週の初めに考える…日本は太陽光推進で何がしたいのか

それにしても安くない再エネ賦課金を一般家庭から徴収することで経済を疲弊させ、電力系統をメチャクチャに混乱させ、環境を破壊し、電気代を高騰させて電力供給を不安定化させる――。日本は太陽光推進で、いったい何がしたいというのでしょうか。日本国民の皆さまには、週の初めに、じっくりと考えていただきたいと思う次第です。そもそも安くない、出力が安定しない、非効率、環境にも優しくない――。現状で考える限り、太陽光発電推進は直ちに停止すべきです。

「太陽光=クローンエネルギー」

太陽光発電は、火力発電などと違い、発電する際に地球温暖化ガスを発生させないうえに、これに加えて原子力発電と異なり、いわゆる「核のゴミ」も生じないなど、環境面では非常に優れた発電手段であるといわれています。

これに加えて「太陽」という自然に存在するエネルギーを使用する発電手段であるため、資源のない日本にとっては「自前のエネルギー源」となる可能性を秘めているなど、まさに地球環境、エネルギー問題の双方に対応した、理想的な発電手段であると思われているフシがあります。

いや、少なくとも太陽光発電の推進論者らは、そのようなことを、現在でも主張しているようです。

安くない、出力が不安定、非効率

ただ、当ウェブサイトではこれまでしばしば指摘してきたとおり、事実関係をきちんと調べていくと、正直、太陽光発電については何が優れているのか、よくわかりません。

①そもそも安くない

太陽光発電は再生可能エネルギーの一種に位置付けられますが、そもそも発電コストは安くありません。発電効率が悪すぎるためか、それともパネルの価格が高すぎるからなのかはともかくとして、とりあえず「再エネ賦課金」がなければ太陽光発電が事業として成り立たないことは間違いなさそうです。

②出力が安定しない

再エネ推進論者の皆さまが知らない、あるいは知っていて敢えて無視している、極めて重要な論点が、太陽光発電は出力を人為的にコントロールできない、という事実です。

太陽光発電所は太陽が出ているときに電気を生み出しますが、夜になると発電しなくなりますし、天気が悪いと発電量が減ります。逆に、天気が良好だと、想定以上に発電しすぎ、送電容量オーバーを起こしたり、電力系統の需給バランスを崩したりする原因になりかねません。

電力系統では需給バランスが崩れると周波数がおかしくなり、最悪の場合、停電・ブラックアウトなどに至ることもあります。そうなると社会全体に甚大な被害が及びかねません。太陽光発電は電力系統を維持するという観点からは大変に不向きな発電手段なのです。

③面積当たりの発電量が少ない

設置する場所の緯度や気象条件等にもよりますが、一般に太陽光発電施設の出力は1ヘクタールあたり500kW程度とされます。また、「メガソーラー」(出力1,000kW=1メガワットの太陽光発電所)はだいたい2ヘクタールの面積が必要であるとされています。

そして、夜間や悪天候時には発電量が減ったり、ゼロになったりするため、日本の気象条件では「利用率」(発電能力に対し実際に発電する割合)はせいぜい15%が良いところであり、この場合の年間発電量は1ヘクタール当たり33万kWhに過ぎません。

もっといえば、面積当たり発電量で見ると、太陽光発電所は原子力発電所と比べ、200倍近い格差があります。

たとえば東京電力・柏崎刈羽原子力発電所は、1~7号機をすべてあわせて8,212,000kWの出力がありますので、これらが完全に運転を再開すれば、利用率が70%だったとしても、年間で503億5598万4000kWhの電力を生み出す計算です。

その柏崎刈羽原発の敷地面積は420万平米、つまり420ヘクタールですので、1ヘクタールあたり生み出す電力量は年間1億1989万5200kWhで、33万kWhの太陽光発電と比べれば、じつに約180倍にも達します。

意外な盲点は「環境に猛烈に悪い」

上記の①~③の問題点は、太陽光発電が推進される前から、ある程度はわかっていた話でもあります(ただし、太陽光パネルに関しては量産効果で多少コストが下がる、との見立てもあったようです。その見立てが単なる「勘違い」だった可能性もあるわけですが…。)

しかし、次の④に関しては、案外、認識がないのではないでしょうか。

④環境に優しくない

太陽光発電所では最近、パネルそのものの火災に加え、蓄電施設などの火災が頻発している。これらの火災は消火活動が難航する(最悪の場合は燃え尽きるのを待つしかないこともある)だけでなく、大変に危険でもある。

