Xで革命的「外国語リアルタイム翻訳」が始まった意味

我々が外国を覗いているとき、外国もまた我々を覗いているのだ

Xについに外国語をリアルタイムで翻訳して表示する機能が実装されました。私たち日本人は日本に居ながらにして、日本語に自動翻訳された外国発の話題やNEWSをリアルタイムで手に入れられる時代が到来したのです。これはなかなかに革命的です。もちろん、翻訳の精度などについては問題がまったくないではないのですが、このあたりも是正されるのは時間の問題でしょう。そして、私たち日本人の側のXを通じた情報発信もまた世界に筒抜けになって行くのです。

イーロン改革とツイッター

Xといえば、数年前までは「ツイッター」(Twitter)と呼ばれていましたが、実業家であるイーロン・マスク氏が2022年11月にツイッター社を買収してから、大きく変わりました。

その後は矢継ぎ早に「イーロン改革」が行われ、たとえば特定の思想に基づくメディア報道等が優先的・恣意的にタイムラインに流されることが激減しました(これについては当時、当ウェブサイトでも『ツイッターの解雇後にトレンド欄が明らかに変わった件』で現象自体は取り上げています)。

さらに、2023年7月頃には日本でもいわゆる「コミュニティノート」の機能が実装され、メディアにノートがつきまくる、といった事態が生じ始め、同じく2023年7月にブランド名を「X」に変更するなどし、あわせて収益化プログラムが始まるなど、この空間が目に見えて変化していったのです。

この3~4年ほどで、ツイッター改めXがどう変化したか。

これについては、残念ながら現時点で具体的にオールドメディアユーザーが何人減ったのか、といった具体的な数値をもってリアルタイムに論じることができるわけではありませんが、少なくともこの数年で、ネットの社会的影響力がますます強まり、オールドメディアの社会的影響力がますます減衰したことは間違いありません。

沖縄県議選(2024年)から変わり始めた

そして、当ウェブサイトで普段から指摘していますが、2024年頃からインターネット(とくにSNS)が、明らかに選挙に対して大きな影響を与え始めた事実を忘れてはなりません。

「逆風」のはずの自民党、沖縄県議選で候補が全員当選』で指摘しましたが、2024年6月16日に行われた沖縄県議会選挙(※定数48議席)では、自民党は立候補した20人のうち、無投票当選の1人を除く19人全員が当選。

当時与党だった公明党も4人立候補して全員当選したほか、日本維新の会も3人中2人が当選した結果、自公維3党で26議席に増えた一方、いわゆる左派政党は勢力を後退させました。

沖縄社会大衆党が3人中3人、日本共産党が7人中4人当選したものの、社民党と立憲民主党はそれぞれ5人ずつ擁立したにも関わらず当選者はどちらも2人に留まり、結果、この4会派で11議席で、残りは無所属が11議席です。

この点、一部メディアの報道だとこの沖縄県議会選の争点は普天間飛行場の辺野古移設だったのだそうですので、その報道が正しいのだとしたら、2024年6月時点で沖縄県の民意は「普天間移転」にGOサインを出した、ということになりそうです。

ちなみに沖縄県は衆議院議員総選挙では4つの小選挙区が設けられているのですが、同年の衆院選では2021年に続き、自民党が2選挙区を制したものの、残り2議席は日本共産党と社民党が1議席ずつを分け合っている格好でした。

しかし、今年、つまり2026年2月の選挙では、4選挙区がすべて自民党で占められるという結果に終わりましたので、沖縄の民意は少なくとも普天間飛行場の移設に賛成だと考えて差し支えないのではないでしょうか。

同じ2024年の都知事選、衆院選、兵庫県知事選

ただ、ネットが影響を与えた事例は、これだけではありません。

やはり2024年といえば、特徴的な選挙がほかに3つありました。

たとえば7月の東京都知事選では、最終的には現職の小池百合子都知事が三選を果たしたのですが、野党の立憲民主党に所属していた齊藤蓮舫参議院議員が日本共産党などのバックアップを受けて都知事選に出馬したものの、結局は2位にすら入れず3位に留まる惨敗ぶりを記録しました。

また、10月の衆議院議員総選挙では、メディアがそれまでさんざん「次の首相にふさわしい人物ナンバーワン」などと持ち上げ続けた石破茂氏が首相として率いた選挙で自民党がまさかの惨敗を喫し、単独過半数割れという事態に陥る一方、メディアが注目していなかった国民民主党が「手取りを増やす」を旗印に躍進。

