インバウンド対策は「選別」兼ねて高額の入国税検討を

オーバーツーリズム対策で外国人入国者に対し、ひとりあたり数万円レベルの入国税を課すべきだ―――。こんな主張が、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士から出てきました。おそらくアイデアの出所は当ウェブサイトであろうと考えられますが、こうした主張の妥当性を考えるうえで取り上げておきたい話題が、例の「富士山コンビニ問題」です。

怪しい自称会計士、Xで怪気炎

山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士が23日、自身のXを更新し、こんな内容をポストしました。

言葉遣いの怪しさはさておき、この話題は当ウェブサイトではわりと頻繁に出てくるものです。

先日の『年間訪日客はすでに過去最多…そろそろ入国税の議論を』では、日本政府観光局(JNTO)の最新データをもとに、日本を訪れる外国人が急増しているものの、各地で観光公害が問題化している、とする話題を取り上げたばかりです。

したがって、この怪しい自称会計士の「入国税」云々の主張も、同じ文脈の延長線上にあるのだと思われます。

出国税と入国税は別物

これに関しては、X上でこんな趣旨の反論がありました。

入国税ではないが、現在は『国際観光旅客税』という名目で出国者1人あたり1,000円の税を支払うという仕組みが存在するので、わざわざ『入国税』などいう仕組みを導入しなくても、実質的にはそれと同じ効果が生じている」。

残念ながらこの指摘は、まったく当たっていません。

俗にいう「出国税」は、納税義務者である「国際観光旅客等」が「船舶又は航空機により出国する旅客」と定義され、これには日本人出国者も含まれているからです(国際観光旅客税法第2条第1項第3号、同第4条)、日本人も含まれます。

また、税率も出国1回あたり千円(同第15条)に過ぎず、この怪しい自称会計士が提案している「入国者ひとりあたり数万円」という水準と比べれば、それこそ微々たるものに過ぎません。

経済効果もほとんどない出国税と比べ、入国税は明らかに税収の拡大とインバウンド観光客の適正化を狙うものであるため、混同しないでいただきたいところです。

マナーを守らない外国人、不法行為を働く外国人

それはともかくとして、この「数万円レベルの入国税」構想、いったいどう考えるべきでしょうか。

もちろん、「数万円レベルの入国税」を課すことになれば、その分、日本に入国する外国人が急減するかもしれませんし、「観光産業にとっては大きな打撃となるのではないか」、といった批判が生じるであろうことは、重々承知している点でもあります。

ただ、それと同時にもうひとつ、私たちが知っておかねばならないのは、インバウンド観光産業が現在、日本各地で経済の重しとなりつつある、という事実です。

たとえば、一部の都市では押し寄せる外国人観光客により、市内交通がなかば麻痺状態に陥っている、とする報告もありますし(※著者自身、そういう話をよく耳にしますし、最近は都心の地下鉄の混雑も酷いありさまです)、マナーを守らない外国人、あるいは落書きなどの不法行為を働く外国人もいます。

著者自身が暮らしている街でも、近隣に宿泊施設や(ときとして管理規約違反の)民泊物件なども多いためか、あまりマナーがよろしくない外国人の姿を(とくにコロナ後は)大変多く見かけるようになりましたし、なかには路上で突然大声を出したり、喫煙し始めたりする輩もいます。

酷いケースだと、下校途中の小学生にウザ絡みする外国人観光客らしき者もいますし、わが国の治安が乱されるような事態になれば、それこそ本末転倒でしょう。

こうしたなかで、ひとつのモデルケースとして改めて取り上げておきたいのが「富士山ローソン問題」です。

これは、山梨県で「富士山がコンビニエンスストアの上に乗っかっているかのように見える地点」が観光スポット化し、交通安全や騒音、ゴミなどの問題が生じている、などとする話題で、当ウェブサイトでは『富士山黒幕問題と本質見失う批判』などを含め、しばしば取り上げて来たものでもあります。

富士山コンビニ、幕が撤去されていた…!?

