新聞部数減少ペースやや緩和も…「衰退は時間の問題」

これはクリスマスプレゼントでしょうか。一般社団法人日本新聞協会が昨日、2025年10月時点の新聞部数データを公表しました。ポイントは合計部数(※朝・夕刊セット部数を2部とカウントした場合の部数)はデータが存在する1965年以降で初めて3000万部の大台を割り込み、夕刊も消滅寸前というレベルにまで部数が減ったものの、案外、朝刊部数についてはまだ最盛期の半分近く残っていたりします。ただ、「新聞放物線」は若干減少ペースが緩んだものの、このままだと新聞衰退は時間の問題でもあります。

クリスマスプレゼント

当ウェブサイトでは昨日の『SNS化は良いこと…政治家にとっても国民にとっても』の冒頭で、一般社団法人日本新聞協会が例年、12月下旬にその年の10月時点の新聞部数に関するデータを公表する、という話題を取り上げ、こう述べました。

著者にとっては『ふるさと納税限度額を円単位で正確に計算して限度額ギリギリまで使い切る』という重大イベントと並んで、この新聞部数データを手に入れてグラフを更新するのが年末のささやかな楽しみのひとつとなっている」。

こう述べた直後、昨日の午後に日本新聞協会ウェブサイトの『新聞の発行部数と世帯数の推移』のページを確認したところ、ページが更新され、2025年までのデータがアップデートされていたのです。なんとも嬉しいクリスマスプレゼントです。

そういう事情もあって、「ふるさと納税を限度額まで使い切る」作業はまだ終わっていませんが、新聞部数に関するデータをアップデートする作業は、例年より少しだけ前倒しで実施できました。

しかも嬉しいことがもうひとつあります。1965年から1999年までのデータが新たに掲載されたのです。

いままでは、日本新聞協会ウェブサイトに掲載されていた新聞部数データは2000年分以降しかなかったため、それ以前のデータは同協会が出版している『日本新聞年鑑』から手作業で転記していたのですが、そのデータが追加されたことで、作業が飛躍的に楽になりました。

前年と比べどう変わったか

データの構造と「合計①」「合計②」

早速、データを紹介したいところですが、その前に少しだけ留意点を取り上げておきます。

日本新聞協会のデータは、まず「合計(部数)」、続いて「一般紙/スポーツ紙」の内訳別、そして「セット部数/朝刊単独部数/夕刊単独部数」の発行形態別、という3種類の数値を把握することができます。

ただし、「一般紙/スポーツ紙」のそれぞれが「セット/朝刊単独/夕刊単独」に分解されているわけではないため、「一般紙のうち朝刊が何部、夕刊が何部」、「スポーツ紙のうち朝刊が何部、夕刊が何部」、といった分析はできません。

この区分に基づく合計を、本稿では便宜上、いちおう、「合計部数(②)」と称することにします。

ただ、個人的には、新聞部数を把握するときには「セット部数」を1部とカウントするのではなく、朝刊と夕刊の2部とカウントした方が実態に近いと考えているため、セット紙を朝・夕刊別に数えた場合の部数の合計を、本稿では「合計部数(①)」と呼んだうえで、こちらをメインに考察を進めていきたいと思います。

また、本稿では出所表記を省略している場合がありますが、とくに断りがない限り、基本的に出所は「一般社団法人日本新聞協会ウェブサイトの『新聞の発行部数と世帯数の推移』のページ」のデータです。

「合計①」は前年比229万部減った

前置きが長くなりましたが、さっそく中身を確認していきましょう(図表1)。

まずは、当ウェブサイトが「合計部数(①)」と呼んでいる部数です。

図表1-1 朝・夕刊セット部数を2部とカウントした場合の部数
表示項目2024年→2025年増減・増減率
合計部数(①)3,053.3万部→2,824.4万部▲228.9万部(▲7.50%)
 うち朝刊部数2,621.4万部→2,452.2万部▲169.2万部(▲6.45%)
 うち夕刊部数431.9万部→372.2万部▲59.7万部(▲13.82%)

「合計①」に関していえば、ついに3000万部を割り込み、日本新聞協会の1965年以降のデータで見て、史上最低となる28,244,091部となりました。2024年と比べると228.9万部の減少です(減少率は7.5%)。

グラフで後述する通り、減少ペース自体はやや鈍っていますが、それでも1年間で200万部を超える部数、つまり毎日新聞約2つ分が消滅した格好であり、このペースで減り続ければ、約12年あまりで新聞が完全に消滅する計算です。

また、夕刊については、前年までと比べ減少速度はやや緩んだものの、1年で約60万部が蒸発した計算で、減少率も13.82%と、朝刊(6.45%)を大きく上回っています。

現実的には全国紙(日経、読売、産経、毎日、朝日)やブロック紙・大手地方紙などでも、特定の地域での夕刊の発行を取りやめる事例、あるいは夕刊の発行そのものを取りやめてしまう事例が相次いでいることから、早ければあと2~3年で、多くの地域で夕刊配達が終了するのではないでしょうか。

