対日輸出管理「さらに強化」は中国政府手詰まりの証拠

中国政府は何がやりたいのか

中国政府は24日、日本の企業・団体に対し、軍民両用品の輸出を禁じたり、輸出規制の監視団体に指定したりするなどの措置を発表しました。日本政府が対抗措置として中国人留学生を日本の大学から締め出したり、日本企業が中国脱却を加速させたりする可能性が高いと、どうして気付かないのでしょうか。中国は果たして何がやりたいのでしょうか。中国政府は手詰まりなのでしょうが、それにしても疑問です。

レアアース泥の揚泥に成功:「ちきゅう」が清水に帰港

以前の『レアアースカード手放した中国…残るはパンダカードか』などでも取り上げたとおり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は南鳥島近海の日本のEEZ水深約6000メートルの海域に眠るレアアース泥採取の実証研究を行っており、先日、揚泥に成功したばかりです。

南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の状況について(速報)

―――2026.02.02付 JAMSTECウェブサイトより

これに関し、探査船「ちきゅう」が今月14日、母港である清水港に帰港したことが報じられています。

「まさに歴史的快挙」“レアアース泥”回収に成功 探査船「ちきゅう」が清水港に帰港 (静岡)

―――2026/02/16 18:25付 Yahoo!ニュースより【Daiichi-TV(静岡第一テレビ)配信】

おそらく現在は、同探査船が持ち帰ったレアアース泥の分析作業に取り掛かっているのだと思いますが、それにしても改めて、なかなかすごいことが起きていると断じざるを得ません。

莫大な海底資源:課題もあるが続報が待たれる

一部報道等によれば、同海域付近におけるレアアースの埋蔵量は、推定で日本全体の需要量の数百年分にも相当するとされており、また、レアメタルとされるコバルトやニッケルなどを豊富に含む「マンガンノジュール」と呼ばれる海底鉱物資源も密集していることなどが判明しています。

※1 レアアース17種

スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム

※2 レアメタル31種

リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマスの30種と上記レアアース

もちろん、深海数千メートルからこれらを商業ベースで採取するには技術的・コスト的な多くの課題が残されていますが、それでもまずは試掘・揚泥に成功したことで、大きな技術的ハードルをひとつ乗り越えたことは間違いありません。

読売新聞などの一部報道によれば、来年2月以降は1日最大350トン程度の泥を回収するなどの本格的試掘に着手する方針だそうですが、いずれにせよ、続報が待たれるところです。

水深6000m近い海底からレアアース含む可能性のある泥回収、技術的な最大の壁越える…試掘成功発表

―――2026/02/02 19:29付 読売新聞オンラインより

中国が日本に講じた措置

さて、このJAMSTECの実証実験自体は、昨日・今日いきなり始まったものではありません。

じつは、南鳥島近海に資源が豊富に眠っているとする事実は広く知られていたものではありますが、日本は官民挙げて、この海洋資源採取に取り組んできており、JAMSTECの試みもその一環、というわけです。

ただ、この話題がここまで注目されているのには、やはり「脱中国」が国単位の大きな課題として認識され始めていることがあります。

高市早苗総理大臣が昨年11月、衆院予算委員会で台湾有事が日本にとっての(集団的自衛権発動の要件となる)「存立危機事態」に該当し得ると答弁したことを受け、中国政府が日本に対してさまざまな圧力を強めているからです。

中国は日本に対し、高市発言の撤回を執拗に要求していますが、その一部を列挙するだけでも、なかなかに壮絶です。

中国が日本に講じて来た「制裁措置」
  • SNSを使い日本人を脅す
  • 日本向けの団体旅行の自粛
  • 日本製のアニメの上映延期
  • よくわからない会合の中止
  • ロックコンサート公演中止
  • 日本人歌手の歌中断→退場
  • 自衛隊機FCレーダー照射
  • パンダの貸与期限の不延長
  • 世界各国に向けた日本批判
  • 日本に対する輸出管理強化
  • 総領事へのアグレマン遅延

(【出所】報道等をもとに作成)

効いてないし中国に跳ね返っている

ただ、もっと困ったことがあるとしたら、これらの措置が日本に対し、圧力としてほとんど機能していないどころか、むしろ中国自身にとって跳ね返っていることかもしれません。

とりわけ昨年の『ネット大喜利でオモチャにされおちょくられる中国政府』などでも取り上げた、中国政府高官らがSNSを使い、日本国民に対し日本語で脅しをかけて来た件については、その典型例といえるのではないでしょうか。

要するに、困っているのはじつは中国の側ではないか、という仮説がここで成立するわけです。

「SNSを使った日本国民への脅し」以外の項目も、正直、悪手に見えてなりません。中国政府の目的が高市総理に対し答弁の撤回(あるいは最低でも台湾有事に際しての不介入の明言)を求めることにあるのだとしても、これらの一連の「制裁措置」が機能しているようには思えないからです。

その典型例が、レアアース等の輸出制限でしょう。

当ウェブサイトでは『ついに中国政府が禁断の対日セルフ経済制裁を発動か?』でいち早く指摘してきたとおり、中国の対日制裁措置は、中国にとってはセルフ制裁となり得るものです。なぜなら、中国の輸出制限措置自体、日本企業にとっては「サプライチェーンに中国を組み込むことのリスク」を意識させるからです。

この点、じつはあまり知られていませんが、中国側の措置では「軍民両用品の対日輸出禁止措置」などが盛り込まれてはいるものの、具体的な品目が公表されておらず、本当にレアアースなどが輸出制限の対象となっているのかについては定かではありません。

