宇軍ドローン攻撃許したロシアの防空体制は案外脆弱か
どうやらウクライナ軍のドローン(無人飛行機)が日本時間の日曜日までに、宇露国境から数百キロ離れた製油所や火力発電所を攻撃したようだ、などとする映像が、X(旧ツイッター)やテレグラムなどのSNSに多数投稿されています。個人的には、ウクライナ軍機の侵入を許したロシアの防空体制が意外と脆弱なのではないか、といった気もします。
ウクライナ軍のドローンがロシアの火発や製油所を攻撃か
ウクライナ軍のドローン(無人飛行機)がロシアのモスクワ州にある製油所や、モスクワ州のさらに北西にあるトベリ州にある火力発電所などを攻撃したらしい、とする情報が、日本時間の日曜日午前中から、X(旧ツイッター)のタイムラインに表示されています。
NOELreportersというアカウントが9月1日に発信した次のポストでは、攻撃は現地時間8月31日夜に行われ、合計158機のドローンがモスクワを含めたロシアの15の地域に飛来し、モスクワ州の製油所に加え、トベリ州やモスクワ州などの複数の火力発電所を攻撃した、と述べています。
Last night and early this morning, 158 Ukrainian drones attacked 15 regions of Russia, including Moscow. Targets hit include a thermal power plant (GRES) in Tver Oblast, another GRES in Moscow Oblast, and an oil refinery in Moscow, where fires broke out and were classified at the… pic.twitter.com/ZyI8SXUSHP
— NOELREPORTS (@NOELreports) September 1, 2024
ちなみに「GRES」という単語は、「火力発電所」を意味するロシア語の略だそうです。
XやテレグラムなどのSNSに投稿多数
この点、こうしたアカウントの情報をそのまま信頼して良いのか、という問題はあるかもしれませんが、冷静に調べてみたら、(誰が投稿したのかはともかくとして)とくにモスクワ州の製油所に対する攻撃については、いくつかの異なる角度から撮影したと思われる動画が確認できます。
Ukrainian drone hit oil refinery in Moscow region!
“What air defence doing?” pic.twitter.com/9gOnwAcDAi
— MAKS 24 (@Maks_NAFO_FELLA) September 1, 2024
Russia: Konakovskaya Thermal Powerplant on fire after Ukrainian drone strikes. North of Moscow on the Volga River. pic.twitter.com/vAepZ1lJtb
— Igor Sushko (@igorsushko) September 1, 2024
また、X以外でも『テレグラム』というSNSサイトでも、ウクライナのものだとするドローンの映像がアップロードされています。
特徴は攻撃の距離の長さ
今回の攻撃、もし本当にウクライナによるものだとしたら、ウクライナ側はロシアとの国境から起算して、少なくとも直線距離にして450~500㎞、最長で800㎞弱の距離を航続し、自爆攻撃を仕掛けた、ということを意味します。
また、一説によるとウクライナ側は現在、ロシアのクルスク州の一部を制圧・支配しているとされていますが、その場合であっても、自軍の支配地域から今回の「標的」まで、最短でも400㎞以上は飛行する必要がありますから、ロシア側がドローンの侵入と自国領への攻撃を許したという事実に、変わりありません。
そして、OSINTttechnicalというユーザーによれば、おそらくは民間のフライトレーダーに関する情報サイトの画面コピーとともに、「現在、時間帯、モスクワ地方へのフライトがキャンセルされている」などとする内容をポストしています(日本時間でいえば1日午前8時前)。
Large Ukrainian drone attack on Russia ongoing tonight, with more than 100 drones reportedly launched into Russian airspace.
Flights into Moscow area airports are currently holding. pic.twitter.com/yqPOrvl64J
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) August 31, 2024
これらに関しては日本でも日曜日の時点で、いくつかのメディアが「ウクライナ軍がモスクワにドローン攻撃を行った」、などと報じているのですが、やはり現地発の情報を調べていくと、色々と生々しい映像などを見つけることができるようです。
案外、ロシアの防空体制は弱いのか?
