一億総情報発信社会の到来は必然

一億総情報発信社会―――。もしかすると、今後のネット社会では、誰もが情報の発信者になれるのかもしれません。情報には「客観的事実」と「主観的意見」があり、このうち客観的事実については入手のコストが限りなく低下しているなかで、ネット社会で付加価値を持つのは主観的意見の方であり、人々が知りたがっているのもこの主観的意見ではないでしょうか。

2024/10/18 08:35追記

本文中の誤植を一部修正しております。

ポイントは事実と意見を分けること

当ウェブサイト、「金融評論サイト」などと名乗っていますが、もともとはオープンソース、つまり誰にでも手に入れられるような情報を手掛かりに、「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的とする論考を掲載しようという趣旨で立ち上げたサイトです。

とはいえ、新聞社勤務経験もない、テレビ勤務経験もない、ジャーナリストですらないただのビジネスマンが、一般向けにわかりやすく政治経済を解説することなどできるものなのか。

どうせ数日で行き詰って、更新を止めてしまうに違いない―――。

著者自身も、当初はそう思っていたフシがあります。

ただ、それと同時に当ウェブサイトを立ち上げた2016年頃から一貫して申し上げている「持論」があるとすれば、それは「世の中の情報には、基本的に、①客観的事実、②主観的意見、という2つの種類がある」というものです。

このうち「①客観的事実」の部分については、基本的には誰がどう報じてもまったく同じになる情報のことで、たとえば次の(A)のような文章は「客観的事実」です。

(A)「石破茂首相は2024年10月9日に衆議院を解散した。衆院選は15日に公示され、27日に投開票が行われる予定である」。

情報の質

客観的事実は意見が割れないが主観的意見はそうではない

この点、西暦でなく令和を使う人もいるかもしれませんし、厳密にいえば「法的に衆院を解散した人物は石破首相ではなく天皇陛下ではないか」、といった細かいツッコミどころはあるかもしれませんが、ただ、こうした細かい点を除けば、この文章Aは、誰がどう報じてもその構成要素はほとんど同じになるはずです。

これに対し「②主観的意見」の部分は、報じる人、論じる人によってまったく異なる内容が主張される可能性がある情報のことで、たとえば次の(B)のような文章は「主観的意見」です。

(B)「今回の衆院解散は典型的な『大義なき解散』であり、石破首相にとっては解散権を政治利用するものでもあるため、極めて不適切なものだ」。

この(B)のような主張、新聞やテレビなどで案外多く見かけるものかもしれませんが、それと同時に気を付けなければならないのは、文章(B)は論者によってこれとまったく異なる内容が提起される可能性があることです。たとえば、こんな具合です。

(C)「今回の衆院選は自民党で総裁が交代したことに伴うものであり、民意を問うという意味では非常に適切なものである」。

文章(B)、(C)は、今回の衆院解散総選挙が「不適切なものである」、「適切なものである」とそれぞれ主張するもので、その内容はほぼ真逆ですが、これはどちらが正しいのでしょうか?お互いに相矛盾する内容が、同時に正しいということは、あり得るのでしょうか?

主観的意見を出す根拠とプロセスが重要

結論的にいえば、お互いに矛盾する文章(B)、(C)が「同時に事実である」ということはあり得ないのですが、もっと大切なことがあるとすれば、それは「どちらも理由があってそのような主張になっている」、ということです。そもそも意見は意見であり、事実ではないからです。

私たちが暮らす民主主義社会では、誰がどんな政治的主張をするのも自由であり、極端な話、自民党を支持しようが、日本共産党を支持しようが、それもまたその人の自由です。

それよりも大切なことは、(B)には(B)の、(C)には(C)の、それぞれの主張を裏付ける根拠というものがあるのではないか、という視点であり、私たちの社会にとっては、どのような主張にどのような根拠があるのか、裏の狙いは何か、などの方が意味を持つことが多いのです。

