アザー米厚生長官の台湾訪問と日本の台湾政策
昨日、米国のアレックス・アザー厚生長官が台湾を訪問し、台湾との医療・衛生協力に関する覚書を取り交わしたほか、蔡英文総統を表敬訪問しました。米国側からは台湾を「国」と位置付けないような配慮は見えますが、それと同時にWHOからの脱退を表明している米国としては、今回の訪台はWHOに代替する何らかの国際機関創設の布石ではないか、との見方もあるようです。また、米台関係の好転は日本にとっても間違いなく良いことです。なぜなら台湾は日本にとって、「基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人」だからです。
アザー米厚生長官が訪台
昨日、アレックス・アザー米厚生長官が台湾を訪問し、陳時中(ちん・じちゅう)衛生福利部長(※保健相に相当)と医療・衛生協力に関する覚書を取り交わし、蔡英文(さい・えいぶん)総統とも面会したそうです。
ここでは米メディアWSJとCNN、台湾メディア・中央通訊社が運営する日本語版サイト『フォーカス台湾』の記事を紹介しておきましょう。
U.S. Health Chief Praises Taiwan’s Covid-19 Success, Irks Beijing in Rare Visit
―――米国夏時間2020/08/10(月) 14:56付=日本時間2020/08/11(火) 03:56付 WSJより
Top US health official meets with Taiwan President Tsai Ing-wen in highest-level summit for decades
A lex Azar, the United States Health and Human Services secretary, met with Taiwanese President Tsai Ing-wen Monday, the highest-level meeting between Washington and the self-ruled island in decades.<<…続きを読む>>
―――2020/08/10 19:58HKT付 CNNより
台湾、米厚生省と初覚書 アザー長官、WHO脱退後は「台湾と協議」
(台北中央社)衛生福利部(保健省)は10日、米厚生省と医療や衛生の協力に向けた覚書を初めて締結した。<<…続きを読む>>
―――2020/08/10 19:10付 フォーカス台湾より
今回台湾を訪問したアザー氏は、米台断交以来、米政府関係者の職位としては最高であり、これについてWSJは「異例な会合(a rare meeting)」などとしつつ、中国との論争が深まるレッドラインに近付いた、と評しています。
ただ、アザー氏の訪台目的は、(表面上は)台湾のCOVID-19対策の成功を称賛するとともに、米台双方が保健・衛生協力を進めるためであり、これについてWSJは次のように述べています。
“Health and Human Services Secretary Alex Azar relayed a message of support from the White House and praised Taiwan’s Covid-19 response in his meeting Monday with the island’s leader, Tsai Ing-wen.”
意訳すれば、「米国としては台湾の取り組みを称賛し、全面的に支持する」、というメッセージですね。
また、蔡英文氏はアザー氏に対し、米台関係の強化を歓迎するとともに、40年間の米台関係の歴史で双方の関係が最も良好だと応じたそうです。
一方の中国は、台湾近海にジェット戦闘機を出動させて牽制したそうですが、これに対し台湾空軍がスクランブル発進する局面もみられたようです。
CNN、中国に忖度?
また、WSJの記事には
“Alex Azar’s visit meant to convey message of strong support for Taiwan and to discuss cooperation in public health efforts”
とあります。
つまり、「米国として、衛生に関して台湾の取り組みを強く支持するとともに、台湾との協力を模索する」、という、異例の強いメッセージですね。これは見方によっては、中国や中国に忖度してばかりいる世界保健機関(WHO)に対する強力な牽制でもあります。
もっとも、あくまでも個人的な印象ですが、報道から伝わるアザー氏の発言、中国を過度に刺激しないような配慮が見えます。というのも、CNNによると、アザー氏は月曜日、次のように述べたからです。
“My trip demonstrates the robust US-Taiwan partnership on global health and health security, one of many aspects of our comprehensive friendship.”