いずれにせよ、もしもウクライナが本当に自国領内もしくは占領地からモスクワ周辺に向けてドローン攻撃を行ったのであれば、いまやモスクワ全体がウクライナ側の攻撃の射程圏内に入った、という可能性を示唆するものです。
宇露国境(またはウクライナ支配地)からロシア主要都市までの直線距離は、モスクワが約450㎞弱、サンクトペテルブルクが約900㎞弱、ボルゴグラードが750㎞弱、ニジニノブゴロドまで850㎞弱、エカテリンブルグまで1800㎞程度です。
西側諸国がウクライナに無尽蔵にドローンを提供するのかどうかはわかりませんし、ウクライナが今後、無差別攻撃を行うかどうかについても定かではありません。
また、今回もロシア側の被害は(映像の派手さはさておき)あまり大きなものではない、との情報もあるなど、現時点で今回の攻撃の成果を過大評価するのは、慎みたいところではあります。
ただ、あくまでも個人的な感想を申し上げるならば、ロシアは攻めるのは得意としているのかもしれませんが、守りには極端に弱い、という可能性はありそうです。もしもロシアの防空体制は我々が思っているよりも脆弱なのだとしたら、今後の戦況予測にも影響が生じてきます。
そして、少なくとも「ロシア側の主要都市(とくに首都・モスクワ)が今後、ウクライナ側の無人機による無差別自爆攻撃に晒され得る」ということが、ロシア国民に対してメッセージとして伝わったことは間違いありません。
今後、こうした攻撃が続き、積み重なれば、ロシア側にとっても地味に大きな被害となり得ますし、戦争継続に向けたロシア国民の士気にも影響を生じて来ることは期待できるのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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ドローン攻撃という新兵器(?)、新戦術が出てきた場合、それへの対抗策が確立するまで時間がかかるのではないでしょうか。
仰るとおりで、こんな記事が出るほどです。
https://milirepo.sabatech.jp/the-germans-say-they-cant-beat-the-azerbaijani-army-drone-weapons-are-awkward/
>(ナゴルノ・カラバフ紛争では)戦闘ドローンや神風ドローンなどの兵器システムが使用されていたが、もし、我々が攻撃を受けたら十分に自衛することはできなかっただろう。防空の欠如は、軍の足を引っ張ることになるだろう。
ちなみに同紛争、奇しくもロシア(ソ連)の同盟管理能力=信用に疑問を浮かばせるものです。
レーダーで監視していたとしても、速度が遅い・目標物が
大きくないので、誤差データーとして扱われます。
もし、ドローンの可能性が高いとして、どこが(官庁として)
対応できるのでしょうか? 空軍?
多くの迎撃戦闘機はジェット化しており、対応は無理です。
バトルブリテン並みな国防部隊(音響測定・高射陣地)による
迎撃態勢しかないと思います。
それとも、ドローンを見かけたら広範囲に電波妨害?
民間に多大な迷惑がかかります。
ここ数年でドローン対策に追われる各軍の記事は度々見られますね。この場合の”ドローン”は米軍の大型高性能高価格機種などよりも、ラジコンサイズや改造品などの超低コスト戦術への対応に追われていると思います。”貧者の空軍”なる言葉が出来ているそう。
大規模で高額なアンチドローンシステムの構築(イスラエル、台湾、{意外にも}韓国などの緊張感のある地域)から、電波妨害(ソフト)と砲弾(ハード)と低価格の組み合わせで大昔のボフォース40mm機関砲を対ドローン改造したもの(インド、遺物の転用は各国にて)、ドローンキラードローンを安価で作る構想(イギリス)、シンプルに各兵士に対ドローン訓練を実施(アメリカ)などなど。
日本は自衛隊によるレーザーorマイクロ波での迎撃を研究中(対スウォーム含む)とのことですが。これらは電力が安ければ弾代(=電気代)は良いのですが、研究開発費と配備時期が……昔の対空機関砲とか残ってないですしね。
対艦ミサイルやら巡航ミサイルやらの原形が“カミカゼ”(とその戦果/戦禍)であったコトを鑑みれば、自爆ドローンはある意味先祖帰り的でありまた簡便安価な巡航ミサイルと云え…日本の防空不安やな…
原発銀座に飽和攻撃とか…
三菱のレーザー砲台に期待か…
間に合うンやろか…
現実的に長大な国境線
多数飛ばされる小型の物体を隈なく見つけることは困難かと思います。
またドローンは新技術であり、対策はこれから進歩するでしょう。
また日本も同様に脆弱だと考えます。
防空システムはどれだけの範囲をカバーできるでしょうか?
どれだけの数を保有しているでしょうか?
対空ミサイルや対空砲の弾薬はどれだけ持つでしょうか?
正直ロシアを超える防空能力を持ってる国の方が希少かと思います。
毎度、ばかばかしいお話しを。
憲法9条信者:「憲法9条がある日本は、ドローン攻撃されない」
もし、日本がドローン攻撃されても、現実逃避しそう。
ドローンだけに夢の世界にドロン
( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )
そこで私はドローンになり
夢の中へ、飛んで行くわ
飛んで飛んで飛んで、
回って回って回るう。うううー。
by忘れてしまいたい事が多すぎる某大統領
プーチンと軍部の間には深刻な不信感の谷が生まれているという情報が漏れ出ていた通り、もうロシア軍の指揮系統は壊滅しているのでしょう。それで核のカードは切られないと踏んだアメリカもハイマースでの越境攻撃を認めたとすれば納得できます。
ひょっとすると米大統領選までに停戦合意で決着が付く可能性がなきにしもあらずか…というのが個人的な感想です。
なにか過大な期待を持たれてるような。
ベレンコ中尉のミグ25は空自のレーダーが
低高度にはポンコツだと証明してましたし、たしか80年代でしたか?に少年が操縦するセスナ機が赤の広場に着陸してみせて話題になってました。
北朝鮮空軍機のなかでもっともステルスなのは木製の複葉機だ!ってのも有名なエピソードかと。
ハラを決めさえすれば、やれた目標です。
(日本ならどうするか?のモデルケースですよね)
私見ですが、クルスクまでロシア領内侵攻しても無視されている(でも核兵器使用無し)ので、ロシア国民の耳目を集めるための作戦に移行したような。
ゼレンスキーからすれば、欧米は共倒れ狙いで、決定的な支援はしてくれない。
かといって正面からではロシアに勝てない。
そろそろ強制的な幕引きが迫っている。
あと打てる手は、ロシア側の世論喚起してプーチン失脚しかない!とかね。
情報統制しているなら、身近な破壊をたくさん起こして口コミさせる。
ねずみ講社会なら、中産階級の設備や在庫を破壊して、不平不満を上に向けさせる。
戦略的には、そんなところでしょうかね。
ロシアが、どういう反撃をするか?
