少数政党が「老人医療3割負担」の正論を提唱する意味

ちょっとくどいようですが、有権者の皆さん、とりあえず選挙には必ず行っていただきたいと思います。衆院選の公示日である明日以降は選挙、とりわけ個別政党や個別候補者についての話題が減るかもしれませんが、現時点において紹介しておきたいのが「チームみらい」の安野たかひろ党首による「高齢者の医療の自己負担割合を原則3割に引き上げ」とする発言です。

選挙期間中のお願い

衆議院議員総選挙は1月27日(つまり明日)公示され、2月7日(土)までの2週間弱の期間、選挙運動が展開されます。

自由主義と民主主義を貫徹すれば日本はさらに良くなる』でも報告したとおり、著者自身は毎回、国政選挙では可能な限り、選挙運動と受け取られかねない言動は控えるようにしており、読者の皆さまにおかれましても、当ウェブサイトへの個別政党・候補者への投票や不投票の呼びかけは控えていただきたいと思う次第です。

(※なお、公選法ではメールなどを使わない限り、インターネットを使った選挙運動は問題ないとされているのですが、当ウェブサイトでは実際の法令の規定よりも厳しい運用をしている、というだけのことであり、当ウェブサイト外で読者の皆さまがいかなる行動を取るかについて制限するつもりは全くありません。)

「僕ひとりが選挙に行かなくても変わらないよ」

ただ、これはあくまでも「個別の政党や候補者への投票・不投票」が問題になる事例なのであり、たとえ選挙期間中であっても、「投票で世の中をより良い方向に変えて行くこと」の是非を「一般論として」論じる分にはまったく問題ないと考えています。

こうした観点からは、先日の『どうして我々有権者は選挙に行かなければならないのか』でも論じた内容を繰り返しておきます。

そもそも選挙というものは、1回や2回で世の中を劇的に良くする仕組みではありませんが、それと同時に選挙をしなければ世の中は良くなりません。すなわち選挙というものは「世の中をより良くしていく数少ない仕組み」のひとつではあるものの、「世の中を一発で魔法のように改善する仕組み」ではないのです。

だからこそ、こんなことを言う人が出て来ます。

どうせ僕ひとりが選挙に行ったり、行かなかったりしたところで、世の中は何も変わらないよ」。

これは、一見すると正解を述べているようにも見えますが、残念ながら完全に間違っています。

「僕は絶対に選挙に行かない」、という人が積み重なれば、結局のところ投票率が下がり、組織票を持っている政党や候補者、あるいは特定の年齢層から熱烈な支持を受けている政党や候補者が勝利を収める可能性が上がります。

そして、特定以上の年齢層(端的にいえば、お年寄り)は残念ながら多くの場合、テレビや新聞を中心とする「オールドメディア」からかなり大きな影響を受けているため、これらのオールドメディアが報じた内容を真に受けて、どう考えても実務能力に乏しい政党などに多くの議席を与えてしまうのです。

また、こうした状況は、与党にとっても不幸です。

野党がマトモな政策議論すらできないならば、与党(現在は自民党)が腐敗してくるのも当たり前の話です。

自民党は2024年9月の総裁選で石破茂氏という「絶対に選んではならない禁忌肢」をわざわざ選んでしまう程度には腐敗した組織であり、また、昨年10月の総裁選で高市早苗氏を選んだのも、いわば「首の皮一枚つながった状況」と考えるのが妥当でしょう。

社会保障という大きな問題点

正直、公示日を迎える直前の本日だから申し上げますが、著者にとっては自民党が素晴らしい政党であるとは到底思えませんし、また、高市総理も(政策通であり、かつ、その前任の2人と比べると遥かにマシであるとはいえ)現在の日本が抱える問題点に、本当に正面から斬り込んでくれるのかはわかりません。

その最大の問題点とは、いうまでもなく、140兆円という巨額にも達している社会保障です。

読者の皆さまのなかにもサラリーマンの方がいらっしゃると思いますが、ためしに給与明細や源泉徴収票を眺めてみてください。たいていの人は、「標準報酬月額」に対し、厚生年金保険料が9.15%、健康保険料が(加入する組合にもよりますが)だいたい5%前後、さらに40歳以上の人は介護保険料も取られています。

