抑えることができなければ、25年3月期はかなりの確率で営業赤字に転落しそうです。
フジMHの「メディア・コンテンツ事業」の低収益性問題
先日の『フジメディアの経営を不動産だけで支えることは不可能』では、株式会社フジテレビジョンの親会社である株式会社フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書のセグメント情報などを手掛かりに、同社グループの「メディア・コンテンツ事業」の問題点を指摘しました。
ひとことでいえば、「収益性が低すぎる」のです。
同社の2024年3月期有報によると、メディア・コンテンツ事業は売上高が4337億円に対し、セグメント利益は157億円で、逆算すると営業経費が4180億円かかった計算です。売上高に占める経費率は、じつに96.38%でした。
これは、わかりやすくいえば、100の売上があっても96.38だけ経費(たとえばフジテレビ職員の人件費やテレビカメラなどの機材の減価償却費、出演タレントのギャラなど)で持っていかれてしまう、ということであり、利益は3.62しか残らない、ということでもあります。
コスト削減できずに売上高だけが落ちるとどうなるか
もちろん、売上高4337億円、セグメント利益157億円というのは、決して小さな金額ではありません。
しかし、同じく2024年3月期の日本を代表する企業であるトヨタ自動車株式会社(連結ベース)の場合だと、営業収益(日本基準でいう売上高)は45兆0953億円、営業利益は5兆3529億円、当期利益(日本基準でいう当期純利益)は5兆0714億円だったりもします。
売上高45兆円というのも物凄い話ですが、営業利益が5兆円少々ということは、売上高営業利益率は11.87%であり、フジメディアの「メディア・コンテンツ事業」の3.62%という数値がなんとも低いことは間違いありません。
あくまでも一般論ですが、テレビ局の売上の多くは広告に依存しています(全額とまではいいませんが…)。
そして、売上高が急に減ったとしても、テレビ局は急に経費を減らすことができません。
ということは、フジメディアの「メディア・コンテンツ事業」のように、経費率が100%近くを占めている事業の場合は、売上高が減ったらその分、丸っと損失が発生します。
フジメディアは2024年3月期の段階で、「都市開発・観光」事業で195億円の営業利益を計上していたのですが、それでもCM売上高がいきなりゼロになったとして、年間4180億円の費用が発生し続ければ、年間2000~3000億円のキャッシュ・アウトフローが発生します。
この状況が数年続けば、いくら金融資産がたくさんあったとしても、資金繰りでいきなり経営破綻、といったシナリオは現実にありうる話です。
最新決算は増益:一見好調だが…?
こうしたなかで、フジメディアが5日、2025年3月期の第3四半期短信を公表していました。
これによると「メディア・コンテンツ事業」の2024年4月~12月における9ヵ月間の売上高は3226億円(前年同期比▲0.9%)と若干の減収でしたが、営業利益については152億円で前年同期比+28.2%とまずまずの増益でした。
これに加えて「都市開発・観光事業」についてもセグメント利益は131億円で、前年同期比+3.6%と増益となり、会社全体でも前年同期比+15.1%となる272億円の営業利益を計上するなど、一見すると決算は好調です。
ただ、「売上高3226億円で営業利益152億円」ということは、営業経費が3074億円、つまり売上高の95.3%ほど発生している、という意味であり、やはり「低収益性」という意味では、あまり変わりません。
下手すると25年3月期は営業赤字転落も…!
その意味では、これから5月ごろに発表されるであろう発表される2025年3月期本決算の姿が気になるところです。
著者自身の見立てが正しければ、「メディア・コンテンツ事業」の年間売上高(約4500億円前後)のうち、テレビ広告は少なくとも2000~2500億円程度であるため、2025年1~3月のCM収入が8割減少したとすれば、これだけで400~500億円の減収要因となります。
この見立てが正しければ、そしてフジが製作費を抑えるなど「出血」を止めなければ、おそらくはかなりの確率で、フジメディアは2025年3月期に営業赤字に転落します。
すべてはスポンサーの動向次第ですが、いずれにせよ今後数ヵ月から数年は、フジメディアの決算、そしてゆくゆくはテレビ業界全体の決算からは、しばらく目が離せない展開が続くことは間違いなさそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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番組制作の多くは請け負い番組制作会社が実施します。更にその作業の多くは二次請け負いが行うという世間によくある多重構造になっている様子。時々街で見かけるTVロケのスタッフは、どの階層の人なのか分かりませんが失礼ながら身なりはちょっとマズイという状況。他社のこと血祭りにあげておいて、TV局自らも普通に『下請けいじめ』して低賃金労働させているように窺われます。
番組内容は既にデグレ済みであり制作費用のコストカットもこれ以上外部に押し付けるのも困難。発注側であるTV局自身の人件費や経費を削るしかない気がします。
テレビコマーシャルの出稿はどれくらい前に契約するのだろう?
私の想像だがスポット広告では1,2月くらいまでは契約が済んでいるのではないだろうか。
であれば、2月まではスポンサーが降りてコマーシャルの代わりにACジャパンを流しても料金は発生して請求できる。では3月は? 契約が済んでいないとACジャパンを流してもカネはもらえない。フジテレビは体力があるからしばらく持ちこたえるかもしれないが地方の系列局はどうするんだろう。
番組制作ではもっと長いスパンではないか? テレビでよく1クール(3か月)という言葉が出てくる。ワイドショーでも番組提供スポンサーが存在するから、次のクールは降りるよと言われれば番組自体を制作できなくなる。その場合自費で(つまりフジテレビの負担で)制作するのか。
常識的には、テレビ部門は、整理解雇。おそらく解雇4要件をみたすのでは。テレビ部門は、縮小し売却?
上場廃止基準に抵触する可能性が高いテレビ部門がなくなれば、不動産会社として上場は維持。という感じかもしれません。
不動産部門は、雇用吸収力がないので、テレビ部門は、整理解雇という感じだと思います。
テレビ局にまたもや隕石命中
令和ニッポンの周回遅れ産業、新聞TVの企業突然死
商流整理の大鉈、憎まれ役は誰に
「強剪定は寒いうちがおすすめ」
>「強剪定は寒いうちがおすすめ」
いい表現ですね。
縮小均衡に向けて作り替えるにはいい機会。資産はたくさんありますし。
ただまあ、期待としては爆散してエンタメ企業としての本懐を遂げて欲しいものですけど。
制作部門の経費は外注費の割合が気になるトコロですが…下請けからキックバックとか普通にやってそうなイメージも有りまンな
制作経費の“真水”部分はどないな案配でっしゃろ??
まーフジ系下の制作会社には他系からスタッフ引き抜き話が有るやら巷間流々サレトリマシタし、先の見通し立たない間にフジ系制作現場自体霧消すンかもしれまへんな、知らんけど