つまり、アザー氏は今回の訪問について、「包括的な友情の多くの側面のひとつである、世界の健康と健康の安全に関する強力な米国と台湾のパートナーシップを示すもの」と位置付けていて、あくまでも保健・健康分野に限っている、というわけですね。
ただ、米国側も台湾をどう呼ぶかで、かなり配慮をしている様子がうかがえます。端的に言えば、「国」とは認めていない、ということですね。
ついでに、本件を巡ってほかにもいくつかの米メディアの報道を読んでみたのですが、台湾を巡って奇妙な表現が多数出てきました。それが、「自治する島」(self-ruled island)という表現です(ちなみにこの表現はCNNの記事に出てきたものです)。
なんだか奇妙な表現ですね。
いちおう、日本政府などは「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」とする立場を取っており、台湾のことを「国家」とは位置付けていませんが、これはあくまでも政府レベルのものであり、メディアが中国に忖度するのにも強い違和感を覚えざるを得ません。
今回の訪台の意義
さて、台湾は現在、中国からの物理的な距離の近さにも関わらず、コロナ防疫に大いに成功した「国」として、世界的にも大きく注目されています(本稿では、あえて台湾のことを「国」と表現しておきたいと思います)。
当然、本来ならば台湾の知見については全世界にも共有されるべきですが、残念なことに、世界保健機関(WHO)は中国に忖度するあまり、台湾のオブザーバーとしての参加すらも拒絶しているという状況にあります。
先ほど紹介したフォーカス台湾の記事によれば、米国がWHOから脱退の意向を示している点を巡り、アザー氏は記者会見で、WHOに代わる新組織の立ち上げの可能性を問われると、次のように答えたそうです。
- 公衆衛生の向上を図る手段を国際社会と模索していく
- 台湾とももちろん協議する
…。
なかなか、興味深いですね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、当たり前の話ですが、国際社会において「永遠の敵対国」もなければ、「永遠の味方」もいません。
現在、日本は中国との国交の都合上、台湾を「国」と認めるわけにはいかず、公式には日台国交は存在していません。
しかし、日本政府は密かに、台湾を「基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人」と位置付けています(『日本政府にとっての台湾と韓国の地位が逆転?』等参照)。
もちろん、「今すぐ日中断交して台湾と国交を開け」、という話にはなり辛いのですが、ただ、いつまでも中国に忖度し続けるのもいかがなものかと思います。
もっとも、台湾が自分たちを「中国の一部」と位置付けるのか、「中国の正統な政府」と位置付けるのか、それとも「台湾共和国」を名乗るつもりがあるのかは、いまひとつ、見えて来ません。
その意味では、私たちの国・日本としても、台湾は「基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人」ですので、友好協力関係をますます深めていきたいものです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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「主権・領土・国民」が、「国家の3要素」。
台湾はどれも欠けていません。
ついでにいうと、北朝鮮も。
それは事実。
更新、アザーす!
…誰かに書かれる前に書きたかったのです(*´ω`)♪
>ついでに、本件を巡ってほかにもいくつかの米メディアの報道を読んでみたのですが、台湾を巡って奇妙な表現が多数出てきました。それが、「自治する島」(self-ruled island)という表現です(ちなみにこの表現はCNNの記事に出てきたものです)。
南北朝鮮については「self ruled peninsula」という表現が可能か悩んじゃいますね。
自治を出来る知識も能力も気概も無い「三不」状態に見受けられ。
しまった。
先にやられてしまいました…
謝罪と賠償を(以下略)
たい さん
お先!( ̄∇ ̄)
台湾は米国のWHO脱退表明後も
「WTOオブザーバー参加」の方針は変わってないと思いましたが
日本もユネスコやIPCC等「ムダ」な国際機関は脱退して浮いた拠出金を有効活用してほしいものです
すいません
「WTOオブザーバー参加」→「WHOオブザーバー参加」
メディアが中国に忖度するのにも強い違和感を覚えざるを得ません
>アメリカメディアも、チャイナマネーで汚染されているんじゃ無いかと思います。
中国としては、アメリカに一歩踏み込まれた状態ですが、香港で民主化指導者を逮捕しており、米中対立はより深刻化すると思います。
台湾と公式な国交が無いのは、今現在と中国との国交が正常化してからだけです。今後台湾が、価値観を共有した状態を継続出来れば、正式に国と認めて、植民地とは別の形の国交が成立すると思います。
だんな様
メディアと言えば、トランプ大統領が大統領に就任してからも随分と長い間、場合によっては今も「トランプ氏」と報道するのはなんか理由があるんですかね。
お隣の大統領を就任以後「文在寅氏」とかやらないのに。
東京カモノハシ倶楽部さま
日本のマスゴミは、中朝工作機関ですから。
更新ありがとうございます。
これでは、マスゴミと言われても全否定できませんね。
日本政府も吹っ切れて欲しい。
台湾関連報道を「なるたけ目立たないようにする」のは、洋の東西を問わずメディアに共通しています。
BBC記事2020-8-10
“US angers China with high-profile Taiwan visit”
https://www.bbc.com/news/world-asia-53719333
まるで米中のせめぎ合いが人類の公共保健よりも重大であるかのような印象操作目的タイトルをつけています。今朝の日経記事はなお一層ひどいものです。
今回BBCはかなり踏み込んだ表現をしました。いつもはもっとモゴモゴと書いてます。
“Taiwan is, to all intents and purposes, an independent state, but China regards it as a breakaway province.”
