国民民主党が野党連携に「冷淡」なのは当たり前では?

本来、国会議員にとっての最も重要な仕事は法律を作ることであり、したがって、有権者も国会議員(候補)や政党を選ぶに際しては、その政党や候補者が掲げている政策に加え、国家観、経済観などを総合的に判断することが必要です。国民民主党が昨年の選挙で躍進したのも、SNS時代に政策が支持されたという側面が大きいと考えられます。こうしたなか、読売新聞は15日、その国民民主党が、最大野党である立憲民主党などとの野党連携に「冷淡だ」と報じました。当たり前ではないでしょうか。

国会議員の本職は法律の策定

国会議員の本職とは、いったい何か。

それは、週刊誌片手に閣僚や与党議員らのスキャンダルを追及することでしょうか?

それとも、反ワクチン的なデマを社会に垂れ流すことでしょうか?

おそらく多くの方は、「そうじゃないでしょ?」と思うのでしょうか。

著者自身の主観ですが、国会議員の最も大切な仕事は、本来、「法律を作ること」です。日本国憲法上、本来ならば、法律の制定は国会議員にしかできない、いわば国会議員の「特権」のようなものです。

この点、わが国の場合は現実問題として、国会で可決されるのは議員立法よりも政府提出法案の方が圧倒的に多いのが実情であり、この政府提出法案を起草しているのは多くの場合、官僚ですので、「日本では実質的に官僚が法律を作っているようなものだ」と言ってもそこまでおかしくはないのかもしれません。

ただ、あくまでも「法的には」、法律は国会議員が多数決で可決し、天皇陛下の御名御璽を経たうえで公布されますので、やはり、法律は国会議員にとっても最も重要な仕事だと考えて良いでしょう。

内外に厳しい状況で国家観や経済観が必要!

そして、私たちの国・日本を取り巻く環境は、内外共に非常に厳しいものがあります。

近隣ではわが国固有の領土である北方領土などを不法占拠したまま居座っているロシアのような無法国家もありますし、無法国家という意味では日本人を拉致したまま返さない北朝鮮、日本固有の領土である尖閣諸島周辺海域を頻繁に侵犯する中国など、無法国家は少なくとも4ヵ国あります。

国内に目を転じれば、ウクライナ戦争などを契機としたコストプッシュ型のインフレも酷く、また、国民の多くが生活に苦しみ始めているなかで、物価高対策も十分とは言い難いのが実情でしょう。

こうした状況を踏まえるならば、有権者としては国政選挙において、少なくとも次のような点に注目して投票行動を決める必要がありそうです。

  • その候補者・その政党の国家観(とくに憲法、自衛隊、日米安保など国を守る仕組み等)
  • その候補者・その政党の経済観(とりわけ税制、財政政策、金融政策)
  • その候補者・その政党の実務担当能力(政権担当・閣僚経験の有無など)

この点、わが国では少なくとも2012年以降、自民党が下野しておらず、(公明党を除くと)自民党以外の政党には閣僚経験のある政治家がほとんど在籍していないという状況です。いても、民主党政権時代に首相、閣僚、政務官を経験したという政治家くらいなものでしょう。

このため、「実務担当能力」という観点を重視するならば、必然的に自民党が最も有力な投票先となり得るわけであり、逆にいえば、自民党以外の政党が有権者に政策を訴えかけるならば、国家観や経済観を前面に押し出すのが最もわかりやすいでしょう。

とりわけ昨年のいくつかの選挙でも明らかになってきたとおり、近年だと、テレビのような「わかりやすい(しかし不正確な)報道」ではなく、SNSなどを通じて各政党の主張内容を知る有権者が増えています。

だからこそ、政党、候補者の側としても、SNSなどを通じて有権者が何を求めているかを探る努力をすべきですし、せっかくSNSを使っているのならば、SNSを使って有権者との対話を試みてはどうかと思う次第です。

国民民主との連携急ぐ立憲民主党の「本末転倒」

こうしたなかで、「これは本末転倒ではないか」と思ってしまう記事があるとしたら、これかもしれません。

国民民主党、野党連携に冷淡…「立憲民主と連携強めれば離れる票の方が多い」

―――2025/01/15 15:32付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】

これは読売新聞オンラインが15日夕方に配信した記事ですが、開口一番、こう指摘しています。

立憲民主と国民民主両党の夏の参院選に向けた政策協議が進展していない」。

いったいなぜ、政策協議が進んでいないのでしょうか。

読売によると、立憲民主側は「候補者調整も念頭に基本政策での一致を目指している」のに対し、国民民主側は「与党との政策協議を優先し、立民と一定の距離をとっているため」、などとしていますが、それだけではないでしょう。

