新聞と折込の広告市場規模は四半世紀で3分の1に縮小
株式会社電通が今年も『日本の広告費』のデータを公表しました。これによると2025年の広告費は史上初めて8兆円の大台に乗せたのですが、なんと驚くことに、その半額がネット広告費だったのです。しかもネット広告費は昨年と比べ1.1倍に増え、2000年と比べるとじつに70倍近くに成長した格好です。一方、広告費全体が伸びているにも関わらず、マスコミ4媒体広告費は前年比で落ち込みました。
目次
『日本の広告費』の2025年版が公表
当ウェブサイトでは毎年「定点観測」的に取り上げている話題がいくつかあるのですが、そのひとつが、株式会社電通が毎年2月末から3月中旬ごろにかけて公表している、『日本の広告費』と呼ばれるデータです。
このレポートの存在は、当ウェブサイトに読者コメントを寄せてくださっていた「埼玉県民」様という読者の方から数年前に教えていただいたもので、あわせて2000年以降の広告費データをメールで頂戴したのですが、これについては現在でも大切に使わせていただいています。
そして、今年もこのデータが出てきました。
データの原文については株式会社電通ウェブサイトに昨日、アップロードされました。
2025年 日本の広告費
―――2026年03月05日付 株式会社電通HPより
ネット広告費はついに4兆円の大台に!
これを受けて、著者自身が保有している、2000年から24年までの広告費データ(とくにマスコミ4媒体、ネット、PM)を足し合わせてアップデートしたのが、こんなグラフです(図表1)。
図表1 広告費(ネットvsマスコミ4媒体)
グラフで目立つのがネット広告費の伸びであり、ネット広告費は、ついに4兆円の大台に乗せました。
その一方で低調なのがマスコミ4媒体です。
マスコミ4媒体とはテレビ、新聞、雑誌、ラジオのことですが、この4媒体の広告費はこの25年間、ほぼ右肩下がりで減り続けている一方、ネット広告費が激増していることがわかります。これをもう少し精緻な金額にしたうえで、前年比を示すと、図表2のような具合です。
図表2 媒体別広告費の増減(2024年→2025年)
| 媒体 | 2024年→2025年 | 増減 |
| 総広告費 | 7兆6730億円→8兆0623億円 | 1.05倍に拡大 |
| マスコミ4媒体 | 2兆3363億円→2兆2980億円 | 1.64%の減少 |
| うち新聞 | 3417億円→3136億円 | 8.22%の減少 |
| うち雑誌 | 1179億円→1135億円 | 3.73%の減少 |
| うちテレビ | 1兆7605億円→1兆7556億円 | 0.28%の減少 |
| うちラジオ | 1162億円→1153億円 | 0.77%の減少 |
| ネット | 3兆6517億円→4兆0459億円 | 1.11倍に拡大 |
| PM | 1兆6850億円→1兆7184億円 | 1.02倍に拡大 |
| 折込 | 2442億円→2354億円 | 3.60%の減少 |
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』およびウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』読者の「埼玉県民」様提供データをもとに作成)
総広告費自体が昨年と比べて約1.05倍に拡大し、史上初めて8兆円の大台に到達しているのも印象的ですが、広告費の伸びを牽引しているのは前年と比べ1.11倍に増えたネット広告であり、マスコミ4媒体は前年比1.64%の減少となっていることがわかります。
個人的には「フジテレビ問題」もあり、テレビ広告費はもっと減るのではないかと思っていたので、テレビが0.28%の減少に留まったというのは意外感もありますが、ただ、マスコミ4媒体広告費とネット広告費は、いまや倍近い差が開いてしまったというのは印象的です。
四半世紀で比較する栄枯盛衰
ちなみに図表2は前年比較ですが、これを(データが存在する)2000年と比較してみたら、もっと凄いことになっています(図表3)。
図表3 媒体別広告費の増減(2000年→2025年)
| 媒体 | 2000年→2025年 | 増減 |
| 総広告費 | 6兆1102億円→8兆0623億円 | 1.32倍に拡大 |
| マスコミ4媒体 | 3兆9707億円→2兆2980億円 | 42.13%の減少 |
| 新聞 | 1兆2474億円→3136億円 | 25.14%に縮小 |
| 雑誌 | 4369億円→1135億円 | 25.98%に縮小 |
| テレビ | 2兆0793億円→1兆7556億円 | 15.57%の減少 |
| ラジオ | 2071億円→1153億円 | 44.33%の減少 |
| ネット | 590億円→4兆0459億円 | 68.57倍に拡大 |