アザー厚生長官の現地における声明は以下のように明快なものだったそうです。BBC記事より抜き出します。
“The first is to recognise Taiwan as an open and democratic society, executing a highly successful and transparent Covid-19 response,” he said.
“The second is to reaffirm Taiwan as a long partner and friend of the United States.
“The third is to note that Taiwan deserves to be recognised as a global health leader with an excellent track record of contributing to international health.”
更新ありがとうございます。
台湾国は主権を持ち正式な領土も持ち、国民は自由と民主主義を享受し、責任を負担します。つまり、日本や米国、加、豪、NZ、仏、英ら先進国と同じグループです。
中国や北朝鮮、下朝鮮、香港とは違います。日本政府は中華人民共和国を唯一の正式な国家と認めてますが、「日中友好」「日中親善」「日中友邦」と言われた50年前と異なり、チカラを蓄えた中国は世界の覇権を握ろうと無茶苦茶な事をやりたい放題です。
「離中」と言えばよろしいでしょうか。日本は中国とは疎遠になるべきです。あまりにも手の内を見せ過ぎた。工賃が安いからと、飛びつき過ぎた。やはりmade in japanです。世界の人が信頼し、憧れるモノ作り。朝、言いました通り、安もんの液晶テレビは要りません。(欲しい人はどうぞ)
このモノ作りを中国から国内に戻すか、中国からASEAN等に転地するかです。中国も完全にゼロにするわけじゃない。適品適時で中国が選ばれるケースもある。
但し、経済的な結びつきはともかく、WHOのように中国の言いなり、またユネスコ等、日本の資金が無駄に使われる所からは脱退して、新しい組織を作り、参加すべきと思います。中国はやはり信頼、信用出来ないですね。
>台湾が自分たちを「中国の一部」と位置付けるのか、「中国の正統な政府」と位置付けるのか、それとも「台湾共和国」を名乗るつもりがあるのかは、いまひとつ、見えて来ません
・・・まあ、今日も暑いから、こんなコメントが出るのもしょうがないんだろうけど。どうしちゃったのかな。
台湾は 中華民国 ですよ。
わざわざ「」を付けた文意の読めない人?
あと「台湾正名運動」の流れも知らないのでしょう。
そういえば財政赤字が国際条約で禁止されてるってアホコメント書いてたの、あなたでしたっけ?
>・・・まあ、今日も暑いから、こんなコメントが出るのもしょうがないんだろうけど。どうしちゃったのかな。
揚げ足を取ったつもりですか?
話の本題どころか、文中に影響しない事にいちいち取るに足らない事に下らないケチつける方が、「どうしちゃったのかな」。
あとそんな講釈垂れたかったら、ご自身の投稿を希望してみたらいかが?
中華民国は辛亥革命(1911年)によって、孫文が、清王朝から天命を譲り受け成立した(ことになっている)。その中華民国は、国民党政権として収斂され一時は中国全土の支配勢力だったのだが、以後様々な経緯あり、最終的に共産党政権によって台湾島に追い落とされた。現在の台湾・中華民国は、いわば亡命政権の末裔といえるであろう。ただ亡命政権ではあるが、前朝から引き継いだ天命は依然保持している。なので、中共政権はこの天命(天下に一つしかない)を有しておらず、中国古来の天命思想の観点では、正統性の無い政府ということになる。
これを日本の場合にたとえてみれば、維新で成立した明治政府が、戦後に成立した政府に従わず、皇室を擁し沖縄に亡命政権を建てなお存命中という感じであろう。日本本土の戦後政府は国土の大部分を支配してはいるが、沖縄政権は日本の象徴である天皇を戴いている。この状況で、沖縄政権が一国として独立すると本土日本はどうなるか?、という問題。なので、台湾独立は、そこらの植民地が独立するのとは異なり単純ではない。
無論、中共政権にとり、台湾が中国の太平洋進出に必須の要地であることも関係している。ここを支配下に置くのとそうでないのとでは太平洋進出の難易度が格段に違うのだから。さらに台湾は、世界の半導体生産にとっても重要な場所であるので、中共はそれを喉から手が出るほど欲しい、ということもある。
