東京マンション賃貸価格上昇はこれから本格化の可能性
レインズシリーズの第2弾として、本稿では賃貸物件について言及しておきたいと思います。東日本レインズが先日公表した首都圏のマンションなどの賃貸価格データによると、賃料は全体的に上昇していることが判明しました。ただ、その上昇ぶりも地域差があるほか、中古マンション成約価格などと比べると、賃料の上昇幅は低めです。これにはさまざまな要因が考えられますが、「中古マンション価格バブル」が崩壊する可能性もある一方、不動産賃料の上昇がこれから本格化する可能性もあるといえるでしょう。
目次
レインズ賃貸データ公表
当ウェブサイトでは東京都内の中古マンションに関するデータを追いかけており、ほぼ毎月、何らかのかたちでこれについて言及しています。
メインで取り上げているのが公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータです。
これについては首都圏の場合、中古マンションの売買データ(毎月公表、成約データなど)と賃貸データ(3ヵ月に1回公表)の2種類があるのですが、毎月取り上げているデータは成約データであり、また、賃貸データに関してはレインズの公表にあわせて、だいたい3ヵ月ごとに取り上げています。
元データは『レインズデータライブラリー』のページでPDF形式で公表されており、URLの “http://www.reins.or.jp/library/YYYY.html” の “YYYY” の部分を変更すれば、データ自体は2002年まで遡れるようです。
それはともかくとして、本稿ではこのうち、東日本レインズが先日公表した賃貸に関するデータについて取り上げてみたいと思います。賃貸の方のデータは2003年9月以降の分を入力済みなのですが、2025年12月分データを入力してみたところ、なんとも気になるのがマンション賃料の上昇です。
東京23区でも昨年を通じて8.7%の上昇
平米単価でみると、東京23区が昨年を通じ、前年比で8.7%ほど上昇しているほか、埼玉、千葉でも6%弱の上昇を記録しています(図表1)。
図表1 首都圏のマンション賃貸動向(平米単価)
| 地区 | 2025年12月 | 2024年12月 | 増減 |
| 東京23区 | 3816円/㎡ | 3512円/㎡ | +304円/㎡(+8.66%) |
| 東京都他 | 2322円/㎡ | 2244円/㎡ | +78円/㎡(+3.48%) |
| 埼玉県 | 2084円/㎡ | 1972円/㎡ | +112円/㎡(+5.68%) |
| 千葉県 | 2207円/㎡ | 2083円/㎡ | +124円/㎡(+5.95%) |
| 横浜・川崎 | 2762円/㎡ | 2643円/㎡ | +119円/㎡(+4.50%) |
| 神奈川県他 | 1991円/㎡ | 1862円/㎡ | +129円/㎡(+6.93%) |
(【出所】東日本レインズデータをもとに作成)
また、東京都内に限定すると、平米単価が一番高いのは港区ですが、1年前との増減を見てみると、その港区で13%も賃料水準が上昇しているほか、10%を超える上昇率を記録している区がほかにもいくつか散見される状況にあります(図表2)。
図表2 東京23区のマンション賃貸動向(平米単価)
| 地区 | 2025年12月 | 1年前との増減 |
| 1位:港区 | 6049円/㎡ | +707円/㎡(+13.23%) |
| 2位:渋谷区 | 5197円/㎡ | +360円/㎡(+7.44%) |
| 3位:千代田区 | 5116円/㎡ | +381円/㎡(+8.05%) |
| 4位:中央区 | 4941円/㎡ | +542円/㎡(+12.32%) |
| 5位:新宿区 | 4585円/㎡ | +445円/㎡(+10.75%) |
| 6位:品川区 | 4297円/㎡ | +460円/㎡(+11.99%) |
| 7位:目黒区 | 4124円/㎡ | +40円/㎡(+0.98%) |
| 8位:文京区 | 3993円/㎡ | +130円/㎡(+3.37%) |
| 9位:台東区 | 3979円/㎡ | +245円/㎡(+6.56%) |
| 10位:江東区 | 3972円/㎡ | +263円/㎡(+7.09%) |
| 11位:墨田区 | 3900円/㎡ | +426円/㎡(+12.26%) |
| 12位:豊島区 | 3849円/㎡ | +298円/㎡(+8.39%) |
| 13位:世田谷区 | 3649円/㎡ | +135円/㎡(+3.84%) |
| 14位:中野区 | 3603円/㎡ | +273円/㎡(+8.20%) |
| 15位:杉並区 | 3484円/㎡ | +224円/㎡(+6.87%) |
| 16位:北区 | 3381円/㎡ | +133円/㎡(+4.09%) |
| 17位:荒川区 | 3327円/㎡ | ▲266円/㎡(▲7.40%) |
| 18位:大田区 | 3311円/㎡ | +229円/㎡(+7.43%) |
| 19位:板橋区 | 3051円/㎡ | +113円/㎡(+3.85%) |
| 20位:葛飾区 | 2848円/㎡ | +346円/㎡(+13.83%) |
| 21位:練馬区 | 2786円/㎡ | +186円/㎡(+7.15%) |
| 22位:足立区 | 2712円/㎡ | +232円/㎡(+9.35%) |
| 23位:江戸川区 | 2706円/㎡ | +211円/㎡(+8.46%) |
(【出所】東日本レインズデータをもとに作成)
過去約20年あまりで35~50%程度賃料が上がった
