「対ロシア制裁を解除しろ」の詭弁
「ロシアに対する経済制裁は、ロシアにはほとんど打撃を与えていないだけでなく、西側諸国自身にとって経済を疲弊させるなどのマイナス効果をもたらしている。もう、ロシア向けの制裁など、止めるべきだ」―――。ネット空間では、こんな荒唐無稽な主張も出て来ているようです。ただ、せっかくの機会ですので、「なぜ経済制裁を行う必要があるのか」について、改めて振り返ってみたいと思います。
目次
経済制裁不要論
二次的な経済制裁の意味
『ウクライナ支援…G7がロシアに対する二次的制裁強化』では、米国やG7諸国がロシアに対する経済制裁を強化する流れの一環として、ロシアの軍事力強化に協力する、「中国など第三国」の法人・団体等に対する二次的制裁(セカンダリー・サンクション)の実施強化を公表した、とする話題を取り上げました。
といっても、今回の制裁でまったく新たな措置が始まった、という話ではありません。
2022年2月にロシアがウクライナに対する違法な軍事侵略を開始して以来、西側諸国は外貨準備資産を含め、すでにロシアの外貨資産などの凍結措置を継続しているからです。
これに加えて自動車や航空機、船舶といった輸送用機器を含め、さまざまな物資に関する輸出規制も課せられていますし、日本政府は昨年、ロシアに対する中古車等の輸出制限措置を講じたりもしています(『日本のロシア向け中古車輸出が前月比で3分の1に激減』等参照)。
正直、ロシアに対する厳格で強力な制裁措置は、すでに適用されています。今回の第三国に対する二次的な制裁措置「だけ」によって今までと比べて、ロシアにとっての戦争遂行能力に、なにか根本的な差が出て来るとも思えません。
経済制裁無用論の詭弁
ただ、それでも今回のセカンダリー・サンクションは、ロシアに対する西側諸国の一致団結した厳格な制裁を補強し、実効性を高めるものである、という意味においては、大変に有益なものでもあります。
そして、「木を見て森を見ず」、ではありませんが、報道発表のごく一部分だけを切り取って、「こんな制裁にはまったく実効性も意味もない」などと言いだす人の多くは、たいていの場合、何らかの「意図」を持っているものです。
ここでひとつ気を付けなければならないのが、「経済制裁無用論」です。
これは読んで字のごとく「ロシアに対して経済制裁を加えたところで、まったく意味がない」、「むしろ制裁を加えている西側諸国にとっても損害が大きい」などとするものであり、たいていの場合、暗に「現在のロシアに対する経済制裁を解除せよ」とする主張を伴っています。
いわば、こんな主張でしょう。
「ロシアは資源国であり、経済制裁にもかかわらず、ロシア国民の生活はまったく苦しくなっていない。日本のロシアに対する制裁措置は、ロシア経済にほとんど打撃を与えられていないのに加え、日本経済にも大きな悪影響を与えている。こんな無意味な制裁、さっさと解除すべきだ」。
このあたりが詭弁であることについては、改めて指摘しておきたいと思います。
経済制裁の7つの態様
ただ、これについて考える前に、経済制裁の態様を振り返っておきましょう。
当ウェブサイトでは常々、経済活動を「ヒト、モノ、カネ、情報の往来」という側面に分解し、経済制裁とは次の7つの態様を指す、と指摘してきました。
経済制裁の7つの態様
- ①自国から相手国に対するヒトの流れの制限
- ②自国から相手国に対するモノの流れの制限
- ③自国から相手国に対するカネの流れの制限
- ④相手国から自国に対するヒトの流れの制限
- ⑤相手国から自国に対するモノの流れの制限
- ⑥相手国から自国に対するカネの流れの制限
- ⑦情報の流れの制限
(【出所】当ウェブサイト作成)
このうち①と④が「ヒトの流れの往来制限」、つまり自国民の相手国への出国や、相手国民の自国への入国などに制限を加える措置であり、②と⑤が貿易の制限措置、③と⑥が資本規制や支払制限などを指します。また、⑦としては、たとえばメディア記者の追放・引き上げやネット回線の切断などが挙げられるかもしれません。
ただし、ここに挙げた7つの項目については、必ずしもそのすべてを実施できるとは限らないことに加え、実施しても意味がない措置や、実施すると自国経済にも打撃が生じるような措置なども含まれています。
とくに日本は法治国家であり、経済活動は自由が原則であるとされ、経済制裁措置も外為法などの法律で発動条件がかなり限られているため、ロシアなどに対する制裁措置も、おのずから選択肢が限られてしまっているのです(その他のG7諸国も状況は似たようなものです)。
たとえば、上記①(この場合は「日本からロシアへの渡航制限」という措置)については、日本の側から講じることはできません。日本政府が出国する日本人に対し、特定国への渡航を禁止するという法律もなければ、物理的に個々の日本人を監視することもできないからです。
海外旅行に行ったことがある方ならご存じかもしれませんが、日本人が出国する際、審査官に渡航先を書いて提出する義務などありませんし、帰国する際も、今回の旅行でどこの国を訪れたかを逐一申告する必要はありません(せいぜい『携帯品・別送品申告書』の提出義務があるくらいです)。
このため、日本が経済制裁を適用している相手国―――たとえば、ロシアに加えて、イラン、北朝鮮など―――に渡航したとしても、それが国にバレてしまうことはほとんどありませんし、仮にバレたとしても、「いきなり逮捕されて強制収容所送りにされる」、といったことはあり得ないのです。
(※というよりも、日本にはそもそも「強制収容所」自体が存在しませんが…。)
そもそも日露間の経済関係って重要なんでしたっけ…!?