| PM | 2兆0805億円→1兆7184億円 | 17.40%の減少 |
| 折込 | 4546億円→2354億円 | 48.22%の減少 |
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』およびウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』読者の「埼玉県民」様提供データをもとに作成)
これでみると明らかなとおり、広告費全体で見るとこの四半世紀で1.32倍に増え、とりわけネット広告費が590億円から4兆円超、すなわち68.57倍に拡大している一方、マスコミ4媒体については42.13%も広告費が減っているのです。
総広告費は8兆円…うち半数がネット
日本が「失われた30年」と呼ばれるデフレ期を経験してきたこと、昨今はインフレが激化していることなどを踏まえると、マスコミ4媒体広告費が伸び悩んでいることは明らかですし、また、ネット広告費が右肩上がりでぐんぐん伸びていることからも、両者の差は今後とも開く一方であろうと予想できるところです。
しかも、広告産業の成長は、ネット広告が牽引しています。
図表4が、総広告費の推移です(※「PM」はプロモーション・メディア)。
図表4 総広告費
これでもわかるとおり、総広告費の伸びはネットが明らかに牽引しています。総広告費は史上初めて8兆円の大台に乗せたのですが、いまやそのちょうど半分がネット広告費、というわけです。
PMも伸びているのですが、やはり大きく伸びているのはネットであり、しかも毎年グングンと増え続けています。これに対し、マスコミ4媒体広告費については押し出されるように、市場が縮小しているようにも見受けられるのです。
新聞業界の広告市場規模は3分の1に縮小した!
なお、新聞業界に関しては、新聞広告費だけでなく、プロモーションメディア(PM)のジャンルのひとつである「折込広告」とあわせて確認する必要がありますが、これもなかなかに印象的です(図表5)。
図表5 新聞広告費と折込広告費
新聞広告費、折込広告費を合計した広告費は、2000年に1兆7020億円(新聞1兆2474億円、折込4546億円)の市場規模がありましたが、これが2025年には5490億円(新聞3136億円、折込2354億円)にまで減少してしまいました。市場規模としてはほぼ3分の1です。
「よく3分の1で留まっているものだ」と見るべきなのか、「3分の1にまで圧縮されてしまった」と見るべきなのかはわかりません。
ただ、それ以上に興味深いのは、折込広告費の健闘ぶりかもしれません。この25年で新聞広告費が4分の1に縮小したのに対し、折込広告費も(減るには減ったものの)半減まではしていないのです。
よく新聞を購読し続ける理由を巡って、一部の人が冗談めかして「折込広告が目当てなんですよ」、などと話したりしていますが、案外、データから見ると「折込チラシ目当てで朝刊を取り続けている」という事例は多いのかもしれません。
個人的に、折込チラシ目当てで古くて不正確な情報が印刷された紙の束を毎日投函されるサブスクに年間5万円前後も払うつもりはありませんが(笑)、それにしても世の中にはいろんな人がいるものだと思う次第です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
なお、この『日本の広告費』のデータに関しては、一種の基礎資料として、今後も当ウェブサイトではしばしば引用し続ける予定ですが、差し当たって日本のメディアの将来性に関する記事を、おそらくは近日中に公表すると思いますので、どうかご期待下さい。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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経営者を悩ます売り上げ蒸発
無為無策の果て 溶解して行く新聞産業
こんな新聞風週刊誌風のなんちゃって見出しを想起しました。
「折込チラシ目当てで朝刊を取り続けている」という事例は多いのかもしれません。
⇒「折込チラシについている『クーポン券・割引券』目当てで朝刊を取り続けて」いました
配達員不足が叫ばれていますが、ここに(不逞)外国人労働者が流入することを何よりも危惧しています。
販売店は地域の世帯情報を独自のネットワークでほぼ網羅している(それこそ購読していない世帯も)ので、これを悪用されるとそれこそ窃盗や強盗の手助けになりかねません。
マスコミ4媒体の広告費を落ち込みと言っても、新聞+雑誌と(民放)テレビ+ラジオに分けて考えるべできでは。なにしろ、新聞+雑誌なら(理論上は)本体を値上げすればよいのですから。
蛇足ですが、特定野党が、「テレビ局に補助金を入れろ。そのための予算を編成しろ」と言い出すのでしょうか。