これについて、著者自身が所持している2003年9月以降で見てみると、東京都区内(23区)が過去最低だった2013年9月の平米単価2,830円から、2025年12月時点で3,816円へと、約35%伸びています(図表3)。
図表3 首都圏のマンション賃貸動向(平米単価、2003年9月以来の騰落状況)
| 地区 | 過去最高 | 過去最低 | 騰落 |
| 東京23区 | 2025年12月…3,816円 | 2013年9月…2,830円 | +986円(+34.84%) |
| 東京都他 | 2008年3月…2,354円 | 2020年6月…1,980円 | +374円(+18.89%) |
| 埼玉県 | 2025年12月…2,084円 | 2005年12月…1,640円 | +444円(+27.07%) |
| 千葉県 | 2025年6月…2,216円 | 2015年6月…1,660円 | +556円(+33.49%) |
| 横浜・川崎 | 2025年12月…2,762円 | 2014年9月…2,179円 | +583円(+26.76%) |
| 神奈川県他 | 2025年6月…2,060円 | 2017年9月…1,607円 | +453円(+28.19%) |
(【出所】東日本レインズデータをもとに作成)
図表3と同じものを東京23区に関しても作成しておくと、図表4のとおりで、だいたい50%前後、区によっては60%程度上がっているケースもあります(まれに上昇率20~30%、というケースもありますが)。
図表4 東京23区のマンション賃貸動向(平米単価、2003年9月以来の騰落状況)
| 地区 | 過去最高 | 過去最低 | 騰落 |
| 千代田区 | 2025年9月…5,189円 | 2011年3月…3,609円 | +1,580円(+43.78%) |
| 中央区 | 2025年6月…4,945円 | 2012年9月…3,299円 | +1,646円(+49.89%) |
| 港区 | 2025年9月…6,110円 | 2012年12月…3,740円 | +2,370円(+63.37%) |
| 台東区 | 2025年6月…4,007円 | 2014年12月…2,796円 | +1,211円(+43.31%) |
| 墨田区 | 2025年12月…3,900円 | 2003年9月…2,512円 | +1,388円(+55.25%) |
| 江東区 | 2025年12月…3,972円 | 2003年9月…2,483円 | +1,489円(+59.97%) |
| 荒川区 | 2024年12月…3,593円 | 2005年6月…2,412円 | +1,181円(+48.96%) |
| 足立区 | 2025年3月…2,739円 | 2005年9月…1,913円 | +826円(+43.18%) |
| 葛飾区 | 2025年12月…2,848円 | 2004年3月…2,016円 | +832円(+41.27%) |
| 江戸川区 | 2025年12月…2,706円 | 2014年6月…2,080円 | +626円(+30.10%) |
| 文京区 | 2025年9月…4,022円 | 2013年6月…3,021円 | +1,001円(+33.13%) |
| 豊島区 | 2025年12月…3,849円 | 2013年9月…2,862円 | +987円(+34.49%) |
| 北区 | 2025年9月…3,402円 | 2014年12月…2,537円 | +865円(+34.10%) |
| 板橋区 | 2025年12月…3,051円 | 2015年9月…2,306円 | +745円(+32.31%) |
| 練馬区 | 2025年12月…2,786円 | 2015年6月…2,286円 | +500円(+21.87%) |
| 新宿区 | 2025年9月…4,634円 | 2013年12月…3,209円 | +1,425円(+44.41%) |
| 渋谷区 | 2025年12月…5,197円 | 2013年9月…3,571円 | +1,626円(+45.53%) |
| 中野区 | 2025年12月…3,603円 | 2014年6月…2,839円 | +764円(+26.91%) |
| 杉並区 | 2025年9月…3,517円 | 2013年6月…2,751円 | +766円(+27.84%) |
| 品川区 | 2025年12月…4,297円 | 2013年6月…3,033円 | +1,264円(+41.67%) |
| 目黒区 | 2025年9月…4,198円 | 2011年12月…3,171円 | +1,027円(+32.39%) |
| 大田区 | 2025年12月…3,311円 | 2015年12月…2,686円 | +625円(+23.27%) |
| 世田谷区 | 2008年3月…3,699円 | 2015年9月…2,918円 | +781円(+26.76%) |
(【出所】東日本レインズデータをもとに作成)
売買データと比べると上がり方は緩やか
ただ、これについては『東京の中古マンション価格は昨年1年間で1割以上上昇』でも述べた中古マンションの売買価格と比べると、上がり方はまだ緩やかです。
データの取得期間や集計区分は異なりますが、中古マンションの売買状況に関していえば、2008年1月から2025年12月までの成約状況に関するデータで見ると、東京都内ではこの15年ほどで平均2.5倍、都心3区に絞れば3.5倍にまで価格が上昇しているからです(図表5)。