さらにいえば、法的には発動可能だとしても、現実に発動してもあまり意味がない制裁措置というものもあります。
その典型例が、上記⑥(この場合は「ロシアから日本への新規投資の制限」という措置)でしょう。
ちなみに日露双方の「ヒト、モノ、カネ」の関係を探っていくと、データがあるものとないものがあるわけですが、データがある項目に関していえば、正直、隣国同士とは思えないほどに交流が乏しいのが実情です(図表)。
図表 日露間の「ヒト、モノ、カネの流れ」
比較項目 | 具体的な数値 | 全体の割合 |
訪日ロシア人(2024年1月~4月) | 27,449人 | 訪日外国人全体(11,601,202人)の0.24% |
訪露日本人 | データなし | 不明 |
ロシアに在住する日本人(2023年10月) | 1,003人 | 在外日本人全体(1,293,565人)の0.08% |
日本に在住するロシア人(2023年6月) | 11,378人 | 在留外国人全体(3,223,858人)の0.35% |
対露輸出額(2024年1月~3月) | 641億円 | 日本の輸出額全体(25兆0513億円)の0.26% |
対露輸入額(2024年1月~3月) | 2495億円 | 日本の輸入額全体(26兆8138億円)の0.93% |
対露貿易額(2024年1月~3月) | 3136億円 | 日本の貿易額全体(51兆8651億円)の0.60% |
邦銀の対露国際与信(2023年12月) | 56億ドル | 邦銀の対外与信総額(5兆0435億ドル)の0.11% |
ロシアの銀行の対日国際与信(2023年12月) | データなし | 外銀の対日与信総額は1兆2681億ドル |
日本企業の対露直接投資残高(円建て)(2023年12月) | 6715億円 | 日本の対外直接投資全体(288兆8913億円)の0.23% |
日本企業の対露直接投資残高(ドル建て)(2023年12月) | 47億ドル | 日本の対外直接投資全体(2兆1357億ドル)の0.22% |
ロシア企業の対日直接投資残高(2023年12月) | 0.5億ドル | 日本の対内直接投資全体(3506億ドル)の0.01% |
(【出所】日本政府観光局、外務省、法務省、財務省税関、国際決済銀行、財務省、JETRO)
たとえば、近年、ロシアを訪れた日本人観光客等の正確な人数は不明ですが、少なくとも日本を訪れるロシア人の人数は非常に少ないのが実情です。今年1月から4月に日本を訪れた外国人の総数は1160万人ですが、このうちロシア人は27,449人と、全体の0.24%(!)に過ぎません。
また、外務省のデータによればロシアに在住する日本人は昨年年10月時点で1,003人に過ぎず、これは在外日本人全体(1,293,565人)の0.08%で、その一方で法務省によれば日本に在住するロシア人は昨年6月時点で11,378人、在留外国人全体(3,223,858人)の0.35%に留まります。
これに加えて日露貿易高も低調で、日本のロシアからの輸入額は、日本の世界全体からの輸入額の1%弱に過ぎず、日本のロシアへの輸出額に至っては、日本の輸出高全体の0.26%に留まります。邦銀の対ロシア融資も無視し得るほどに少ない考えて良いでしょう。
さらに驚くのが、投資面での関係の薄さです。
そもそも日本は世界最大の債権国ではありますが、諸外国からの投資の受入残高はあまり多くなく、たとえばJETROのデータによれば、2023年12月末時点における対外直接投資残高は2兆1357億ドルに達しているのに対し、対内直接投資残高は3506億ドルに過ぎません。
このうちロシアとの関係でいえば、日本企業の対ロシア直接投資は約46.6億ドル(つまり日本全体の投資残高の0.2%)に過ぎませんが、ロシア企業の対日投資は5028万ドルと、ケタが飛びぬけて小さいのです。
このため、ロシア企業の対日投資を制限したとしても、現時点でさほどの実害は生じませんし、そもそも日本は銀行も企業も(いわゆるサハリンⅡなどの大型プロジェクトを除けば)ロシアに対してほとんど投融資を行っていないことを忘れてはなりません。
このため、上記の「経済制裁の7つの類型」とは、「経済制裁にはこれらの類型があり得る」という一般論を示したに過ぎず、それらのすべてが現実に発動できるというものでもなければ、それらのすべてを発動しなければならないというものでもないのです。
(といっても、経済制裁には「現時点で大して影響はなくても、将来的な脱法の可能性をも塞ぐ」という意味もありますが…。)
それでも経済制裁は必要だ
経済制裁解除論は明確な誤り
以上を踏まえて、改めて問いかけましょう。
