中国人客が減った結果⇒決済額はむしろ前年同月比増加

以前、テレビ記者が小泉防衛相に対し、「衆院選で自民党が圧勝したことを受けた安全保障上の懸念点を教えてほしい」と言い放った件を取り上げましたが、この手の「日本が強くなれば中国を刺激することになり望ましくない」などとする言説は新聞、テレビ、左派政党などが好きなロジックでもあります。ただ、彼らにとって不都合な事実があるとしたら、中国の対日制裁措置はほとんど日本経済に影響を及ぼしていない、という点でしょう。その一例が、日経新聞が報じた、三井住友カードの決済額データです。

「自民党が勝ったら安全保障に懸念が生じる」?

少し前の『TV記者の「自民圧勝による安全保障上の懸念」が話題』では、とあるテレビ記者が小泉進次郎防衛相に対し、「衆院選で自民党が圧勝したことを受けた安全保障上の懸念点を教えてほしい」、などと言い放った件を話題として取り上げました。

該当する動画はYouTubeで公開されているほか、文字起こしは2月10日付の『防衛大臣記者会見 令和8年2月10日(火)11:02~11:24』でも確認することができます。

防衛省ウェブサイトを参考にした文字起こしは次の通りです(※記者名は伏せておきますが、動画を視聴したらすぐにわかると思います)。

文字起こし

記者

●●テレビの●●と申します。衆院選の関連で1点、お伺いさせてください。衆院選で自民党がですね、大勝し、政権基盤が強固になりましたが、政権基盤が強固になったことで、中国との向き合いなど安全保障への影響はどのような影響があるとお考えでしょうか。また、安全保障上、仮に懸念される点があるようでしたらそちらもあわせて教えてください。

大臣

ちょっと確認をしたいんですけれど、選挙が終わって、政権基盤が強固になったことで、安全保障上懸念されるってどういうことですか?

記者

仮にですね、相手国からより強い対抗姿勢を見せ、あまりないと思うんですけれども、そういったことも、もしおありでしたら。

大臣

それって、だから選挙負けた方が安全保障上の懸念がないってことですか。

記者

いや、違います。このようなすごく大勝したことによって、万が一そういったマイナス面が考えられるとしたらそれもあわせてというような趣旨でお伺いしました。

<以下略>

…。

文字起こししたらこんな具合ですが、ただ、実際に動画を視聴してみると、記者はもっとしどろもどろしていることがわかります。

左派政党が見るも無残に議席を減らした事実

正直、この手の「日本が強くなったら中国を刺激することになる」といった発想、個人的には違和感しかありません。ひと昔前によくあった、「日本が武装したら相手国を刺激して攻撃される可能性が高まる」、「だから非武装中立を維持すべき」、といった思想にもつながるものだからです。

今の若い人たちは信じられないかもしれませんが、日本でもほんの20年くらい前までであれば、この手の「日本が武装したら相手を刺激し、相手が攻めてくる」、といった言説は、それなりに力を持っていました。

もちろん、それを主張していたのは一部の新聞やテレビが中心ですが、特定の左派政党などもこうした主張が大好きであり、この手の「相手を刺激することになるから武装するな」論は、SNSなどでも悪目立ちしています(たとえば最近も「 #ママ戦争止めてくる 」などの妙なハッシュタグが流行っていたりもします)。

ただ、昨今はSNSの社会的影響力が強まっていること、そして今般衆院選で左派政党が見るも無残に議席を減らしたこと―――などからもわかるとおり、こうした「非武装論」は、少なくとも現時点において、日本社会のマジョリティからは支持されていないと考えて差し支えないでしょう。

中国の対日制裁措置の事例

もっとも、テレビ記者と小泉防衛相のこの短いやり取りからもわかるとおり、オールドメディアや左派政党界隈などでは、この手の「中国を刺激するな」論はそれなりに主流の考え方の地位を占めている可能性があります。

そして、中国としては、この手の「中国を刺激するな」論が好都合であることは想像に難くありません。

昨年11月、高市早苗総理大臣が国会答弁で台湾有事が日本にとっての存立危機事態となり得るとする認識を示したことに対し、中国側が強く反発し、日本にさまざまな「対抗措置(?)」を講じているという事実は、その証拠でしょう。

中国が日本に講じて来た「制裁措置」
  • SNSを使い日本人を脅す
  • 日本向けの団体旅行の自粛
  • 日本製のアニメの上映延期
  • よくわからない会合の中止
  • ロックコンサート公演中止
  • 日本人歌手の歌中断→退場
  • 自衛隊機FCレーダー照射
  • パンダの貸与期限の不延長
  • 世界各国に向けた日本批判
  • 日本に対する輸出管理強化
  • 総領事へのアグレマン遅延

(【出所】報道等をもとに作成)

ただ、これらの措置のなかには、さしたる実効性がないもの、あるいはむしろ中国自身にマイナスの影響を与えるものも含まれており、個人的に「中国はいったい何がやりたいのか?」と疑問を覚える項目も多々あります。

