中国が方針転換に失敗か…台湾答弁の撤回を改めて要求

中国政府が高市早苗総理大臣に対し、台湾関連答弁を撤回させようとして講じて来たさまざまな「制裁措置」が、ことごとく狙いを外し、それどころか中国自身の立場を弱くしてしまっていることは、すでに当ウェブサイトで何度か指摘してきました。しかも、高市総理率いる自民党は総選挙で3分の2を超える議席を獲得して圧勝し、台湾答弁を引き出した岡田克也氏は選挙で落選するというオマケがつきました。それなのに、中国政府は方針を撤回せず、高市総理に対し、改めて台湾発言の撤回を求めたそうです。

中国の対日制裁措置

高市早苗総理大臣が昨年11月7日、国会で立憲民主党の岡田克也衆議院議員の質問に対し、台湾有事が日本にとっての存立危機事態となり得ると答弁したことなどを受け、日中関係が悪化(※あるいは中国が一方的に激高)する展開が続いてきました。

中国は日本に対し、なかなかに驚くべき「制裁措置」の数々を講じてきたのです。

中国が日本に講じて来た「制裁措置」
  • SNSを使い日本人を脅す
  • 日本向けの団体旅行の自粛
  • 日本製のアニメの上映延期
  • よくわからない会合の中止
  • ロックコンサート公演中止
  • 日本人歌手の歌中断→退場
  • 自衛隊機FCレーダー照射
  • パンダの貸与期限の不延長
  • 世界各国に向けた日本批判
  • 日本に対する輸出管理強化
  • 総領事へのアグレマン遅延

(【出所】報道等をもとに作成)

中国政府の狙い(想像)と実際の効果

これだけの措置を講じて来た狙いは、おそらくは①高市総理が台湾関連答弁を撤回することであり、高市総理がそれをしない場合は②日本国民を通じて圧力を掛ける、③日本企業を通じて圧力を掛ける、④国際社会を通じて圧力を掛ける―――ことにあると考えられます。

中国の狙い(想像)
  • ①高市総理に対し台湾関連答弁を撤回させること
  • ②日本国民を通じて日本政府に圧力を掛けること
  • ③日本企業を通じて日本政府に圧力を掛けること
  • ④国際社会を通じて日本政府に圧力を掛けること

ところが、現実に発生したことといえば、これまた中国政府の狙いとは全く異なる事態でした。

まず、高市総理は答弁を撤回しませんでした。少なくとも現時点において、高市総理が台湾答弁を撤回したという事実はありませんが、想像するに、おそらく今後も撤回することはないでしょう。

そうなると、次に考えられるのは日本国民を通じて圧力を掛けることですが、これにはたとえばSNSを使った日本国民への脅しであったり、パンダの貸与期限を延長せずに回収することであったり、といった措置がありました。結論からいえば、これらはすべて失敗しました。

最近だと中国政府は「パンダがいなくなって寂しがる日本人」の偽AI動画を生成してXなどに積極投稿しているようですが(『「パンダ中国帰国を嘆き悲しむ日本国民」の偽AI動画』参照)、誰がどう見ても偽物とわかるクオリティの動画を投稿して、彼らはいったいなにがやりたいのかわかりません。

レアアース問題では先進国などが日本を中心に団結した

そして、これに続いて中国がやったのは国際社会に対する日本の行動の「告げ口」であり、また、一部の日本企業にとって死活問題となり得るレアアース等の輸出制限を匂わせることでした。

その結果、何が発生したか―――。

まず、片山さつき財務大臣は重要鉱物の対中依存脱却に向けて、米国、欧州連合(EU)、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、豪州、インド、メキシコなどと合意してしまいました(『中国の対日制裁発表からたった1週間で国際社会が団結』等参照)。

中国の狙いとは真逆に、国際社会に対し、この中国の脅威が広く共有されてしまった格好です。

続いて日本は現在、国を挙げてレアアースなどの調達源の多様化に乗り出しており、とくに南鳥島レアアース泥の採取については、その第一段階である接続実験を成功させた状況にあります(『レアアースカード手放した中国…残るはパンダカードか』等参照)。

いわば、中国はみずからレアアースカードを手放した(というか投げ捨ててしまった)ともいえます。

最近では中国が日本向けのレアアース輸出を複数件許可したという報道もありますが(『手遅れの中国政府:今さら「脱中国」に気づいても遅い』等参照)、日本の企業社会が中国リスクを強く認識したことは間違いなく、しかも日本政府は国際社会を巻き込んで事態を大ごとにしてしまいました。

いわば、レアアース問題を巡っては、先進国などの主要国が日本を中心に団結してしまった格好です。

選挙で惨敗するどころか圧勝した高市総理

そして、これらの集大成が、先日の総選挙でしょう。

【衆院選議席数】左派政党壊滅的敗北に見る時流の変化』などでも取り上げたとおり、選挙の結果は高市早苗総理大臣が率いる自民党の圧勝であり、しかも戦後初となる、単独政党が衆院で3分の2を超える議席を獲得するという椿事につながったのです。

自民党はむしろ比例代表で「候補者不足」を発生させ、本来獲得した議席を14議席も諦めざるを得なくなったほどに圧勝しました。小選挙区での得票が存外に好調だったためです。

(※ついでに指摘しておくと、台湾答弁のもととなる質問を行った岡田克也氏は、今回の選挙で落選してしまいました。)

もちろん、有権者は「中国問題」だけを見て高市総理に信任を与えたわけではないとは考えられますが、ただ、それにしてもこの大勝利が高市政権に対し、中国への態度を含めて、極めて大きなフリーハンドを与えたことは間違いありません。

