【中国輸入制限】貿易統計で見るホタテの輸出先多様化
中国による水産物禁輸騒動から1年が経過しますが、輸出高は、実際のところ、どうなっているのでしょうか。本稿ではホタテを例にとり、最大の輸出相手国だった中国向けの輸出がゼロになったことで、金額は減ったものの、輸出先が多様化している様子を確認するとともに、中国などの無法国家と付き合うことのリスクについても改めて思いを巡らしてみたいと思います。
2024/08:25 14:00追記
サムネイル画像が抜けていましたので追加しています。
中国の禁輸措置
福島第一原発の処理水の海洋放出に反発し、中国政府が日本産の水産物の輸入を禁止する措置を講じた事件(『中国が日本の水産物を全面禁輸:反日デモにはご用心!』等参照)から、そろそろ1年が経過します。
中国がなぜ、このような措置を講じたのかについては、さまざまな見方がありますが、著者自身、その最も大きな狙いは「日本経済に影響を与え、それにより福島処理水の海洋放出を断念させるなど、政治的な駆け引きの材料にすること」にあったのではないかと見ています。
もっとも、その見方が正しかったとすれば、中国政府の狙いは、完全に当てが外れています。当ウェブサイトでは当初から指摘してきたとおり、そもそも日本の輸出品目全体に占める農林水産物の割合は極めて少く、したがって、今回の中国政府の措置が日本経済全体に与える影響は、極めて軽微だからです。
ホタテの例:輸出額はどうなった?
また、中国政府のこの措置に伴い、中国にホタテを輸出していた北海道のいくつかの地域では、ホタテの在庫が積み上がったりするなどの被害が生じていたことは否定できませんが、これについても国内消費増などで十分に対応が可能な水準です(『ホタテ対中輸出正体は加工貿易か:政府支援は筋違い?』等参照)。
それに、本当に良いものには必ず代替販路が見つかるものです。
貿易統計上、ホタテやその加工品の輸出数量・金額を調べてみると、たしかに2023年9月以降、中国向けの輸出はゼロになっていることが確認できるのですが、中国以外の国に対する輸出は継続されており、とりわけベトナム、韓国、台湾、米国、香港、タイなど、輸出先も分散化しています(図表)。
図表 ホタテの月間輸出額
(【出所】財務省『普通貿易統計』データをもとに作成。なお、「ホタテ」とはHSコード0307.21-000(生き・生鮮・冷蔵)、0307.22-100(冷凍・完全に殻を除いたもの)、0307.22-900(冷凍・その他)(殻付き)、0307.29-110(くん製・貝柱)、0307.29-190(くん製・その他)、0307.29-900(その他のもの)の合計を意味する)
すなわち、中国向けの輸出が減った分、完全に元通りとはいかないまでも、その他の国への輸出増が落ち込みを緩和している格好です(※どうでも良い話題かもしれませんが、香港向けの輸出が継続しているのは、個人的には意外な気がします)。
中国にとってはセルフ制裁の側面も!