日本企業の脱中国加速へ

ただ、この「具体的な品目を明らかにせず、輸出制限措置を警告する」という行為は、中国が予見可能性を自ら壊し、これによってサプライチェーンに関する自国への信頼を喪失させているのとまったく同じです。企業サイドにしてみれば、調達計画が立たなくなるからです。

実際のところ、日本企業(たとえば商社など)は、レアアースを含めた戦略物資の中国依存からの脱却に向け、豪州など中国以外の供給源を確保ないし開発する動きにも出ていますが、それだけではありません。

冒頭に取り上げた南鳥島資源開発を含めた自前資源開発の動きも、結果的には日本の脱中国の動きを加速させるものですし、これに加えて日本はG7諸国などとの間で、レアアース類の供給多角化で合意しています(『中国の対日制裁発表からたった1週間で国際社会が団結』等参照)。

こうした資源調達多様化という動きは、高市総理の台湾発言と必ずしも関連するものとは限りませんが、結果として中国による異常行動がそれを加速させたという面があることも間違いないでしょう。

あるいは、今月の総選挙で高市総理率いる自民党が単独で衆院の3分の2を超える議席を獲得して圧勝したのも、もしかしたら中国の一連の行動が日本国民を刺激した、という可能性もありそうです。

ついでに余談ですが、『偏向報道を排除した日本人を中国が騙すのは百万年早い』でも指摘したとおり、中国はSNSを使って高市総理や自民党を貶めるかのごときネット工作を行っていた疑いもあるものの、これらの工作もことごとく裏目に出てしまったといえるのかもしれません。

中国が企業・団体への追加措置

さて、こうした中国の動き、日本の選挙期間中は多少おとなしかったのですが、昨日はこんな話題が出てきました。

中国、軍民両用品の対日輸出禁止 三菱造船など日本の20社・団体対象

―――2026年2月24日 13:41付 日本経済新聞電子版より

中国、日本企業に軍民両用品の輸出禁止 三菱重や川重など防衛20社

―――2026年2月24日午前 GMT+9付 ロイターより

報道等によると、中国政府は24日、三菱重工業や川崎重工業、IHI、三菱造船、富士通、防衛大学校やJAXAなど20の企業・団体に対し、軍民両用品の輸出を禁じるとともに、東京科学大学などを含めた20の企業・団体に対しても、輸出規制の監視団体に指定したのだそうです。

なんだか、めちゃくちゃになってきました。

中国政府、いったい何がやりたいのでしょうか。

とくに、下手に大学などを対象にした措置を講じれば、日本政府が対抗措置として中国人留学生を日本の大学から締め出す(たとえば新規留学生にビザを出さなくなる)などの対抗措置を講じられる可能性があると、なぜ想像しないのでしょうか。

なかなかに、意味がわかりません。

株主説明責任上、中国ビジネスが続けられなくなった

それに、今回指定された企業にとっては、株主説明責任の観点からも、もはやこれ以上、中国から重要な物資調達を行うことは不可能です。これらの企業(あるいは名指しされていないものの、これらと同業の他社など)にとっては、株主総会に向け、想定問答集で中国ビジネスの方針を示す必要があるからです。

常識的に考えたら、これらの企業が対中ビジネスを「拡大する」ことはもはやあり得ない話であり、対中直接投資に関しても、それを絞っていくのは当然でしょう。

いずれにせよ、中国政府が手詰まり状態にあることは間違いありません。どんなに制裁措置を重ねても、高市総理は決して台湾答弁を撤回しないだけでなく、衆院選で自民党が歴史的圧勝を遂げたこともあり、国民が高市総理の姿勢を支持していることが明白だからです。

ただ、だからといって、好き好んで日本企業を敵に回すかのような中国政府の行動は、もはや奇行の域に達しているようにも思えます。

中国は一体なにがやりたいのでしょうか?

疑問です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    – 中国新幹線車両や通信施設の基幹部品が中国へ供給されることがなくなり、社会維持が困難になる。
    – 彼らは内製を目論んでいるのだろうから、技術とノウハウを盗むための産業スパイ活動が活発化する。
    – 退職したシニアや職場に見切りをつけて他社へ転職していった技術者が危ない。
    – 中国人留学生は決して信用してはならない。

    いわゆる「千人計画」に引っかかって厚遇高給で中国に渡った大企業出身者や大学人は多いのです。一本釣りを喰らい、札束という餌をぱくりとやる。実に嘆かわしいことです。次狙われるのはハイテク技術者、零細だが基幹技術を支えて来た日本の中小企業です。

    ダメ企業の代表例はたとえば機微部品を中国に外注しようとした住友重機械工業のようなところです。

  2. 匿名 より:

    制裁措置に「自国民への二分間憎悪訓練」も加えてください。

  3. はにわファクトリー より:

    彼らの振る舞いを理解するには、中国人のものの考え方、すなわち中国人の世界観・社会観・人間観に踏み込む必要がある。

    – こんなことをされると怖い
    – なぜなら自分たちこそそうやって相手を脅して来た

    奇行に見える振る舞いは、当サイトでしばしば言及される「自己投影」が形になったものです。
    非難される前に相手を一方的になじる。先んじたつもりでいる。言葉の一つ一つは自分が言われて困ることをゲロっているわけです。

  4. 匿名 より:

    対日輸出管理に対して対中輸出管理をぶつけるのは上策とは思えない。それよりも甘々だった既存のルールを きっちりと運用するだけで十分。また公約に挙げていたスパイ防止法の成立などを加速させ これに反対する党内勢力には党規違反で厳しく対応すべき。さらに公正な報道なども現行法を真面目に運用するだけ(もしかしたら言及するだけでも)で良い。またまた中国の援護射撃に感謝。 三菱重工などの株価が上がれば ますます良い。

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