日本を含めた西側諸国のロシアに対する経済制裁措置は、ロシア経済にまったく影響を与えておらず、やっても意味がない代物だったのでしょうか?そして、日本などはロシアへの経済制裁措置を、解除しなければならないのでしょうか。
結論からいえば、これは誤った主張です。
もちろん、経済制裁は万能ではありません。経済制裁とはあくまでも「経済的な手段を使って相手国に打撃を与えること」であり、相手国への締め上げ手段のひとつに過ぎません。
しかし、それとともに生産手段などの供給制限はロシア経済の体力をじわじわと奪い、戦争遂行能力を着実に低下させるものでもあります。
ここで、先ほどのこんな主張を振り返ってみましょう。
「ロシアは資源国であり、経済制裁にもかかわらず、ロシア国民の生活はまったく苦しくなっていない。日本のロシアに対する制裁措置は、ロシア経済にほとんど打撃を与えられていないのに加え、日本経済にも大きな悪影響を与えている。こんな無意味な制裁、さっさと解除すべきだ」。
このあたりは、ロシア国内の統計データ(インフレ率や政策金利など)で見て、「ロシア国民の生活がまったく苦しくなっていない」とする主張が正しいかどうかは微妙でしょう(たとえばルーブル安やインフレなどの影響もあり、ロシア中銀の現在の政策金利は16%です)。
しかし、そもそも論として、日露両国の経済関係は極めて希薄であり、「日本の対露経済制裁で日本自身にも経済的打撃が大きい」とする主張が虚偽であることは明らかです。
また、日本はエネルギー資源の輸入により、とくにここ2年あまりは巨額の貿易赤字を計上している状態ですが、それは「日本の対ロシア制裁」が原因ではなく、「ロシアのウクライナ侵略」が原因です。
このあたり、「ロシア・フレンズ」(?)の皆さまは多くの場合、論理的思考力が極端に弱く、数字や事実関係を調べる能力も異常に低いようで、目に見える数字を無視したり、都合よくつまみ食いしたり、それらの数値の解釈が間違っていたりすることはよくありますので、仕方がない話かもしれません。
余談ですが、こうした陰謀論者の皆さまは、怪しげなネット情報などにはすぐ飛びつくわりに、国際決済銀行などの公的機関が発表する情報を無視・軽視したり、酷い場合はこれらの数値が「捏造だ」と言い出したりするようですので、正直、まともに相手をするのも疲れるというのが実情でしょう。
もちろん、日本は言論が自由な国ですので、「ロシア制裁で西側諸国の経済が疲弊している」などと主張するのも自由です。ですが、そう主張するなら、その具体的な証拠を出してほしいところで、できれば主成分分析なども行っていただきたいと思うのですが、これも正直、かなわぬ夢、といったところでしょうか。
北朝鮮の事例で見る経済制裁
さて、余談はともかく、こうした経済制裁自体に対し、「相手国に効いていないから止めるべき」、という主張は、やはりいかがなものかと思います。
もちろん、北朝鮮制裁のように、日本や米国など西側主要国が一致団結して厳しい制裁を課しているにも関わらず、相変わらずミサイルをバンバン撃って来る、といった事例はあります。
これに関しては「制裁が効いているのなら、なぜ北朝鮮はミサイルを撃って来るのか」、といった反応があることは事実です。
これに加えて先日の『韓国の「違法送金ブローカー」による北朝鮮送金横行か』などでも取り上げたとおり、『アジアプレス・ネットワーク』というウェブサイトに掲載されている『<北朝鮮>市場最新物価情報』というページの情報が正しければ、経済制裁を受けているわりには、北朝鮮の物価は異様に安定しています。
日本と比べてガソリン・軽油の価格が少し高めですが(これも経済制裁の影響でしょうか?)、白米だと1㎏100円ほどであり、体感的には日本のざっと3分の1ないし4分の1程度で、コロナ前と比べ多少値上がりしているにせよ、「国民の大多数が今すぐにでも餓死する」という状況ではありません。
もちろん、日本と北朝鮮では国民の所得水準がまったく違うため、日本国民の感覚で北朝鮮の物価を論じることはできませんが、それでも「北朝鮮経済は崩壊する」などといわれているわりに、何となく、崩壊していないようにも見えてしまう、というわけです。
では、このデータをもって、「北朝鮮の経済は崩壊していない」、などとしたうえで、「北朝鮮への経済制裁は意味がない」、などと結論付けて良いものでしょうか。
これも結論からいえば、正しくありません。
北朝鮮が国内の実情をほとんど外に漏らさない国であるという点は脇に置くにせよ、そもそも北朝鮮に対しては、中国とロシアがなかば公然と支援を行っているのは周知の事実ですし、数年前、北朝鮮からの出稼ぎ労働者に対する国連制裁が強化されたにせよ、北朝鮮に協力する国は、世界中にまだ数多いのです。
対北朝鮮制裁で核・ミサイル開発を遅延させた可能性は?