冷静に考えてみたら、民主的に選ばれた(しかも圧倒的多数の議席を得た)リーダーというものは、世界的に見ても極めて強力だからです。

しかも、中国の現在の政権は、民主的に選ばれたわけではありません。

習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は2012年11月、つまり故・安倍晋三総理大臣が第二次内閣を組閣する少し前から数えてかれこれ14年の間、ずっと権力の地位に就いており、一説によると終身独裁者を目指しているとのうわさもあります。

安倍総理や高市総理らが民主的に選ばれて政権を担っているという事実は、正直、彼らにとっては恐怖でしかないのではないでしょうか。

そして、高市総理が圧倒的な民意を得て信任されたことで、常識的に考えれば、中国政府としては政策転換を余儀なくされるはずです。中国が一生懸命に脅しすかした日本がまったく動かなかった以上、アプローチを変えるのが自然です。

現在の中国にとって日本との対決を選ぶのは賢明ではないが…

このまま放っておいたら、せっかく手に入れたレアアースという戦略物資の戦略的価値を喪失するどころか、国内のレアアース事業者はバタバタと潰れていく可能性が高いですし、また、日本を含めた西側企業の脱中国が加速していけば、中国は国際的なサプライチェーンから除外されてしまう可能性が高いからです。

現時点の中国にとって、これ以上日本と対立するのは得策ではありませんし、賢明でもありません。

かつての中国であれば、このあたりは結構したたかで、対日強硬一本槍戦略が効かないとわかったら、それによって戦略を変え、硬軟取り混ぜて日本にアプローチしてきたかもしれません。

ところが、ここに来て、ある意味では予想の遥か斜め上の反応が出て来ました。

産経ニュースによれば、中国政府外交部の林剣(りん・けん)報道官は9日、「軍国主義の過ちを繰り返すのでなく、平和発展の道を歩むことを促す」と述べ、「台湾有事を巡る国会答弁の撤回を改めて求めた」のだそうです。

中国外交部ウェブサイトを確認してみると…?

これについては念のため、中国外交部ウェブサイトで原文を確かめてみましょう。

2026年2月9日外交部发言人林剑主持例行记者会

―――2026-02-09 17:52付 中国政府外交部『例行者会』ページより

ウェブサイトで確認すると、質問したのは共同通信の記者ですが、共同の記者はべつに「台湾問題について」という尋ね方をしたわけではなく、単純に「高市総理が選挙で圧勝したが、中国政府が日本に期待する外交政策とはなにか」と聞いただけです。

それなのに中国側はわざわざ台湾の名前を出し、「誤った発言を撤回せよ」と強調したのです。

再次敦促日方撤回高市涉台错误,以实际现维护中日关系政治基的基本意(我々は日本に対し、台湾に関する高市の誤った発言を撤回し、実際的な行動を通じて日中関係の政治的基盤を守るという基本的な誠実さを示すよう改めて求める)」。

なんだかよくわからない人たちです。

「高市氏の躍進は歓迎するが、中日関係の発展に水を差す発言については、今後は慎むべきだ」、くらい言っておけば済むのに、なぜわざわざ台湾関係の発言を撤回せよと改めて要求したのか、ちょっと驚いてしまいます。

いずれにせよ、普通に考えて、中国の対日強硬政策はすでに破綻したと見るべきなのに、その方向転換すらできないという時点で、現在の中国が政策オプションをろくに持たず、トップ(習近平?)が決めた方針に逆らえなくなっているという証拠ではないでしょうか?

すなわち、習近平独裁体制下で、中国政府関係者らは習近平の意向を恐れ、まともな判断よりも「習近平ウケ」を狙っている可能性が高いのです。

製造業を中心に中国撤退が加速する?

このように考えていくと、とりわけ製造業を中心に、日本企業の脱中国はこれから急加速する可能性が高そうです。中国に残るのは、中国で中国人向けにビジネスを展開している外食産業などに限られ、少なくともメーカーは製造拠点の再構築を検討しなければならなくなるでしょう。

こうなってくると、やはり高市総理に期待したいのは、リパトリエーション税制を含めた適切な政策ミックスです。

衆院選の勝利もあり、財務省の抵抗を押し切って、大規模な法人減税・社会保険料負担引き下げなどを大胆に推進するチャンスですし、再エネ賦課金制度の見直しや再稼働可能な原発を動かすこと、原発の新増設を加速することなども有意義です。

中国という災いが転じて福となせるかどうか。

著者としては高市内閣に対し、無条件で期待しているわけではありませんが、それでも選挙後の高市内閣の仕事にまずは注目したいと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    習近平政権の単細胞外交こそが日本を強くする。
    そんな言説が華語文明圏で確かにささやかれているそうです。効いてる、効いてる。
    今般の動きに大いに勇気づけられたのが中華民国台湾。長い間同じ目に遭わされて来た。2期目続投は不能とみられていた蔡英文政権を後押しし奮起させたのが香港雨傘運動の殲滅行動でした。自由投票が機能する国は倒せない。日本がホンキを出した。かの地ではそう判断されているのだそうです。

  2. 目指せ改憲 より:

    私は習近平主席の大ファンなのですが、私の目に狂いはなかったようです。
    ・高市内閣の高い支持率
    ・自民と公明の連立解消
    ・衆院選で与党が議席1/3以上を獲得
    ・立憲民主の幹部が軒並み落選
    ・第二次高市内閣発足
    どれも中国の対日制裁措置のおかげですね。
    改憲も視野に入って来た。
    習近平主席におかれましては、さらなる独裁政権を強化し、文化大革命まで突き進んでいただきたいものです。

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