だから台湾独立のためには、この二つ(中華の国体問題、安保・経済的実利)で妥協する必要がある。通例通りであれば禅譲(正統性の平和的移譲)か放伐(武力統一)しかないのだが、いずれ日本としてできることは精神的支援くらいで、他にはそれ程多くない気がする。
素朴な疑問ですが、辛亥革命は共和革命ですので、以後天命とは縁が切れたはずですよね。どうして中国共産党は天命にこだわるのでしょう。
未だに易姓革命の発想から逃れられないのでしょうか。
天安門事件を見て、中国の支配者の意識は中華帝国の頃と何も変わってないのだと痛感しました。
共産党という看板を掲げていようが、中国は「中国」でしかないのです。
阿野煮鱒さま
共産主義は唯物史観ですから、公式コメントは、当然「天命?そんなものと我々は無関係!」でしょう。しかし彼らも、共産主義者である以前に伝統を継承する中国人です。頭の片隅にはそんな思いも残っているはずです。少なくとも一般大衆向け中国歴史ドラマのテーマの一つでもあります。この説は、私の憶測にすぎませんが、それでなくとも最近の中共中国、特に習近平になってからのそれは、皇帝を戴くかつての王朝に似た様相を呈しているように見えてなりません。なので、そのようなファクターも考慮に入れておく必要があると思ったわけです。
はぐれ鳥様、龍様、
結局、イデオロギーは国家の薄皮に過ぎず、その下には民族の本質が永続しているということですよね。
それでも、共産主義を標榜するなら、自国の正統性を台湾に求めるような非科学的発想は表向きは否定して欲しいですね。
結局は、天命は台湾を我が物にしたいが故の口実なのかもしれません。
私、亡くなられた李登輝総統を尊敬しておりますし、台湾の民主独立のために、戦っている蔡英文総統も尊敬しています。でもね、現在の台湾がそのまま、未来の台湾とは限らない。
私ごく最近ですが、お花畑に至らないよう、現に慎んでいることがあります。
それは、「他人は他人であり、自分ではない。」ということです。暑さにやられた訳ではありませんのよ(笑)。
続けます。国も同じじゃないかしら?
他国はあくまで他国です。当り前のことですが、その国の国益で動きます。その国の現在の国益が、日本の現在の国益に沿っているなら、日本の実力で協力する。それでいいのじゃないかしら。
日本の国益は、現在中国共産党の核心的利益とやらを認める訳にはいきません。それを認めたら、日本という国も無くなってしまいます。
同じ立場で、台湾が戦うというのであれば、協力しないという選択肢はありません。あくまで、日本の実力で。
台湾こそ、大切な友人と呼ぶにふさわしい国だと本当に思います。
少し古いですが、台湾の善意が如実に表れていると思います。
▽東日本大震災の義援金(国別)
https://www.7midori.org/exbokin/2011/201103tohoku/index.html
(抜粋)
台湾 4,753店舗 約3億368万円
韓国 3,404店舗 約 74万円
—–
もう、何というか・・・
東日本大震災の時に韓国から心無い言葉を浴びせられたことは一生忘れないです。
逆に、台湾には感謝してもしきれない気持ちです。
台湾が実質的に独立国家であること、あるいは少なくとも独立国家たりうる存在であることは、おそらく中国共産党指導部を含め、誰もが認識している事実であると思います。しかし、秦以来の大一統思想が覆されない限り、仮に共産党に代わる政権が成立したとしても、大陸側指導部は台湾が独立国家である、つまり中国とは別の国家であることを容認することはないでしょう。
大一統思想というのは、簡単に言えば、「天下(=中国)は統一されているべきである。統一されているのが正常で望ましい状態であり、分裂しているのは不正常で間違った状態である」というものです。これは秦以来2000年以上に渡って中国人の深層に刻まれたドグマであり、疑うべくもない絶対の真理です。ゆえに、北京語が公用語である台湾はもとより、チベットだって新疆だって、そこが「中国」なのであれば、統一されているのが正しく、あるべき姿なのです。
大一統思想がドグマでしかないと断じるのは、まず「中国」自体が言語も異なる多くの民族を力づくでまとめ上げたものに過ぎないという点にあります。実際、ヨーロッパ全域に相当するような広大な土地で、今でも地域によってお互いに全く通じない言語が使われています。良く知られた話ですが、北京語話者と広東語話者とでは話が全く通じません。発音が全く異なるばかりか、文字セットも違いますし(広東語だけで使われる字が多数ある)、文法すら微妙に異なっているそうです。ヨーロッパであれば、当然別の国家でありえたでしょう。そんな人々を力づくでまとめ上げ、統一国家であることを誰も不思議に思わないのは、まさに大一統思想が広く共有されているからに他なりません。