くどいようですが、経済制裁は万能ではありません。
経済活動は人間の活動と同じであり、必ず制裁には穴がありますので、制裁を受けている側としては、その制裁の穴を探るような動きをするのは当然のことですし、経済制裁でヒト、モノ、カネの流れを100%完全に止めることなどできないのです。
というよりも、もしも北朝鮮に対する経済制裁がなされていなかったと仮定すれば、北朝鮮による大量破壊兵器の開発速度は、もっと速かった可能性すらあります。
そういえば、北朝鮮は2006年10月9日を皮切りに、確認されている限り、数年に1回のペースでこれまで6回の核実験を行ったとされていますが、最後に核実験を行ったと見られているのは2017年9月3日のことであり、それ以降の核実験は確認されていません。
もし核実験が行われれば、日本の優秀な気象庁が「自然のものではない可能性がある地震」を速やかに観測し、震源地を正確に特定することでしょう。
2020年以降はコロナ禍で北朝鮮が中国との国境を閉鎖するなどしたなどの事情もあったのでしょうが、少なくとも核実験を実施できない程度の状況ではあったことは間違いなさそうです。
これが西側諸国による経済制裁の影響なのか、それともなにか他に要因があるのかについて、軽々に断定するには慎重であるべきでしょうが、いずれにせよ、北朝鮮に対する経済制裁が「まったく機能しておらず」、「むしろ日本経済に悪影響を与えている」から「制裁を解除せよ」、は、言い分としては奇妙です。
むしろ、そのようなことを口にする者は、北朝鮮制裁が厳格なものであることを理解しているからこそ、総発言しているのではないでしょうか。
もしも日本がなんら経済制裁措置を課していなかったとしたら、北朝鮮はかつてのように、朝鮮総連などを経由して日本から資金をジャブジャブと吸収していたでしょうし、万景峰(まんけいほう)号は新潟港などに出入りし続け、日本からさまざまな物資が北朝鮮に渡っていたことでしょう。
「特定船舶入港禁止法」などが存在せず、北朝鮮に対する輸出入規制や入国制限措置などが発動されていなかったとしたら、下手をすると北朝鮮はとうの昔に核保有国になっていたかもしれず、また、韓国も赤化統一の憂き目に遭っていた可能性すらあります。
いずれにせよ、「経済制裁はまったく効いていない」だの、「むしろ経済制裁を実施している国に打撃が生じている」だのといった言い分には、よく注意しなければなりません。
ロシア・フレンズが思いつかない経済制裁の欠点
ただし、「経済制裁はよく考えて発動しなければならない」、という点については、その通りでもあります。
先ほどから指摘している通り、経済活動、とりわけ「ヒト・モノ・カネの交流」は、人間の活動そのものでもあります。
たとえばロシアに対する経済制裁は、米国、欧州連合(EU)、日本、スイス、豪州、ニュージーランド、シンガポール、台湾、韓国などがほぼ歩調を合わせて発動したものですが、これらのなかに1ヵ国だけ「抜け駆け」し、ロシア制裁に参加しない国があったとしたら、どうなっていたでしょうか。
現実にはあり得ない話ですが、たとえば日本がロシア制裁に参加していなかったとしたら、おそらくは日本の対ロシア貿易、対ロシア投融資が世界でも突出していたはずですし、また、ロシアの銀行はこぞって日本のメガバンクをコルレスバンクに選んでいたことでしょう。
中国の通貨・人民元の決済比率が世界中で高まっていることは事実ですが、それと同時に、やはり人民元の外貨準備通貨などとしての使い勝手は非常に悪いのが実情であり、仮にハード・カレンシーの一角を占める日本円が使いたい放題だったならば、ロシアは遠慮なく、日本の金融システムに依存していたはずです。
これを日本の側から見たら、ロシアが世界を相手に行っている取引が、日本の金融規制当局に筒抜けになる、ということです。
これが、経済制裁を実施しないことの、数少ないメリットのひとつでもあります(もちろん、現実問題でいえば、日本が対ロシア制裁に参加しないことのデメリットは、こうしたメリットを大きく上回りますので、「日本はロシア制裁に参加しない」という選択肢は存在しないわけですが…)。
残念ながら、「日本はロシアに対する経済制裁をすべきでない」と主張する人から、こうした視点に基づく指摘を聞くことはありません(というよりも、そのような主張をする人たちは、そもそも「コルレス」などを含めた国際送金の仕組みを理解していない可能性が高そうです)。
制裁で見る共食い整備
さて、経済制裁といえば、欠かせない論点のひとつが、「共食い整備」です。
ここに1枚、興味深い航空写真があります。
これは、イランのメヘラーバード国際空港の写真です。
じつは、イランは国際的な経済制裁の影響で、航空機の備品の輸入が滞っているらしく、国内線に利用されている航空機は、いわゆる「共食い整備」の成れの果てではないかと指摘する人も多いようです。
この点、ロシアの場合はまだ航空産業などがある程度残っているため、西側諸国などから機材、部品などが入荷しなくても、なんとか国産化で間に合わせてしまうことが、できなくはありません。
ただ、メーカーの純正品ではない部品による整備は、やはり、大変に危険でもあります。
考えてみれば、現在、ロシアからは航空機の部品だけでなく、国際クレジットカード・サービス、マクド、コーラ、KFC、丸亀製麺などの食品、コンサルティング・サービスなど、西側諸国の便利で快適なさまざまなサービスが完全に撤退してしまっています。