続く11月の兵庫県知事選では、直前に兵庫県議会から不信任を突き付けられて失職した斎藤元彦氏がSNSでの支援を受ける格好で兵庫県知事に返り咲く結果となりました。

今になって思い返すと、やはり「SNSの社会的影響力上昇に伴う躍進」、と、単純に表現しきれない部分もあったのではないでしょうか。

キュレーションチーム解雇とXの影響力

イーロン・マスク氏買収後に旧ツイッター社内では「キュレーションチーム」がバッサリ解雇されたとの情報もありますが、著者自身もツイッター/Xのヘヴィ・ユーザーとして、この点については明らかに「左巻きメディア」のツイートが目に入る機会が激減したことを覚えています。

想像するに、マスク氏は「左巻きメディアの影響力」を明示的に排除するつもりでこうした改革を行ったのではなく、あくまでも技術者としての発想から組織再編を実施したに過ぎないのだと思われますが、その反面、いわゆるこの改革以後に「リベラル系」のメディアなどのSNSにおけるプレゼンスが低下したことは間違いありません。

こうした状況を踏まえると、「イーロン改革」こそが日本のその後の選挙に大変大きな影響を与えたのではないか、といった仮説が成り立つ余地が生じてくるのです。

そして、SNSの選挙への影響力は、少なくとも日本においては、間違いなく上昇し続けていると思われます。

たとえば、ネット民に不人気な石破首相(※当時)が自民党を率いていたころ、2025年6月の東京都議選と7月の参議院議員通常選挙で、自民党はどちらも惨敗を喫しています。とくに参議院議員選挙の方では自公合わせた連立与党ベースでも、参院側で過半数を割り込んでしまいました。

また、2025年10月に石破氏が退陣し、高市早苗総理大臣が誕生すると、今度は今年2月の衆院選で自民党が単独3分の2を超える圧倒的な議席を得て信任されました。公明党は連立から外れ、衆院側では立憲民主党と合体して「中道改革連合」を形成したにも関わらず、です。

政治家側もXなどを使いこなす必要がある

これなどは結局、石破前首相の支持率は高齢者ほど高く、若年層ほど低かったこと、高市総理の支持率は高齢者ほど低く、若年層ほど高いという傾向があること―――などとも軌を一にしているのかもしれません。

著者などは高市総理が100%無条件に素晴らしい総理大臣だとは考えておらず、高市政権が長期化するかどうかはどこまでネット民の意見に真摯に向き合うかではないかと考えている人間のひとりですが、少なくとも高市総理や主要閣僚らは多くの場合、Xをうまく使いこなしていることは間違いありません。

石破前首相や石破内閣の主要閣僚がネットを苦手としていて、しかも、国政上の諸課題(たとえば税制)を巡って、政権幹部・自民党幹部らからは、ネット民を挑発するような発言が頻発していたこと(たとえば『石破氏トンデモ発言「日本の財政はギリシャより悪い」』等参照)とは対照的です。

いずれにせよ、Xはそのポスト構造の短さに加え、動画、音声、画像など文字情報以外にもさまざまな情報を載せられるようになったという特徴ゆえ、おそらくは新聞、テレビを含めたオールドメディアを駆逐していく可能性が出てきていることについては、指摘しておく必要があるでしょう。

日本語翻訳されるようになったポスト群

こうしたなかで、イーロン・マスク氏や Doge Designer 氏、あるいはX公式アプリなどが相次いで情報発信している通り、日本時間の30日午前中あたりから、外国人の投稿がいっせいに日本語に自動翻訳されてタイムラインに表示され始めたのです。

たとえばマスク氏の日本時間30日午前8時28分時点のポストを見ると、英語で表記されています。

ところが、このポストをクリックしてXのプラットフォームの側で閲覧すると、自動で日本語に翻訳されているようなのです(一部、この機能が使えない端末もあるようですが…)。原文については『原文を表示』ボタンを押せば表示されます。

すなわち、私たち日本人にとってみれば、海外で起きていることがリアルタイムで日本語に翻訳され、Xのタイムラインに表示されることになります。新聞、テレビの外国のNEWSを読まなくても、外国で発生していることがリアルタイムでSNSに日本語で表示されるのです。

なかなかに、革命的な変化です。

精度の問題はあるがそれも時間の問題

もちろん、このXの翻訳に問題がないわけではありません。表示されている日本語と元の言語(たとえば英語)を比較すると、ところどころ誤訳が含まれているほか、意味を真逆に表示してしまっているのではないかという事例がないではありません。

また、ポストによっては翻訳がうまく機能しておらず、原文のままで表示されていたり、元ポストに画像などが含まれている場合は、その画像に記載されている文章が原文のままとなっていたりもしますので、まだまだ万全というわけにはいきません。

