知れば知るほど「めんどくせぇ」中国からの脱却は必要

世の中が総選挙モードに突入したとしても、日本が抱える内外の諸課題がなくなるわけではありません。こうしたなか、日本の外交と経済に密接に関連する重要なテーマとして、先般より取り上げているのが「中国依存の脱却」です。これは「できる・できない」の話ではありません。「やらねばならない」という話です。こうしたなか、日経ビジネスに20日、中国の「内部事情」に関する記事が出ていたのですが、これに対する感想を平たくいえば、「めんどくせぇ国だな」、です。

脱中国は「言うは易し行うに難し」

世の中はいまやすっかり「総選挙モード」になっていて、話題も総選挙に持って行かれているフシがあります。

当ウェブサイトでも、とくに今回の総選挙については高い関心を払って観察していくつもりです。

ただ、「税社保取り過ぎ問題」や物価高対策など、内外のさまざまな課題がなくなったわけではありません。課題は引き続き山積しているわけですから、ウェブ評論という立場からは、やはりこれらの話題を忘れるわけにはいかないのです。

そして、「忘れてはならない重要な問題」のひとつが、「脱中国」です。

もちろん、それは「言うは易し行うに難し」です。現在の日本経済は中国なしに成り立たない状況にあることは間違いないからです。もしも日中貿易が今すぐにでも停止するような事態が生じれば、物流は大混乱に陥りますし、さまざまな製品の供給が滞ります。

しかも、日本の中国からの輸入品目のなかにはレアアースなどの重要な戦略物資も含まれていますし、輸入が止まれば日本の産業そのものにも深刻な影響が及びかねない品目もあります。

だからこそ、一部では「日本は今すぐ中国に頭を下げて、(中国が怒る原因となったとされる)昨年11月の高市早苗総理大臣による台湾答弁を撤回させるべきだ」、などとしつこく主張する者もいるわけです(あるいはただの「反高市」勢が、中国問題を政治利用しているだけだというのが実態かもしれませんが…)。

日中貿易の実情

ただ、当ウェブサイトでは先日の『中国脱却は「できるかどうか」ではなく「必要がある」』で総括したとおり、著者としては、日本経済の中国からの脱却は、もはや「できるかどうか」を議論する局面ではなく、「やらなければならない」という立場です。

改めて指摘しておきますが、日本の中国からの輸入額は、日本の輸入量全体の4分の1近くを占めているなど、金額としては確かに大きいのですが、より重要なのはその「品目」です(図表

図表 中国からの輸入(2024年、主要品目)
品目金額割合
合計25兆3132億円100.00%
機械類及び輸送用機器13兆1071億円51.78%
 うち通信機2兆9835億円11.79%
 うち事務用機器2兆4642億円9.73%
 うち音響・映像機器(含部品)1兆0341億円4.09%
 うち家庭用電気機器6388億円2.52%
雑製品5兆2916億円20.90%
 うちメリヤス編み及びクロセ編み衣類9483億円3.75%
 うち衣類6414億円2.53%
 うちがん具及び遊戯用具6081億円2.40%
 うちプラスチック製品5247億円2.07%
原料別製品2兆9707億円11.74%
化学製品1兆8744億円7.40%
食料品及び動物1兆2770億円5.04%
 うち野菜3907億円1.54%
 うち魚介類の調製品2040億円0.81%
 うち魚介類1631億円0.64%

(【出所】普通貿易統計をもとに作成)

日中貿易の正体はコスト度外視の中国の産業政策

図表1は財務省税関が公表する『普通貿易統計』をもとに、日中貿易について、品目別に分解したものです。

ここからわかるとおり、対中輸入額(2024年実績で25兆3132億円)のうち、「通信機」が11.79%、「事務用機器」が9.73%、「音響・映像機器(含部品)」が4.09%を占めます。

この3品目(平たくいえばスマホ類、PC類、TV類)だけで、全体のざっと4分の1を占めているという計算であり、これに「家庭用電気機器」(2.52%)、衣類・雑貨といった「雑製品」(20.90%)などを足すと、全体の少なくとも50%以上が軽工業品(完成品、最終製品)で占められていることがわかります。