当ウェブサイトの基本的なアプローチは、こうです。

誰がどう表現してもほぼ同じ内容になる情報(客観的事実)をもとに、一定の推論を加えることで、何らかの結論(主観的意見)を導き出す」。

当然、結論を出すためには推論が必要であり、そのための根拠となるべき客観的証拠をどの程度揃えられるか、推論の仮定は正しいかどうか、など、結論が妥当なものになるためには、いくつかの条件が必要です。

当ウェブサイトの場合も、時と場合に応じ、何らかの予測を立てることはあるのですが、それらの予測が結果的に正しくなかったこともあれば、結果的に大正解だったこともあります(おそらく大正解であろうと思われる典型例は『コメ不足の犯人は「パニック消費者の異常行動」だった』でも述べたコメ不足騒動などでしょう)。

そして、このような「客観的証拠をたくさん集めて来る」、「それらの証拠に対し考察を加える」、「そこから一定の仮説を導き出す」、といったプロセスは、じつは科学的な思考過程でもあります。

きっかけは15年前の総選挙

著者自身が当ウェブサイトを開始した最大の理由は、新聞、テレビを中心としたマスメディア(オールドメディア)が、社会的には非常に大きな力を持っていながら、ときとしてかなり不正確な情報を垂れ流すことで人々を混乱させ、ときとして取り返しがつかないほどの爪痕を社会に残しているという問題意識があったからです。

2009年の政権交代選挙はマスメディアが主導した―――。

これについて、ほとんどの人は異論がないかと思いますが、それではそのオールドメディアが業界を挙げて、2009年の報道が衆院選にどんな影響を与えたのか、何がどう不適切だったのかに関する自己総括が行われたという形跡はあるのでしょうか?

著者自身が知る限り、政権交代選挙からの15年間で、オールドメディアから何らかの反省の弁が聞こえて来たという事実を、ほとんど存じ上げません。

それどころか、新聞業界やテレビ業界は最近、自分たちがデマ報道で社会に悪影響を与えた問題を巡っては、本来は自分たちに責任があるにもかかわらず、あたかもその責任がインターネット(SNSなど)にあるかのごとく振る舞おうとしているフシもあります。

たとえば以前の『子宮頸癌ワクチン巡りNHKがSNSに責任押し付ける』などでも取り上げましたが、子宮頸癌ワクチンの接種を妨げた犯人が新聞、テレビを中心とするマスメディアでありながら、そのマスメディア業界からは、「デマをばら撒いたのはSNS」といった「歴史改竄」がなされてます。

これなど、オールドメディア業界がまさに腐敗し切っている証拠ではないでしょうか。

もりかけ問題にウェブサイト開設が間に合った!

その意味では、やはり2016年の時点でこのウェブサイトを立ち上げておいて良かったと、最近、とみに思います。「もりかけ問題」に当ウェブサイトの開設が間に合ったからです。

今になって思えば、ちょうど2017年の「もりかけ問題」「もりかけ騒動」あたりが、ネットとマスメディアの力関係が完全に逆転する大きなきっかけだったのではないかと思いますが、実際、安倍晋三内閣(当時)に対する支持率急落にも関わらず、同年の衆院選は自民党の圧勝に終わっています。

もちろん、2017年の衆院選の勝因は、最大野党だった民進党が事実上、分裂したことなどの影響もあったのですが、民進党が分裂するきっかけも、結局は同党の迷走にあったわけです(ちなみに民進党は民主党の事実上の後継政党です)。

民進党の代表だった村田蓮舫・参議院議員(当時)を巡って二重国籍疑惑が生じ、せっかく野党が一生懸命に安倍政権を「もりかけ問題」で追及したにも関わらず、結局は衆議院選で、民進党としてはただの1議席も取れずに終わったわけです(公認ゼロだったため)。

こうした民進党の体たらくは、結局のところ、民進党、その前身の民主党、さらにその(事実上の)前身である社会党などの時代に遡り、オールドメディアが野党を甘やかし続けてきたことの矛盾が、このネット時代に一気に表面化したことにあるのではないでしょうか。

ちなみに新聞部数の減少速度は2017年以降加速したフシがありますし、株式会社電通の調査によれば、2020年の時点でマスコミ4媒体(新聞、テレビ、ラジオ、雑誌)の広告費がネット広告費に並ばれ、直近・2023年の時点ではネット広告費がマスコミ4媒体広告費を1兆円以上上回っています。

