自民圧勝というよりも腐敗利権の敗北とSNSの大勝利

冷静に考えたら、改憲を阻止する勢力が国会から叩き出されたようなものです。見た目は自民党の圧勝かもしれませんが、冷静に中身を見ていくと中道改革連合を含めた左派政党の敗北であり、その左派政党を応援して来た腐敗利権勢力―――とくに官僚とメディア―――の敗北でもあります。そして、自民党は参院側で過半数を持っていませんが、高市早苗総理大臣にはまだまだ時間があることも事実です。

自民圧勝/中道改革連合惨敗

自民単独で3分の2うかがう勢いも!?

まさに、地滑りという言葉がピタリと当てはまります。

本稿執筆時点では自民党がどこまで議席を伸ばしているかについては確認できていませんが、昨日の8時から9時過ぎにかけての報道だと、読売新聞で「日本維新の会と合わせて300議席超をうかがう勢い」、朝日新聞で「自民単独で300議席超」、TBSで「自民単独で3分の2」、だそうです。

また、旧立憲民主党、すなわち新党「中道改革連合」は、小選挙区では壊滅的な打撃を受け、錚々たる顔ぶれが小選挙区の落選者に名を連ねています(※ただし、一部は報道ベースであり、本稿執筆時点で最終確定ではありませんので、あくまでも現時点の見通しです)。

目に留まった事例だけを挙げても、小沢一郎氏(岩手3区)や鎌田さゆり氏(宮城2区)、米山隆一氏(新潟4区)に梅谷守氏(新潟5区)、海江田万里氏(東京1区)や松下玲子氏(東京18区)、江田憲司氏(神奈川8区)といった候補者がいますが、それだけではありません。

共同幹事長の安住淳氏(宮城4区)や共同政調会長の本庄知史氏(千葉8区)、共同選対委員長の馬淵澄夫氏(奈良1区)、選対委員会事務局長の逢坂誠二氏(北海道8区)など、党の幹部なども含まれているのです。

また、一部報道だと旧民主党・民進党・立憲民主党時代を含めた代表経験者である岡田克也氏(三重3区)や枝野幸男氏(埼玉5区)なども落選の危機にある、といった情勢だそうです(一部メディアは対立候補に当確を出しています)。

自民党が議席を増やす要因と減らす要因を振り返る

なんだか、正直、驚きました。

当ウェブサイトでは、選挙前の『野党の動向次第では自民圧勝も自民大敗も両方あり得る』などの記事を皮切りに、今回の選挙については次のような要因が考えられると指摘しました。

  • ①立民公明の組織票…自民票⇩減らす要因
  • ②保守票の食い合い…自民票⇩減らす要因
  • ③左派支持層高齢化…自民党⇧増やす要因
  • ④サナエ旋風の発生…自民党⇧増やす要因

自民党の得票を減らす可能性がある要因として、①立憲民主党と公明党が結合したことによる組織票の拡大、そして②国民民主党、参政党、日本保守党、チームみらいといった「保守(?)野党」の存在。

自民党の得票を増やす可能性がある要因として、③左派支持層(≒テレビ層)の高齢化、④高市早苗総理大臣の個人的な人気による自民党のブースト効果、です。

これらの見立てについては、①と②の要因が自民党にとって、とくに大きな脅威となり得るとした一方、③については今回の選挙ではなく、むしろもう少し長期的なタームで生じるものであり、また、④についてはまったく読めない、などと暫定的に結論付けました。

小選挙区で圧勝した自民党

風が吹いたら勝ちすぎるのが小選挙区

ただ、詳しい得票分析などはまだできていませんが、おそらく、④の効果がかなり出たのではないかと推察します。普段から当ウェブサイトにて指摘していますが、小選挙区では「風」が吹いたら第1党が「勝ちすぎる」という現象が生じるからです。

2005年の小泉郵政解散では自民党が、2009年の政権交代選挙では民主党が、2012年以降の3回の選挙では安倍晋三総裁が率いる自民党が、それぞれ圧勝し、小選挙区では全体の7~8割の議席を占有し続けました。小選挙区に限定して獲得議席を一覧にしたものが、図表1です。

図表1 2005年以降の衆院選・獲得議席数(小選挙区)
選挙年最大政党第2政党
2005自民(219議席・占有率73.00%)民主(52議席・占有率17.33%)
2009民主(221議席・占有率73.67%)自民(64議席・占有率21.33%)
2012自民(237議席・占有率79.00%)民主(27議席・占有率9.00%)
2014自民(222議席・占有率75.25%)民主(38議席・占有率12.88%)
2017自民(215議席・占有率74.39%)無所(26議席・占有率9.00%)
2021自民(187議席・占有率64.71%)立民(57議席・占有率19.72%)
2024自民(132議席・占有率45.67%)立民(104議席・占有率35.99%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

2021年と2024年を除いて、どの回でも第1党が全体の7割を上回る(場合によっては8割に迫る)議席を占有していることがわかりますが、ここまで極端な差がつく理由はもちろん、小選挙区制度は「勝者総取り」だからです。