一方で、朝刊に関しては減少数が169.2万部で、直近8年で最も緩いペースです(これもグラフで後述します)。新聞の解約ペースがやや緩んできたためでしょうか。

ただ、それでも依然として、毎年6~7%程度、部数が減っているという状況は変わっていません。

大変失礼な言い方かもしれませんが、(あくまでも想像ですが)新聞は読者層がもう高齢者に限られている反面、この高齢読者が「岩盤読者層」となっている可能性はわりと高いと思います。そう考えたら、毎年6~7%ずつ部数が減る理由も、なんとなく想像がつきます(この辺でやめておきます)。

参考:「合計②」と関連データ

なお、「参考」として、「朝・夕刊セット部数を1部とカウントした場合の部数」についても掲載しておきます。

図表1-2 朝・夕刊セット部数を1部とカウントした場合の部数
表示項目2024年→2025年増減・増減率
合計部数(②)2,661.7万部→2,486.8万部▲174.8万部(▲6.57%)
 うち一般紙2,493.9万部→2,337.4万部▲156.5万部(▲6.28%)
 うちスポーツ紙167.8万部→149.4万部▲18.3万部(▲10.93%)
合計部数(②)2,661.7万部→2,486.8万部▲174.8万部(▲6.57%)
 うちセット部数391.7万部→337.6万部▲54.1万部(▲13.80%)
 うち朝刊単独部数2,229.7万部→2,114.6万部▲115.2万部(▲5.16%)
 うち夕刊単独部数40.3万部→34.6万部▲5.6万部(▲14.00%)

「合計部数(②)」が2回出てくるのは誤植ではありません。単純に、日本新聞協会が公表している2種類のデータが別物であるということを明示するために分けているだけです。こちらについてはとくにコメントしませんので、ご興味がある方は読者コメント欄などでご自由に分析して下さい。

新聞放物線

トレンドチェック…最盛期は1996年

さて、本稿でメインで取り上げたいのが、「トレンドチェック」です。

まずは、新聞の「合計部数(①)」の推移です(図表2)が、これが相変わらずの「放物線」状態なのです。

図表2 新聞部数の推移(合計部数(①))

先ほど、「2025年の部数の減少ペースはほんの少し緩んだ」と申し上げましたが、グラフで見る限りは、中・長期的なトレンドとして、減少の一本道であり、しかも放物線を描くかのごとく急速に部数が減っていることがわかります。

ちなみにデータ上、部数が最も多かった「最盛期」は1996年の72,705,302部でしたが、2025年の28,244,091部という部数は、最盛期と比べて4割未満です(あるいは「まだ最盛期の4割弱の部数を維持しているのか」、という言い方もできるかもしれませんが…)。

内訳で見たら夕刊の減りが激しい

次に、この図表2を、朝刊と夕刊の内訳別に分解したものが、次の図表3です。

図表3 新聞部数の推移(朝・夕刊の内訳表示)

こちらで見るとよくわかりますが、朝刊部数については最盛期(2000年)の51,890,225部に比べて、直近部数は24,521,773部と、47.26%の水準です。つまり、部数自体は半減したとはいえ、「依然として最盛期の半分近くの部数を維持している」という言い方もできます。

合計①が5年刻みでどう変動したか

次に紹介したいのが、5年刻みで部数がどう変動したかに関する図表です(図表4)。

図表4-1 新聞部数の増減(5年刻みの「合計部数(①)」)

5年刻みにしてみると、やはり2020年から25年にかけての5年間での部数が1410万部減ったのが印象的です。つまり、5年で部数がざっと3分の2になった(=ざっと3分の1の部数が失われた)、という計算です。

この直近5年間にはコロナ禍期の部数減もデータとして含まれてしまうため、部数減の速度が若干誇張されている可能性はあるのですが、こうした影響を除外しても、5年間で約1200万部、つまり年平均で240万部前後が失われるというトレンドが、もう10年以上続いていると考えて良いでしょう。

朝刊は意外と堅調

ついでに朝刊と夕刊についても見ておきましょう。まずは朝刊からです。

図表4-2 新聞部数の増減(5年刻みの「朝刊部数」)

朝刊に関しては、やはり2020年のコロナ禍の影響もあるため、直近5年間での部数減は1000万部近くに達していますが、こうした一時要因を除外しても、直近10年間に関しては1800万部ほど、年平均で180万部ほど減っていることがわかります。

ただ、朝刊に関しては、やはり新聞の「本分」でもあるため、2025年時点の2452万部が完全にゼロになるのは10年以上先、という予想は成り立ちます(※もっとも、新聞部数がゼロになる前の段階で、新聞社が固定費すら賄えなくなるという可能性は濃厚ですが…)。

夕刊の減少は1990年代から続いていた

一方、夕刊に関しては、また少し違った風景が見えてきます。

図表4-3 新聞部数の増減(5年刻みの「夕刊部数」)

夕刊に関しては近年の減少が激しく、とくに2023年には前年比で一気に154万部も落ち込んだのですが、これはおそらくいくつかの新聞社が特定地域で夕刊の発行を取りやめるなどした影響が出ているのではないでしょうか。