そしてもう一点。多くの中国人が漠然と考えている「国家」像とは、おそらく2000年前からあまり変わってないものと思われます。つまり、国家=天下であると見做すものです。これは近代国家の国家像とは異なるもので、そこが「中国」であるならば、当然統一の範囲と見做されることになります。「主権・領土・国民」などというものは、そもそも考慮の対象ではありません。まさに「中国は一つ」なのです。
台湾の歴史を見ると、台湾が「中国」であるという主張は、実はそれほど強固な根拠があるとは言い難いものがあります。台湾は長く化外の地とされ、ようやく台湾省とされたのは清朝末期に過ぎません。台湾を「中国」とするのは、国民党が逃げ込み、北京語を国語とする政権を樹立したということだけです。それでも外省人は今なお大一統思想の影響下にあるかもしれませんが、本省人にはその意識は希薄と推察されます。今後その傾向が次第に強まっていくでしょう。
以上から、台湾が為すべきことは、まず国民党を解党することです。その後に親中派の政党ができることは致し方ありませんが、国民党がある限り「中国」残党と見做され得ます。中国に台湾が「中国」でないことを認識させるためには長い年月が必要でしょうが、少しづつ進めていくよりないでしょう。
そこで、日本としては、台湾の非「中国」化の側面支援を進めるべきです。中国が台湾を「中国」として認識する限り台湾の危機は解消されません。性急に事を進めれば、全ての人が傷つきます。具体的な進め方はぱっとは思いつきませんが、慎重で粘り強い対応が求められます。「中国」ではない台湾との連携強化は、明らかに日本にとっての国益ですので、超長期を見据えた戦略が求められると思います。
王貞治さんには「中華民国国籍」から文字通りの「台湾国籍」になってもらうんですね。わかります。
中国の中国化の勢いは凄まじく、元来の漢民族の居住領域は北宋ぐらいかと思いますが、もはや満洲、チベット、タリム盆地、雲南全て中国になってしまっています。
龍さまの言われる通り、台湾が中華民国である限り、国民党が中国国民党である限り、中国の名称がある限り一つになろうとするでしょう。
どちらが攻め込む形になるかは別として。
どちらが統一しても日本にとってはあまりよろしくないです。
台湾政府乃至は国民からの発議でなければならないのは当然として、一つ間違えると台湾分裂しそうです。
今回の中国共産党の膨張施策の結末で大きく変わりそうです。
龍さま
国民党の解党とは踏み込みましたね。当方には青天の霹靂のように響きました。
台湾旅行をしたとき屏東から高雄へ向かう車窓より海峡の向こうへ沈む西日を背景に「陸大復光」の大看板が目に入ったとき、台湾島における一致できない民意のありようを確信しました。いつの間にやら親中政党に変容してしまった国民党を故李登輝氏は晩年どんな気持ちで捉えていたのでしょうか。
解党後親中政党が新たに台湾に生まれることはまこと至極自然なことです。新竹市の隆興を見るまでもなく、現実に大陸との良好な交易関係なしでは島国は存続し得ません。感慨深く思うのは、高雄市議長の自死が落下傘として送り込まれた韓國瑜市長のリコール成立直後だったことです。台湾の選択を促し尊重する立場を繰り返す会計士どのは、実に賢明かつ誠意ある立場を遵守していると思います。
他所様の政党の行く末に外野からどうこう言うのは無用のことであるというのは重々承知してますが、最終的には中国に台湾が「中国」ではないことを認めさせることを目標とするとした場合、論理的帰結の一つとしてこうなってしまいます。
もちろん、将来的に台湾の人々が「やぱし俺ら『中国』だしぃ」となってしまうのであれば、全く意味のないことではあります。どの道、最終目標に辿り着くまでには、紆余曲折、長~い道のりが予想されるので、まずはそこからということですね。
ただし、中国共産党も皆が皆バカというわけでは決してないので、その意図を正確に見抜く人は必ずいるでしょうが。
少なくとも台湾が「中華民国」という国号はともかくとしても憲法を改訂して、現時点で中華人民共和国つまり北京のチャイナ共産党政府が実効統治しているエリアをも領土であるという「一つのチャイナ」の主張を正式に放棄して、現実に台北政府が統治している台湾島と周辺島嶼のみを領土と宣言しない限りは、日本にせよアメリカにせよ台湾に対して外交面でできることは極めて限られてしまいます。