得票率ではそこまで圧倒的な差がついているわけではない

実際、小選挙区における得票で見ると、その時点の第1党はべつに7~8割を取っているわけではなく、得票率は50%に満たないことがわかります(図表2)。

図表2 2005年以降の衆院選・獲得議席数(小選挙区)
選挙年最大政党第2政党
2005自民(32,518,390票・得票率47.77%)民主(24,804,787票・得票率36.44%)
2009民主(33,475,335票・得票率47.43%)自民(27,301,982票・得票率38.68%)
2012自民(25,643,309票・得票率43.01%)民主(13,598,774票・得票率22.81%)
2014自民(25,461,449票・得票率48.10%)民主(11,916,849票・得票率22.51%)
2017自民(26,500,777票・得票率47.82%)希望(11,437,602票・得票率20.64%)
2021自民(27,626,235票・得票率48.08%)立民(17,215,621票・得票率29.96%)
2024自民(20,867,762票・得票率38.46%)立民(15,740,860票・得票率29.01%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

つまり、トップ政党がほんの数パーセント、得票を上積みするだけで、ライバル政党を「蹴散らし」て圧倒的な議席を占有することができてしまうのです。

もちろん、この勝者総取りが民意を歪めているのではないか、といった批判もありますが、それでもこうした「トップの民意を得た政党が議会で圧倒的な力を持つ」という「勝者総取り」式の小選挙区は、諸外国でも広く採用されているものでもあります。

また、衆院選では小選挙区であまりにも勝敗が大きくつきすぎるという観点から、それを是正する仕組みとして、比例代表並立制が採用されており、いわゆる重複立候補(あるいは「比例ゾンビ」)も認められています。

比例代表は支持率と議席がほぼ比例する

実際、同じく2005年以降の衆院選における獲得議席数を比例代表について確認してみると、最大政党は議席数の3割程度からせいぜい5割弱に過ぎず、最大政党が全体の7~8割を占めていた小選挙区とは大きな違いを見せています(図表3)。

図表3 2005年以降の衆院選・獲得議席数(比例代表)
選挙年最大政党第2政党
2005自民(77議席・占有率42.78%)民主(61議席・占有率33.89%)
2009民主(87議席・占有率48.33%)自民(55議席・占有率30.56%)
2012自民(57議席・占有率31.67%)維新(40議席・占有率22.22%)
2014自民(68議席・占有率37.78%)民主(35議席・占有率19.44%)
2017自民(66議席・占有率37.50%)立民(37議席・占有率21.02%)
2021自民(72議席・占有率40.91%)立民(39議席・占有率22.16%)
2024自民(59議席・占有率33.52%)立民(44議席・占有率25.00%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

2005年以降のデータで見ると、2009年に民主党が87議席と比例代表の定数全体(180議席)の48%あまりを占めていたのが最多で、それ以外の回はいずれも最大政党である自民党が多くて4割前後、少ないときは3割あまりしか得られていないのです。

故・安倍晋三総理大臣が再登板するきっかけとなった2012年総選挙においてすら、比例代表では定数180議席中の3割あまりに相当する57議席しか獲得できなかったのです(ちなみに小選挙区で定数300議席の79%に相当する237議席を獲得しています)。

この比例代表について得票数と突き合わせてみると、最大政党の議席占有率は得票率を少し上回る程度に過ぎません(図表4)。

図表4 2005年以降の衆院選・獲得票数(比例代表)
選挙年最大政党第2政党
2005自民(25,887,798票・得票率38.18%)民主(21,036,425票・得票率31.02%)
2009民主(29,844,799票・得票率42.41%)自民(18,810,217票・得票率26.73%)
2012自民(16,624,457票・得票率27.62%)維新(12,262,228票・得票率20.38%)
2014自民(17,658,916票・得票率33.11%)民主(9,775,991票・得票率18.33%)
2017自民(18,555,717票・得票率33.28%)立民(11,084,890票・得票率19.88%)
2021自民(19,914,883票・得票率34.66%)立民(11,492,095票・得票率20.00%)
2024自民(14,582,690票・得票率26.73%)立民(11,564,222票・得票率21.20%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

左派政党の敗北

実体は中道改革連合というより左派政党の敗北

今回・2026年についても総務省がデータを公表次第、分析に取り掛かりたいと思っていますが、「中道改革連合」の小選挙区における「見事な負けっぷり」から判断するに、おそらく今回は自民党が躍進したのではなく、「中道改革連合」というよりも左派政党の敗北、という可能性が高そうに見えます。

実際のところ、「①立民公明の組織票」については「④サナエ旋風の発生」によって蹴散らかされた格好であり、また、「③左派支持層高齢化」が正直、著者自身が考えていたよりもかなり速く進行していた可能性も非常に高いです。

その一方の「②保守票の食い合い」に関しては、現実問題、少なくとも小選挙区に関してはほぼ発生しませんでした。自民党が強すぎた(あるいは中道改革連合が弱すぎた)からです。