オールドメディアの退潮は今後も続くでしょうし、下手をするとあと2~3年で大都市部以外で夕刊が消滅するかもしれませんし、来年3月以降は雑誌のコンビニ配送が激減し、雑誌も廃刊が相次ぐ可能性が濃厚で、下手をすると10年以内に新聞業界自体も消滅の危機に瀕するかもしれません。

オールドメディア消滅後の社会

オールドメディア消滅後の社会はどうなる!?

そして、新聞、テレビなどのマスメディアが消滅してしまった場合、私たち一般人は、どうやって社会の事実を知れば良いのか、という問題については、やはり気になるところです。

これは、じつは著者自身にも、まだ良くわかっていません。週刊誌や月刊誌にこれまで数百円というおカネを払って来た人々も、それがネット記事になった瞬間、おカネを払うのをためらうからです。

その意味では、ネット上でほぼ無料でさまざまな情報を取得できるようになってしまったなか、情報配信でカネを取るというのが、いかに難しいか。これは著者自身も実感している問題でもあります。

実際、当ウェブサイトも広告料収入で運営しているサイトであり、今のところ記事配信を有料化する構想はありません(技術的には不可能ではないのですが、当ウェブサイトの記事自体、正直、有料化しても現在と同じほどに読まれるとも思えません)。

これに加えて近年、検索エンジンgoogleのアルゴリズムが変更され、大手メディア以外ではないサイト(個人が運営しているブログサイトなど)へのアクセスが急落しているようであり、当ウェブサイトもそれ以来「バズ」「新規読者の爆発的流入」の発生がほとんどなくなり、長期的にアクセス数が低下している状況です。

(※もっとも、アルゴリズム変更自体が4年前なのに、現在でも一定のアクセスを保っているのは、個人的には不思議ではありますが…。)

こうしたアルゴリズムの変更は、google社なりの戦略に基づいて行われているのだと思いますが、当ウェブサイトに限らず多くの独立系ウェブ評論サイト、ブログサイトで同様のアクセス数低下が生じているようであり、これは言い換えれば、ウェブ評論空間が一種のレッドオーシャンと化しつつあることを意味するのではないでしょうか。

正直、当ウェブサイトも2016年から先行してウェブ評論を営んでいたからこそ、今でもこのアクセスを維持しているのであり、少なくとも今から新たなウェブサイトを一から立ち上げ、当ウェブサイトをもう一度ゼロから構築することは不可能でしょう。

情報源が飛躍的に増えた

ただ、こうした状況は、当ウェブサイトの読者の皆さまを含め、情報を受け取る側からすれば、非常に好ましいともいえます。インターネット広告費が激増しているにもかかわらず、ウェブ評論サイトが儲からなくなりつつあるというのは、それだけ多くのサイトが立ち上がっているということを意味するからです。

いわば、少なくとも新聞、テレビが日本の言論空間を牛耳っていた時代からすれば、私たち一般人にとって情報の入手手段が飛躍的に増えたわけであり、私たちはそれだけ多様な言論を目にすることができるようになっているのです。

こうしたなかで、次のインターネットメディアの潮流は、おそらくは①記者クラブ制度の廃止による情報源の開放、②AI(人工知能)の高度化による自動生成記事の配信、そして③情報の双方向性の、いっそうの強化ではないでしょうか。

このうち①記者クラブ制度に関しては、フランスに本部を置く民間団体「国境なき記者団」(Reporters sans frontières, RSF)が公表している『報道の自由度』でも、日本の報道の自由度を引き下げる要因として指摘されています(『日本の報道の自由度を引き下げているのはメディア自身』等参照)。

新聞社が数社、倒産し始めれば、さすがに役所、企業なども、記者クラブを通じずに直接、記者会見をYouTubeなどでウェブ配信するようになるかもしれませんし、極端な話、ウェブだとどこの誰であっても会議や会見に参加することができます。