これに関し、久しぶりにこんな「続報」がありました。

“富士山ローソン”の前に緑と白の横断歩道 「安全に渡って」観光客らを誘導 迷惑行為に新対策 山梨

―――2024/12/25 11:49付 Yahoo!ニュースより【テレ朝news配信】

テレビ朝日の25日付の報道によれば、「富士山ローソン」の前の横断歩道が目立つように緑色に塗られた、とするものです。記事から判断するに、要するに外国人観光客らが「安全に道路を渡れるようにするため」の措置、ということでしょう。

あれれ?

たしかこの問題、今年の5月頃の話だと、「黒幕を張って富士山を見えなくする」、という措置が講じられたのではなかったでしょうか?

繰り返しになりますが、この富士山コンビニ問題、観光客が押し寄せる余り、コンビニと道路を挟んで反対側にある歯科医院の敷地内にも観光客が進入し、また、昼夜を問わない無断駐車などが生じていたため、地元自治体がやむを得ず黒幕を張るという対応を講じたはずです。

黒幕を張る直前の、押し寄せる観光客のせいで患者さんの通院に支障を来すほどの状況については、「井ビシ歯科医院」の『外国人観光客のローソン+富士山の写真撮影 マナー違反問題について』に詳しく触れられているのが参考になると思います。

しかし、25日付のテレ朝の報道から判断するに、結局、設置された黒幕はあまり意味がなかったのかもしれません。

実際、調べてみるとこの黒幕は設置された直後から人為的に破られるなど破損するなどしていたそうですが、結局、台風対策で8月に取り外され、それっきりとなっているようです。

「富士山ローソン」目隠し黒幕騒動はこれで幕引き? 「再設置せず」のその後

―――2024年09月14日 09時06分付 ITメディアビジネスONLINEより

こうした状況を踏まえると、やはり個々の自治体などが個別に対応するには限界がありますし、増え続ける外国人観光客に対応するためには、対応コストの負担、および入国する観光客の質の選別という観点からは、やはりある程度の高額な入国税が必要ではないでしょうか。

増税が大好き(?)な財務省が本件で押し黙っているのは不思議な気もしますが、さて、真相はいかに。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 陰謀論者 より:

    訪日中国人のカネは日本に落ちない?中国本土へ吸い上げる「囲い込みモデル」の貪欲 ダイヤモンド・オンライン
    https://diamond.jp/articles/-/332853

     一条龍とかいうらしいですが、ただ乗りで迷惑だけ残されても困ります。
     ただ純粋にビジネスや国際親善等での来日で入国税をとるのはマイナス面もあるので、観光の場合に、観光税のような形でしっかり徴収するのがよいのではないでしょうか。

  2. 丸の内会計士 より:

    財務省、増税が大好きですが、入国税だけは嫌いな可能性が高いです。入国税を課すとインバウンドが減少します。インバウンドが減少すると、関連産業の人手不足感が緩和してしまい、移民の働く場所が無くなってしまいます。移民の働く場所が無いと、移民利権も機能しなくなります。
    今回、103万円の壁を取り払ってしまうと、日本人の労働供給が増えてしまい、移民の働く場所が無くなってしまいます。これも移民利権にはマイナスに作用します。
    財務省も自公政権の移民利権にマッチした政策を実施する必要があり、入国税には反対でしょう。オールドメディアも同様な感じがします。

  3. 匿名 より:

    「日本にお金を落としに来る観光客」 と 「日本に稼ぎに来る労働者」 は、本来は全く別のカテゴリーのはずなのに、日本の出入国管理では、両者をあまり区別していないように見えます。
    もっとも、欧米諸国も 「移民」 と 「難民」 を区別せず、素行不良の移民をたくさん入れてしまっていますが。

  4. どみそ より:

    岩谷外相が 中国人への入国在留許可要件を緩和 安売りしてくれてます。
    富裕層の在留を促すことは 日本にとって利点はあるのでしょうか?
    消費活動以外のお金を落とすことなく、また消費税以外の税金をはらうことなく、日本人が創り上げた 医療・社会インフラを享受できるのです。
    岩谷さん 中国、韓国に甘いことばかりやってくれます。
    日本のために働いてもらいたいです。

  5. DEEPBLUE より:

    財務省にもお隣の国ルーツの官僚が一杯いるのでしょう。かつて大蔵官僚だった議員が暴露していましたからね。

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