というよりも、「保守野党」は小選挙区ではあまり躍進できなかったものの、比例代表ではそこそこ議席を獲得するとみられます。

たとえば国民民主党は公示前勢力(27議席)を維持するか勢力を微増させるとの予測がもっぱらですが、小選挙区を含め190人の候補を立てた参政党は比例代表を中心に(TBSなどの予測だと)10議席前後を確保して公示前の2議席から大幅に躍進する可能性が高そうです。

また、議席がゼロだったチームみらいも、やはり比例代表を中心に躍進し、一気に10議席弱を獲得すると見られており、(議席を失う公算が高い日本保守党を除けば)これら「保守野党」はそこそこの議席を確保する可能性があるのです。

(なお、ここで「保守野党」という表現を用いているのはあくまでも便宜上です。)

その一方で、あくまでも予測ベースですが、改憲反対派の勢力が大きく後退したのは間違いありません。

たとえば代表的な左派政党のうち、日本共産党は公示前勢力の8議席を大幅に減らし、3議席前後となる可能性が高く、れいわ新選組や社民党もゼロ議席となるなど、衆院側では左派政党が駆逐される可能性が極めて高いです。

そして「中道改革連合」(※「中道」と名乗っているものの、実態は左派政党でしょう)や無所属なども含めると、これまで改憲などにも反対してきたいわゆる左派政党は多くてせいぜい60議席前後であり、逆に400議席以上が(内容次第では)改憲に賛同する可能性があるのです。

高市総理には時間がある

もちろん、参議院側では自民党は石破茂・前首相のせいもあってか、勢力は100議席と過半数(125議席)に届きませんので、今すぐの改憲発議自体は非現実的でもあります。

しかし、高市総理にとっては、時間的な余裕は比較的残されています。

高市総理の自民党総裁としての任期は、石破前首相の自民党総裁としての本来の任期である2027年9月に満了しますが、そこで再選された場合、理論上は2027年から3期(=9年)連続で総裁を務めることができるため、石破前首相の残り任期2年と合計して11年、総理総裁を務めることができます。

小選挙区主体ではない参院選で自民党が圧勝するのは非現実的ではありますが、今回の衆院選はいわゆる「腐敗トライアングル」構造の終焉でもありますので、2028年参院選では自民党以外も含めた改憲勢力がある程度は躍進することが期待されます。

中道改革連合がその時点まで残っているかどうかはわかりませんが(おそらく同党はこの衆院選の直後に旧立憲民主党系と旧公明党系に分裂すると思います)、少なくとも改憲反対勢力は今後ますます勢力を縮めていく可能性が高いことは間違いありません。

ダブスタに嫌悪感があったのでは?

さて、ここでちょっとした主観ですが、著者が考えるに、左派政党がここまで急速に力を失ったのは、いわゆる「腐敗トライアングル」の二重基準(ダブル・スタンダード)に、少なくない国民(とくに現役層やSNS層)が嫌悪感を示したことにあるのではないでしょうか。

自民がやれば裏金議員、野党がやれば単純なミス。

自民がやれば高級料亭、野党がやれば日本料理店。

自民がやれば独裁政治、野党がやれば指導力発揮。

自民がやれば友達人事、野党がやれば能力重視型。

自民がやれば世襲議員、野党がやればサラブレッド。

こんなダブル・スタンダードが罷り通っていることに、おそらく少なくない国民が辟易していたのではないでしょうか。

もちろん、現在の自民党も、減税には極めて後ろ向きであり、多くの有権者をがっかりさせている政党であることは間違いありません。

ただ、自民党以上にダメな政党が今回の選挙で国会から叩き出されたことは、自民党に対しても新鮮な刺激を与えることになります。SNSで垣間見える民意に背けば、今回の中道改革連合が、数年後の自民党の姿かもしれないからです。

その意味では、今回の選挙戦は、SNSを通じて官僚とマスコミと野党議員に罰を与えることに成功したようなものであり、いわゆる腐敗利権構造の崩壊が、著者自身が想定していた以上の速度で順調に進んでいる証拠ではないかと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    新しい夜明けだ。パンダフリージャパンがこんなにすがすがしいとは。

  2. シロー より:

    岡田が落ちたのがよかった!

  3. 匿名 より:

    自民党が単独で2/3の議席を獲得。
    これで参議院で否決された法案も衆議院で再可決できるようになった。

  4. 白紙 より:

    北方四島、拉致、竹島、尖閣島。
    我が国がこれ以上侵略されないように防衛力を高めなくてはならないのに、「軍靴の音が聞こえる」だの、無理やり仮定の質問による答弁を、C国を挑発したかの印象操作、人を狂犬だの罵る政党代表…。
    似たり寄ったりの政策よりも、おっしゃるとおり大多数の国民がダブスタを嫌ったことに加え、ノイジーマイノリティに辟易した結果の気がしますがね、意識低い系としては。

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