これが何を意味するか―――。

端的にいえば、日中貿易の正体とは、レアアースなども含め、中国による物量、価格、納期といったコストを度外視した産業政策にタダ乗りし、中国でお安く作られた製品を大量に輸入することで成り立っている日本企業のビジネスモデルを反映したものだ、ということです。

逆にいえば、ある程度時間をかけたうえで適正価格を負担すれば、脱中国は十分に可能だ、ということです。

先日の『中国脱却は「できるかどうか」ではなく「必要がある」』の冒頭でも取り上げたとおり、レアアースの中国依存脱却を巡っても「できない理由」ばかりを探すかの言い分を見かけることがありますが、端的に申し上げるならば、間違いだらけであり、ナンセンスです。

たとえば、南鳥島のレアアース開発も①中国の妨害が予想されること、②6000メートルの深海からレアアース泥を採取するに際しての技術的課題、③南鳥島レアアースでは必要なすべてのレアアースが含まれていないこと―――などをもとに、「南鳥島のレアアースは脱中国の切り札とならない」と主張する人がいます。

しかし、①はともかくとして、②と③は最初からその前提で開発が行われていますし、また、レアアースの脱中国の動きは南鳥島だけでなく、現実にはさまざまな国・地域で同時並行で行われているのが実情なのです。

このように考えていくと、「脱中国は不可能だ」、などと主張している人たちの多くは、単純に「できない理由を探している」だけの場合や、酷いケースでは「反高市という自身の立場を補強するために中国問題を政治利用している」だけ、というものもあるのです。

なぜ中国で日本企業が狙われるのか

さて、それはともかくとして、本稿でもうひとつとりあげておきたいのが、『Yahoo!ニュース』に昨日配信されていた、こんな記事です。

日本企業が狙われる理由 中国で広がる習政権転覆という「物語」

―――2026/01/20 06:00付 Yahoo!ニュースより【日経ビジネス配信】

「対立解消への道が見えない日中関係の『落としどころ』はどこか」、などの論点を、「中国やアジアの政治外交史に詳しい川島真東大教授に聞いた」とする記事で、インタビュー自体は2025年11月26日に実施され、記事の事実関係は同年12月23日までの事実に基づいているのだそうです。

ということは、年が明けてからのレアアース輸出制限騒動などについては、記事では反映されていないと考えられます。

この点、記事冒頭には「日中関係の落としどころ」などと書かれているわりに、記事の末尾まで読んでも、肝心の「落としどころ」はよくわかりません。

  • いわゆる『台湾有事』、つまり台湾への武力侵攻があるとします。でもその前に台湾封鎖があって、さらにその前には中国に進出している台湾系・日本系企業への圧力があったりする。これらはプロセスとして進行します」。
  • 日本では『台湾有事』を議論しますが、その前の段階などを総合的に考えて、長期的な視野に立って、中国が何をするのか、日本に何ができるのかということを考える必要があります」。
  • 今回の高市首相発言に対する中国の言動もまたそうしたプロセスの一つの事象だと考えて、将来を見据えた対応が求められるでしょう」。

読者が知りたいのは、その「長期的な視野に立って、日本に何ができるのか」であり、「将来を見据えた日本の対応」がどうあるべきか、ではないかと思うのですが、この点に対する答えは記事の中では見当たりません。

ただ、こうした「不満」はあるにせよ、やはりいまこの段階で中国に関する分析を読んでおくことは有意義でもあります。この記事の意義のひとつは、おそらく、「中国政府が何を考えているのか」、「なぜ中国があそこまで頑ななのか」に関するひとつの見識を知ることにあるからです。

「めんどくせぇ国」

その意味では熟読するに値する記事といえるかもしれません(なお、記事はわりと長文ですが、本稿ではそれらを逐一引用することはしません。内容が気になるという方は、是非とも原文をじっくりと読んでみてください)。