これに加えてパネルを設置することで山林の保水能力や光合成能力が低下し、却って地球環境を悪化させることもあるほか、釧路湿原や阿蘇山近辺などのように、貴重で豊かな自然環境を破壊する太陽光発電所などが問題となりつつある。

一部のパネルには有害物質が含まれているとの報告もあり、耐用年数を終えたパネルの破棄処分は将来的に大きな問題となりかねない。

じつは、太陽光発電所、環境には決して優しくありません。

たしかに発電時に地球温暖化ガスも「核のゴミ」も発生させませんが、山林、湿地帯などの豊かな自然環境を破壊しているケースも多く、また、なかには防火対策などが不十分なものも多いためか、最近、各地でパネル火災などが頻発しているのです(『中国を潤す?太陽光発電、今度は火災に崩落・感電も?』等参照)。

また、一部報道ベースでは、太陽光発電事業には外国企業も多く参入しているようですし、「パネルやリチウム電池などの多くは中国製である」という指摘に加えて、「日本で太陽光発電事業を推進すると、結果的に中国企業を潤すことにつながりかねない」、などとする指摘も出てきています。

ローテクの太陽光発電は中国に依存

正直、太陽光発電は理想と現実のギャップがあまりにも大き過ぎ、その弊害は社会的利益を大きく上回ってしまっていると断じざるを得ません。

先日の『三菱マイクロ炉発電量は太陽光1ヘクタールの6倍超か』でも指摘しましたが、そもそも太陽光発電などは典型的な「ローテク産業」であり、これに対し三菱重工のマイクロ炉に代表されるように、原子力発電などは高度な技術が要求される「ハイテク産業」です。

くどいようですが、再エネ賦課金を一般家庭から強制的に徴収しても、日本の電力供給は安定するわけでもなければ、電気代が安くなるわけでもありません。むしろ逆に、環境を破壊し、電力供給を不安定化し、そして電気代を不当に押し上げているわけです。

なにせ、再エネ賦課金は来月から1kWhあたり3.49円に値上げされますが、これは月400kWhを使用する家庭の場合だと月1,396円、年間で16,752円となり、決して安い額ではありません。まさに再エネ賦課金は一般家庭の貴重な負担金を太陽光発電というドブにせっせと捨てているのと同じです。

図表 再エネ賦課金の推移

(【出所】経産省、環境省ウェブサイト、各電力会社等の情報をもとに作成。横軸の数値は「年度」を意味し、「12」は「2012年8月~13年4月」、それ以外は各年5月から翌年4月までを意味する。たとえば「24」ならば「2024年度」、すなわち「2024年5月~25年4月」の意。また、「標準家庭の年間負担」とは毎月400kWhを使用する家庭を想定した毎月の負担額を12倍した数値を意味する)

同じ「年額16,752円」を負担させられるならば、太陽光などの非効率な産業にカネを取られるよりも、マイクロ炉を含めたさまざまな革新炉、さらには核融合発電といったハイテク産業の研究を推し進めるために使われた方が遥かに有意義ではないでしょうか。

机上の空論で議論しても無意味

なお、当ウェブサイトに対し、「原子力はベースロード電源だから、日本の電源をすべて原子力発電に置き換えるべきだとする主張は無理がある」、などとする批判をいただくこともありますが、大変失礼ながら、それは当ウェブサイトの主張を盛大に誤読なさっていると思われます。

当ウェブサイトでは常々、「エネルギーミックスが大切だ」と指摘して来たつもりだからです(言い換えれば、「電源は安価で安定しているベースロード電源を充実させつつ、ミドル電源やピーク電源の技術も開発しなければならない」、という意味です)。

また、当ウェブサイトでは「太陽光発電は『貯められない電力系統』の維持に不向きだ」と述べていることは事実ですが、これは「現状では効率的な蓄電・送電技術は確立していない」とする前提を踏まえたものに過ぎず、将来的にこれらの技術が確立すれば、議論が変わってくる可能性があることを否定するつもりもありません。

たとえば送電ロスや蓄電ロスが限りなくゼロに近づけば、「サハラ砂漠に太陽光パネルを敷き詰めて地球全体に送電する」、といったことは、「技術的には」可能になるかもしれません(降り積もる砂をどうやって掃除するのかは知りませんが)。

