鈴置論考で整理する「反日を反米の隠れ蓑に使う韓国」

韓国の反日の正体は反米の隠れ蓑―――。これは、韓国観察者である鈴置高史氏が繰り返し警告して来た議論です。こうしたなか、米国では現地時間20日にドナルド・J・トランプ氏が大統領に再度就任しました。「トランプ時代」、「クアッド」、「AUKUS」といったキーワードとともに、私たちの国・日本がどう動かねばならないかを考察するうえで非常に有益な論考が公開されています。

鈴置論考が観察しているのは韓国ではなく日本かも?

以前からしばしば指摘している通り、「韓国観察者」と名乗る鈴置高史氏の一連の論考は、私たち現代を生きる日本人にとって、極めて有益性が高いものです。

なぜなら、(これは当ウェブサイトなりの私見ですが)鈴置氏が「観察」しているのは、じつは韓国ではなく、韓国という鏡に映った日本だからです。

日本では(なぜかは知らないけれども)韓国のことを「成熟した民主主義国家だ」などと称するメディア、あるいはテレビに出演する反日芸能人などもいるわけですが(敢えて実名は挙げません)、鈴置氏が観察している「韓国」は、じつはこうした「奇妙な日本人・奇妙な日本のメディア」を映し出す鏡ではないかと思うのです。

鈴置氏の7年前の『米韓同盟消滅』

さて、それはともかくとして、鈴置氏の論考は興味深く有益なものも多いわけですが、非常に残念なことに、先見の明があり過ぎるのか、少し世に出るのが速すぎたのではないかと思しき論考などもあります。

そのひとつが、2018年10月に刊行された『米韓同盟消滅』という書籍ではないでしょうか。

鈴置氏、あるいは当ウェブサイトの著者などの「評論家」は、得てして方向性を言い当てることができることがある反面、その「正確な時期」を言い当てることが難しいという面はあります。現時点においても、米韓同盟は消滅していないのが現状だからです。

というよりも、何度も崩壊の危機に陥りながら、よくぞ現時点までなんとか米韓同盟が続いているものだと呆れる次第です。やはり方向性としては、鈴置氏が今から7年前に予言したとおり、米韓同盟は徐々に弱体化していることは間違いないからです。

こうしたなか、米韓同盟の先行きを読む上で重要なファクターがひとつあります。米国では現地時間20日、ドナルド・J・トランプ氏が大統領に就任しました。

大統領選でいったん落選した人物が大統領に返り咲くのは、第22代・第24代大統領のスティーブン・グロバー・クリーブランド(任1885年~89年、93年~97年)以来、じつに132年ぶりですが、それだけではありません。

トランプ氏は「アメリカファースト」を掲げており、日欧など西側諸国との同盟関係についても今後、見直しの動きが予想されるところです。

トランプ就任で米韓同盟はどうなる

そんな米国について、鈴置氏が21日付でウェブ評論サイト『デイリー新潮』に掲載した最新レポートは、これまでの数年の米韓同盟に関する流れをうまく整理し、スッキリと説明した、一種の「総括」的な記事ではないかと思います。

トランプ就任でどうなる韓国…「米中どちらの味方か」の岐路に 米有力議員は韓国左派を“内通者”と非難

戒厳令騒ぎが韓国に米中間での立ち位置を問う。韓国観察者の鈴置高史氏が注目するのは、大統領弾劾を進める左派を「米韓同盟の破壊者」と米有力議員が見なしたことだ。<<…続きを読む>>
―――2025/01/21付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より

今回も非常に長い記事ですが、朝鮮半島問題、国際情勢、あるいは日本の将来に興味、関心がある人であれば、あっというまに読んでしまい、むしろ「もっと読みたい」と思うくらいではないでしょうか。

鈴置氏は論考のなかで、韓国系の米下院議員(共和党)が韓国の左派に対する警戒を提起したことについて、これに韓国の左派メディアから「反撃」が加えられたという一連のやり取りに注目し、こう述べます。

要は、左派が米韓同盟を壊すかどうか――との論争ですね」。

その通りです。近い将来の大統領選挙を意識してののしり合いです。尹錫悦大統領の弾劾はほぼ確実と見られており、弾劾後60日以内に大統領選挙が行われます。それを念頭に置いた駆け引きが早くも始まっているのです」。

ただ、このように考えたら、韓国の左派メディアが米国を刺激するかのようなレトリックをわざわざ使うのは、私たち日本人にとってみると、やはり違和感があります。韓国左派メディアといえば、反米というよりは反日という傾向が強いはずだからです。

韓国の反日は反米の隠れ蓑

しかし、これに対する鈴置氏の答えは、こうです。

韓国人は『反日』を隠れ蓑に『反米』に動く」。

これは、いったいなにを言っているのか。

鈴置氏は続けます。

韓国は『歴史問題で謝罪しない日本とは軍事協力できない』との言い訳を使って日米韓三角安保協力はもちろん米韓同盟からも逃げまくって来ました。中国の顔色をうかがうこの作戦は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が採用して以来、保守政権の一部も利用した韓国の常套手段です」。

要するに、韓国の歴代政権が反日を利用して来たのは、米韓同盟からも逃げるためのモノだったのです。

なぜ?