こうした状況で、「経済制裁はロシアに効いていない」、あるいは「経済制裁の影響は西側諸国の方が大きい」、は、さすがに無理があります。
いずれにせよ、ロシアがウクライナ侵略の意思を完全に捨て去る(あるいはロシアが再起できない程度に戦争で惨敗する)日が来るまでは、日本政府にも堂々と、対ロシア制裁を継続していただきたい、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
ロシアも中国も,ネットを通た日本の世論誘導を常態的に試みています。また,ハッキングも軍事組織が行っています。TikTokやLINEなどでビッグデータ解析などを利用した情報収集をすることも可能です。民間人レベルだとフィッシング詐欺が常時行われています。個人が用心した程度では対処が難しいレベルかもしれません。
ただ,ロシアと中国が手を組むと,日常品レベルでの経済制裁は難しいでしょう。中国は過剰生産品を抱え込んでいますから。あとは,ハイテク製品の締め付けがどこまで効くかです。
しかし,例えば,液晶パネルは中国の世界シェアが6割で,欧米も中国製部品に依存している構造からなかなか脱却できません。シャープが液晶パネル生産を止めたのは欧米の安全保障にもマイナスだったのでは。残りは台湾と韓国依存ですから。ドローンについては,中国はロシアへの輸出を自主規制しています。
そういえば河野デジタル大臣が中国系にソフト開発を依頼しているとか
LINのソフト開発も一部を中国で行っていましたねえ
この界隈は中国に対する危険性をあえて無視?してるのか
WW2での情報戦の負けが大きく影響しているのを忘れていないか?
>純正品ではない部品による整備は、やはり、大変に危険
「輸出規制ガー!」←ただの輸出管理です
と吠えていた国およびそのシンパとかぶりますね。
天然資源や農産物は豊富にあるかもしれないが、
「川上産業」も整備も貧弱な点は同じだと思います。
やはり気になっていることは表に出てしまうのですね。
謀略の一つだと考えた方がいい。
「制裁は効いていない」=実はすごく痛い、すぐやめてほしい
「日本経済に大きな悪影響を与えている」=そうであってほしい
>現在、ロシアからは航空機の部品だけでなく、国際クレジットカード・サービス、マクド、コーラ、KFC、丸亀製麺などの食品、コンサルティング・サービスなど、西側諸国の便利で快適なさまざまなサービスが完全に撤退
↑この中に、JT(日本たばこ産業)の名前が無いんですよね。
https://www.sankei.com/article/20240117-6Y5J4YC7XREWRAVGN5HX42PYZI/
>ロシア市場でJTIはシェアトップの36・6%(22年)を占める。JTIのロシアでの納税額は非公表だが、【【ロシアの国家歳入に占める割合は約1・4%(20年)】】とみられる。
>ロシアの侵攻に伴い(日本)政府はウクライナに約4000億円の無償資金援助を供与
>JTはそれに匹敵する納税でロシアの経済財政を支援している。
筆頭株主(財務大臣)の意向しだいなのでは?
撤退の判断を現場に丸投げしないでください。
>「ロシア制裁で西側諸国の経済が疲弊している」
欧州の事例を見てはいかがか?
特にドイツ―ロシア間で「ご自慢の」7態様分析をされてみるとよい。
すぐに答えが出ますよ。
>「相手国に効いていないから止めるべき」
私はそんなこと一言も言ってませんが。
むしろ親ロ派は経済制裁は逆効果なんだからずっと続けろ、と主張しています。
>西側諸国などから機材、部品などが入荷しなくても、なんとか国産化で間に合わせてしまうことが、できなくはありません。
ずいぶんと航空機にこだわりがあるようで。
ロシアの航空機のエンジニアリングは中国がフォローしています。
普通に戦闘機、航空機が就航していますね。
このあたりは以前記事にされていませんでしたか?
ロシアよりむしろ米国ボーイング社の航空機の方がよほど問題、危険でしょう。
https://x.com/atrupar/status/1802108477889802466
トランプは大統領就任前に戦争を終わらせると公言しています。
NYT「プーチンは条件提示をしトランプはディールで戦争を終わらせる」
トランプの勝率は50%でしょう。
私が見るにウ応援団はトランプの存在が見えていないようです。
ウクライナ応援団の皆様はトランプの大統領就任についてどう考えているのでしょうか?
まさかとは思いますが、バイデンの方が優れているとでも考えているのでしょうか?
ぜひ聞いてみたいところです。
>欧州の事例を見てはいかがか?
特にドイツ―ロシア間で「ご自慢の」7態様分析をされてみるとよい。すぐに答えが出ますよ。
あなたが主張しているのだからあなたがその答えを示しなさい。証拠を示すのは主張する側の人間にあります。
それとも出来ないのかな(^^)
>私はそんなこと一言も言ってませんが。
本記事でもアオキさんの発言だとは書かれてないので違うと思います。
こちらのブログへのコメントへの指摘・反論の場合はその旨明示されます。今回はネット上の一般的な「ロシア・フレンズ」な方々の陰謀論を取り上げていると思います。
アオキさんはロシア・フレンズなんですか?