そもそも論として、立憲民主党が掲げる政策には、国民民主党が掲げるそれと比べて、かなりの距離があるからです。わかりやすいのが2024年衆院選直前に立憲民主党が発表した公約(同党『「政権交代こそ、最大の政治改革。」政権政策発表』のページ等)でしょう。同党の財政・金融・税務政策は、こんな具合です。

立憲民主党政権公約【財務金融・税制】
  • 格差を是正する税制改革による財源確保や、行政需要の変化に応じた予算配分、適切な執行、成長力の強化による税収増など、歳出・歳入両面の改革を行い、中長期的に財政の健全化を目指します。
  • 国会の下に独立財政機関を設置して、主要政策の費用対効果や財政の見通しを客観的・中立的に試算・公表するとともに、その試算に基づき「中期財政フレーム」(3カ年度にわたる予算編成の基本的な方針)を策定することを政府に義務付けることで、放漫財政を改めます。
  • 日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとともに、政府・日銀の共同目標として、「実質賃金の上昇」を掲げます。
  • 日銀が保有するETFは、簿価で政府に移管した上で、その分配金収入と売却益を、少子化対策等の財源に充当します。
  • 所得税については、「分厚い中間層」を復活させるため、勤労意欲の減退や人材の海外流出等の懸念に十分配慮した上で、累進性を強化します。
  • 消費税の逆進性対策については、軽減税率制度に代えて、中低所得者が負担する消費税の一部を税額控除し、控除しきれない分は給付する「給付付き税額控除」(消費税還付制度)の導入により行います。

(【出所】立憲民主党『2024政策パンフレット(報道・研究資料用)』P12)

まずは政策を見直さないのですか?

1番目と2番目の目標は、それぞれ財政健全化目標、財政規律目標と評価することができますが、「立憲民主党」の名称を伏せて上記文章を読み上げると、まるで財務省が提唱しているものとソックリでもありますが、それだけではありません。

3番目の「ゼロ%超インフレ目標」は、現在の「2%インフレ目標」とは似て非なるものであり、事実上のデフレ目標でもありますし、5番目の累進課税強化は、現在、国民民主党が実現を目指している「年収の壁撤廃」とはまったく真逆のものでもあります。

ほかにも4番目の「ETFの売却益の財源化」、6番目の「消費税の還付・給付」あたりは、「現実離れし過ぎている」という意味では、いかにも立憲民主党らしい政策というべきでしょうか(誰がどうやって実現するのかまったく理解できませんが…)。

これらに対し、国民民主党は、たとえば消費税については時限的な税率引き下げを主張していますし、所得税・地方税については基礎控除を現行の48万円から一気に123万円へと引き上げるなどの恒久減税を主張しています。

すなわち、基本的な政策の部分において、国民民主党の「減税」公約は、「取って配る」式の立憲民主党型の経済・金融政策とは相いれないものがあります。どうして立憲民主党の内部で、「まずは政策を見直す」、という議論にならないのか、不思議でなりません。

両党連携が進まないのも当たり前

この点、先ほどの読売の記事によると、立憲民主党が選挙協力を急いでいるのは、支援団体である連合の要請に加え、全国に32ある「一人区」で「国民民主党とのバッティングは必ず避けたい」(同党の小川淳也幹事長)との事情もあるのだそうです。

正直、選挙協力のために有権者から選択肢を奪うという発想は、個人的には非常に強い違和感を覚えるところですが、それ以上におそろしいのは、この読売の記事を読んでいても、立憲民主党が目指す「政策」という議論がほとんど出てこないことです。

実際、読売の記事によると、国民民主党は「政策の実現を重視し、自民党との『年収の壁』見直し協議に注力しており、立民との連携には冷淡なのが現状」。

そのうえ、同党幹部も読売に対し、「立民と連携を強めれば立ち位置がぶれているとみられ、離れる票のほうが多い」(幹部)と強気の姿勢を維持している、とあります。

当たり前です。

著者自身、国民民主党を無条件に支持したり、信頼したりするつもりはありませんが、それでもこの姿勢は国政政党としては非常に正しいものです。先ほどから指摘している通り、政治家(とくに国会議員)の本職はあくまでも法律の制定であって、「国会議員であり続けること」、ではないからです。

SNSなどのさまざまな情報を総合するに、国民民主党が昨年の選挙で議席を大幅に増やすなど勢力を躍進させた要因も、まさにこの「政策」が支持されたからではないでしょうか。

そして、国民民主党が立憲民主党と「組めない」理由も、結局のところは、この「政策」に原因があると立憲民主党側も気付くべきですが、はたして夏の参院選までに立憲民主党がそれに気付くでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 駅田 より:

    高々6.4%の支持率・・・など有権者を馬鹿にしている議員が所属しています。
    果たしてあなたの党の支持率は幾つなのでしょうか?