そのうえで、著者自身がこの記事を読んだ感想を(やや打ち砕けた表現で)申し上げるならば、「めんどくせぇ国だな」、であり、「中国の事情はわかったが、なぜそれに日本が忖度(そんたく)する必要があるのか」、というものです。

当たり前の話ですが、日本は日本で自国の国益を大事にすべきですし、あくまでも自国の国益を最大化するために行動しなければなりません。

今までは中国が「コスト(物量、価格、納期など)を度外視した安定的な供給先」として便利だったから中国との付き合いを深めて来たという話であり、その重要な前提条件が崩壊した以上、日本もそれに応じて行動を変えなければならないという、ごく当たり前の結論しか出て来ないのです。

それに、中国の国内の事情、たとえば習近平(しゅう・きんぺい)政権が「台湾問題」で「引くに引けない事情」があるにせよ、そんなことは日本の国益とはまったく無関係であり、知ったことではありません。日本も日本で台湾海峡有事が存立危機事態となり得るという「引くに引けない事情」があるからです。

いずれにせよ、くどいようですが、日本経済の「脱中国」は今すぐに可能ではありません。サプライチェーンでの中国依存が大きすぎるからです。

ただ、それでも中・長期的(たとえば5年、10年というターム)では脱中国に向けた努力が必要であり、衆院選でどの政党が政権与党として選ばれようが、脱中国は国家的プロジェクトとして進めて行かねばならないのです。

現実的にはレアアースなどの重要な戦略物資の対中依存脱却を急ぎつつ(可能ならば今後2~3年タームで実現すべきでしょう)、中国以外の国でも代替可能な最終加工品などについても、いつでも足抜けできる程度にまで対中依存を減らすことが考えられます。

なお、これに関連し、「脱中国を妨害しようとする政党などに多数を与えて良いのか」、という論点もあるのですが、この点については当ウェブサイトでこれまで敢えて避けて来た「どの政党に投票すべきか」という論点とも密接に関わって来るので、詳細は読者の皆さまにおいてお考えいただきたいと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    中国との関係は、トランプ大統領という要素も考慮にいれて、考えるべきでは。

  2. 陰謀論者 より:

     隣近所に面倒くさい人が住んでいて、こちらにどうしても引っ越しできない事情があるとしたらうんざりしてしまいますね。
     ただしばらく我慢すると、内紛で勝手に滅びると思いますのでとにかくまともに対応せずに、時間だけ稼いでいればいいと思います。 
     時間は日本の最大の味方です。日本には急ぐ理由も、どうしても解決しないといけないほどの動機もありません。落ち着いてゆっくり千年くらい話し合おうというくらいのスタンスで望みましょう。

  3. 匿名 より:

    https://x.com/swim_shu/status/2012710547519926451

    女子中学生が腎臓を抜かれて捨てられたという話も。
    ナンバーの無い救急車がさらいに来るとか。
    恐ろしい国です。

  4. 元雑用係 より:

    中国の事情を忖度して発言も行動も抑制し、機嫌を損ねないようにつき合おう、というのがいわゆる「媚中派」というのでしょうかね。
    一方で、日本の事情で言うべきことは言って対等に利害調整しましょうね、という普通の考え方はなんと呼ぶのだろう。標準派?

    前者だと譲歩に限度がないですよね。一つ譲ったからと言って終わるわけもなく、おかわり要求するのは目に見えてます。譲ったことで上下が決まるらしいですし。
    健全な関係の後者の方が日本にとってもよいかと。現在の主権国家の関係性と同じですね。わざわざ変えに行く必要はないでしょう。

  5. いつもは傍聴者 より:

    >著者自身がこの記事を読んだ感想を(やや打ち砕けた表現で)申し上げるならば、「めんどくせぇ国だな」、であり、「中国の事情はわかったが、なぜそれに日本が忖度(そんたく)する必要があるのか」、というものです。

    小生も読んで、全く同じ感想です。加えて、記事のあちこちに「上から目線」の意見が出ているため、「忖度」させることを狙っての記事なら、逆効果だなと。

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