に注目ですね。
自国領内で自国民自国設備もろとも反撃するのか?
キエフに行くのか?
核兵器を使わなかった(ハッタリとバレた)のは、すごい痛手ですね。
今回の、ウクライナによるモスクワ地区等へのドローン攻撃については、まだ不確実性がかなり高い情報と云わざるを得ないと思いますが、石油精製や行政関連の施設等にターゲットを限定しているフシもあるようで、「無差別攻撃」という用語を適用するのは、やや早計かと思われた次第。
>少なくとも「ロシア側の主要都市(とくに首都・モスクワ)が今後、ウクライナ側の無人機による無差別自爆攻撃に晒され得る」ということが、ロシア国民に対してメッセージとして伝わったことは間違いありません。
対岸の火事などでは無い!
明日は我が身の戦火なり!
↑ロシア国民には当事国としての責務を痛感して欲しいですね。
西側メディアによる露国民向け情報発信にも期待したいですね。
ロシアによる民間無差別攻撃とは一線を画すってことをですね。
古典的ではあっても、モスクワ市内でのビラ作戦。
「情報入りUSBメモリの大量バラマキ」とかですね。
専守防衛とか言って打たれ放しに胸を張ってた我が国の防空壕もほとんど無いご立派な防衛体制でロシアの防空体制云々よりも東京は多少守れるかもしれないが、地方都市は確実に見殺しの我が国の防空体制を真剣に危惧すべきだと思いませんか?Jアラート鳴って何処に逃げるんだよ。と、皆さんは不安に思っておられませんか?
ドローン攻撃がどの程度の効果があるかは未知数の部分が多そうですね。
モスクワ市民が「これは他人事じゃない!」「いやだ、死にたくない!」と
なってくれたらプーチン政権瓦解のキッカケになるかも知れませんが……
それはさすがに望み薄かな?
むやみに紛争地域を広げるのは得策とは思えない。西側の支援は続くだろうが、ゼレンスキー大統領は自身の人種の問題もありロシア占領地域での支持率を急速に失う恐れもある。
大切なのは紛争地域の住民の支持率であり全ての住民がゼレンスキー大統領支持ではないと言う事
マジメに言うとドローン、ミサイルの飽和攻撃は西側もロシアも防げないということ。
今回、ウは100発以上のドローンを発射したという。
これにステルス・ドローンを混ぜて編隊飛行させればほぼ確実に当てることができる。
この飽和攻撃への対処は研究中であり完全な答えは出ていない。
管理人さんはロシアを過大評価していると見える。
ロシアなんて自分で攻め込んで勝った戦争なんて有史以来殆どない。ナポレオン戦争だってスターリングラード攻防したって攻め込まれて防戦したやつだし、対日参戦も敗色濃厚な日本が徹底的に弱まって参戦したやつで、これに対して自分で攻め込んだ戦争は日露戦争やアフガン戦争見たく敗北。今回の宇露戦も同じパターンでは?
クルスク逆侵攻の目的の分析の中で最近、NATO供与の兵器の使用制限(レッドライン)崩しというのを見かけるようになりました。小泉悠氏が数ある目的の一つではないかと指摘していました。
米国がレッドラインと称しているところを、ウ自身が踏み越えて見せて、「ほら、大丈夫だっただろ?」とやるやつです。米宇の過去の交渉をつぶさに見てきて、ウクライナ側はレッドライン解消に強い思いを持っているのではと感じているそうです。
長距離のATACMSの使用制限はよく言われています。
最近ウ国産で長距離巡航ミサイルの開発に成功したと、ゼレンスキー自身が公表していました。今回のドローンなどによる露国内奥深くへの攻撃も、それによってロシアの反応の程度を明らかにし、レッドラインの撤回を促すことが目的の一つとしてはそれがあるのかもしれないなと、そんな感想を持って見ていました。
ドローンという新しい兵器に攻め込まれてしまうのは
ロシアに限らず不思議ではないことで、
なんせ、分不相応に広い領土と長い国境線の
ロシアなのですから、単にこれまで
ウクライナが欧米の制止で行わなかっただけだで
ロシア防空網が脆弱かどうかが
メインの問題ではないのでは?と考えます。
ロシアの『脆弱性』が浮かび上がった
という点では、これまで
プーチンが偉大な大ロシアと喧伝に頑張りすぎ
また、ロシア国民に戦争ではなく特別軍事作戦と
作り上げてきた『虚構の脆弱性』が、
今回のウクライナ進撃で崩されそうな点
であると考えます。