アオキさんはこちらのコメント欄の方々を「ウクライナ応援団」とレッテル貼りしますが、少なくとも私はアオキさんを「ロシア・フレンズ」呼ばわりしたことはなかったんですけどね。
グローバルザウスってどんな恐竜だったんですか?
私は「ロシアとウクライナのどっちが勝つかまるで分からない」派なので、
ウクライナ応援団に当てはまらないかも知れませんが、お答えしましょう。
ロシアへの経済制裁で欧州各国が疲弊しているのは事実ですから、
これはもうただの我慢比べですね。欧州人が「ロシアを没落させるチャンスだ」と
意地を張り続けられるか、それとも根を上げてしまうか……
その点では最も体力がありそうなアメリカがトランプ大統領再誕となったら
ウクライナ支援をやめてしまいそうなのは不安材料ですね。かと言ってバイデンも
頼りない。ここは正直、なる様になると割り切るしかありません。
ただ、それでも私は別に悲観していません。
「今のアメリカとロシア、どっちに住みたい?」
この問いの答えがアメリカである限り”国力”と”国民の幸福度”で雲泥の差があり、
国家の持続性と未来の明暗がくっきりと分かれる。私はそう判断しています。
あなたは今のアメリカとロシア、どっちに住みたいですか?
それとあなたの「7態様分析」、期待していますね。
>あなたは今のアメリカとロシア、どっちに住みたいですか?
鈴木宗男、原口一博、に聞いてみよう!
それと、最近、当サイトに出没する、アオキさん。
>あなたが主張しているのだからあなたがその答えを示しなさい。証拠を示すのは主張する側の人間にあります。
私は昨日のロシア記事のコメント欄に経済制裁はセルフ経済制裁、ロシアより西側が疲弊していると書き、その後に
「欧州にとって経済制裁がセルフ経済制裁になっている。
ロ産PLガスを減らし中東、米国から3~4倍でLNGガスを輸入。
インドからロ産原油、石油製品を20ドルのマージン付きで輸入。
何がやりたいのかと。
これに加えて脱炭素政策の失敗が追い打ち。
ロの脅威のため徴兵制を復活させ軍事費の割合を上げていくとのこと。
欧州は完全に自壊に向かっている。」
と書きました。
欧州の事例と答えはすでに昨日のうちに書いています。
その上で具体的証拠、主成分分析、7態様分析を言うのなら、ご本人様が納得いくまでなされるのがスジでしょう。
元雑用係氏
ご丁寧な説明ありがとうございます。
一言一句完全にその通りで納得いたしました。
以降、ここでレッテル張りをすることはやめにします。
繰り返し、ありがとうございました。
雪だんご氏
>あなたは今のアメリカとロシア、どっちに住みたいですか?
私には極左活動家として日本社会を極左化するという崇高な使命があります。
その私にはどの国に住みたいか?などと考えることは許されません。
よって答えは日本にしか住めない、となります。
>それとあなたの「7態様分析」、期待していますね。
私の分析は上に書いた通りです。
信用を無くした商売は長続きしない。
ロシアも中国も同じこと。本邦にあってはそのうち新聞 TV がそうなります。
そろそろ三次制裁の段階なのでは?
“2次元制裁”の方がRussianオタクを刺激して…
ナンセ若人が“転生”試みる社会らしいですから(鬱)
日本で疲弊している業者の中には中古車の輸出業者もいるかもですね。聞くところによる、外国人がやってるのが多いみたいですが。
>「ロシア・フレンズ」(?)の皆さまは多くの場合
立憲の原口○博氏のツイート見てると、DSやら反ワクやら、もはや何を言ってるかわからない領域に到達してます(松下政経塾出身)。
先日のUFO議連の記者会見関連で、会見前の議員同士の些細な雑談がなかなか強烈でした。
https://x.com/a2487498/status/1799039219375157267
外交でも同盟の弱い輪(K国とか)を攻撃しますが、敵対国の世論工作も同じで「弱い」ところを突くのだと思います。「何が」弱いかはまあ・・・
石丸市長の安芸高田市での動画を、ここ一年間ほどウォッチしてきましたが、
「政治家はバカ」
という思いが強くなりましたね。
僕の肌感覚としては、学年で成績トップとか、生徒会だとか、委員長だとか、クラブ活動の部長だとか、
「学年内で、できる奴」
は、実業やスポーツ方面(要するに金儲け)の方に進んでます。
そちらの方面から社会に関わった方が、効率的に自己実現できるから。
自分の肌感覚でなくとも、他の学年や父の世代の人たちを見渡してもそうじゃないのかな。
アホか、変わりモンが、政治家に進んでるような?
(今の議員で民間企業で使い物になるのは何割くらいか?)