たとえば「標準報酬月額」が50万円ならば、厚生年金保険料は45,750円、健康保険料は2.5万円前後、あわせて7万円前後を取られています(40歳以上の人は介護保険が加算されるので約7.5万円を取られるという計算です)。

しかも、この「標準報酬月額50万円」という人のケースでいえば、7万円ないし7.5万円という金額は「従業員負担分」のみであり、従業員本人から見えないところでもう1回、徴収されています(これがいわゆる「雇用者負担部分」です)。

この「従業員負担部分」を勘案すれば、あなたの報酬は50万円ではなく、実質的に会社が支払っている7~8万円の「社会保険料会社負担分」を合わせた57~58万円前後であり、あなたの社会保険料負担は厚生年金91,500円(=18.3%)、健康保険約10%(5.7~5.8万円)です。

社会保険料批判に対する反論になっていない反論

なんでこんなに高いのか、と憤るのが、ごく自然な感情でしょう。

ただ、「社会保険料が高すぎる」問題に関しては、こんな反論もあるかもしれません。

社会保険料高すぎ問題への反論の例
  • ①批判する人間もいずれ老人になるんだぞ?
  • ②現在の老人も若いころ保険料を払ったぞ?
  • ③社会保険は保険だから損得は関係ないぞ?
  • ④社会保険は将来の自分のためのものだぞ?
  • ⑤社会保険は未来のセーフティネットだぞ?

いちおう、誤解を恐れずに申し上げると、当ウェブサイトとしては「現在のお年寄りが憎たらしくてたまらないから老人福祉をやり玉に挙げている」わけではありません。当ウェブサイトの主張の要諦はシンプルで、経済的に持続できるわけがない制度はいずれ破綻するから、そうなる前に改革すべき、というものです。

そのうえで申し上げると、①~⑤の言い分は、端的にいえば、どれもすべて詭弁です。

たとえば①の「お前もいずれ老人になる」云々は、「現在の制度が持続可能ではないこと」に対する反論になっていません。というよりも、現在の制度を維持したまま、現在の現役層が老人になってしまうと、その時点の現役層はさらに苦しむことになるからです。

また、②の「いまのお年寄りも若いころは保険料を払っていたのだから、彼らが過去に払った保険料に見合ったサービスを提供すべき」については、日本の社会保険が「賦課方式」であるという事実を忘れています。現在のお年寄りが現役時代に払っていた保険料は、当時のお年寄りが使い果たしているのです。

ということは、現在のお年寄りは、過去に自分たちが支払った保険料ではなく、現在の現役世代が支払った保険料を原資に受益しているわけであり、現在の受益は過去に彼らが払った保険料の価値を上回ってしまっていて、いわば一種の不当利得状態となっているのです。

厚生労働省という詐欺官庁

さらに③以降の「社会保障は保険であり、世代間の助け合い」云々に関しては、彼らが大好きな厚生労働省自身がウェブサイトで堂々と、「若い人は公的年金で損をする」と開き直っているという事実を取り上げておきましょう(図表)。

図表 『若い人って公的年金で損するって聞いたけど、本当?』

(【出所】厚生労働省『いっしょに検証!公的年金~財政検証結果から読み解く年金の将来~』)

厚労省の言い分を、テキストでも起こしておきましょう。

『若い世代は、これから納めていく保険料よりも将来受け取れる年金額の方が少ないから、払うだけ損だ』という意見が聞かれます。/公的年金制度は社会保障の一種で、高齢・障害・死亡など誰にでも起こり得るリスクに社会全体で備え、皆さんに『安心』を提供するものです。そのため、経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません。/また、現在の高齢者と若い世代で給付水準に差があるという、いわゆる『世代間格差』についても、今の受給者が若いころと現在では高齢者を養うための環境などが大きく違うため、同じ条件で語るのは難しいのです。