レアアース輸出制限が中国にとって悪手だった理由

その典型例がレアアースの輸出制限です。これが中国にとっては完全な悪手だったのです。

レアアースは現在、中国が世界生産の多くを占めている品目も多いのですが、中国がその禁輸措置に乗り出すのではないかとする懸念が高まった際の日本の動きは迅速でした。中国の狙いとは真逆に、国際社会に対し、この中国の脅威が広く共有されてしまった格好です。

まず、片山さつき財務大臣は重要鉱物の対中依存脱却に向けて、米国、欧州連合(EU)、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、豪州、インド、メキシコなどと合意してしまいました(『中国の対日制裁発表からたった1週間で国際社会が団結』等参照)。

続いて日本は現在、国を挙げてレアアースなどの調達源の多様化に乗り出しており、とくに南鳥島レアアース泥の採取については、その第一段階である接続実験を成功させた状況にあります(『レアアースカード手放した中国…残るはパンダカードか』等参照)。

いわば、中国はみずからレアアースカードを手放した(というか投げ捨ててしまった)ともいえます。

最近では中国が日本向けのレアアース輸出を複数件許可したという報道もありますが(『手遅れの中国政府:今さら「脱中国」に気づいても遅い』等参照)、日本の企業社会が中国リスクを強く認識したことは間違いなく、しかも日本政府は国際社会を巻き込んで事態を大ごとにしてしまいました。

もちろん、この日本のレアアース多角化の動きは高市総理就任前からすでに始まっていたものであり、11月の高市発言を契機に始まったものではありませんが、それだけ日本社会では重要物資の中国依存への危機意識が高まっているのです。

すなわち、中国が日本に対し、「賢明ではないファイティングポーズ」をとればとるほど日本社会がこれに反応し、脱中国の動きを加速させる効果しかもたらさない、というわけです。

中国の措置に実効性なし:決済額で見る脱中国

ただ、なぜ中国がこんな「賢明ではないファイティングポーズ」を日本に対して取るのかといえば、それはおそらく、日本のメディアや左派政党、左派活動家らが大騒ぎすることを期待しているからです。

いわく、「パンダ回収で日本経済には数百億円の損害が生じた」。

いわく、「レアアースの独自開発はコストがかかる」。

いわく、「日本のコンテンツ産業にも大きな損害が生じる」。

いわく、「中国人観光客が来なくなってしまう」。

「パンダで数百億円の経済損失」、「コンテンツ産業の損失」などについても算定根拠もよくわかりませんし、また、レアアースは多くの場合、製品に使われるのも微量であるため、多少コストが上がったところで日本経済に与える影響は微々たるものだったりもします。

ただ、それ以上に興味深いのが、中国の措置には多くの場合、実効性がないことです。

こんな話題がその典型例かもしれません。

日経電子版の18日付の報道によると、三井住友の決済額データで2025年12月の消費額は前年同月比で16%上昇。国・地域別でみると中国客の消費が51%減ったものの、中国以外の国・地域からの訪日客の消費が伸びたのだとか。

ちなみに内訳としてはフランス(+58%)、英国(+45%)、台湾(+38%)、米国(+31%)、韓国(+27%)、豪州(+22%)―――などとなっているほか、シンガポールやタイ、香港なども伸びており、さらに2019年の月平均を100とした場合の2025年12月の消費額は230だったのだそうです。

対日制裁のつもりが対日制裁になっていなかった

記事では「中国人客はスマホ経由のQRコード決済なども多い」ため「カード決済額だけでは実態を把握しきれていない可能性はある」、「中国人客が多かった業種では減少が目立つなど業種別に濃淡はある」などと述べられています。

ただ、当ウェブサイトの先月の『「旧正月の訪日自粛呼びかけ」は対日制裁にすらならず』などでも指摘したとおり、日本政府観光局(JNTO)のデータで見ても、中国人客が減少していても中国人以外の訪日客が増えているという状況を踏まえると、中国のノージャパンが日本経済に与える影響は限定的です。

なにより、中国が日本に対し、さまざまな経済的嫌がらせを仕掛けてきたことで、却って日本国民が団結し、日本が国を挙げて脱中国を進めようとしていることは間違いありません。

実際、対中強硬派とみられる高市総理が率いる自民党が衆院単独3分の2超という空前の勝利を遂げた事実は、中国による対日措置がことごとく裏目に出ていることを意味しているとともに、日本社会が新聞・テレビといったオールドメディアの支配を脱しつつあることを象徴していると考えて良いでしょう。

著者などはかつて、「中国は狡猾な国であり、外交面でも狡猾にふるまい、日本を国際社会で貶めようとしている」と考えていたのですが、ここに来て完全に流れが変わってしまった気がしてなりません。

XなどSNSでも中国政府当局者が日本を非難していると、外国人が日本を擁護する、といった姿を見かけるようになってきたからです。

いずれにせよ、中国のご自慢の対日制裁措置が本当に「対日制裁措置」として機能しているのかどうか、じっくりと見届ける価値はありそうです。

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