ほんと、年収1億くらい用意して、上場企業の経営者や師団長クラスの意志決定&実行力のある人に首長をやってもらった方が、住民にはコスパがよい気がしますよ。
アホに任せたら、人件費だけ消費されて何にも進みませんから。
それだけ政治家が 「割に合わない職業」 になっているという事でしょう。ホントは世襲議員を批判するより、政治の世界に新規参入がないことに危機感を持つべきなんですよね。新規参入がないから、世襲議員が多くなるんだから。
地方議会では、候補者の数が議員定数より少なくて 「無投票で全員当選」 なんて事もザラに起きています。そういう自治体では 「議会を置かず、インターネットを利用した直接民主制」 を真剣に検討すべきじゃないかと思います。直接民主制自体は、現行法でも可能なようですから。
町村総会 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BA%E6%9D%91%E7%B7%8F%E4%BC%9A
>それだけ政治家が 「割に合わない職業」 になっているという事でしょう。
割に合うと思ってやるのは政治家ではない。利権を求めてやるのを政治屋という。
これだけ、教育が高度になり職業選択の幅が拡がれば、政治屋になって危ない利権を漁るよりも大きな収入を得るチャンスは、他の分野で多々ある。選挙の度に、頭を下げるのは嫌だ。
必然的に、政治屋でもやるしか無いものが集まってくる。
今や、定年退所者に、定年後は地方議会議員になりましょう、という本まで出ている。
そこそこ名の通った大企業の役職者でもやっていた経歴があれば、箔が付くから大丈夫。東大でも出ていれば、高位当選が出来る。
それで、当選すれば議会で居眠りしていても大丈夫。
イシマルみたいに、自分の権力を傘に弱い者イジメする市長なんていないから。
制裁されて「あぁ痛い、効いてる」と言うバカがどこにいる。
何か、ドイツが原発全停止するのを待っていたかのような、侵攻タイミング。
制裁は、西側にも効く。これは当たり前のことで、交流があり、その交流を止めることで制裁効果を狙うのだから、元々、交流が無ければ制裁もあり得ない話。だから、交流を止めれば、止めた側にも影響は出る。
制裁は、肉を切らせて骨を断つ、ことを狙う訳だから、自分の方が優越していると考えるから行う。
まあ、やっぱり、「敵性」国家を援助しちゃいけない。西側は、「衣食足りて礼節を知る」とでも思っているのか、人類の進化説を信じて「豊かになれば人間民主的になる」とでも思っているのか、いろいろ援助をするけれど、どうも、ね。
経済制裁の有効、無効を論じる諸説を見ていて感じるのが、いずれの立場をとっているにせよ、多くの場合、その判定基準はあまりに国際間のパワーポリティックス的なものに偏っているという不満です。肝心なのは、その国に暮らす一般的国民、庶民の生活が、それによってどうなるかという点だと思うんですがね。
太平洋戦争の末期、日本全国の都市に対しておこなわれた非戦闘員が暮らす地域への無差別爆撃、広島長崎への原爆投下など、米国がおこなった行為は、戦時において許される範囲を、当時としても明らかに超えた、明確な犯罪行為でした。にも関わらず、歴史上初めて蒙ったGHQによる異民族支配という屈辱を経験してさえ、多くの日本人が米国に深い恨みを抱くことはなかった。この事実は、国民を無謀な戦争に動員するために行われた、特高警察等による苛烈な思想、言論統制を伴った、国家総動員体制の締め付けとその結末が、国民にとって如何に災厄であったかということに尽きると思います。連合国軍を「解放軍」などと歓迎したのは、弾圧下にあった共産党員くらいのものだったのでしょうが、ほとんどの国民にとって、敗戦は息苦しく経済的にも困窮を極めた日常から解き放たれる福音であったことは、間違いない事実だったでしょうから。
「われわれはちっとも困ってない」と強がることを目的にしたロシアの諸統計、対外宣伝などを信用しての経済制裁無効論など、いちいち相手にしていても仕方がないでしょう。また多くのロシア寄りの言説が強調する、膨大な地下資源、豊かな穀倉地帯を抱える「客観的」事実にしたところで、それを経済的価値として実現するところまでもっていくのは、その国に住む人間です。ただでさえ減少傾向にあった人口を、数十万人単位で戦地で惜しげもなく消耗し、この国に見切りを付けた百万とも言われる人間が国外に逃散し、国内に残る労働力を、国民の日常生活には何ら寄与しない軍需品の生産に動員する。これ考えれば、今でさえ苦しいはずが、これ以上戦争を続ければこの国に住む人間がどうなるか、ロシアンフレンズと言われる人達は、それくらいの想像力も持ち合わせない人間揃いってことなんでしょうか。