これ、何度読み返しても強烈ですが、それ以上に驚くのは、厚生労働省がこれを自身の公式ウェブサイトにいけしゃあしゃあと恥ずかしげもなく掲載し続けていることかもしれません。これを執筆した人物は、控えめに言って頭がおかしいですし、そんな厚生労働省は詐欺官庁そのものでしょう。

政府のサイズの適正性という論点

しかも、この頭のおかしい言い分は年金に関するものですが、おかしいのは年金だけではありません。

支払う保険料が高くなるほど治療費も高くなる「高額療養費」制度や現役層が血を吐く思いで支払った保険料が老人の9割引医療に横取りされる「後期高齢者医療制度」なども、まさに「国営詐欺」そのものです。

そして、こんな詐欺的なシステムを、「何とか破綻させずに継続すること」という努力がいかに不毛であるかについても知るべきでしょう。

そもそも無茶な制度については、どうせ破綻が避けられないならば、ゴマカシゴマカシで運営し続けるのではなく、いっそのこと「このままじゃ破綻します」と宣言すること自体が、ひとつの選択肢となり得るはずです。

もちろん、現在の年金、医療、介護保険などの制度については「このままだと持続できません」、「制度を変更します」、などというと、大変大きな波紋が生じることは間違いありませんが、それが突如として破綻して多くの産業関係者や被保険者にも大きな影響が及ぶことと比較すればマシです。

つまり、突き詰めていえば国民負担と政府支出のサイズが適正かどうかという話であり、政府に支出を委ねると不賢明な支出をしてしまうリスクが高い、という話でもあります(少し議論が飛躍しますが、もっといえば、「国民から選ばれたわけでもない官僚が跳梁跋扈しているのはおかしい」、という問題意識でもあります)。

チームみらいは高齢者3割負担を提唱

こうしたなかで、本稿でちょっと取り上げておきたいのが、こんな話題です。

今回の衆院選にも候補を立てている「チームみらい」のXポストですが、同党の安野たかひろ党首のこんな発言が印象的です。

  • 消費税減税を唯一マニフェストに掲げていない党
  • 優先すべきは現役世代の大きな負担になっている社会保険料を減らしていくことが必要
  • 財源は短期的には高齢者の医療の自己負担割合を原則3割に引き上げ

消費税と社会保険料を「両方下げる」という選択肢があっても良いのではないか、あるいは「原則ってなんですか?」、「例外があるという意味ですか?」、といったツッコミはとりあえず脇に置くとしましょう。

この「高齢者の医療費負担を3割に引上げよ」、の部分は、奇しくも当ウェブサイトにて主張してきた内容と似ていますが(『改めて問う:社会保険が「保険」と呼べない理由とは?』等参照)、既存政党でこれを主張している党が少ないのは困りものです。

正直、著者自身がこの「チームみらい」を応援しているかどうかについては言及を避けますが、安野党首のこの発言自体は支持したいと思います。

もちろん、「現状では泡沫政党に近い状態の『チームみらい』がそれを主張したとして、何も意味がないじゃないか」、といった指摘については、基本的にはそのとおりでしょう。同党が今回の衆院選で公認する予定の候補者も、現時点では14人に過ぎません。

与党への大きなプレッシャー

ただ、これも繰り返しになりますが、「良い公約を掲げた政党が議席を獲得すること」は、政権与党に対する大きなプレッシャーになります。

とくに現在の国会の勢力図でいえば、衆院側ではたしかに今回の選挙で自民党が単独過半数を回復する可能性がそれなりに高いと個人的には考えていますが、もしそうなったとしても参院側では自民党は過半数を持っていないため、それ以外の政党との連携が必要です。

また、今回以降の数回の国政選挙を通じて「最大野党」が変化すれば、国会論戦が少なくとも現在と比べて国民にとって遥かに有意義なものとなる可能性が高く、「最大野党を変えるために選挙に行く」という意味でも、選挙に行くのは有意義だったりするわけです。

いずれにせよ、やはりひとりでも多くの有権者が投票所に足を運んでいただきたいと思う次第です。

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