ただ、「サハラ砂漠で発電し世界中に給電」だの、「宇宙空間で太陽光発電し、マイクロウェーブで送電」だのといった、「現時点で実現していない技術」を前提に議論しても、それは素人発想であり、現実を直視していない机上の空論に過ぎません。

それよりも、当ウェブサイトの主張は、いたってシンプルです。

事実上の休眠状態にある原子力発電所のなかで、再稼働できるものはさっさと再稼働させるとともに、次世代炉などの新増設、革新炉・核融合発電などの研究開発を急ぐこと。

火力発電についても効率性や環境適合性をさらに高めるべく、研究開発を推進すること。

そして、太陽光発電などの「非効率かつ環境に優しくない再エネの推進は直ちに停止し、あわせて再生可能エネルギー賦課金制度の見直しを目指すこと」、です。

再エネ賦課金で日本はいったい何がやりたいのか

くどいようですが、当ウェブサイトとしては太陽光発電の将来的な可能性を含めて全否定するつもりはありませんが、現状で考えたら、一般家庭から高額な再エネ賦課金をむしり取ってまで再エネを推進することの合理性はまったくないと断じざるを得ないのです。

それにしても安くない再エネ賦課金を一般家庭から徴収することで経済を疲弊させ、電力系統をメチャクチャに混乱させ、環境を破壊し、電気代を高騰させて電力供給を不安定化させる――。

日本は再エネ賦課金と太陽光推進で、いったい何がしたいというのでしょうか。

日本国民の皆さまには、週の初めに、じっくりと考えていただきたいと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    もしかして、日本の(自称)インテリは、机上の空論で議論するのが大好きなのではないでしょうか。

    1. 匿名 より:

      日本の行政はアほう

      1. 一之介 より:

        あらら、手違いで中途半端に投稿してしまいました。
        原発と太陽光、どっちが世のため人の為になる?
        『日本の行政はア法学部出が仕切っているので、簡単な算数もできないのでしょう』
        と、
        言いたかったのです。失礼しました。

  2. 名前 より:

    愚かな政府は増税だと認めないんだよな。

    1. KY より:

       普段「ステルス増税ガー」と騒いでる連中(特にパヨク)も再エネ賦課金にはダンマリ。

  3. カズ より:

    >日本は太陽光推進で何がしたいのか

    国際会議における大言壮語の取繕い。
    菅総理(かんそうりぃ)リスクの糊塗。
    ・・・・・
    「20年代に自然エネルギーを2割」 菅首相が国際公約https://www.asahi.com/eco/TKY201105250658.html#Contents
     菅直人首相は25日夕(日本時間26日未明)、訪問先のパリで経済協力開発機構(OECD)の設立50周年記念行事に出席し、日本のエネルギー政策について講演した。発電量全体に占める再生可能な自然エネルギーの割合(現在は約9%)を引き上げ、「2020年代のできるだけ早い時期に20%とする」という数値目標を掲げた。

  4. 匿名 より:

    再エネ賦課金は、太陽光発電を一般家屋に載せるための誘導費用と理解しています。
    太陽光発電を載せれば買電費用が大幅減=再エネ賦課金大幅減
    他の人が払っている賦課金を売電としてうけられる。

    問題は一部(大部分?)メガソーラであって、再エネ賦課金ではないと思います。

    1. KY より:

       はあ?各家庭や企業(特に製造業)の経済的負担を年々重くして日本経済の足を引っ張ってる再エネ賦課金の何処が問題ないんですか?

      1. 匿名 より:

        https://solar-generation.net/archives/2265

        現時点ですでに300万件近くの一般住宅に導入されています。
        この導入に再エネ賦課金は大きく貢献しているのは間違いありません。
        平均5kWとして、1500万kW (年間に直して250~300億kWh、日本の総発電量の3%)程度。

        対してそれ以外(メガソーラ含む)がこの3倍くらいの容量。

        1. KY より:

          >この導入に再エネ賦課金は大きく貢献しているのは間違いありません

           つまり再エネ賦課金なしでは太陽光発電はやっていけないと言う事。
           補助金無しではやっていけないEV同様、役立たずだと言う事を逆説的に証明していますね。
           環境破壊をしてまで太陽光を普及させる意義が何処にあるんでしょうね。しかも賦課金の一部は企業経由でシナチスに流れてる疑惑があると言うのに。

          1. 匿名 より:

            新しい技術の開発、コスト低減、性能向上のために補助金をだすのはふつうの政策ですが。
            https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E7%99%BA%E9%9B%BB%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88
            初期の数千万円/kWから現在まで2桁以上コストが下がっています。

  5. 匿名 より:

    自民党で太陽光は不経済で環境負荷が大きすぎると発言しているのは青山議員くらいではないでしょうか?