ただ、夕刊に関しては、1990年代から減少傾向にあった事実も見過ごせません。

つまり、人々のライフスタイルなどが変わるなどし、もとから夕刊への需要が減っていたところに、インターネット・ショックが襲い掛かり、それで夕刊部数が激減したことで、新聞部数全体も大きく落ち込んできた、といった側面があるのです。

著者の想像だと、夕刊はもうすぐ全国的に、売上高での配達網の維持が不可能になります(今もそうなっているのかもしれませんが)。

そうなると、本当にあと数年のうちに、東京・大阪などの大都市部を除き、新聞業界がいっせいに夕刊の廃刊を決定する、という可能性もありますし、もっといけば、一気呵成に「夕刊廃止」にまで漕ぎ着けるかもしれません。

これも著者の想像ですが、新聞社はホンネでは夕刊を廃刊したがっているのではないかと思います(余談ですが)。

新聞衰退は時間の問題

いずれにせよ、新聞業界の衰退は、当ウェブサイトとしても息の長いテーマのひとつです。

とりわけネットの登場で一般国民にもファクトチェックができるようになったことは、こうした新聞業界の衰亡に拍車をかけるに違いない、といった観測もありつつも、やはり昨今でも(ごく少数ですが)高齢者を中心に「新聞・テレビしか情報源がない人たち」は残っています。

さらには、新聞に対しては「訃報欄需要」「折込チラシ需要」「天ぷらの油吸取り紙需要」「雨に濡れた革靴を乾かす需要」「キャンプファイヤーの着火剤需要」などが根強く、本当にあと10年で消滅するのかは微妙だ、という言い方もできます。

しかし、新聞の衰退と消滅は、時間の問題でもあります。

「新聞(やテレビ)の社会的影響力」という観点からは、おそらくは昨年あたりにネットと完全に逆転し、いまや「オールドメディア」として完全に衰退産業となったことも間違いなく、その意味では、やはりあと数年のうちに業界再編なども生じる可能性が高いことは間違いないと思う次第です。

(※といっても、オールドメディア各社は過去の利益の蓄積で経営状態に余裕がある、というケースも多いようですが…。)

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

読者コメント欄はこのあとに続きます(コメントに当たって著名人等を呼び捨てにするなどのものは禁止します)。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    インクの香りかぐわしい新聞紙を手にとり、見出し文字に視線をすべらしながら、めくって中を順に開く。新聞紙面は驚きと発見の場であって来た。
    視線を吸い寄せる心躍る記事がないかと探してまわり、自分の興味を引く記事が尽くされてしまったら、新聞紙はたたまれて見ず知らずのご同好のために網棚に捨てられていた。いい時代でした。
    今は誰も新聞を読んでいません。たまに電車で読んでいる人を見かけてもすぐにそれをたたんで、スマホに持ち替えている。紙面の不足を補い、裏取りになるからです。これまでの生活習慣を変える必然も必要もないリタイア層が退屈潰しで余る時間を新聞に使っている。
    膨大な無料情報の大海の中から、意味のある情報を選り分けることは新時代生活術の一部になった。
    頼りになるのは、
    ・情報収集のリーチが広い
    ・視野視座がしっかりしている
    ・見解が一貫している
    ・今をより正確に把握し、未来が見通せて『いそうな』ひと
    頼りになるのは、SNS 投稿、動画発言。
    新聞 TV は劣化情報装置としか考えられていない。宅配新聞に毎月4千5千を払うのは法外な娯楽であり、浪費と切り捨てられてもしょうがない。コメだって高くなっているではありませんか。
    逆説的なことですが、普段から無料情報の取捨選択に慣れた『耳目の肥えた』ひとたちのための、有料の高品質オンラインサービス需要が、日に日に高まりつつある。新商品はマーケットのあるところに生まれる。当方は令和8年が楽しみです。

  2. kurisyu より:

    うちの両親は一旦新聞をやめていたのに、広告面の旅行や演劇の情報が欲しくて購読再開するそうです。高齢の方にとってはまだニュース以外の価値があるのかも。

    1. はにわファクトリー より:

      新聞は老人商品以外のなにものでないと、広告業界こそよく知っている …

    2. 匿名 より:

      ≫ニュース以外の価値
      新聞はもう高齢者の娯楽でしかないんですよね。だから、意地でも新聞取るのをやめない人はいます。
      最終的にラジオみたいになって落ち着くんだろうな。

  3. 引きこもり中年 より:

    (もちろん、新聞各社によって違うでしょうが)新聞社が経営を維持できる最低限の発行部数は、どれだけでしょうか。
    蛇足ですが、新聞社は税金優遇を受けているのだから、報道の業務以外での利益で、本業の赤字を補填することを禁止すべきでは。

  4. はにわファクトリー より:

    「電子版」「デジタル」「オンライン」を名乗ろうが読者はもはや信用しない。中のひとがアレだから。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。また、著名人などを呼び捨てにするなどのコメントも控えてください。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告