図表5-1 首都圏の中古マンション平米単価の推移(成約価格ベース、一都三県)
| 略称 | 最高 | 最低 | 変化 |
| 首都圏 | 85.47万円(2025年7月) | 37.17万円(2009年4月) | 2.30倍 |
| 東京都 | 121.06万円(2025年10月) | 48.08万円(2012年11月) | 2.52倍 |
| 埼玉県 | 45.74万円(2024年9月) | 22.26万円(2009年7月) | 2.05倍 |
| 千葉県 | 42.44万円(2024年9月) | 21.50万円(2012年5月) | 1.97倍 |
| 神奈川県 | 60.40万円(2025年12月) | 33.70万円(2009年6月) | 1.79倍 |
図表5-2 首都圏の中古マンション平米単価の推移(成約価格ベース、東京都内)
| 略称 | 最高 | 最低 | 変化 |
| 都心3区 | 240.93万円(2025年5月) | 69.03万円(2012年11月) | 3.49倍 |
| 城東地区 | 109.41万円(2025年12月) | 39.37万円(2009年5月) | 2.78倍 |
| 城南地区 | 131.90万円(2025年12月) | 55.94万円(2009年3月) | 2.36倍 |
| 城西地区 | 158.60万円(2025年10月) | 57.49万円(2011年12月) | 2.76倍 |
| 城北地区 | 109.09万円(2025年12月) | 44.63万円(2009年6月) | 2.44倍 |
| 多摩地区 | 58.89万円(2024年1月) | 31.94万円(2009年5月) | 1.84倍 |
(【出所】公益財団法人東日本不動産流通機構『レインズデータライブラリー』の2008年以降のデータをもとに作成)
データの集計期間と集計区分が違うため、単純な比較は難しいのですが、それでも売買価格が2倍、3倍と伸びている一方、賃料については地域によっては50%前後伸びているものの、2~3倍になっているという地点はありません。
①不動産価格が高すぎ?②賃料が低すぎ?
このことから示唆される可能性は、少なくとも次の2つです。
- ⅰ)中古マンション価格(特に東京都内)は明らかなバブル状況で、実態を越えて値段が上がり過ぎている。
- ⅱ)賃貸マンション価格(特に東京都内)はまだ上がり足りない状況で、これからさらに値段が上昇する。
賃料と価格は表裏一体の関係にありますので、現在のように売買価格だけ上がって賃料がさほど上がっていないという状況は、①売買価格が上がり過ぎているか、②賃料がまだ十分に上がっていないか、というどちらかの可能性があるのです(もちろん、その両方、という可能性もありますが)。
なぜそんな現象が生じるのかといえば、賃料は少し遅れて上昇する傾向にあるからです。
実際に物件を借りたり貸したりしている方ならご存じかもしれませんが、とくに居住用物件の賃料は不動産価格ときれいに連動するわけではありません。
賃料水準は、新規募集の場合は「入居者として想定される人たちにとって、その賃料が実際に払えるかどうか」が大きなポイントとなりますし、強気の賃料設定をした結果入居者がなかなか見つからなかった場合は家主の賃料収入がゼロとなるため、それを嫌気して多少ディスカウントしてでも入居者を募集したりします。
また、入居者が継続して入居している場合、家賃を値上げしようとする場合には、借地借家法の規定に従う必要があります。
借地借家法第32条第1項
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
このため、現実には、いま入居者がいる物件の賃料をいきなり引き上げるのは難しく、その結果、周囲の賃料水準が大きく変わらないなかで新規募集物件の賃料だけをいきなり2倍にする、といったことが難しいのではないでしょうか(このあたり、確たる説明は見当たりませんが)。
賃料上昇に備え、政府は税社保軽減を!
ただ、少なくとも不動産の売買価格が上昇しているなかで、賃料水準と売買価格水準の乖離がいつまでも続くとも思えません。
不動産価格が下落する可能性はもちろんありますが(とくに東京都心部のタワマンなどの価格は明らかにバブルではないかという気がしてなりません)、その反面、賃料水準がこれから急激に上がって来るという可能性もあるので要注意です。
どちらの可能性が高いかについては断定を控えますが、首都圏でこれから暮らそうという人、あるいは子どもを産み育てようとする人にとっては、たとえば郊外での物件取得を目指すか、都心部での物件賃貸を検討するか、といった判断も難しいところでしょう。
ただ、国家の政策として見るならば、やはり税金や社会保険料を取り過ぎているという状況は早急に是正すべきですし、昨今の不動産価格・不動産賃料からは、現役層の人々が暮らせないほどに税・社保の負担が重くなっているという点を、政府が直視しなければならないことは、間違いないといえるのです。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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不動産は株や国債とは異なり小口の取引が難しい点を考えるとおそらく日本社会における富裕層の増加それも会計士どのも指摘してきたように純対外資産の増加が背景と考えるのが妥当かと、円安のうちに買えば多少の外貨だて資産の減少ですみますから多少高くなっても将来円高の時に買うより有利です。そのことを考えればこれから暴騰する可能性があります。