何しろ同一の(あるいは少なくとも極めて大きな重なりのある)領土に対して2つの政府が統治権を主張しているのですから、日本やアメリカなど第三国としては、双方の政府が主張している領土に対する統治権はどちらか一方の政府に対してしか認めることができません。
台湾の一般民衆がどのような運動をしようとも台湾の国名から「中華」という語句を外そうとも、台湾の憲法が主張する領土が現状のままでは、日本やアメリカなど第三国にとっては北京と絶縁しない限り台湾に対して政府間で行えることは災害時の援助のような人道上の協力を言い訳にできる類を除いて実際上はほとんどありません。
台湾のWHO参加問題に関しては、WHOが国際的に疾病予防の役割を担っており人々の健康に直結していますから、「台湾も加盟させろ(あるいは少なくともオブザーバーとしての参加を認めろ)」という日米の主張は人道上の判断であるという言い訳(正当化)が可能ですが。
ですから日本はアメリカ政府を説き伏せて「台湾が憲法を改正して領土を台湾島と付属島嶼だけと宣言したら両国で同時に承認する」という約束を取り付けるべきです。当面は秘密条約という形になるでしょうが。そしてその密約をもって台湾に憲法改正を促すべきです。もちろんそれと同時に日米でファイブ・アイズ諸国やフランスなどG7諸国を始めとする西欧諸国に関してもその秘密条約に参加するように説得する必要があるのは言うまでもありません。
習近平政権による傲慢かつ時代遅れな帝国主義的な振る舞いのお蔭で自由主義・資本主義・民主制という基本的な価値観を共にする先進各国での共産チャイナに対する警戒心はかつてないほど高まり、対共産チャイナ包囲網を作ろうという機運も盛り上がっています。しかも日米は元から共産チャイナに批判的な政治指導者に恵まれ台湾も蔡英文という優れた指導者を戴いています。
日米も台湾もこの千載一遇のチャンスを是非とも活かして台湾独立&承認を一気に進めるべきです。台湾が独立宣言をして間髪を入れず日米欧の先進工業諸国のほとんどが一斉に台湾を承認すれば、北京の共産主義政府の打てる手は極めて限られてしまいます。
めっさ魅力的な話ですが、日本政府及び日本国民が能動的に動けますかねえ。
今は石橋を精密検査してもなお渡ろうとしない状況だと思いますが。
龍様の国民党解散はごもっともです。それができないなら先には進まないでしょう。
今の台湾は、まだそこまでの機運ではないし、だから国民がひとつにまとまるまでには至らないし、中台が「一つの中国」を主張し続ける状態は続くと予想します。その間は、第三国にできることは限られます。
台湾を日本国のままにしておけば、こんなややこしいことにはなっていないのに。
パラオも不幸な国です。
終戦直後はともかく、アメリカのヒドイ仕打ちに、おそらく60年度以降は「あのまま日本の信託統治のままだったらなあ」と思っていたに違いありません。
もっともそしたら、沖縄の観光地としての地位が危ぶまれたかもしれません。
今でも充分、魅力的なリゾート地ですから。
「俺たちゃ中国人とは違うんだよ」という民意が高まったきっかけが「小三通」以後殺到してくる大陸人観光客たちのあまりの傍若無人・目を覆う非道行為にあったことは皮肉としかいいようがありまません。逆説的ですが、普通の台湾人は中国大陸の現況を、日中国交回復後の日本人が常識として了解しているより知らなかったのです。敵国ですから。
え? 終戦直後、台湾光復でによって台湾人は大陸人の野蛮をさんざんに目撃したではありませんか。「狗去豬來(犬去りて豚来たる)」と落胆したのです。
そして1947年の二・二八事件です。多数の本省人が逮捕され、拷問され、殺害されました。
台湾の国内に傍若無人・目を覆う非道行為を行う輩がいたのです。
魚夫という台湾では有名な文化人がいます。「魚夫 台南」でYoutubeを検索すると多数動画が得られます。彼は元はメディア業界の人物で、今は楽隠居されてますがひとかどの地位があり少々の非難には動じない。台湾人を自負する彼の痛快な政治的スタンスは見ものです。
現代に生きる台湾人の生活感覚として「奴らとはやってけない」を実感させたのが大陸団体旅行者だったのです。
噛み合ってないけど、いいです。
二・二八事件やあるいは誰かが霧社事件を持ち出し振りかざされると困りますので予防線を張りました。