ちなみに日本産のホタテの輸入が止まった中国について、日経新聞は中国が「日本に代わってアジアや南米からの調達を増やしている」、などとも報じています。
中国、日本産ホタテ「輸入ゼロ」1年 南米からの調達増
―――2024年8月24日 15:00付 日本経済新聞電子版より
事実だとすれば、何ともご苦労様なことです。というのも、中国政府の今回の措置により、中国の人民にとっては、美味しい日本産の食品が口に入らなくなるという損害を被ることになりかねないからです。
いずれにせよ、ホタテの一件については、輸出先として中国に重きを置き過ぎることのリスク、あるいは約束や国際法を守らない国(中国のみならず、北朝鮮やロシアなども含めた近隣4ヵ国など)との経済的関係を深めることのリスクを、改めて示した格好だといえるのではないでしょうか。
そして、そのことは私たちの国・日本にとって、価値と利益を共有する諸国(台湾、豪州、米国、EU、英国など)を含めたさまざまな国との関係をさらに深めることの大切さを、改めて教えてくれるのではないかとおもうし代です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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ホタテについての中国は最終消費地というより殻剥き加工地として重要だったと思います。
(殻付きを中国に輸出して剥き身をアメリカほかに出荷していた)
それで検索したらJETROのレポートがありました。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/7a41acc85494062a.html
「中国加工商売に依存するとある日突然に危機に陥る」典型例になりましたが、日本政府(自民党)も票田の一大事だから素早く対応したと思います。国内加工の立て直し、新たな加工国の発掘(ベトナムが既に軌道に乗った)など、別の産業の教訓にもなればいいですね。
全く別の製造業会社に勤めていましたが、やはり、ある日突然のリスクは大きい国です。
元々は人件費が安く消費マーケットとして巨大なのが中国のメリットでしたが、今では人件費も高くリスク対比ではメリットがかなり少ない危険な国だろうと思います。
ホタテに限らず、中国によるレアアースの輸出制限の時も日本や欧米諸国は代替の材料等を探し、結局は値崩れという結果になってました。一方、米国による中国に対する欧米先端半導体関連の輸出制限も中国による半導体分野への巨額の補助金投入による中国企業の急速なキャッチアップを招いています。もちろん、まだ全てキャッチアップされた訳ではないですが、部材によってはかなりキャッチアップされていて、禁輸の当初の目的が狙い通りになった訳でもありません。サプライチェーンの分断を招くようなこうした輸出制限はなかなか思ったような結果を出すのは難しいなと感じています。
いつもお疲れ様です。
朝令暮改というのはもともと中国の古事成語でしたか。朝に法令を出すものの、その日の暮れには改定されてしまう…その理由や過程が内輪のメンツなどしょうもないものだなんて、そのような国と商取引をするリスクが今回よくわかったのでは。どうしても中国から買わなければいけないものもあるでしょうが、極力減らす必要を痛感しました。
そして処理水放出で、中国だけでなく韓国もなんやかやいろいろ言ってくれてませんでしたか。その件で、こちらも賠償や謝罪とやらを求めることができないものでしょうか
そもそも「貨幣」と言う物が信用なくしては成り立たないのだから、
信用を裏切る様な真似をしたら商売に大きなマイナスとなる。当たり前すぎますね。
さてさて、中国は次の一手はあるのかな?
「生意気な日・台を懲らしめた!」的な ”メンツ保持国内アピール” が最優先。
たとえセルフ制裁なんだとしても、一般中国民は知る由もないんですものね。
処理水が流れていく三陸沖や北海道沖で漁をするなとのアピールは、薮蛇ですかね。
普段テレビを見ませんが、夏休みで実家に帰ったらテレビがついててNHK見てたので、眺めてたらたまたまこのホタテのニュースをやってました。
内容はここに書いている事とほとんど変わりませんでしたが、違う点があるとすれば、「処理水放出で中国様が怒っているぞ」「処理水を放出するとは、なんて日本は悪いことをしているんだ」と言っているように聞こえました。(個人の感想)
理由は、中国の輸入がゼロになったことと、その分の販路をまだ確保できいない事、その分の210億円の輸出減を殊更強調していて、処理水を放出するからこうなったんだよ、って感じだったから。
やっぱりNHKも含めてテレビの情報って何かしらの刷り込みがあるなと思いました。テレビを見なくなって本当によかったと実家に帰って思い直しました。
最後に、もっと酷いと思ったのがアメリカ大統領選挙の報道。
民主党のアピールばかりやっている。ホント、〇ソだと思いました。
道民ですけれどスーパーでのセールでもホタテが安くなっているという実感はありません。中国被害アピールされてもオホーツク側のホタテ御殿の画像を見るとあまり同情する気もわきません(中国ベッタリで儲けたのですから)。国内貝柱加工がHACCP対応(適切な貝殻や内臓廃棄処理)でコストがかかるので中国へ貝殻付きで輸出しそれから貝柱加工し消費国へ輸出するのですから。今は補助金を使って加工工場を建設しているところです。