    党内で一部であっても政策一致を目指すという気概は一切見受けられないです。
    日本国民は何を望んでいるのか、必死に目を逸らしているのが立憲民主党という政権です。

    国際紛争は話し合いで解決、酒を酌み交わして話し合えば戦争しなくてもいい
    そうした事を言うなら、まず国内の問題を話し合いで解決してもらいたい。
    国内ですらできないものを外国相手にできるわけがないだろう。

  2. のりお より:

    今の国民民主は、立件共産党と言わず自民党とも維新とも他の党とむやみに近づくだけで支持率は下がるんじゃないかと思います。(178万を共闘するなら話は別だがそんな党はほかにはいない)

    1. 匿名 より:

      立憲の公約は経済の活性化にならないように思います。国民民主の公約のように減税効果を全国民に実感してもらう方法が一番最良だと思います。

  3. 野良黒伍長 より:

    いつもお疲れ様です。
    読売の記事、確かに題名に「野党連携」とありますね。読売も含めオールドメディア各社にとって、野党といえばまずは仲良しの立憲なのでしょうかね。昨年の静岡県知事選でも、まだ候補者だったときの現県知事が県政記者クラブとの懇親会を企てて結局中止したそうですし。
    ただ国民民主党も連合の意向や選択的夫婦別姓など、不審な要素はありますけどね。
    あと最後に、暴力沙汰を起こしたりテレビのバラエティ番組のようなくだらないパフォーマンスをすることも国会議員の本職ではないですよね

  4. カズ より:

    政策重視の国民(利他)と政局重視の立民(利己)

    立民側のは、選挙協力を得たいだけのエゴイズム。
    国民側には、ベクトルを摺り合わせる理由がない。

  5. 匿名 より:

    ガソリン値下げ隊なんてやってた立憲議員の方々は当然国民民主党に同調してるんですよね?

    1. 新宿会計士 より:

      そうでしたっけ?ウフフ

  6. 丸の内会計士 より:

    立憲民主党の先生方は、本屋でマクロ経済学の本とか立ち読みした方が良いのでは。最近のマクロの本は知りませんが、かなり昔は、中谷巌先生のマクロ経済の本が人気がありました。マクロ経済学の本の立ち読みとSNSを眺めて、国民民主の政策が好評な理由を考えた方が良いのでは。ジバン、カンバン、カバンが通用しなくなる可能性が高いと思います。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      立憲民主党のセンセイ方が立ち読み…
      視エルぞ~(キノセイ)
      ナナメに読みトバして自説に都合よく使えそうなフレーズだけ抜き寄せSNSやらでソレっぽく吹いてはコミュニティノート的なツッコミ喰らって炎上…
      知らんけど

  7. もひとつ より:

    >無法国家は少なくとも4ヵ国あります。⇒ 竹島に土足で上がり込んでいる国もあります。

  8. 匿名 より:

    そういやマスゴミは総選挙の直後にも 「部分連合」 とか言ってたな。
    今の政治記者は、政局にしか興味がないのか、政策を理解するオツムがないのか。

  9. CRUSH より:

    日本の民主主義は間接代議制度なので、ある程度は政党側に裁量の余地はあるものと理解はしていますが、それにしても。

    野党側の話だけでなしに、公明党に寄生されてる与党自民党も本質的に同じ病気に冒されてるので、玉木の
    「正論パンチ」
    の波及効果には注目しています。

    与野党ともにグラグラしていて、ともに内部分裂しそうなので、面白い展開ですね。

    石丸、玉木榛葉、立花あたりの
    「メディアを介さずにSNSで直接に有権者とコミュニケートする」
    という手法は、とても役に立ってますな。

  10. 普段はROM男 より:

    立共が減税に否定的なのは彼らの支持層である所謂「弱者」や「弱者を助ける組織」が不正受給しにくくなるからじゃないですかね?

    「取って配る」方式じゃないと利権が保てないのでは?

  11. DEEPBLUE より:

    立憲は維新とでも連携していればいい。

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