そして、記者クラブが廃止されて情報源がオープンソース化されれば、②ニューズ配信のAI化などが進み、オープンソースや過去の類似報道事例などをもとに、記事が自動生成されてくるようになるかもしれません。

これに対し、記事の読者が記事のコメント欄(たとえばヤフコメなど)でリアルタイムに反応を寄せ、それがメディア側にもフィードバックされることで、情報の正確性と信頼性を向上させようとする動きも出て来るのではないか、などと思います。

今後はX(旧ツイッター)も主要な情報発信手段へ

ちなみに著者自身は、当ウェブサイトをいつまで続けるかについて、現在のところはまったく未定ですが、当ウェブサイト以外にも情報発信手段を持っておくべきとの考えから、X(旧ツイッター)での活動にも、今後、ある程度力を入れていくつもりです。

とりわけ、最近のXでは、プレミアム登録をし、その後の3ヵ月間のインプレッション数が500万件を超えるなどの条件を満たせば、広告収入の配分を受けることができるようになりました(具体的な条件につきましてはX社のウェブサイトなどで直接お確かめください)。

ということは、逆にそこそこ有能なクリエイターは、YouTubeやブログなどに加え、Xもまた主要な情報発信手段にすることができるようになった、ということでもあります。

こうしたウェブ上の情報発信に伴う収益は、その労力に対し、最初は微々たるものなのかもしれませんが、Xの場合は良いポスト(旧ツイート)を続けていれば、徐々にフォロワーも増え、インプレッションも増えていくのではないかと思います。

このように考えていくと、「一億総情報発信時代」は、意外ともうすぐそこまで来ているのではないか―――。

そう思わざるを得ない、今日この頃なのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    インターネット上ではなくSNS上で既存メディアが個人ブログと同じ立場で自由競争するとなった時、既存メディアはそのSNSを「権力者」として監視し、バッシングもする対象と見做すようになるのですかね?

    それとも、広告収入の配分を減らされる事を怖れ、飼い慣らされた犬となるのか。

  2. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    昔:「テレビが普及すれば、一億総白痴化する」
    私:「一億総白痴の結果が、一億総情報発信社会では」
    なるほど、昔の人は正しかったのか。

  3. 峠のクロ より:

    ウクライナ情勢で、OSINTと呼ばれる情報発信が複数あり(宇、露それぞれ)、これらを中立的、総合的に参照することである程度客観的に状況を把握できるようです。例えば、西側OSINTが宇軍がロシア弾薬庫を攻撃したと情報発信、露側OSINTがロシア○○で火災発生と報告、該当地区の衛星写真は撮影頻度を別にすれば入手できる。OSINTのOSはオープンソースなので、オープンソースの威力は大きい。

  4. はにわファクトリー より:

    「俺たちは情報のプロだ、おつむの悪い素人とは違うのだ」
    「何言ってやがる、ケツの拭けないクオリティーペーパーよりネピネピのほうが値打ちがある。こんな文章はタダ読みで十分だ」
    罵倒合戦は今日も続く。

  5. 攻撃型原潜 より:

    30年前に現在と同じ位のネットやSNSが普及していたならば、偽慰安婦についても斯くも国家間の問題となる前に霧散していたかもしれません。
    問題を作り出した「うそのしんぶん」が凋落するのは当然と思います。

    1. はにわファクトリー より:

      偽情報を見抜け
      日本の恥「うそのしんぶん」
      認識ニッポン「うそのしんぶん」
      日本語能力試験 JLPT 教材には「うそのしんぶん」
      ニッポン社会の歩き方、学びのキホンは「うそのしんぶん」

  6. sqsq より:

    1億総「池上彰」ですよ。
    ある程度の知識と常識があればWikiを活用して情報発信できる。
    もう一つは懐疑心だろうね。
    「この話ちょっとおかしくね」と感じられるようなバランス感覚。

  7. 匿名198x より:

    オールドメディアさんが、このまま事実に色をつけての報道しかしないのであれば、別の意味で価値はあると思います。
    それは、ネットと比較し、その違いを楽しむ。
    脳を使うツールにすることです。

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