    むしろ、一度決めた事をなぜ変えなければならないくらいの議員が多勢では無いでしょうか?

    しかも恵を受けるのは多くが中国とは・・・・誰のための政治をしているのでしょうか?

  6. DEEPBLUE より:

    そもそも京都議定書やパリ協定の段階で中国への利益誘導ですからね。
    環境負荷の事を考えるならば既に実用化されているエタノールなどのバイオ燃料の方が効率的なのです。前提の柱から狂っているので、森林を伐採して太陽光パネル等という「愚行」がまかり通るのです。

  7. 人工知能の中の人 より:

    太陽光推進なんて言ったって後ろで旗を振ってるのはだいたい中国と一部韓国。
    エコのドイツを見習えなんて言いながら、ドイツの太陽光発電システムメーカーの最大手はとっくに倒産して中国引き取られ(今は韓国に買収されてる)2022年は87%が中国からの輸入とのことです。
    欧州でならもとからある平坦な牧草地で牧畜とパネル設置の組み合わせとかおもしろいのですが、日本で山を削り森林を切り開いてまでやるこっちゃないですよ。

  8. KN より:

    「レジ袋」ごときに過剰な対策をしておいて、メガソーラーは何の環境対策もされず野放し状態。
    メガソーラーは建築物じゃないから規制できないなんて、ザル法も甚だしい。

    1. 匿名 より:

      >メガソーラーは建築物じゃないから規制できないなんて、ザル法も甚だしい。

      ソーラー特別法を作ればいいだけの事なので、規制しないのは、そんな法律が必要という事になれば、ソーラーの危険性や環境汚染リスクを列挙して白日の下にしなければならなくなるので、逃げているのです。
      普通の頭があれば、こんなもの20年後どうするのか?と少しでも考えれば、分かること。放置されて野晒しになり、汚染物資が地下水に流れ込んで、ということにならないか?
      又、キチンと回収されて処理されたとして、その処理過程で使うエネルギーから発生するCO2を計算したら、太陽光発電は、トータルでCO2を発生をより多く発生させるものであった、ということになるのではないか?
      政府もそこまで計算したことは、ないだろう。

  9. Masuo より:

    前の論考の通り、省エネ賦課金は、10数年の年月をかけてすっかり利権構造になり果てました。この利権を壊すのは、もう容易ではないと思います。

    メガソーラなどは、百害あって一利なしであったとしても、この利権を壊すのは、余程の事が国民にバレないと壊せないと思うし、利権化したものは、マスコミも報道しない自由で守りますので、もし何かバレたとしても、統一教会や、ジャニーズ、裏金問題のような報道のやり方はないでしょうね。

    それでも、この論考のように、風化させないでしつこく言い続ける事は、周知の上でもとても大切な事だと思います。今後も是非とも取り上げていって欲しいです。

    1. 匿名 より:

      FITはFIPに代わり、補助率もどんどん下がっています。
      最終的に消えていくことが確定(取引市場に役割を譲る)している
      ことは明らかですが、利権構造を壊すことが難しいとはどこを見ていっているのでしょうか。

  10. 福岡在住者 より:

    >日本は太陽光推進で何がしたいのか

    毎月来る電力会社の請求内訳書。左下中央の極小部分だったかな・・・。そこを時々見て欲しい。 民主党政権の時に急ごしらえで成立した政策ですね。 カンが朝鮮からの政治資金援助問題がそろそろ爆発する寸前で、3.11があり・・・。 そのチャンス(輩はラッキーでしたね-笑)を生かし自身の存続のためウソを繰り返し、オノレの福島対応の大失敗(犯罪)をごまかすためメガソーラーを大展開し見事にごまかしましたね(笑) 孫さん!の大はしゃぎを初めて見ました(失笑)見た。 その後、トランプ当時大統領の前でも同様でしたが・・・。成果はありませんでしたね。 当たり前だ! 

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