ロシアという国は、30数年前にソ連邦崩壊というクラッシュを経験しています。これに比べて、今般この国が迎えようとしている危機は、おそらく遙かに深刻ではないかと私は考えています。当時は「冷戦」という西側諸国と角突き合わせる状態がずっと続いていたとは言え、国民は戦地に動員されることもなくなく、日常生活と通常の生産活動を営んでいたわけで、しかもゴルバチョフという、このまま行けば国はじり貧を免れないことくらいの判断力は持ち合わせ、かつキッパリと旧習を矯める実行力のある人物が。政治指導者に就いたという好条件にも恵まれていました。結局彼がソ連邦という社会主義国家に引導を渡すことになったわけですが、その後の経済混乱を収拾するに当り、惜しみなくとはとても言えないまでも、西側諸国も各国なりの思惑の下、新生ロシア連邦にそれなりに支援は行ったわけです。
しかし、今のロシアならどうか。戦地で日々莫大な損害を蒙り続け、国内経済は戦時体制の維持に全振り。若年労働層の不足、高度の知識技能を備えた人材の国外流出、戦争未亡人、傷痍軍人の大量発生など、自力で立ち直れる力は日々損耗しているのは目に見えているのではないでしょうか。
本格的停戦までの日はまだ遠いという見方もあるようですが、ウクライナ、ロシアとも、今ほどの大規模な軍事行動をとり続けるのは、早晩不可能になるはずだと思います。では、どんな結末を迎えるのか。私は、今のロシアの強権体制を支える指導層の中から第二のゴルバチョフが現われる可能性は、極めて低いような気がしています。国内には反体制勢力も数々存在するようですが、その力も現体制をひっくり返すには余りに非力と言うしかないのでは。プーチン氏が大統領の座に留まり続けることができるかどうかは知りませんが、ロシアの指導者は、国民向けには何らの勝利は得たと強弁しつつ、決して負けは認めないまま、尻すぼみみたいに、朝鮮戦争の前例に似た、一応の決着を見る可能性が高いように思えます。
そのような素人判断はさて置き、ロシア国民にとってこの戦争と、それによって招く羽目に陥った西側諸国の経済制裁がなにを意味するか。それが深刻なものではないというような詭弁を弄する向きがあることが、私には信じられません。制裁参加国が西側諸国に止まり、BRICSなど相当規模の経済力を持つ国が含まれないことを、その論拠とするのが大方のようですが、それらの国々の人びとのことを考えれば、強権体制の軛の下で自発的意思を表明できずに暮らしている点では、ロシアと似たり寄ったりに思えます。自らの身を守るのに汲々とするばかりで、ロシア国民の窮状に同情して一肌脱ごうという世論が澎湃と沸き起こることなんかは、おおよそ期待できない気がします。更にその指導者たるや、強権政治家の常として、自らの権力拡大にしか関心がない。ロシアのもつ、資源と外交力、軍事力をこれからも利用したいがために制裁に加わっていないのが実情で、はっきりその弱り目が確かなものとなってくれば、支えてやろうとするより、むしろ毟り取る側に回るんじゃないかしら。
思えば、ロシアはウクライナ侵攻以来、ブチャの虐殺など余りにも悪事を重ねすぎました。それらに頬っかむりしたまま、「もう攻め込むのは止めたよ」と言ったところで、それでは通用しないでしょう。助けて力を回復させれば、またぞろやらかすに違いないと思わせるに十分な振る舞いを、これまでして見せて来たのですから。地政学的に言えばどうやたら、パワーポリティクスの観点からすればどうやたら、色々論じる人はいますが、かりに西側諸国の指導者の中に、「ロシアをトコトン落ちぶれさせてはマズい」などと考える人物が出て来たとしても、ロシアの復興のために血税をつぎ込むなんて施策を、国民に納得させることは到底無理に思えます。
西側諸国の経済制裁を呼び込むような愚かな真似をしでかした。それはロシア国民にとってとてつもない災厄であると、わたしが考える理由です。
叙事と叙情を混ぜた、伊江太節ですね。
それは兎も角、感じたことは、BRICS。
烏合の国々の野合ですね。
インドのモディ政権、今回の選挙、過半は辛うじて超えたとしても、ロシアへのなりふり構わぬ支援、国民は見ているのではないですか?
家政婦は見た!みたいに。国民は、節操の無い外交は好まない、やはり、外交には信義があって欲しい。それが国民の願いではないか?何しろ、国家の行く末と命運を決めることだから。
長文ですがロジカルで読みやすい文章で感服しました。
なお、ゴルビーはかの国では人気最低です。プーチンの和平案も生ぬるいと不評だったようですので、そっちの解決は無しです。国民の水準以上の政治家は出てこないものですよ(その点ではゴルビー凄いな)なお、今回うちの国に関しては今のところ 安倍さんほど安定感は無いですが 無難に切り盛りされていらっしゃるので安心しています。
経済制裁無用論のようなロシア寄りの言説はマスコミでもよく見かけるのですが、鈴木宗男議員、元外交官の佐藤優、佐藤の上司だった東郷和彦元外務相欧州局長、NHK記者だった手嶋龍一などロシアに駐在し、ロシア外交に関わったこれらの面々が、なぜか今、経済制裁無用論のようなロシア擁護の言説をマスコミで繰り返し述べています。
彼らの化けの皮が剥がれたというか、今となっては彼らはロシアにたらし込まれたロシアのスパイで、ロシア側から提供された情報をさも自分が苦労して取ってきた情報のように語っているだけだったのではないかという気がしています。
それぐらいロシアの諜報工作というのは強力です。そして、ロシアの世論工作はこのサイトの掲示板にまで及んでいるように思います。