その目的はおそらく、同盟の利益だけ受け取り、義務は果たしたくない、といった、「良いところ取り」ではないでしょうか。

このあたり、韓国は左に振れたり、右に振れたりしながら迷走を繰り返し、こうしたなかで米韓同盟も徐々に相対的な地位が下がっていく―――正確にいえば、日米関係の相対的な価値が上がっていく、ということではないでしょうか。

故・安倍晋三総理大臣が強く提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」、そしてその安倍総理がトランプ氏、インドのモディ首相らと事実上成立させた「基本的価値同盟」である日米豪印「クアッド」がその典型例でしょう。

現在の石破茂首相がクアッドの重要性をどこまで認識しているかという問題点はとりあえず棚に上げるとして、また、インドが日米豪と基本的価値を共有している国であるかは別として、この日米豪印クアッドの枠組みは、日本外交を大きく変える可能性があるものです。

(※余談ですが、提唱者である安倍総理が狂人により暗殺されてしまったことは、日本のみならず自由・民主主義諸国全体にとっても大きな損失であり、痛手ですが、嘆いていても仕方がありません。)

クアッドにもAUKUSにも入れない韓国

それはともかくとして、鈴置氏はジョー・バイデン前政権において、韓国がクアッドだ、AUKUS(米英豪協力)だといった枠組みへの参加を表明した際に、米国がこれを拒絶したという事実に注目。その背景について、次のように述べています。

多国間の枠組みに韓国を入れたら『最も弱い輪』となるのは確実です。中国にもいい顔をしたい韓国は『トロイの木馬』になりかねません。中国包囲網たるQuadとAUKUSの内側から、それを突き崩しにかかる可能性が極めて高い。それを防ぐには初めから『韓国はお断り』するのが最も合理的なのです」。

なんとなく、鈴置氏が外務官僚らから嫌われている理由がわかる気がします。

外務省が良く使うレトリックが、「日本は韓国と仲良くしないと米国に怒られるぞ」、というもので、2023年3月に自称元徴用工問題で韓国に妥協した岸田文雄・前首相も外務官僚に騙されたフシがあるのですが、鈴置氏はその前後から、こうした外務省の虚偽の陳述を繰り返し警告していたことを思い出します。

いずれにせよ、私たち日本人にとっては、「これからの時代、日米韓協力がますます重要だ」、「協力のためには日本が韓国に譲歩し、改めて謝罪しなければならない」、といった安易なレトリックに騙されないことが肝要です。

むしろ日本に必要なのは「韓国がなくても大丈夫な国づくり」ではないかと思いますが(それは安倍総理、あるいは菅義偉総理が追求していた政策課題でもあるのかもしれません)、このあたりは私たち日本国民がしっかりと認識を持っておくことが重要です。

なお、鈴置氏といえば、『米韓同盟消滅』のほかにも、『韓国民主政治の自壊』、『韓国消滅』という非常に重要な著作を世に送り出していますが、あくまでも個人的な希望としては、トランプ時代、石破時代において日本がどう動くべきかに関する著作が出ることを強く望む次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿田名子 より:

    石破政権の媚中で日本が「最も弱い輪」「トロイの木馬」になるんじゃないかと心配です。
    AUKUSの準メンバーもやっぱり日本は抜けてくれる?って言われそう。

    1. naga より:

      私もそこが心配です

  2. Masuo より:

    『日米同盟消滅』

    岸破、森山左派政権がこのまま続けば、日米同盟も危ういのではと危惧します。
    最近本当に、露骨に、中国詣が多いように思います。

    消滅まではしないでも、何かしらのペナルティはあるかもしれないです。
    鈴置氏は本当に日本の観察者でもあると思いました。

  3. DEEPBLUE より:

    無政府状態の韓国にわざわざ岩屋がご機嫌伺いに行きましたしねえ・・・。今の親中石破政権なら日本も韓国と同じ扱いに降格も時間の問題。

  4. 石破の反米語録 より:

    「アジア版NATO作り、有機的に結合するべきだ」
    「日米安保条約を改定をめざす」
    「日米地位協定の改定をめざす」
    「日米核の共有は意思決定の過程を共有しようということだ」
    「米国の顔色を窺っても仕方がない」
    「日本は主権独立国家だ、対等な日米関係を築くべきだ」
    「アメリカの国力が低下している」
    「安倍さんとトランプはゴルフなんかやってけしからん」
    「中国を最初から排除するということを念頭に置いているわけではない」
    「習主席を国賓として招くべきだ」

    トランプ氏の耳にも入ってるでしょう

  5. 元日本共産党員名無し より:

    最近着実にここの主である新宿会計士様の筆名がいろんなYouTuberの中で爆騰りして居る気がするのですが、その割に新宿会計士様が一貫して激推しして居る鈴置高史氏の事を取り上げるYouTuberはほとんど見かけないのです。どうにか新宿会計士様と同じぐらいには鈴置高史氏の知名度、引用数を引き上げたいモノです。
    お二人とも取り上げるYouTuberは私の知る限り上念司さんぐらいかな?上念司さんは年に一度ぐらいは鈴置高史氏をゲストに招いて居ます。

  6. ちろたくん より:

    昨日、ブエノスアイレスで、牛肉で人気のレストランに行ったら、韓国人の団体が20人くらいやってきて、食事を取っていました。
    びっくりしたのは、添乗員が、壁に韓国の国旗を掲げたことです。
    よその国のレストランで、自国の国旗を掲げるという感覚は全く理解できませんでした。
    こんな人たちと付き合っていくのは、難しいのではないでしょうか。

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