ただ、これもAIの Grok のプログラム進歩で徐々に改善が見込める話でしょうし、なにより、私たちはリアルタイムでさまざまなNEWSを知ることができるのです。

なかなかに興味深い時代ですね。

そして、今回のイーロン改革で、じつはもうひとつ大きな効果があります。

それは、私たち日本人のX上の会話も、外国人から丸見えになってしまう、ということです。

実際、この数年、すっかり普及したXで私たちは多くの対話を行っています。

著者自身も以前、とある混雑路線を利用していたところ、ふと周囲を見渡した際に他人様のスマートフォンの画面が目に飛び込んできたのですが、そこに自分自身がツイートした内容が表示されていて赤面したことがあります。それだけスマホやSNSが一般化してきた、ということでしょう。

バズは国境を越える

そして、下手をするとバズも国境を越えるかもしれません。

これは著者の持論ですが、とくに先進国同士だと、(欧米のようなキリスト教国、日本のような仏教・神道国家という違いはあれど)日常生活の送り方を含めた人々の考え方や行動パターンにさほど大きな違いはないため、案外、先進国民同士は共感し合えるのではないかと思います。

そうなって来ると、一般市民同士が本当の意味で、国境を越えて連帯し始めるかもしれませんし、どこかの国の制度を巡って国境をまたいで批判が起きることだってあり得ます。もしかして日本の税金・社会保険料についても、外国との比較でその在り方にメスが入る可能性だってあります。

本当に面白い時代が到来しつつあるのではないでしょうか。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    日本発報道はこれまで常に海外に歪んで報じられてきました。
    当方が今でも思い出せるのは、BBC 特派員の間抜けさです。

    故安倍晋三首相の一般葬儀にあたり靖国神社周辺に長い長い行列ができたことを報じる BBC 記者は、日本では安倍晋三氏は憎まれているはずなのに、こんなにたくさんの日本人が故人を悼むために列を作っていると、驚きを強調する動画を世界発信してみせた。彼はアジア各国の長い時事記事をたくさん書いおり、露出の多い有名なアジア通と見なされていたはずです。
    海外報道は、「左巻きで」「独善家で」「横柄な」日本の主要メディアの文章の翻訳を通じて、日本を世界に紹介し世界に報じて来ました。ですから、日本は伝統的に歪んで報じられ続けてきた。フジヤマ芸者から少しも進化してこなかった。
    ですが、今や SNS や Youtube 動画のコメント欄を通じて、世界中の意見感想見解を得ることができるようになった。報道機関を通じてものごとを知り感じる「過程」が完全にバイパスされて、自動翻訳を通じた実時間知識共有になったのです。

    衝撃は世界同時である。
    新聞記者や TV 局の尊大な世界観・横柄な報道手法は、情報流通が即時化・全世界化されたことにより、2番目3番目に価値が格下げになった。「報道商品」と一次情報とでは性質が異なる。時事報道はカネにならない。決してカネを払ってもらえくなったのです。

    1. 匿名 より:

      こんなニュースもありました。
      海外「日本人を舐めてたわ(笑)」 日本のネット民の面白さ、ついにアメリカ国民にバレる
      http://pandora11.com/blog-entry-5684.html

      1. 元雑用係 より:

        海外のアニオタはかなり前から気づいていたようですが、これで裾野が広がりそうですね。
        いろんな意味で壁がなくなりそう。

    2. 元雑用係 より:

      出羽守も生きづらい世になるでしょうなー。

    3. はにわファクトリー より:

      新聞社国際部は高いコストを払って特派員を世界展開させている。だから、コストに見合う「ハイクオリティー記事」を日本に本当に送り届けて来ているか、そうでなくて社費丸抱えの「上級駐在員」として本社が気に入る程度に仕事してるフリしているだけなのか、厳しい人事査定をすべきです。だって、現地の情報は海外ニュースメディアや Youtube 動画、SNS を通じて即時無料読み放題です。現地に居るからこその「ハイブローな文章」を作れなければ、活動コストに見合わない無駄飯食い呼ばわりされても仕方ない。

  2. 引きこもり中年 より:

    辺野古事件のご遺族の投稿も、外国語に翻訳されるということでしょうか。

  3. 元雑用係 より:

    今日のxはお祭状態ですな。
    https://x.com/i/trending/2038748747262574929

    これ今まで「翻訳する」ボタンが「原文を表示する」に変わっただけかと思ったら、リコメンドの方法も変えているみたいですね。
    今までは海外発信者のポストはタイムラインに流れにくかったです。
    これがどんな影響を社会に与えるか、楽しみです。

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